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血の臭いがする。
ヴァルカンのいうことが本当なら、この人は何らかの殺人を犯している。
もしくは逆で怪我をしているということもある。
どっちにしても見過ごせないけど、刺激していいものだろうか?
グレンもそう考えてるらしく、動けずにいたところマヤが動いていた。
「おじさん!」
「なんだいお嬢ちゃん?」
「さっきお母さんのこと迎撃したとき、怪我しなかった?血が出てるよ!」
いくら何でもあからさまじゃない!?
幼い子を演じてるつもりなんだろうけど、もし殺人犯だったらどうするのよ。
「マ・・・え、グレン?」
「大丈夫だ。マヤは人の思考をずっと詠んできた事を隠してたんだぞ。それに思考がわかってるんだ、確信があってやってるはず」
「確かに」
マヤは思考が読める所為で他人にあまり近づかなかった所為か、実年齢より少し幼い気がする。
でもそういった相手の思考の引き出し方はエキスパートよね。
「血?あぁ、これかい。これはズボンの内側の柄がそう見えたんだね。でも心配してくれてありがとう」
「勘違い?ごめんなさいおじさん」
「いいんだよ」
これで怪我じゃないことはわかった。
でもあとは血の匂いと言われたらもう・・・
マヤは馬車に戻ってきて、私の横に座り込む。
「彼の思考はあまり読めませんでした。ただ一つだけ、国王陛下とルルシア師匠に対しての怨嗟の念が流れてきました」
「私と陛下に対しての怨嗟?」
「ルルが留学の時にやった改革で爵位を落としてるからだろ?あんまり顔出すな」
それにしたって、あの表情で恨みを募ってるなんて信じられない。
思考を読めなかったのだって、ほとんど恨み事をずっと考えてるってことでしょ。
あんな無害そうな顔で。
怖いわ。
「ヴァルカン、あいつの血の臭いは確かなのか?」
『チャント拭キ取ラレテイマスガ、間違イアリマセン。近ヅクコトガデキレバソノ血ガ何ナノカワカリマス』
「よし、俺がヴァルカンを被っていくぜ」
「グレン、危ないわよ」
「ヴァルカンを起動させれば問題ねえだろ。ちょっと行ってくる」
「もー、マヤは私と一緒にいましょう」
「ぷふっ、怖いのですか師匠?」
マヤが私に馬鹿にした笑顔で聞いてきたので私はマヤの耳をつねった。
「痛いです!」
「自業自得よ」
師匠なんだから弟子にこれくらいするのは許されるはず。
多分、いやちょっと厳しかった?
マヤの耳が少し赤くなっていたので撫でた。
「おいガウリ、そろそろ向かおうぜ」
「あ、あぁそうだな」
「ガウリ様、グレン殿との御関係は?」
「俺の部隊の副官を担う予定だ」
「いつからお前の副官になったんだ?」
「まぁ似たようなものだろう。今後ともよろしく頼む」
「俺もよろしくお願いします」
グレンが握手を求めると、目つきが鋭くなるがすぐに元の目に戻る。
とんだ狸だわ。
「よろしくお願いいたします。といっても私は門番勤務ですので、お会いする機会はあまりありませんが」
「そんなことないと思いますよ。それでは失礼致します」
ガウリ様とグレンが馬車に戻ってくるが、ヴァルカンが何か言ったのか険しい顔をしている。
馬車が動きだして城に向かいだすが、グレンはずっと門番の人のことを見ていた。
「はぁ、マジかよ」
「その感じだと黒なのね?」
「ん?何の話だ?」
「あぁ、ガウリは聞いてないもんな。あの門番、ヴァルカンの話だと何十人ってレベルの人の血を浴びてるらしい」
「なんだと!?」
何十人って・・・立派な殺人鬼じゃないの。
しかもそれが私にも向けられてる。
思わず身震いした。
予想よりも最悪な相手で驚いたけど、ヴァルカンとマヤの情報無しじゃそこまでたどり着けなかった。
「あの門番からそんな気配を感じなかったが、人は見かけによらないということか。それにしても進化した魔装の解析能力はとんでもないな」
「そりゃ同感だ。城に着き次第国内で起きてる事件の資料見に行くぞ」
「俺に命令するな。だがその意見には賛成だ」
グレンは私が狙われてるからこれだけ必死になってくれてるのよね。
それは嬉しいけど少し申し訳ないわ。
「悪いがルルはマヤとオリバーに遠征の報告を頼む」
「わかったわ。ありがとうグレン」
「あ、そうだルル。屋敷に戻ったら、これを親父に渡してくれ」
「これ?」
グレンから渡された紙は、見たことない文字が書かれている。
辛うじてプラスの字だけは読めるけど、これは一体なんなの?
