25 / 50
25
しおりを挟む
「首席のヴィーネ=モンブラーと申します。治安維持部隊総括のデズム子爵家の長女です。お兄様もこの学園は首席で入学していました。お兄様の功績に恥じないよう、こうして私も首席で入学できたことを誇りに思っております。どうぞ首席の私をよろしくお願いしますね」
首席って何回言ったのだろう。
ちょっとしつこかったような気もする……。
私も次席とか言ったほうが良いのかもしれないが、やめておく。
私はその場で挨拶することにした。
「ソフィーナと申します。みなさんと仲良く楽しく学園生活ができたら嬉しいです。よろしくお願いします」
こんなに大勢いる中で喋ったことなどない。
緊張しすぎてしまい、喋ろうと思ったことはほぼカットしてしまった。
ただの挨拶だけで終えてしまったが、まぁ良いか。
と、思っていたのだが……。担任のセドム先生から痛い視線が来る。
「ソフィーナ君。肝心なことを主張しなくて良いのか? 確かキミは……」
「いえ、充分です」
緊張で、かぁぁぁぁぁっとなってしまい、これ以上喋ったら私が大変なことになりそうだった。
国王陛下とは親しんで喋ることができるし、叙爵式のときは大勢の人前に立っていたというのに、ここだとなぜか上がってしまう。
レオルド様がいないと、こんなに変わってしまうのか。
もしくはここでも物置小屋生活でのトラウマが……。
徐々に克服できるように頑張っていこうと思う。
「さて、今日は入学初日だ。この日には魔法学科の諸君には必ずやってもらうことがある」
セドム先生は、私が見慣れている道具をよいしょよいしょと運んできた。
これは、レオルド様が追加で作っていた魔力測定器だ。
入学式前に新しい物をふたつ作ってくださり、それを弁償として学園に届けてくれたのである。
なお、残りのひとつは自宅用だ。
「諸君はこれから魔法を学び、訓練する。まずは今の段階での実力を知る必要があるため、抜き打ちでこのようなことをするのだ」
「ひぇぇ……、朝浄水で魔法使っちゃったのに……」
「水を出したばかりですのに……」
「本気でやって、すごいところを見せつけよう」
生徒たちからも、これはヤバいというような発言が多い。
実のところ、私も今はマズかった。
朝、自宅にも設置した魔力測定器に、ほとんどの魔力を注いでしまったばかりである。
前回の試験で破壊してしまったものの、この魔力測定器ならば本気で力を使っても壊れない。
さっきやったばかりだからなぁ……。
「静かに。皆の力で学園内のトイレや水、ライトも維持できるのだから手を抜かないようにな」
そっちが目的な気もするが、誰も先生にはツッコんでいなかった。
本調子は出せないものの、私は今できる限りの力を注ぐことにした。
今回も失敗と言わざるを得ないだろうが、もう失敗だと思わずに、常に全力で挑む。
レオルド様から、そう教わったのだから。
自己紹介と同じ順番でやるそうで、私は最後だ。
それまでの短い時間の間に、少しでも魔力が回復できるように魔力循環の訓練と同じことをした。
同級生の魔力も見たいけれど、それどころではない。
目を瞑り、魔力回復に集中した。
「おい、ソフィーナ君! ソフィーナ君っ!!」
「ほはっ!!」
「変な返事をするな。入学初日から昼寝をするなど気がたるんでいる。キミの番だ!」
「も、申しわけございません!」
集中しすぎて周りが全く見れていなかった。
とは言っても、集中できた時間はごくわずか。普段訓練している時間の一割にも満たない。
ほぼ空っぽだった魔力から、概ね1%弱回復できた程度に過ぎない。
それでも、魔力が尽きるギリギリのところまで力を注いだ。
終わって魔力切れ寸前だった。
ここまで魔力を使い果たしたのは初めてで、意識が朦朧としている。
