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終章 エルネスティーネ、彼女の選んだ決断と未来
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しおりを挟む『ふざけた事を言わないで!!』
闇に染まった氷塊の中にある私の心の中より聞こえたのは、強制的に眠らせたエルの意識。
何故!?
どうして?
エルの心だけは何としても護りたいと、我が身よりも優先したというのに!!
眠らせたエルの意識が目覚めていく。
エル、貴女が目覚めればそれは即ち私と完全に同調する事を意味するのよ。
私がトルテリーゼの手の内へ堕ちるのは仕方がないとしてもエル、貴女迄私と共に堕ちる事はない。
私の全てを懸けてもエル、貴女の意識だけはこの場より絶対に助け出してみせるから……。
『それがお節介と言うものよ!! 私はエルネスティーネ、貴女の記憶を思い出した瞬間……ううん違う。多分この世界へ誕生した時から私は朧気ながらも自分の役割を理解をしていたのかもしれない』
エル?
『はっきりと理解をしている訳ではないわ。正直に言えば今でも混乱している。それにあの記憶をなくす奇病の原因は貴女なのでしょうエルネスティーネ』
何故わかった……何て言わない。
そう貴女は私の血を受け継ぐ者であり、これまでに誕生したどの子供達よりも一番私と母イルメントルートに近しき存在。
『記憶の件は目覚めた時王陛下とお母様より聞いて初めて分かったの。それまでは全く気づく事もなかったわ』
全てを理解しているのね。
『だから全てではないわ。ただ記憶を失うのは何かの切っ掛けで、それはトルテリーゼからの干渉を受けた私達子孫の心を護る為なのでしょ』
えぇそうよ。
出来る事ならばトルテリーゼより干渉を受けた部分だけが的確に削除出来ればよかったのだけれど、生憎私は生者ではない。
遠い昔に肉体は滅び、子孫を憂えた私に出来た事は記憶と力をあの霊廟へ、お母様の願いと共に封じただけ。
だから私が生を終える時に私の血の記憶の中へ彼の者の干渉があった際、子孫達の心を護る為に記憶を抹消する事にした。
干渉された事実をなかったものとして自動的に処理を行う。
『そのお陰で楽しい記憶も一緒に忘れたと思うわ』
それについては申し訳ないと思う。
でもそこまでの細やかな配慮は如何に私がイルメントルートの娘とて無理な話。
何故なら私は神ではないのだからな。
『今は神以上の力を有している癖に!!』
だがこの有様だ。
『それはトルテリーゼ若しくはアーデルトラウトへの同情なの? 身の内へ入り込まれたからこそ理解してしまったの? 彼女達の無念さをつい共感してしまった?』
エル、そなたはどの聖女……我が血を受け継ぎし娘の中でも一番はっきりと物申す娘よの。
そなた、いや既に我らの母クレメンティーネよりも気が強いのではないか?
『そ、その様な事はないわよ。お母様の方が物凄く怖いのよ!!』
ふ、怖いのと物怖じしないとでは抑々意味が違う。
『兎に角よ!! 私は何時までこの状況を受け入れている心算なのかって言いたいの。このまま闇の中で何もしないまま終わってもいいの?』
だが……。
『だがもしかしもないわ!! 貴女が諦めてしまったらこの世界はどうなるの? トルテリーゼは解き放たれたわ。迷っている時間はもうないの!!』
しかし……。
『私の事はいいから。私は貴女達の力に耐え得る器として生まれたのだもの。それに私はこの世界と人々が大好きなの。だからトルテリーゼと彼女の贄となった哀れなアーデルトラウトから世界を護りたい。それが出来るなら私は――――』
そう、だな。
どうかしておったようだ。
だがエルよ、私はそなたを失いたくはない。
『私も死ぬ心算なんてないわ』
エルは強い子だ。
『あら、私は幼い頃から野猿令嬢って言われているのよ。私に淑女なんて似合わないわ。平和になったら今度こそ色々な事にチャレンジするのだもの』
そうだな。
あぁ私もエルの様に自由な人生を送り……。
『いーい!! 私達は二人で一人なの!! もうエルネスティーネだけでは……』
どくん――――。
闇色に染まった分厚い氷壁に包まれた私の心よりじわじわと温度を取り戻していく。
そうこの瞬間私とエルは本当の意味で一つとなったと同時にだった。
「今度こそ絶対に護るって言っただろう」
凍りついていた私の身体を抱き締め、伝わってくるのはとても温かな温もり。
今にも泣きそうな表情をし私を熱い眼差しで見つめるのはヘルムート。
そうか、そなたも私を追い掛けてきたのだな。
全く大人しく眠っておればいいものを。
エル、今こそ我が力と記憶、母の願いを託そう。
この身体はそなたのもの。
未来の世界を共に護ろう。
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