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 フランチェスカは強力だった。
 カインの燃えた剣で斬られても身体が元に戻る。
 それは蒸発して大気に溢れた水を再び吸収していたからだった。

「あはっ!これが、この程度が聖騎士!アハハハハ!」

「くっそ!」

「カインのその炎で傷を与えられないんじゃ、ワイらがいくら摩擦で剣に熱を溜めたところで意味ないやないか」

「諦めるのはまだ早いですぞ!」

 確かにフランチェスカに剣でダメージを与えることはできてはいなかったが、反撃もしてはいなかった。
 物理攻撃が効かない、剣術で魂を削ることもできない。
 有効手段が無いように見える闘いだったが、まだ切り札が残っていた。

「レイン、あとどんくらい剣術出す体力が残ってる?」

「あ?わからへんけど、あと1,2回くらいか」

「そうか!手伝えレイン。フォッカー時間稼ぎを頼む」

「なんやねん」

「了解しましたぞ!この老骨に付き合ってもらおう化け物!」

「帝国最強の騎士と呼ばれるフォッカー教!楽しませてもらうわ!そしてそこの君達の奥の手もね!」

 気づいていて敢えて見逃す。
 それはフランチェスカの自信であり隙でもあった。
 
「舐めおってからに!」

「落ち着けレイン。あいつのペースに乗せられるな」

 フォッカーとフランチェスカの技量は、フォッカーのが圧倒的に上。
 しかしそれは技量のみであり、技量を補って余りある魔物化という呪法を込みにすると実力差は逆転する。
 現にフランチェスカはフォッカーの身体に次々と傷をつけていくが、フォッカーはダメージを一切与えることができていない。

「戦争の功労者も冤罪にかけられ、そしてこんな小娘に追い込まれるなんて貴方は滑稽ね」

「わっはっは!それはワシも思ってることだ!だが、ワシは若いモンに託す側!そんな煽りに屈しはしない!」

「煽りではないのよ?」

 フォッカーもなんとか攻撃を流していたがそれも限界が来ていた。
 遂には腕を掴まれてしまう。

「腕を掴んだところで」

「忘れた?朕のスライムの能力は貴様を喰らうことだってできる!」

「しまっーーー」

 次にはフォッカーの左腕は飲み込まれてしまう。
 咄嗟に左腕を斬ってそのまま離脱する。

「フォッカー!」

「大丈夫ですぞロアーナ様」

「へぇ、左手だけで済ませたのね。流石に歴戦の猛者。腕を切っても声をあげないなんて」

「老骨は少し労ってほしいわい・・・」

「さて、そろそろ準備ができた頃かしら?」

 レインとカインの方をみるフランチェスカだったが、攻撃は思いもよらぬところから来た。
 フランチェスカは背中に痛みを感じる。

「朕にダメージを与える攻撃!?」

「舐めてたでしょ?私のことは眼中に無いなんて」

「ナイスだディラ!」

 分散の剣術。
 タラクサクムの剣術で、触れた物を分散させる剣術。
 魔法はもちろん、魔力により分裂の特性を持ったスライムも切り刻めるこの剣術はフランチェスカに確かなダメージを与えた。
 そしてその隙をこの二人は見逃さない。

「士魂を喰らえ!」

「学ばないわね!そんなの!」

 身体を分裂させることで回避する。
 しかしすぐ後方にカインが備えていた。
 カインの燃える剣で分裂仕切れないくらい状況にして斬り刻む。
 そしてーーー

「その程度はさっきも見せたとおりすぐに回復するわ!」

「だろうな!」

「だったら何を?」

 フランチェスカのその問はすぐにわかる。
 それはカインのテリー家の剣術にあった。

「高速移動!?」

「俺のクソみたいな家の剣術は滑走。全てを斬り刻む!」

 再生ができないほど斬り刻まれれば流石のフランチェスカも溜まらなかった。
 その場には全て蒸発して水だけが残る。
 もし復活したとしても、時間を稼ぐことができた。

「っし!今のうちに全員ロアに治療を受けるで!頼んだでロア!」

「わかった!フォッカーは特に治療をしないと」

 腕を失ったフォッカーの治療もロアーナなら可能だった。
 闘っていた四人の元に行き治療を行う。
 剣術を使ったディーラもそれなりに消耗しており、治療は時間がかかった。
 その間にフランチェスカは再生を繰り返し行い元の身体に戻ろうとしている。

「何とか全員の治療は出来たよ!」

「ふぅ、助かるぜ」

「いつもすまんなロア」

「大丈夫、こう言う時だからこそ私も頑張らないと!」

「さすがはルルお姉ちゃんの親友です!」

「ワシの腕もすまないな」

「いやいや、こんなの当たり前よ!」

 全員の治療を終えると、一斉に立ち上がり武器を構えた。

「さて、じゃあ復活しそうなこいつどうにか倒さないとな」

「ワイもロアのおかげで万全や!いくでぇ!」

「そう、迎え撃とうと言うのね。でも無理よ」

 しかし次にレインとカインがフランチェスカを見た光景は、胸を貫かれたロアーナと一緒だった。
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