教室内の同級生、そしてヴィーネ義姉様、さらにはセドム先生が、口を開けたまま無言だった。
首席って何回言ったのだろう。
ちょっとしつこかったような気もする……。
私も次席とか言ったほうが良いのかもしれないが、やめておく。
私はその場で挨拶することにした。
「ソフィーナと申します。みなさんと仲良く楽しく学園生活ができたら嬉しいです。よろしくお願いします」
こんなに大勢いる中で喋ったことなどない。
緊張しすぎてしまい、喋ろうと思ったことはほぼカットしてしまった。
ただの挨拶だけで終えてしまったが、まぁ良いか。
と、思っていたのだが……。担任のセドム先生から痛い視線が来る。
「ソフィーナ君。肝心なことを主張しなくて良いのか? 確かキミは……」
「いえ、充分です」
緊張で、かぁぁぁぁぁっとなってしまい、これ以上喋ったら私が大変なことになりそうだった。
国王陛下とは親しんで喋ることができるし、叙爵式のときは大勢の人前に立っていたというのに、ここだとなぜか上がってしまう。
レオルド様がいないと、こんなに変わってしまうのか。
もしくはここでも物置小屋生活でのトラウマが……。
徐々に克服できるように頑張っていこうと思う。
「さて、今日は入学初日だ。この日には魔法学科の諸君には必ずやってもらうことがある」
セドム先生は、私が見慣れている道具をよいしょよいしょと運んできた。
これは、レオルド様が追加で作っていた魔力測定器だ。
入学式前に新しい物をふたつ作ってくださり、それを弁償として学園に届けてくれたのである。
なお、残りのひとつは自宅用だ。
「諸君はこれから魔法を学び、訓練する。まずは今の段階での実力を知る必要があるため、抜き打ちでこのようなことをするのだ」
「ひぇぇ……、朝浄水で魔法使っちゃったのに……」
「水を出したばかりですのに……」
「本気でやって、すごいところを見せつけよう」
生徒たちからも、これはヤバいというような発言が多い。
実のところ、私も今はマズかった。
朝、自宅にも設置した魔力測定器に、ほとんどの魔力を注いでしまったばかりである。
前回の試験で破壊してしまったものの、この魔力測定器ならば本気で力を使っても壊れない。
さっきやったばかりだからなぁ……。
「静かに。皆の力で学園内のトイレや水、ライトも維持できるのだから手を抜かないようにな」
そっちが目的な気もするが、誰も先生にはツッコんでいなかった。
本調子は出せないものの、私は今できる限りの力を注ぐことにした。
今回も失敗と言わざるを得ないだろうが、もう失敗だと思わずに、常に全力で挑む。
レオルド様から、そう教わったのだから。
自己紹介と同じ順番でやるそうで、私は最後だ。
それまでの短い時間の間に、少しでも魔力が回復できるように魔力循環の訓練と同じことをした。
同級生の魔力も見たいけれど、それどころではない。
目を瞑り、魔力回復に集中した。
「おい、ソフィーナ君! ソフィーナ君っ!!」
「ほはっ!!」
「変な返事をするな。入学初日から昼寝をするなど気がたるんでいる。キミの番だ!」
「も、申しわけございません!」
集中しすぎて周りが全く見れていなかった。
とは言っても、集中できた時間はごくわずか。普段訓練している時間の一割にも満たない。
ほぼ空っぽだった魔力から、概ね1%弱回復できた程度に過ぎない。
それでも、魔力が尽きるギリギリのところまで力を注いだ。
終わって魔力切れ寸前だった。
ここまで魔力を使い果たしたのは初めてで、意識が朦朧としている。
教室内の同級生、そしてヴィーネ義姉様、さらにはセドム先生が、口を開けたまま無言だった。
70
あなたにおすすめの小説
【完結】本物の聖女は私!? 妹に取って代わられた冷遇王女、通称・氷の貴公子様に拾われて幸せになります
Rohdea
恋愛
───出来損ないでお荷物なだけの王女め!