「母さんが聖女ゴールドマリーと対峙したときにもらったものらしい」
「ゴールドマリーに!?」
「去り際に渡されたらしい。あいつの本性がわかる手がかりかもしれないって母さんが言ってた。父さんなら何か知ってるかもしれないそうだ」
マシバ様なら知ってるかもしれないことって一体何なのかしら?
ゴールドマリーとマシバ様に接点があるようには見えなかったけど。
「わかったわ」
「本当はあの門番を問い詰めたいところだが、証拠がねぇかんな」
「それを今から探すのだろう。まったく、資料をまとめないといけないのに飛んだ問題を増やしやがって。奴は絶対に捕まえる」
「証拠がないのに逮捕でもしたら、彼の犯行の証拠を完全に処理されてた場合困るものね」
「あぁ、魔導師団の汚点になりかねん。あの場で衝動に任せて確保しなかったのは正解だぞグレン」
「狙われてるのはルルだからな。正直殴ってでも聞き出したいところだ」
「しかし奴の監視もほしいところだな」
「あぁ、だったら俺の影。グン兄に任せるわ」
グンジョーが監視につくならひとまずは安心ね。
「グンジョーも第三師団に入団してくれると助かるんだが・・・」
「あぁ、そりゃ親父に聞いてみないとわかんねぇわ。ルル、それも聞いといてくれ」
「私になんでも任せないでよ。でもわかったわ」
私もゴールドマリーについては気になるところだし。
落ち着いたらリリノアール陛下の安否も調べたいわ。
ヴァルカンのいうことが本当なら、この人は何らかの殺人を犯している。
もしくは逆で怪我をしているということもある。
どっちにしても見過ごせないけど、刺激していいものだろうか?
グレンもそう考えてるらしく、動けずにいたところマヤが動いていた。
「おじさん!」
「なんだいお嬢ちゃん?」
「さっきお母さんのこと迎撃したとき、怪我しなかった?血が出てるよ!」
いくら何でもあからさまじゃない!?
幼い子を演じてるつもりなんだろうけど、もし殺人犯だったらどうするのよ。
「マ・・・え、グレン?」
「大丈夫だ。マヤは人の思考をずっと詠んできた事を隠してたんだぞ。それに思考がわかってるんだ、確信があってやってるはず」
「確かに」
マヤは思考が読める所為で他人にあまり近づかなかった所為か、実年齢より少し幼い気がする。
でもそういった相手の思考の引き出し方はエキスパートよね。
「血?あぁ、これかい。これはズボンの内側の柄がそう見えたんだね。でも心配してくれてありがとう」
「勘違い?ごめんなさいおじさん」
「いいんだよ」
これで怪我じゃないことはわかった。
でもあとは血の匂いと言われたらもう・・・
マヤは馬車に戻ってきて、私の横に座り込む。
「彼の思考はあまり読めませんでした。ただ一つだけ、国王陛下とルルシア師匠に対しての怨嗟の念が流れてきました」
「私と陛下に対しての怨嗟?」
「ルルが留学の時にやった改革で爵位を落としてるからだろ?あんまり顔出すな」
それにしたって、あの表情で恨みを募ってるなんて信じられない。
思考を読めなかったのだって、ほとんど恨み事をずっと考えてるってことでしょ。
あんな無害そうな顔で。
怖いわ。
「ヴァルカン、あいつの血の臭いは確かなのか?」
『チャント拭キ取ラレテイマスガ、間違イアリマセン。近ヅクコトガデキレバソノ血ガ何ナノカワカリマス』
「よし、俺がヴァルカンを被っていくぜ」
「グレン、危ないわよ」
「ヴァルカンを起動させれば問題ねえだろ。ちょっと行ってくる」
「もー、マヤは私と一緒にいましょう」
「ぷふっ、怖いのですか師匠?」
マヤが私に馬鹿にした笑顔で聞いてきたので私はマヤの耳をつねった。
「痛いです!」
「自業自得よ」
師匠なんだから弟子にこれくらいするのは許されるはず。
多分、いやちょっと厳しかった?
マヤの耳が少し赤くなっていたので撫でた。
「おいガウリ、そろそろ向かおうぜ」
「あ、あぁそうだな」
「ガウリ様、グレン殿との御関係は?」
「俺の部隊の副官を担う予定だ」
「いつからお前の副官になったんだ?」
「まぁ似たようなものだろう。今後ともよろしく頼む」
「俺もよろしくお願いします」
グレンが握手を求めると、目つきが鋭くなるがすぐに元の目に戻る。
とんだ狸だわ。
「よろしくお願いいたします。といっても私は門番勤務ですので、お会いする機会はあまりありませんが」
「そんなことないと思いますよ。それでは失礼致します」
ガウリ様とグレンが馬車に戻ってくるが、ヴァルカンが何か言ったのか険しい顔をしている。
馬車が動きだして城に向かいだすが、グレンはずっと門番の人のことを見ていた。
「はぁ、マジかよ」
「その感じだと黒なのね?」
「ん?何の話だ?」
「あぁ、ガウリは聞いてないもんな。あの門番、ヴァルカンの話だと何十人ってレベルの人の血を浴びてるらしい」
「なんだと!?」
何十人って・・・立派な殺人鬼じゃないの。
しかもそれが私にも向けられてる。
思わず身震いした。
予想よりも最悪な相手で驚いたけど、ヴァルカンとマヤの情報無しじゃそこまでたどり着けなかった。
「あの門番からそんな気配を感じなかったが、人は見かけによらないということか。それにしても進化した魔装の解析能力はとんでもないな」
「そりゃ同感だ。城に着き次第国内で起きてる事件の資料見に行くぞ」
「俺に命令するな。だがその意見には賛成だ」
グレンは私が狙われてるからこれだけ必死になってくれてるのよね。
それは嬉しいけど少し申し訳ないわ。
「悪いがルルはマヤとオリバーに遠征の報告を頼む」
「わかったわ。ありがとうグレン」
「あ、そうだルル。屋敷に戻ったら、これを親父に渡してくれ」
「これ?」
グレンから渡された紙は、見たことない文字が書かれている。
辛うじてプラスの字だけは読めるけど、これは一体なんなの?
「母さんが聖女ゴールドマリーと対峙したときにもらったものらしい」
「ゴールドマリーに!?」
「去り際に渡されたらしい。あいつの本性がわかる手がかりかもしれないって母さんが言ってた。父さんなら何か知ってるかもしれないそうだ」
マシバ様なら知ってるかもしれないことって一体何なのかしら?
ゴールドマリーとマシバ様に接点があるようには見えなかったけど。
「わかったわ」
「本当はあの門番を問い詰めたいところだが、証拠がねぇかんな」
「それを今から探すのだろう。まったく、資料をまとめないといけないのに飛んだ問題を増やしやがって。奴は絶対に捕まえる」
「証拠がないのに逮捕でもしたら、彼の犯行の証拠を完全に処理されてた場合困るものね」
「あぁ、魔導師団の汚点になりかねん。あの場で衝動に任せて確保しなかったのは正解だぞグレン」
「狙われてるのはルルだからな。正直殴ってでも聞き出したいところだ」
「しかし奴の監視もほしいところだな」
「あぁ、だったら俺の影。グン兄に任せるわ」
グンジョーが監視につくならひとまずは安心ね。
「グンジョーも第三師団に入団してくれると助かるんだが・・・」
「あぁ、そりゃ親父に聞いてみないとわかんねぇわ。ルル、それも聞いといてくれ」
「私になんでも任せないでよ。でもわかったわ」
私もゴールドマリーについては気になるところだし。
落ち着いたらリリノアール陛下の安否も調べたいわ。
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