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 この話をこの場でしていいのかと話を止めようと思ったが、それは杞憂だとマリアが教えてくれる。

「あぁ大丈夫ですわよルル。サラ様がラフィール師団長の奥方であるように、ルカ様とヨハネ様も師団長の婚約者様ですから」

「私は第五師団団長のアニウーリ・フォン・マーキュリアの婚約者です」

「わたくしも第六師団団長であるセラフィム・フォン・ジュピティエールの婚約者でございます」

「え、嘘!?」

「因みに既成事実もありますから、婚約破棄されるということもありませんわ」

 二人ともお腹をさすっている。
 じゃあお仕置きとか身体に負担のあることしようとするなよと心の中で思ったがいうのは止した。
 余計に油を注ぐ気がしたから。

「ごめんなさいね口を挟みまして。続けてくださいましマーラさん」

「あ、はい。てっきりルルシア様にはもう話が言っているのかと思ってました」

「ただの無知でした。ごめんなさい」

 アハト様にも無知は罪と言われたわね。
 何故アハト様が陛下を裏切るような行動をとったかもいずれ調べないといけないわね。
 まぁ今はそれよりもこちらよね。

「では話を戻しますが、ボ・・私は宰相が神国の人間が手引きしているのを一度見ています」

「つまりナンチョウが関係してくることは漏れなく神国が関係してくるってわけですの?」

「いえ、必ずしもそうとは限りません。婚約破棄を受ける数日前の話ですが、神国の密偵と思われる方がナンチョウ人民国最高指導者ジョン・イルウーンにより殺害されました」

 ジョン・イルウーンって私も帝国で何度か見たことあるくらい足が軽いわよね。
 彼の実力までは見ることは叶わなかったけど、ソードグリズリーを単独で相手にできる剣士と聞いたことがあるわ。

「ジョン様はそのまま神国に進軍しようとしたそうですが、それを宰相が止めになりました」

「なるほど、宰相が神国との仲を取り持ったというところですかね?」

「はい。そして私は宰相の息子と婚約関係にありました」

「え?」

 みんな驚いている。
 他の有象無象ならともかく、宰相の息子がマザーコアの人間を手放したのでは意味が変わってくるわ。
 何故なら婚約破棄騒動が余りにも短慮過ぎる故に、実は裏があるという可能性があるってことよね。

「一人だけ国外追放にした理由が気になります。もし人民国が噂通りの国ならば、女性だけを国外追放するなんて考えられませんよね」

「ルルシア様そうだとしてもマザーコアの人間を一時的とは言え解放するなんてありえないわ。本当にマザーコアの人間が国を豊かにするとしたら、国の軍事に大いに関わることです。糧が少ないってことですからね」

「まるで攻めてほしいって言ってそうな感じですわね」

 サラさんと私はマリアの方を見た。
 それだ。

「マリア様の言う通り攻めさせるのが目的の可能性が高いですね。でも国に耐えうる力が残ってるのかしら?」

「私が知る限り、ジョン様以外の戦力は対して強くはないと思います」

「伏兵がいるとしたら神国ですね」

 神国の戦力がどの程度かわからないけど、王国軍が全戦力を出せば落とせるように見える。
 というか落ちないイメージが湧かない。
 だから懸念されるケースで一つ不安点がある。

「もしこれも囮だとしたら・・・」

「囮ですの?」

「私達は帝国の剣婦であるアースに出し抜かれて、結果的に最悪の形で対峙したのはさっき話したよね?もしこれが同じだとしたら?」

「仮にもナンチョウ人民国は大国・・・戦力はある程度投入しないといけず、国の護りは手薄になる!?」

 ここに来るまでに外胴の様子も見てたけど、師団員が私が出国する前より少なく見える。
 最低限の護衛を残したような警備態勢。
 もしかしたらもう戦力を投じているかもしれない。

「手薄になったところに備えていた軍を投じれば、確かに国は落ちるかもしれないけど王国が手に入るわね」

「ワタクシなら落ちる国の重要物資は一度別の場所に避難させますわね」

「でも私達の考えはオリバー様も気づかれるのでは?」

 確かにサラ様の言うとおりオリバー様は聡い方だものね。
 戦力を投じたフリをしてこちらを誘い出すという方法もあるし、確信を持って攻め入っているのかもしれない。

「あ、あのいいですか?」

「どうしたのかしらマーラさん?」

「私が言うのもなんですけど、宰相様がそこまで計算していたとしても国の性質上軍が動くかはわかりません」

「確かに、単純に考えすぎで愚かなだけとも取れますね。しかし可能性を考えたら放置をしておける問題でもありません」

「そうですよね。ごめんなさい」

 これは深読みし過ぎかもしれない。
 でも深読みし過ぎて足を掬われると言うことがないなら損はないわよね。
 それよりも気になるのがマーティンね。
 この話をしてて表情が一切変わらない。
 この話を軍が把握してる?
 保護したのがオリバー殿下というなら、その話も納得できるけど。

「それにしても有意義なお茶会になりましたね。アニウーリ様にもこの事は伝えておきます」

「セラフィム様にもです」

「私はラフィールと今の会話を共有しておりますので、共和国在中の元帥にもこの話は耳に入っている事でしょう」

 その瞬間、マーティンの顔色が変わる。
 やっぱり彼なんか怪しいわ。
 解散する感じになってるけど、彼をマーラさんの護衛にしておくのはまずいと感じた。
 考え過ぎかもしれないけど、杞憂だったらそれでいいわ。

「ねぇマリア、私もっとマーラさんとお話ししたいわ」

「え、ルル?」

 マリアには目で訴える。
 小言を聴かれてもまずい気がするし。

「わかったわ。マーラさん今日は泊まって行きなさい」

「マリア嬢!?ですが」

「私はオリバー様の寵愛を受けているのよ?意見する気?」

「いえ、そのような事は」

 やはり止めに来た。
 黒かどうかは判断するには早いけど、少なくとも警戒だけはするに越した事はないわね。
 と言うかマリアはオリバー様を変態と罵るのによく寵愛なんて言えたものだわ。
 腕を見ると鳥肌も立ってるし
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