7 / 140
第一章 不可思議な現実?
6
しおりを挟む「あぁ私の可愛い。ほんっとうに可愛過ぎるよ私の天使は!!」
ぐふぇ……と淑女らしかぬ呻き声を吐きかけたけれどもだ。
根性でぐっと喉の奥へと引っ込ませる事の出来た私を褒めて欲しい。
何故なら声が漏れかけた寸前、私はテアの凶悪な視線を察知したわ。
だから必死にっ、それはもう切実にせり上がってくるだろう悲鳴をごっくんと、しっかり呑みこんだのだから!!
話はほんの少し戻り王宮を辞して侯爵家のタウンハウスへと帰宅すれば、後を追い掛ける様に帰宅したのはお父様。
我が国で一番忙しい筈の宰相閣下を努めておられるお父様が、こうして帰ってこられるのも言うなればこれも何時も通りのルーティン。
私が王宮へ伺候すれば必ず引き剥がし役のお母様の登城と、帰宅していく私達を追い掛ける様に帰ってくるお父様。
我が家って一体周りにはどう思われているのだろう。
きっと我儘娘に振り回されているお馬鹿な大人達って、譬え心の中で思ったとしても絶対に口が裂けても言葉として発する事すら出来ないのでしょうね。
何と言ってもその筆頭は伯父様ご夫妻であられる両陛下なのだもの。
その次は宰相である父の、王妹であられる母……これも何処からどう突っ込みを入れていいものか悩む案件よね。
さぁ家族揃ってのディナーと行きますか……はない。
何故なら先程まで長時間のお茶会だったが故に、私とテアのお腹は当然の事ながら満腹状態。
夕食なんて食べられよう筈もなく、だからと言ってそのまま休む事は許されない。
我が家は貴族にしては珍しく家族団欒は大切なるものと、侯爵家へ降嫁された際にお母様が取り決められたの。
しかしこの状態では流石に夕食を食べるのは無理。
なのでお母様達の夕食前に皆でまったりと軽くお茶をする事となっている。
そこへ駆け込み宜しくと言った具合に帰宅してきたお父様の情熱的なハグにより、身体をぎゅうぎゅうに締め付けられた私は冒頭の悲鳴を上げかけた……という訳。
本当に何時までたっても力加減一つ出来ないのが私の大好きなお父様。
文官なのに何故か筋骨隆々で、見た目は麗しいやや細身のイケメンなのに、身体つきはどこぞの頑強な騎士様ですかって突っ込みどころが満載だわ。
何故か剣の腕も宰相なのに物凄くお強いのよね。
毎朝ちゃんと鍛錬も欠かさないって本当に宰相は力仕事ではなく頭脳職だと思うのですよ。
お父様曰く剣で己を鍛えるのは、愛する家族を己が剣で護る為……だとか。
こうして今日はアルお兄様を除くお父様とお母様、そしてテアと私で家族の団欒をゆっくりと過ごしてからの就寝を迎えた所で私はふと思い出す。
覚えているのは霞みの向こう側で儚げに、心の中は悲しみや憎しみ、羨望と言った様々な負の感情で溢れ返りそうなのに、それでも精一杯幸せそうな笑顔を湛えている16歳のエルネスティーネ。
愛する人へ最期に笑顔の自分を覚えて貰いたいと願い飛び降りた。
ただ覚えているのはその部分だけ。
不思議な事にそれ以前の記憶もなければそれ以降の記憶は覚えてはいない。
でも家族や友人達の事は覚えている。
記憶にないのは何時も私自身。
その状態である事に物凄く不安であると同時に物凄く怖い!!
本心を言えば大きな声で泣き叫びたい。
目覚めれば9歳の子供の身体なのに、何故か16歳のエルネスティーネを覚えている。
そこはややウロだけれどね。
身体の変化もだけれど精神的にもかなり堪えている。
心の中で泣き叫びたい気持ちとそれを制する気持ちが綯交ぜとなり、更に不安へと駆られてしまう。
それでも目覚めてからずっと笑顔でいられたのは、きっと皆に心配を掛けたくなかったからだよ……ね。
まぁ王宮へ伺候するからと流された感は否めないけれど……。
過去の記憶も皆との絡みで覚えているとは言えどそれはウロでしかない。
一方未来に関しては現在と16歳の最期の瞬間だけしか覚えていない。
その間の記憶がすっぽりと、まるで最初から存在等していないかのよう。
「……っ、な、んでかなぁ。どうし……」
どうして記憶が……ううん、これ以上泣いちゃダメ。
泣いていた事がわかればきっと皆物凄く心配する。
ちゃんと笑顔で、何時もと変わらない明るい私でいないと!!
と、兎に角先ずは覚えている事を把握しようか。
何時また、こんな風に記憶がなくなるかもしれない。
そんな恐怖と闘いながらも私は霞みがかる記憶を何とか手繰り寄せ、覚えている限り状況を把握する事にした。
81
あなたにおすすめの小説
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
【完結】この胸が痛むのは
Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」
彼がそう言ったので。
私は縁組をお受けすることにしました。
そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。
亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。
殿下と出会ったのは私が先でしたのに。
幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです……
姉が亡くなって7年。
政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが
『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。
亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……
*****
サイドストーリー
『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。
こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。
読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです
* 他サイトで公開しています。
どうぞよろしくお願い致します。
【完結】最愛から2番目の恋
Mimi
恋愛
カリスレキアの第2王女ガートルードは、相手有責で婚約を破棄した。
彼女は醜女として有名であったが、それを厭う婚約者のクロスティア王国第1王子ユーシスに男娼を送り込まれて、ハニートラップを仕掛けられたのだった。
以前から婚約者の気持ちを知っていたガートルードが傷付く事は無かったが、周囲は彼女に気を遣う。
そんな折り、中央大陸で唯一の獣人の国、アストリッツァ国から婚姻の打診が届く。
王太子クラシオンとの、婚約ではなく一気に婚姻とは……
彼には最愛の番が居るのだが、その女性の身分が低いために正妃には出来ないらしい。
その事情から、醜女のガートルードをお飾りの妃にするつもりだと激怒する両親や兄姉を諌めて、クラシオンとの婚姻を決めたガートルードだった……
※ 『きみは、俺のただひとり~神様からのギフト』の番外編となります
ヒロインは本編では名前も出ない『カリスレキアの王女』と呼ばれるだけの設定のみで、本人は登場しておりません
ですが、本編終了後の話ですので、そちらの登場人物達の顔出しネタバレが有ります
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
私たちの離婚幸福論
桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。
しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。
彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。
信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。
だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。
それは救済か、あるいは——
真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません~死に戻った嫌われ令嬢は幸せになりたい~
桜百合
恋愛
旧題:もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません〜死に戻りの人生は別の誰かと〜
★第18回恋愛小説大賞で大賞を受賞しました。応援・投票してくださり、本当にありがとうございました!
10/24にレジーナブックス様より書籍が発売されました。
現在コミカライズも進行中です。
「もしも人生をやり直せるのなら……もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません」
コルドー公爵夫妻であるフローラとエドガーは、大恋愛の末に結ばれた相思相愛の二人であった。
しかしナターシャという子爵令嬢が現れた途端にエドガーは彼女を愛人として迎え、フローラの方には見向きもしなくなってしまう。
愛を失った人生を悲観したフローラは、ナターシャに毒を飲ませようとするが、逆に自分が毒を盛られて命を落とすことに。
だが死んだはずのフローラが目を覚ますとそこは実家の侯爵家。
どうやらエドガーと知り合う前に死に戻ったらしい。
もう二度とあのような辛い思いはしたくないフローラは、一度目の人生の失敗を生かしてエドガーとの結婚を避けようとする。
※完結したので感想欄を開けてます(お返事はゆっくりになるかもです…!)
独自の世界観ですので、設定など大目に見ていただけると助かります。
※誤字脱字報告もありがとうございます!
こちらでまとめてのお礼とさせていただきます。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる