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爆発に巻き込まれたルルシア、アハト、トバルだったが、三人とも無事だった。
「いっつ・・・」
「ルル、生きてる?」
「大丈夫ではないわ。足が折れたわねこれ。最悪!治癒魔法が使えないから追いかけられない」
「命が無事ならいいよ。俺は離れてたからそんなに外傷はないけど・・・トバルまだやる気?」
「当然ですよ殿下」
「洗脳や彼女に弱みを握られていたわけではないってことだね。最終勧告だよ、矛を収めれば悪いようにはしない」
しかしその言葉に、トバルは頷くことはなく、ルルシアの落とした剣を持ち上げた。
「私の剣・・・」
「お断りします」
「そうか。残念だよ」
幼い時からアハトとトバルは剣を交わしていたが、本気で闘ったことはなかった。
アハトは剣術を使わないし、トバルは潜入を疑われない為に実力を隠した。
そしてルルシアの剣は、アハトとシリィがルルシアの11歳の誕生日に渡した剣であり、硬質は皇族であるアハトの剣よりも硬かった。
そして死ぬ覚悟も決めたトバルの決意は、さっきまでの不安定な精神の時とは違い全力だった。
これが本当に初めての本気の剣のぶつかり合いだった。
「殿下。いやアハトォオ!」
「トバル、君とはこんな形で本気の剣を交える事にはなりたくなかったよ」
剣と剣の闘いだが、二人の剣は余りぶつかり合わず、二人とも剣が空を切るいわば当たれば終わる短期決戦の闘いを繰り広げる。
剣をガードには使わずただただ適切に急所を狙う様な殺し合いの剣。
「迷わず俺の首を狙うんだ。吹っ切れてるみたいだね」
「アハトは甘いな。俺の胸を狙って首を斬り落とそうとはしないんだな」
「それだけ君の剣がぬるいって事だよ!」
余りの剣圧に空気がビリビリと揺れていて、足を折って座り込んでるルルシアにはそれがとてつもない闘いに見えた。
アハトの皇族の剣術はルルシアには理解できないもので、剣がまるで見えない速度を誇っている。
そんな剣を避けてるトバルもまた、実力を隠していたことがルルシアにも伝わる。
剣速こそ遅いものの、その技量はレインにも劣らないほどで帝国一を名乗っても不思議のないくらいの実力を兼ね備えていた。
「すごいわ・・・」
思わず感嘆が漏れるほど二人の剣はルルシアを魅了するものだった。
しかし闘いとは唐突に終わりを告げる事もある。
「くっ、やはっ、りっ、速度が見えないだけで不利は否めないか」
トバルには何度も剣が斬りつけられて、腕から腹から傷がどんどん増えていった。
しかしそれでも致命傷を避けるのは彼の手腕と言って刺し使えないだろう。
「加減する余裕もないから仕方ないよ」
アハトはトバルとの思い出をフラッシュバックで思い出している。
初めて彼と出会った3歳から今までフォッカーと共に支えてくれていた騎士。
彼の実兄であるシュナイダーよりも兄の様に慕っていた。
だからこそのトバルの裏切りに、誰よりもアハトが哀しみを覚えていた。
「だからこそこれで終わりにするよ」
「貴方にできるのか?愛に飢えた皇子」
「俺には貴方がいなくても、愛してくれる友が出来たからね。行くよ」
その瞬間アハトはその場から消える。
トバルもそれくらいはしてくるだろうことを読んで剣が来るであろう場所に剣を置いた。
アハトとトバルの剣が交差したのだが、アハトのパワーにトバルは力負けして剣を弾いた。
トバルは余りに拮抗しなかったため、剣で受けたことを忘れてしまうほどだった。
それゆえ反応が遅れてしまった。
「ごぼっ、え?なっ、何が起きて・・・血!?」
「胸を貫いた。俺の勝ちだよトバル。楽しかった君との思い出は、俺の胸の中で生き続ける」
トバルは身体を支える力が無くなり、胸を抑えながら倒れ込む。
そして爆発で倒れ込んでいたルルシアに手を貸した。
「ルル大丈夫?」
「アハトこそ、これだけ凄い戦いをして、身体に普段はないの?」
「大丈夫、問題なーーー」
「あぁぁハトォ!」
トバルが最後の力を振り絞り、剣を振りかざしてきた。
二人は咄嗟のことで呆気にとられたが、すぐにアハトは我に帰る。
咄嗟にアハトは剣を弾いて今度こそ首に剣を突き刺し息の根を止めた。
トバルは笑いながら、首から血を吹き出した。
首を刺して発生した返り血がドバドバとアハトの顔面に飛び散った。
「ア、アハト・・・」
「大丈夫」
いくらアハトでも殺しに慣れてるわけではなく、ましてや付き合いの長い人間を殺すのは初めての経験。
しかし皇族である以上、そう言ったことは経験する事も少なくないので慣れる必要はあったが、親しい人間を殺すとなるとどうしても慣れるには時間がかかることだった。
「感触は残らない様に殺したかったんだけどね」
「ごめんアハト」
「いやそれよりもここの市民達の救助を行おうか。今更本体であるグイドが死亡した事で、分体がどうなるかはわからないし慌ててもしょうがないしね」
「そうね。今から追いつけるわけでもないし」
「肩、貸すよ?」
「いえ、どこかから松葉杖持ってきて貸してくれる?」
魔法が使えなくなってるルルシア達だったので、自分達には自分達の出来ることを行おうと奮闘した。
「いっつ・・・」
「ルル、生きてる?」
「大丈夫ではないわ。足が折れたわねこれ。最悪!治癒魔法が使えないから追いかけられない」
「命が無事ならいいよ。俺は離れてたからそんなに外傷はないけど・・・トバルまだやる気?」
「当然ですよ殿下」
「洗脳や彼女に弱みを握られていたわけではないってことだね。最終勧告だよ、矛を収めれば悪いようにはしない」
しかしその言葉に、トバルは頷くことはなく、ルルシアの落とした剣を持ち上げた。
「私の剣・・・」
「お断りします」
「そうか。残念だよ」
幼い時からアハトとトバルは剣を交わしていたが、本気で闘ったことはなかった。
アハトは剣術を使わないし、トバルは潜入を疑われない為に実力を隠した。
そしてルルシアの剣は、アハトとシリィがルルシアの11歳の誕生日に渡した剣であり、硬質は皇族であるアハトの剣よりも硬かった。
そして死ぬ覚悟も決めたトバルの決意は、さっきまでの不安定な精神の時とは違い全力だった。
これが本当に初めての本気の剣のぶつかり合いだった。
「殿下。いやアハトォオ!」
「トバル、君とはこんな形で本気の剣を交える事にはなりたくなかったよ」
剣と剣の闘いだが、二人の剣は余りぶつかり合わず、二人とも剣が空を切るいわば当たれば終わる短期決戦の闘いを繰り広げる。
剣をガードには使わずただただ適切に急所を狙う様な殺し合いの剣。
「迷わず俺の首を狙うんだ。吹っ切れてるみたいだね」
「アハトは甘いな。俺の胸を狙って首を斬り落とそうとはしないんだな」
「それだけ君の剣がぬるいって事だよ!」
余りの剣圧に空気がビリビリと揺れていて、足を折って座り込んでるルルシアにはそれがとてつもない闘いに見えた。
アハトの皇族の剣術はルルシアには理解できないもので、剣がまるで見えない速度を誇っている。
そんな剣を避けてるトバルもまた、実力を隠していたことがルルシアにも伝わる。
剣速こそ遅いものの、その技量はレインにも劣らないほどで帝国一を名乗っても不思議のないくらいの実力を兼ね備えていた。
「すごいわ・・・」
思わず感嘆が漏れるほど二人の剣はルルシアを魅了するものだった。
しかし闘いとは唐突に終わりを告げる事もある。
「くっ、やはっ、りっ、速度が見えないだけで不利は否めないか」
トバルには何度も剣が斬りつけられて、腕から腹から傷がどんどん増えていった。
しかしそれでも致命傷を避けるのは彼の手腕と言って刺し使えないだろう。
「加減する余裕もないから仕方ないよ」
アハトはトバルとの思い出をフラッシュバックで思い出している。
初めて彼と出会った3歳から今までフォッカーと共に支えてくれていた騎士。
彼の実兄であるシュナイダーよりも兄の様に慕っていた。
だからこそのトバルの裏切りに、誰よりもアハトが哀しみを覚えていた。
「だからこそこれで終わりにするよ」
「貴方にできるのか?愛に飢えた皇子」
「俺には貴方がいなくても、愛してくれる友が出来たからね。行くよ」
その瞬間アハトはその場から消える。
トバルもそれくらいはしてくるだろうことを読んで剣が来るであろう場所に剣を置いた。
アハトとトバルの剣が交差したのだが、アハトのパワーにトバルは力負けして剣を弾いた。
トバルは余りに拮抗しなかったため、剣で受けたことを忘れてしまうほどだった。
それゆえ反応が遅れてしまった。
「ごぼっ、え?なっ、何が起きて・・・血!?」
「胸を貫いた。俺の勝ちだよトバル。楽しかった君との思い出は、俺の胸の中で生き続ける」
トバルは身体を支える力が無くなり、胸を抑えながら倒れ込む。
そして爆発で倒れ込んでいたルルシアに手を貸した。
「ルル大丈夫?」
「アハトこそ、これだけ凄い戦いをして、身体に普段はないの?」
「大丈夫、問題なーーー」
「あぁぁハトォ!」
トバルが最後の力を振り絞り、剣を振りかざしてきた。
二人は咄嗟のことで呆気にとられたが、すぐにアハトは我に帰る。
咄嗟にアハトは剣を弾いて今度こそ首に剣を突き刺し息の根を止めた。
トバルは笑いながら、首から血を吹き出した。
首を刺して発生した返り血がドバドバとアハトの顔面に飛び散った。
「ア、アハト・・・」
「大丈夫」
いくらアハトでも殺しに慣れてるわけではなく、ましてや付き合いの長い人間を殺すのは初めての経験。
しかし皇族である以上、そう言ったことは経験する事も少なくないので慣れる必要はあったが、親しい人間を殺すとなるとどうしても慣れるには時間がかかることだった。
「感触は残らない様に殺したかったんだけどね」
「ごめんアハト」
「いやそれよりもここの市民達の救助を行おうか。今更本体であるグイドが死亡した事で、分体がどうなるかはわからないし慌ててもしょうがないしね」
「そうね。今から追いつけるわけでもないし」
「肩、貸すよ?」
「いえ、どこかから松葉杖持ってきて貸してくれる?」
魔法が使えなくなってるルルシア達だったので、自分達には自分達の出来ることを行おうと奮闘した。
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