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「は、はじめまして…」
「… …初めまして」

あなたを見た最初の印象は、なんて汚い子なんだろう。こんな子、見たことがない。と、正直、よい印象はありませんでした。
この国に加護なしは、いません。
だから、私はそれまで加護なしの人を見たのは、この時が初めてです。
噂には、聞いていましたがこれほど醜いものだとは、思わなかったのです。

ドロドロとした、恨みや憎しみの呪詛の泥が、彼女にべったりと付いており、彼女の顔は、判別がつかないほどです。
国を追い出されたと、聞いておりましたが、これならば納得です。
どれほどの悪行を積み重ねれば、これほどになるでしょうか。

目に見える形で、悪い人間だとわかるのは都合がいいな、と私は内心思います。
これなら、言い訳がつく。
悪い人間だから、虐げても問題ない。
醜いから、見下されて当然だと。

それでも、一応、神託が下されている以上、無下には出来ません。
だから、私は気持ち悪いと、吐き気を我慢し、エミリアを迎え入れました。



「おはようございます。聖女様」
「…おはよう。早いのね」

日の出前。
世界が一番、暗い時間。
エミリアは、いつも掃除をしている。
広い聖堂を、たった一人で。

「あなた一人?」
「も、申し訳ございません。昨日の時点で、終わらなかったものですから」
「… … …」

聖堂は、かなり広い。
一人でやるなど、一日かけても不可能だ。
だから、数人の聖女候補と一緒にやるのが、当たり前だというのに。さぼったのね。
…当たり前か。差別意識が高く、プライドがある彼女たちは、エミリアという異分子を、それも呪われた子を受け入れるわけがなかった。
だから、目に見える形で、虐げている。
さすがに暴力は、ふるっていないらしい。呪いがうつるとでも思っているから、掃除を押し付けたり、無視をしたりしているのだろう。

「何をそんなに笑っているのかしら」
「も、申し訳ございません」
「私はなぜ、と聞いているのよ」
「た…楽しくて…」
「え?」
「楽しいから…笑っています」
「掃除が?」
「それもあります」

意味が分からない。
掃除を押し付けられて、一人で、この広い聖堂を掃除しているのよ?それも、到底終わらない広さ。
それなのに、楽しい?

「そう。頑張って」
「はい!」

あいかわらず、呪いにまみれた彼女の顔を見ることは、出来なかった。



祈りの時間。
まだ、掃除しているんだろうな。と、少しうんざりしながらも、聖堂の扉を開いた。

「…うそ」

きれいになっている。
それも私たちが、いつも掃除しているよりも、ずっと。
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