【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki

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第一章  不可思議な現実?

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「あぁ私の可愛い。ほんっとうに可愛過ぎるよ私の天使は!!」

 ぐふぇ……と淑女らしかぬ呻き声を吐きかけたけれどもだ。
 根性でぐっと喉の奥へと引っ込ませる事の出来た私を褒めて欲しい。
 何故なら声が漏れかけた寸前、私はテアの凶悪な視線を察知したわ。
 だから必死にっ、それはもう切実にせり上がってくるだろう悲鳴をごっくんと、しっかり呑みこんだのだから!!



 話はほんの少し戻り王宮を辞して侯爵家のタウンハウスへと帰宅すれば、後を追い掛ける様に帰宅したのはお父様。
 我が国で一番忙しい筈の宰相閣下を努めておられるお父様が、こうして帰ってこられるのも言うなればこれも何時も通りのルーティン。

 私が王宮へ伺候すれば必ず引き剥がし役のお母様の登城と、帰宅していく私達を追い掛ける様に帰ってくるお父様。

 我が家って一体周りにはどう思われているのだろう。
 きっと我儘娘に振り回されているお馬鹿な大人達って、譬え心の中で思ったとしても絶対に口が裂けても言葉として発する事すら出来ないのでしょうね。

 何と言ってもその筆頭は伯父様ご夫妻であられる両陛下なのだもの。
 
 その次は宰相である父の、王妹であられる母……これも何処からどう突っ込みを入れていいものか悩む案件よね。

 
 さぁ家族揃ってのディナーと行きますか……はない。
 何故なら先程まで長時間のお茶会だったが故に、私とテアのお腹は当然の事ながら満腹状態。
 夕食なんて食べられよう筈もなく、だからと言ってそのまま休む事は許されない。

 我が家は貴族にしては珍しく家族団欒は大切なるものと、侯爵家へ降嫁された際にお母様が取り決められたの。

 しかしこの状態では流石に夕食を食べるのは無理。
 なのでお母様達の夕食前に皆でまったりと軽くお茶をする事となっている。
 そこへ駆け込み宜しくと言った具合に帰宅してきたお父様の情熱的なハグにより、身体をぎゅうぎゅうに締め付けられた私は冒頭の悲鳴を上げかけた……という訳。


 本当に何時までたっても力加減一つ出来ないのが私の大好きなお父様。
 文官なのに何故か筋骨隆々で、見た目は麗しいやや細身のイケメンなのに、身体つきはどこぞの頑強な騎士様ですかって突っ込みどころが満載だわ。

 何故か剣の腕も宰相なのに物凄くお強いのよね。
 毎朝ちゃんと鍛錬も欠かさないって本当に宰相は力仕事ではなく頭脳職だと思うのですよ。
 お父様曰く剣で己を鍛えるのは、愛する家族を己が剣で護る為……だとか。
 
 こうして今日はアルお兄様を除くお父様とお母様、そしてテアと私で家族の団欒をゆっくりと過ごしてからの就寝を迎えた所で私はふと思い出す。



 覚えているのは霞みの向こう側で儚げに、心の中は悲しみや憎しみ、羨望と言った様々な負の感情で溢れ返りそうなのに、それでも精一杯幸せそうな笑顔を湛えている16歳のエルネスティーネ

 愛する人へ最期に笑顔の自分を覚えて貰いたいと願い飛び降りた。

 ただ覚えているのはその部分だけ。
 不思議な事にそれ以前の記憶もなければそれ以降の記憶は覚えてはいない。
 でも家族や友人達の事は覚えている。

 記憶にないのは何時も私自身。

 その状態である事に物凄く不安であると同時に物凄く怖い!!
 本心を言えば大きな声で泣き叫びたい。
 
 目覚めれば9歳の子供の身体なのに、何故か16歳のエルネスティーネを覚えている。
 そこはややウロだけれどね。

 身体の変化もだけれど精神的にもかなり堪えている。
 心の中で泣き叫びたい気持ちとそれを制する気持ちが綯交ぜとなり、更に不安へと駆られてしまう。
 それでも目覚めてからずっと笑顔でいられたのは、きっと皆に心配を掛けたくなかったからだよ……ね。
 まぁ王宮へ伺候するからと流された感は否めないけれど……。

 過去の記憶も皆との絡みで覚えているとは言えどそれはウロでしかない。
 一方未来に関しては現在と16歳の最期の瞬間だけしか覚えていない。
 その間の記憶がすっぽりと、まるで最初から存在等していないかのよう。
 
「……っ、な、んでかなぁ。どうし……」

 どうして記憶が……ううん、これ以上泣いちゃダメ。
 泣いていた事がわかればきっと皆物凄く心配する。
 ちゃんと笑顔で、何時もと変わらない明るい私でいないと!!

 と、兎に角先ずは覚えている事を把握しようか。
 何時また、こんな風に記憶がなくなるかもしれない。
 そんな恐怖と闘いながらも私は霞みがかる記憶を何とか手繰り寄せ、覚えている限り状況を把握する事にした。
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