12 / 33
2章
1
しおりを挟む
大聖堂の奥に位置する円形の魔法陣の上に、私は立っていた。
「え?」
わっと歓声が上がった。おそらく喜んでいる。
しかし、私はそれどころではなかった。
会社帰りの電車から、一瞬で違う場所にいると気づいた瞬間、視界がぼやけるような感覚がした。頭は冷え、腕には鳥肌が立ち、わけもわからず二の腕をさすりながら、周りに耳を傾けることもできず、ただただ目の前の魔法陣を見つめていた。魔法陣は、不思議な模様と神秘的な色彩に包まれており、まるでこの世界に来た私を歓迎しているような感覚を与えていた。
私は最初、自分が異世界に召喚されたことを現実として受け止められなかった。ただ、聖堂の中で呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
「聖女が召喚されたぞ!私たちは成功したのだ」
「儀式は完璧だった。魔法陣はうまく機能したようだ」
「マリアンヌ様が残してくださった聖杯のおかげだ。おかげで、もうわずかしか魔力はないが」
「構わんさ。あの娘に今度は注いでもらえばいい」
「あの娘、とても強い魔力を持っているようだ。聖女として育て上げるのにふさわしい」
「確かに。強い力を感じる。心配することはない。この儀式が失敗しなかった。それだけで聖女としての適性は十分にあるだろう」
「陛下が喜ぶ。期待に応えることができてよかった」
「それにしても、今回の召喚は特別だ。あの魔法陣は、かなりのエネルギーを必要としたはずだ」
「聖杯を使った甲斐があった」
呆然としている私の様子は、目に入らないらしい。
ファンタジー映画か少し昔のゲームに出てきそうな神官らしき白い装束と長細い帽子をかぶった男たちといかにもな三角の帽子と黒いローブを羽織った魔法使いのような男たちは、口々に興奮して叫びあっている。
そんな彼らの姿を見て、私は改めて、自分が立つ空間を見渡した。
「え?」
わっと歓声が上がった。おそらく喜んでいる。
しかし、私はそれどころではなかった。
会社帰りの電車から、一瞬で違う場所にいると気づいた瞬間、視界がぼやけるような感覚がした。頭は冷え、腕には鳥肌が立ち、わけもわからず二の腕をさすりながら、周りに耳を傾けることもできず、ただただ目の前の魔法陣を見つめていた。魔法陣は、不思議な模様と神秘的な色彩に包まれており、まるでこの世界に来た私を歓迎しているような感覚を与えていた。
私は最初、自分が異世界に召喚されたことを現実として受け止められなかった。ただ、聖堂の中で呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
「聖女が召喚されたぞ!私たちは成功したのだ」
「儀式は完璧だった。魔法陣はうまく機能したようだ」
「マリアンヌ様が残してくださった聖杯のおかげだ。おかげで、もうわずかしか魔力はないが」
「構わんさ。あの娘に今度は注いでもらえばいい」
「あの娘、とても強い魔力を持っているようだ。聖女として育て上げるのにふさわしい」
「確かに。強い力を感じる。心配することはない。この儀式が失敗しなかった。それだけで聖女としての適性は十分にあるだろう」
「陛下が喜ぶ。期待に応えることができてよかった」
「それにしても、今回の召喚は特別だ。あの魔法陣は、かなりのエネルギーを必要としたはずだ」
「聖杯を使った甲斐があった」
呆然としている私の様子は、目に入らないらしい。
ファンタジー映画か少し昔のゲームに出てきそうな神官らしき白い装束と長細い帽子をかぶった男たちといかにもな三角の帽子と黒いローブを羽織った魔法使いのような男たちは、口々に興奮して叫びあっている。
そんな彼らの姿を見て、私は改めて、自分が立つ空間を見渡した。
696
あなたにおすすめの小説
【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!
月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、
花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。
姻族全員大騒ぎとなった
聖女を怒らせたら・・・
朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
金喰い虫ですって!? 婚約破棄&追放された用済み聖女は、実は妖精の愛し子でした ~田舎に帰って妖精さんたちと幸せに暮らします~
アトハ
ファンタジー
「貴様はもう用済みだ。『聖女』などという迷信に踊らされて大損だった。どこへでも行くが良い」
突然の宣告で、国外追放。国のため、必死で毎日祈りを捧げたのに、その仕打ちはあんまりでではありませんか!
魔法技術が進んだ今、妖精への祈りという不確かな力を行使する聖女は国にとっての『金喰い虫』とのことですが。
「これから大災厄が来るのにね~」
「ばかな国だね~。自ら聖女様を手放そうなんて~」
妖精の声が聞こえる私は、知っています。
この国には、間もなく前代未聞の災厄が訪れるということを。
もう国のことなんて知りません。
追放したのはそっちです!
故郷に戻ってゆっくりさせてもらいますからね!
※ 他の小説サイト様にも投稿しています
聖女らしくないと言われ続けたので、国を出ようと思います
菜花
ファンタジー
ある日、スラムに近い孤児院で育ったメリッサは自分が聖女だと知らされる。喜んで王宮に行ったものの、平民出身の聖女は珍しく、また聖女の力が顕現するのも異常に遅れ、メリッサは偽者だという疑惑が蔓延する。しばらくして聖女の力が顕現して周囲も認めてくれたが……。メリッサの心にはわだかまりが残ることになった。カクヨムにも投稿中。
妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】
小平ニコ
ファンタジー
「お姉様、よくも私から夢を奪ってくれたわね。絶対に許さない」
私の妹――シャノーラはそう言うと、計略を巡らし、私から聖女の座を奪った。……でも、私は最高に良い気分だった。だって私、もともと聖女なんかになりたくなかったから。
退職金を貰い、大喜びで国を出た私は、『真の聖女』として国を守る立場になったシャノーラのことを思った。……あの子、聖女になって、一日の休みもなく国を守るのがどれだけ大変なことか、ちゃんと分かってるのかしら?
案の定、シャノーラはよく理解していなかった。
聖女として役目を果たしていくのが、とてつもなく困難な道であることを……
【完結】残酷な現実はお伽噺ではないのよ
綾雅(りょうが)今年は7冊!
恋愛
「アンジェリーナ・ナイトレイ。貴様との婚約を破棄し、我が国の聖女ミサキを害した罪で流刑に処す」
物語でよくある婚約破棄は、王族の信頼を揺るがした。婚約は王家と公爵家の契約であり、一方的な破棄はありえない。王子に腰を抱かれた聖女は、物語ではない現実の残酷さを突きつけられるのであった。
★公爵令嬢目線 ★聖女目線、両方を掲載します。
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
2023/01/11……カクヨム、恋愛週間 21位
2023/01/10……小説家になろう、日間恋愛異世界転生/転移 1位
2023/01/09……アルファポリス、HOT女性向け 28位
2023/01/09……エブリスタ、恋愛トレンド 28位
2023/01/08……完結
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる