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15 ハーベスト視点(前編)
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くそう……、ドルチャ家は一体どうなってしまったというのだ。
しかもジュリエルは実家に帰ったまま帰ってこないし。
シャロンはせっかくの健康診断を受けずに帰ってきてしまった。
あまりにも待たされすぎて我慢の限界だったと言っていたのだが……。
父様と義母様からは、シャロンの病気が心配だからと、シャロンの部屋で一緒に過ごすように命じられた。
確かに心配だが、だったら健康診断はどんなに待たされても受けるべきだったはずだろう……。
何かが矛盾している気がする。
今日もシャロンの部屋で共に過ごしているのだが、最近はスキンシップが激しい。
だが一緒にいるようになってからは、病気の発作はなくなり、元気なのだ。
「義兄様、今日もお風呂の後は一緒に寝てくれる?」
「あぁ、もちろんだ。元気になってくれるのならばこのくらいいくらでも」
「うん、義兄様と一緒にいると元気になれる気がする」
一緒にいるだけで元気になれるというのならば、私はいくらでもシャロンのそばで面倒を見てあげようと思う。
ジュリエルだって理解してくれるはずだ。
なぜならば、私は人助けをしているのだから。
人助けを否定してくるような愚かな人ではないことくらい、私は知っている。
♢
夜になり、シャロンと一緒に風呂から出た後、ベッドに入り明かりを消した。
こうなると、シャロンはいつも私の腕にしがみついてくるのだが、今回はしがみつくというよりも全身で抱きついてきているような気がする。
しかも、なぜ直前まで着ていたはずの服を脱いでしまったのだろうか。
シャロンの温もりが直接私の身体に伝わってくる。
「義兄様、……これだけしがみついても私のこと愛してくれないの?」
何を今更そんなことを言っているのかわからない。
私は義兄としてシャロンのことは大事にしているし心配なのだが。
「シャロンのことは愛しているぞ。義兄として」
「そうじゃなくて……私がこんな格好していても義兄様は何もしてこないから」
「そりゃそうだろう。私たちは義兄妹だし、それにジュリエルとの結婚も控えているからな……って、おい……」
シャロンの様子がどうもおかしい。身体を求めているのではないかと思ってしまうくらいの密着状態だ。
「ジュリエルジュリエルってそればっかり……私とこんなことしてたら浮気同然なのに」
「それは違うだろう。一緒にこうして過ごしていたら、安心できるのだろう? その証拠に体調も崩さなくなったではないか。ジュリエルだって馬鹿ではないのだからわかってくれるはずだ」
とは言ったものの、ここまで密着されてしまうと私も気がおかしくなってしまいそうだ。
少しだけ離れてもらおうと、少しずつ身体をずらしていったのだが……。
「義兄様、離れたら嫌。体調が悪くなってしまう気がする……あぁ……目眩が」
「なんだって!? すまなかった! どうしたら治る? なんでもするぞ」
「本当に? じゃあ、このまま抱きしめて。それから唇をね……こうして」
「な……おいシャロン……」
「少し元気になった気がする。義兄様、もう少し」
「本当か!? ならば問題ない! いくらでも!」
私には婚約者がいるのに、この後シャロンの病気を治すために人肌脱いだ。いや、正確にいうと本当に脱いでしまった。
とても疲れる長い夜だった。
だが、努力の甲斐があったのかもしれない。シャロンは本当に元気になったようだ。だから、これは不倫行為ではない。
ジュリエルも当然理解してくれるだろう。
どちらにしても、わざわざ言うつもりはないし、なるべくならば黙っておきたいのだが。
♢
「旦那様、王宮から使いの者が来ておりますが……」
家族揃っての朝食中に、突然その報せが届いた。
「なんだと? わざわざ我が家に来るとは。しかも朝早くから……。直ぐに支度する」
何事なのだろう。ドルチャ家は貴族の地位も男爵だから、滅多に王宮からこう言った報せは来ないのに。
前回の健康診断だって特別だった。
もしかしたら、ジュリエルのおかげで我がドルチャ家の株も一気に上がったのかもしれない。
だとしたら、私の代では伯爵に昇格しているのかも……つい一人で勝手にニヤけてしまう。
「義兄様、さすがにその表情はちょっと……」
「すまない。でも想像してもみろ。朝早くから王宮から報せだろう? 健康診断だって凄いことだったんだし。もしかしたらドルチャ家が躍進する時が来たんじゃないかって思ったらつい……義母様だってそう思えませんか?」
「まぁ、ハーベストったらそんなことを……。ふふ……もしそうなったら、もっと使用人を雇って仕事も丸投げして、私達はもっと自由に……。あぁ、考え始めたら私まで、はしたないのはわかっているのに」
「そうしたら義兄様がもっと私の側にいてくれる……悪くないわね」
私たちは浮かれながら食事の続きを楽しんでいた。
だが……。
「大変なことになってしまった!」
慌てて戻ってきた父様の顔が、真っ青になっていた。
--------------------------
【後書き】
読んでいただきありがとうございます。
こちらは新作のお知らせです。
新作『新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?』