“聖女”に選ばれなかった私はそう罵られて捨てられた。
グォンドラ王国は神に護られた国。
そんな“神の声”を聞ける人間は聖女と呼ばれ、聖女は代々王家の王女が儀式を経て神に選ばれて来た。
そして今代、王家には可愛げの無い姉王女と誰からも愛される妹王女の二人が誕生していた……
グォンドラ王国の第一王女、リディエンヌは18歳の誕生日を向かえた後、
儀式に挑むが神の声を聞く事が出来なかった事で冷遇されるようになる。
そして2年後、妹の第二王女、マリアーナが“神の声”を聞いた事で聖女となる。
聖女となったマリアーナは、まず、リディエンヌの婚約者を奪い、リディエンヌの居場所をどんどん奪っていく……
そして、とうとうリディエンヌは“出来損ないでお荷物な王女”と蔑まれたあげく、不要な王女として捨てられてしまう。
そんな捨てられた先の国で、リディエンヌを拾ってくれたのは、
通称・氷の貴公子様と呼ばれるくらい、人には冷たい男、ダグラス。
二人の出会いはあまり良いものではなかったけれど───
一方、リディエンヌを捨てたグォンドラ王国は、何故か謎の天変地異が起き、国が崩壊寸前となっていた……
追記:
あと少しで完結予定ですが、
長くなったので、短編⇒長編に変更しました。(2022.11.6)
悪役令嬢は処刑されないように家出しました。
克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。
サンディランズ公爵家令嬢ルシアは毎夜悪夢にうなされた。婚約者のダニエル王太子に裏切られて処刑される夢。実の兄ディビッドが聖女マルティナを愛するあまり、歓心を買うために自分を処刑する夢。兄の友人である次期左将軍マルティンや次期右将軍ディエゴまでが、聖女マルティナを巡って私を陥れて処刑する。どれほど努力し、どれほど正直に生き、どれほど関係を断とうとしても処刑されるのだ。
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
【完結】嫌われ公女が継母になった結果
三矢さくら
恋愛
王国で権勢を誇る大公家の次女アデールは、母である女大公から嫌われて育った。いつか温かい家族を持つことを夢見るアデールに母が命じたのは、悪名高い辺地の子爵家への政略結婚。
わずかな希望を胸に、華やかな王都を後に北の辺境へと向かうアデールを待っていたのは、戦乱と過去の愛憎に囚われ、すれ違いを重ねる冷徹な夫と心を閉ざした継子だった。
永遠の誓いをあなたに ~何でも欲しがる妹がすべてを失ってからわたしが溺愛されるまで~
畔本グラヤノン
恋愛
両親に愛される妹エイミィと愛されない姉ジェシカ。ジェシカはひょんなことで公爵令息のオーウェンと知り合い、周囲から婚約を噂されるようになる。ある日ジェシカはオーウェンに王族の出席する式典に招待されるが、ジェシカの代わりに式典に出ることを目論んだエイミィは邪魔なジェシカを消そうと考えるのだった。
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!
仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。
ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。
理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。
ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。
マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。
自室にて、過去の母の言葉を思い出す。
マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を…
しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。
そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。
ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。
マリアは父親に願い出る。
家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが………
この話はフィクションです。
名前等は実際のものとなんら関係はありません。
私を溺愛している婚約者を聖女(妹)が奪おうとしてくるのですが、何をしても無駄だと思います
***あかしえ
恋愛
薄幸の美少年エルウィンに一目惚れした強気な伯爵令嬢ルイーゼは、性悪な婚約者(仮)に秒で正義の鉄槌を振り下ろし、見事、彼の婚約者に収まった。
しかし彼には運命の恋人――『番い』が存在した。しかも一年前にできたルイーゼの美しい義理の妹。
彼女は家族を世界を味方に付けて、純粋な恋心を盾にルイーゼから婚約者を奪おうとする。
※タイトル変更しました
小説家になろうでも掲載してます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる