【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki

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第五章  忘れられし過去の記憶

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「そなた一体――――」

 太陽をただ単に雲等で覆い隠したのではない。

 生命を育みしもの太陽をリーゼの手より放たれた漆黒よりも尚暗い黒闇を用いて吸収させおった。

 それはある意味妾の育みし世界の終焉を意味するもの。

 また神として決して行ってはいけない最大の禁忌タブー


「あぁその様なお顔をなさらないで。イルメントルート姉様には私がいるのです。私こそがお姉様の唯一なる存在。お姉様の幸せは私なのです。なのでこの様な詰まらぬもの等打ち捨てられませ」
「……詰まらぬ、もの?」

 妾の大切なる世界を詰まらぬものと言い捨てるこの者は真にあのリーゼなのか。
 いや、妾の知るリーゼとは似て非なる者。
 妾の愛しいリーゼは、気弱な所はあるが心根の優しい子であった。


「う……んっ⁉」
「オズ⁉」

 うっかり忘れておったわ。
 苦悶に満ちた呻き声を聞いた瞬間、ここにもう一人いた事を思い出す。

「オズよ生きておるか? 気を確かに持て。何処か痛むところはないのか?」

 人間……いや人間に限らず妾に比べれば他の生命体は皆儚く脆弱なるもの。
 些細な傷や病が元となり、あっと言う間にその生命は失われてしまう。
 故に妾はオズの身体に異常はないかと気に病んでしま……。


 パチン


「い、いだい……」

 不意打ちとは卑怯であるぞ。
 妾は心配しておると言うのにだ。
 心配の余りオズの顔近くへと覗き込めば、行き成りデコピンを食らわしてきた。

 またこれが何とも地味に額が痛い。
 少しばかり存在を忘れていたとはいえ、声に気づき心配した礼がこの様な暴力とは全く人間とは恐ろしい。
 
 私は額を抑えながらオズを睨めつけた。

「あ、ほが、このくらいで俺が死ぬ訳がなかろう。然も愛しい女へ人生最大の告白をしている途中でぜ――――ったいに死ねないと言うか、先ず俺を簡単に殺すなよ」

 どきどきどきどき、な、何やら胸が物凄くく、苦しい!?

 ニヤリと何時もの意地の悪い笑みを浮かべたと思えばだ。
 次の瞬間春の陽だまりの様な温かくも優しい笑みで以って妾を熱く見つめてくる。

 オズの視線が、眼差しだけでなく触れる手までが熱い。
 妾の手をしっかりと握るオズには悔しいくらいに余裕すら感じられる。
 一方妾にはその様な余裕はほんの少しもない。
 それよりも何よりもこ、この様な時妾は一体どうすればよいのだ。

 わからぬ。
 本当にわからぬ。
 狼狽える妾をオズはそっと抱き締める。

「……俺が気を失っている間に何やら物騒な展開になっているみたいだな」
「あ、その、あれは……」

 あぁそうだ。
 今はこの様にほのぼのとしている場合ではない。
 リーゼの、いや抑々リーゼは一体何をしたいのだ。

「案ずるな。お前の事は何があろうとも俺が絶対に護ってやる」

 いやいやそれは妾の台詞だろう。
 妾はこの世界を育みし神であり、そなたは脆弱なる人間の雄なのだからの。
 そこは妾がリーゼよりこの世界を護る一択であろ。

「大丈夫だ。しかしコリンナがこんなに馬鹿力だとは知らなかったとは言え心配はない。俺はこの辺り一帯で一番強い。コリンナが何を思っての行動なのかは知らないが、兎に角お前は大人しく俺に護られていろ」

 熱い吐息交じりで妾の耳元へそう囁けばだ。
 妾の身体をぐっと更に引き寄せ額へ柔らかくも熱い……く、口づけられたぁ!?

「ふ、余り可愛い反応をするな。ま、愉しみは後に取っておくか」
「は、〇▲×◇※\●⁉」

 オズが離れると同時に纏わりつく様な甘過ぎる熱もゆっくりと去っていく。
 そうしてオズは剣を鞘から抜くとゆっくりそれを構えリーゼと対峙した。

「なぁコリンナ、お前一体何をしている。それともう一つ、何だその妖しげな力は」

 だからオズよ、それはコリンナと言う娘の身体であって中身はリーゼ、妾の妹ぞ。
 
「黙れ下等な人間の雄よ。お前の方こそ私の唯一であるルル姉様へ触れるではないわ!!」
「うわ……っとと、急に攻撃を仕掛けるんじゃない。何が理由で気に入らねぇのかわからんが、抑々お前にそんな妖しげな力何てあったかコリンナ!!」
 
 リーゼは掲げていた右手をぶんと勢いのままにオズの方へと振り下ろす。
 振り下ろされた右手より放たれたのは、まるで意思を持つかと思われし黒闇のみで構成された黒剣。
 伸縮自在に動く黒剣を、オズは自身の剣でひらりと躱す。
 
 まるで八つ当たりの様にリーゼはオズへ向かって何度も攻撃を仕掛けていく。
 オズはまるで剣舞の様に軽やかに、そして勇ましくまた確実にリーゼとの間合いを詰めていく。
 
「オズ!!」

 経験値と言うものなのであろうか。
 幾ら脆弱な人間とは言えオズは戦士。
 毎日を生き抜く為に戦いに身を投じる者。
 対して妾達は人間を凌駕する力はあれども、これまでに何かと戦った事はない。
 その経験値の差がリーゼをより苛立たせ、より強力な力を行使しようと――――した!!

「ルル!?」

 黒闇の炎を剣に纏わせリーゼは冷笑を湛えたまま剣を振り下ろすと同時に片方の手には炎を増幅させオズを焼き殺そうとしたのだろう。

 だがそうはさせない。
 妾はオズとリーゼの間へと割って入った。
 頭で理性的に考えるのではなく、身体が自然にそう動いていく。
 そうしてリーゼの炎を上回る光で以ってあれの力を一瞬だが抑え込む事に成功した。
 
「何故に止めるのです!! その者は絶対に生かしはしない。その者は私の姉様を穢したわ!!」

 まぁ先程の件は妾も思う所があるのだが……。

「その前に問い質したき事がある。何故そなたは闇の力を纏っておるのだ。また先程よりの妾の問いへ何故に答えぬのだリーゼ」
 
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