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終章 エルネスティーネ、彼女の選んだ決断と未来
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しおりを挟むお兄様達の許へ戻った私は暫くの間色々と質問攻めだったわ。
その内容は何れも私を心より心配してのもの。
離れてから一人で何を体験したのだとか、霊廟に秘匿されしものよりも何よりも今生のエルネスティーネの安否だけを真摯に、三人共に心配をしてくれた事が素直に嬉しかった。
ただ少々その心配が三人三様、それぞれが違う角度よりウザいとつい思ってしまう程に重い愛情で、私はもう色々と精神的に疲れてしまったのはご愛敬。
そうして地上にある王宮へと無事に帰還したわ。
と言っても帰りは転移をしたからあっという間だったのだけれどね。
全てを思い出し力の全てを取り込んだ今の私は、魔法……厳密に言えば魔法を超越した力を行使できる。
だから転移をする事も大した問題ではないの。
ただお兄様達は物凄く驚いておられたのだけれどね。
そしてジークヴァルト様だけは何故か、そう何か寂しそうな、それでいて酷く懐かしむ様な表情だったのが少し気になってしまった。
再会した現在の愛する家族達とのひと時。
皆口々に私の身を案じてくれている。
本当に幸せだ。
叶うものならばこの幸せの中に何時までも浸っていたい。
そう願う私の心の中ではまた別の想いを抱いてもいる。
最初のエルネスティーネがこの世を去って早千年。
この世界が滅ぶ事なく続いている事に感謝をする。
とは言え母イルメントルートの願う平和であったかはまた別だ。
人々の、戦争という名の諍いはこの千年の間にも世界の中で幾度も行われていたのだから……。
戦いからは何も生みだしはしないと言うのにね。
ただ何時の時代も憎しみや争いと言った負の感情は生み出されていた。
その結果愚かな戦で多くの無辜の民の命は常に風前の灯火だったわ。
神であったお母様はトルテリーゼとの戦いで既に神としてこの世界を見守る事は出来ない。
言い換えればあの戦いの後からは神の育みし世界から、この世界に生きる者達によって未来は紡がれていったのよ。
その中でも知恵を持つ人間達がこの世界の大気や大地を考えもなしに侵せばよ。
加護のない人間だけでなくこの世界で生きる全ての生命体へ、自然は何倍にもして汚染された以上に時間を掛けて跳ね返してくるでしょう。
抑々人間は自分達が一番賢いと思いがち。
でもそれは間違っているわ。
動物や植物達にもちゃんと意思があるし生きていく為の知恵もある。
またこの世界を形成する大いなる自然は、神であったお母様の意思をどの生命体よりも純粋に受け継いでいるわ。
大地を抉り鉱石や油を搾り取り、このまま何の策を弄せず大気を汚染させれば、そう遠くない未来自然は間違いなく人類を世界にとって害悪と見做し淘汰するでしょう。
そして今の私は人間であり半分以上人ならざるもの。
全てを取り戻した私が自ら手を下せばいいのかもしれない。
でもそれでは人間達は何も学ぶ事すら出来なくなってしまう。
それに――――私には使命があるもの。
千年の間に人間を含めあらゆる者より負の感情を集め、密やかに力を取り戻してきたトルテリーゼ。
そう私には彼女との最終決戦が待っている。
神だった母より託されし最期の機会。
だから今私は自らの使命を果たそう。
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