聖女が悪女に転じた時

雑煮

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「ほら、食べろ。」


「だめですわ!人様のものを勝手に食べたりなんてできません!」


「裕福そうな貴族の屋敷から盗んできたから大丈夫だ。」


「どこの誰のものであろうとだめなものはだめなのです。」


「……では、川に捨ててくるぞ。俺は返しに行ってやるほど優しくないからな。」


「なっ……!もうっ、食べますわ!でも明日からはこんなことはされないでくださいね?パンがなくなったらその屋敷の使用人たちが罰を与えられるかもしれません。」



美味しそうな魂だなんて言うからてっきり私はこの悪魔に食べられるものだと思っていたけど、この悪魔はなんと私の為に食料を取りに行ってくれたのだ。(翼が生えて突然飛んでいったと思ったらパンのかごを抱えて帰ってきた)



「盗られる方が悪いんだ。

それにお前はこれからどうやって暮らす気だったんだ?魔の森には人間が食べれるものはないし、ここは人間用の作物は育たないぞ。」



「えっと、それは……」


すぐに死ぬものと思っていたから食料のことなんてなにも考えていなかったとは、たとえ悪魔が相手でも言い難いわ。



「ったく、俺がいなかったらすぐに死んでいたぞ。」


「でお金もありませんし……魔物の肉は食べれるんですか?」


「ずっと食い続けるには魔物の肉は人間の体には合っていない。……まぁ、金目のものならあるが。」


そう言って悪魔は自分の手を見せてきた。


「……あら、高そうな指輪がいっぱい。」


アンティークな作りの宝石が入った指輪を何個もついた長い指にセリアは目を丸くした。

これほどの宝飾ならオークションにも出せる品だわ。


「これを売れば暫くはしのげるだろう。」


「え、売るのですか?」


「いつでも取り戻せるからな。俺が本来の力を取り戻してこの辺り一帯を統べるのに1ヶ月もかからん。」


……本当に自分の帝国を築くつもりなのかしら。



「明日にでも人間の町に紛れて入ってくる。他に必要なものがあれば言え。」



「ありがとうございます。
……でも、どうして私に施しをしてくださるのですか?」



「俺が帝国を築いた時の補佐役にお前を任命する。」


「ええ!?」


「宰相なんていいんじゃないか?聖女の称号では働きがいがないだろう。助けてやる代わりに、あとから馬車馬のようにこき使ってやるか覚悟しとけ。」


「……宰相、」



なんていい響き。

私が宰相……っ!



「やります!是非やらせてください!」


本当は死にたくなんてない!

もっと皆の為に働きたかった。



気になっていた政策も街もたくさんある。



それを自らの手で出来るなんて夢に見なかった……聖女だった時には諦めていたことだったのに。




「じゃあまずはたくさん食って、聖力を回復させろ。

お前の力も頼りにするからな。」



「……聖力、戻るんですか?」



「ああ、いい治療法があるぜ。耐えられるかはお前次第だけどな。」



「っ……なんだって耐えてみせます!」





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