主人公がデザイナーのお話になります。こちらも是非、宜しくお願い致します。
しかもジュリエルは実家に帰ったまま帰ってこないし。
シャロンはせっかくの健康診断を受けずに帰ってきてしまった。
あまりにも待たされすぎて我慢の限界だったと言っていたのだが……。
父様と義母様からは、シャロンの病気が心配だからと、シャロンの部屋で一緒に過ごすように命じられた。
確かに心配だが、だったら健康診断はどんなに待たされても受けるべきだったはずだろう……。
何かが矛盾している気がする。
今日もシャロンの部屋で共に過ごしているのだが、最近はスキンシップが激しい。
だが一緒にいるようになってからは、病気の発作はなくなり、元気なのだ。
「義兄様、今日もお風呂の後は一緒に寝てくれる?」
「あぁ、もちろんだ。元気になってくれるのならばこのくらいいくらでも」
「うん、義兄様と一緒にいると元気になれる気がする」
一緒にいるだけで元気になれるというのならば、私はいくらでもシャロンのそばで面倒を見てあげようと思う。
ジュリエルだって理解してくれるはずだ。
なぜならば、私は人助けをしているのだから。
人助けを否定してくるような愚かな人ではないことくらい、私は知っている。
♢
夜になり、シャロンと一緒に風呂から出た後、ベッドに入り明かりを消した。
こうなると、シャロンはいつも私の腕にしがみついてくるのだが、今回はしがみつくというよりも全身で抱きついてきているような気がする。
しかも、なぜ直前まで着ていたはずの服を脱いでしまったのだろうか。
シャロンの温もりが直接私の身体に伝わってくる。
「義兄様、……これだけしがみついても私のこと愛してくれないの?」
何を今更そんなことを言っているのかわからない。
私は義兄としてシャロンのことは大事にしているし心配なのだが。
「シャロンのことは愛しているぞ。義兄として」
「そうじゃなくて……私がこんな格好していても義兄様は何もしてこないから」
「そりゃそうだろう。私たちは義兄妹だし、それにジュリエルとの結婚も控えているからな……って、おい……」
シャロンの様子がどうもおかしい。身体を求めているのではないかと思ってしまうくらいの密着状態だ。
「ジュリエルジュリエルってそればっかり……私とこんなことしてたら浮気同然なのに」
「それは違うだろう。一緒にこうして過ごしていたら、安心できるのだろう? その証拠に体調も崩さなくなったではないか。ジュリエルだって馬鹿ではないのだからわかってくれるはずだ」
とは言ったものの、ここまで密着されてしまうと私も気がおかしくなってしまいそうだ。
少しだけ離れてもらおうと、少しずつ身体をずらしていったのだが……。
「義兄様、離れたら嫌。体調が悪くなってしまう気がする……あぁ……目眩が」
「なんだって!? すまなかった! どうしたら治る? なんでもするぞ」
「本当に? じゃあ、このまま抱きしめて。それから唇をね……こうして」
「な……おいシャロン……」
「少し元気になった気がする。義兄様、もう少し」
「本当か!? ならば問題ない! いくらでも!」
私には婚約者がいるのに、この後シャロンの病気を治すために人肌脱いだ。いや、正確にいうと本当に脱いでしまった。
とても疲れる長い夜だった。
だが、努力の甲斐があったのかもしれない。シャロンは本当に元気になったようだ。だから、これは不倫行為ではない。
ジュリエルも当然理解してくれるだろう。
どちらにしても、わざわざ言うつもりはないし、なるべくならば黙っておきたいのだが。
♢
「旦那様、王宮から使いの者が来ておりますが……」
家族揃っての朝食中に、突然その報せが届いた。
「なんだと? わざわざ我が家に来るとは。しかも朝早くから……。直ぐに支度する」
何事なのだろう。ドルチャ家は貴族の地位も男爵だから、滅多に王宮からこう言った報せは来ないのに。
前回の健康診断だって特別だった。
もしかしたら、ジュリエルのおかげで我がドルチャ家の株も一気に上がったのかもしれない。
だとしたら、私の代では伯爵に昇格しているのかも……つい一人で勝手にニヤけてしまう。
「義兄様、さすがにその表情はちょっと……」
「すまない。でも想像してもみろ。朝早くから王宮から報せだろう? 健康診断だって凄いことだったんだし。もしかしたらドルチャ家が躍進する時が来たんじゃないかって思ったらつい……義母様だってそう思えませんか?」
「まぁ、ハーベストったらそんなことを……。ふふ……もしそうなったら、もっと使用人を雇って仕事も丸投げして、私達はもっと自由に……。あぁ、考え始めたら私まで、はしたないのはわかっているのに」
「そうしたら義兄様がもっと私の側にいてくれる……悪くないわね」
私たちは浮かれながら食事の続きを楽しんでいた。
だが……。
「大変なことになってしまった!」
慌てて戻ってきた父様の顔が、真っ青になっていた。
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【後書き】
読んでいただきありがとうございます。
こちらは新作のお知らせです。
新作『新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?』
主人公がデザイナーのお話になります。こちらも是非、宜しくお願い致します。
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