勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね？

1章

独白

まず、大前提として。
そもそも魔王なんて存在しない。
だから、勇者なんてのも存在しないのだ。

私は、家に帰りたかった。
日本が恋しかった。
だから、王子に頼んだ。
私を日本に返してくれと。

そうしたら、王子が言ったのだ。
「魔王を倒せば、日本に帰れるかもしれない」と。
私は、その言葉を信じて、魔王を倒す旅に出ることにした。
私の性格も聖女の仕事に対するスタンスも何もかも合わなくて、喧嘩ばかりしていた神官たちは、喜んで、私を国から追い出した…いや、旅に出る私を見送った。
私が、魔王を倒す旅に出れることになったのは、国が新しい聖女を見つけたからというのもあった。

厄介で目の上のたんこぶの存在である、異世界から来た聖女の私。
そんな私を王子だけが、優しく接してくれていた。
…そう思っていた。

魔王が存在しないということも、勇者パーティーだというあの人たちが、何の変哲もないその辺の冒険者だったということを知るまでは。

結局、裏で笑っていたのだ。
王子も、神官も、王様も、国民も、誰も彼もが。
これを知って、酒を飲まないでいられるか！！！
あいつらは、酒浸りの私を見て、いつも虫けらを見るような目で見ていたけど、あいつらだって、自分たちが勇者パーティーでも何でもない、国から騙されたと知ったら、私の気持ちが分かるに違いないのだ。

私なんて、帰る手段も場所もなくなってしまった。
それなのに、どうして明るく楽しく毎日生きていけるというのだろう。