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 魔力の制御はかなりうまくなった。
 でもそれだけだった。

「魔法に変換させるのってこんなに難しいのね」

「そうやろなぁ。でも自分、魔力ぶつけるだけで上位精霊くらいなら弾け飛ばせるで?」

「だったらあんたに向けて放ったらどうなるのかしら?」

「やめい!流石に弾け飛ぶことはないけど痛いんや。自分記憶戻ってから攻撃的になったなぁ」

「なによ。ちょっとしたいたずらじゃないの」

「んな洒落にならんいたずらすんな」

 洒落にならないって、ちょっと形を変えた雷を生み出そうとしただけなのに。
 金魚とか面白いかしら?
 雷の金魚を作ってみたけど、これは中々の出来ね。

「ウチよりも器用になったなぁ」

「でも魔法には昇華できないわよ?」
 
「それでも魔力コントロールはお手の物やろ」

「寧ろ雷の魔力だけでそれをできるのが規格外や」

「はっはっは!大変そうだなフルミニス!」

「イフリート・・・」
 
 へぇ、あれがイフリート。
 私でも知っている人間の中では一番ポピュラーな精霊王。
 会った精霊王の中で一番異形の姿をしている。
 角が生えてるし、上半身は裸だし。

「人間に魔法を教えるなんて物好きだなぁ!あっはっは!」

「なんや?茶化しに来たんなら叩き出すで」

「いーや!」

 イフリートはそういうと初級魔法ファイアーボールを放ってきた。
 ため息が出そうだわ。
 ライトニングアイテルを展開するほどじゃないわね。
 でもただ交わすとめんどくさいから運が良いように交わそう。

「きゃっ」

「ほぅ」

「ルルシア、そいつわざと転んだの気づくわよ」

「えー、どうせ腕試ししたいとか言うんでしょ?私は忙しいから嫌よ」

「おもしれぇな。マヤの言うとおり見に来て良かったわ」

 あー、そういやマヤがヴァルカンと一緒に会いに行くとか言ってたわね。
 試練が終わってからもう四日だし、それなりに私の情報をマヤから受け取ったってとこかしら?

「それにしても人間がもつ魔力じゃねぇな。アトミックプロミネンスならその実力の一端を見れるかね?」

 そういってイフリートはアトミックプロミネンスを三つ展開した。
 超級魔法を三つ展開はコスパが悪・・・え、嘘?

「なんで三つも魔法を使えてるの!?」

「あ?あー、そりゃお前、俺の中には二つの人格があるからよ」

「そういう病気?」

 男の子ってそういう年頃の時に俺には他の人格があるとか言っちゃうのよね。
 カインもそんなこと言ってた時期があったわね。

「ちげぇよ。俺を含めて合計三つ。人格を作ったんだよ」

「そんなことできるの?でも出来たとしてなんでそんなことを?」

「そりゃ、一つの人格につき一個の魔法を使えるからに決まってんだろ」

 え?
 と言うことは、マーティンが複数の魔法を同時に行使していたのもそういうこと?
 彼にはマーティンとトマス二つの人格があった。
 
「まぁ喰らえや」

「おいイフリート!」

「うるさいわね」

 今考え事してるんだから、ライトニングアイテルを展開して取りあえず防いどきましょう。
 魔法の行使は一人につき一つまで。
 でも二つ以上の魔法を使う事は可能。
 複合魔法だって私は見たわ。
 なにか見えてくるはず。

「おいおい。アトミックプロミネンス全部消滅したぞ」

「ウチも驚いた。ビクともしないねんな」

「あ、そうか!」

 上級魔法改エンペライオンは厳密にはレオーネを分裂させることで魔法に注げる魔力の出力を上げる魔法で仕上げた。
 これは複数の雷を発動で展開出来るホーネットを参考にした魔法。
 じゃあエンペライオンと逆のことをホーネットに施せるなら・・・

「上級魔法改。名前はえーっと・・・クインホーネット」

 おー、すごい。
 巨大な雷のハチを展開出来た。

「なんだこりゃ?」

「ウチも初めて見たで」

「うーん。まぁイフリート受けとめてみてよ」

「いくらなんでも精霊王を舐めすぎだろ!」

 イフリートは普通のシールド魔法を展開した。
 しかしシールドはパキパキとヒビが入っていった。

「なんだよこれ!?本当に上級魔法か!?」

「上級魔法はシールド魔法で防げるはずだけど、やっぱりこれは防げないわよね」

 単純な威力強化を行ったからね。
 でもこれは失敗だわ。
 威力は確かに高いけど速度が落ちてしまった。

「速度と威力が備えてないとクイーンとは言えないわね。さしずめプリンセスホーネットってとこかしら」

「何言ってんだ!?」

「あーごめんごめん。プリンセスホーネット」

 プリンセスホーネットにプリンセスホーネットをぶつけたら両方とも消失した。
 元はホーネットだから時間差攻撃をも出来そうね。

「なんだよコイツ・・・」

「ウチもこれには驚いたで。ルル、あとでその魔法の説明よろしゅうな」

「わかったわ」

「あー、くそ。負けだ負け。マヤ、お前のご主人様は強いな」

 イフリートが空に向かって叫んでいる。
 もしかして浮いてる!?

「すごいでしょー!でも私もあんなの初めて見たー!ルルシア様~お久しぶりです」

「マヤ、どうやって跳んでるの?飛翔魔法?」

「これは初級爆炎魔法のジェットです」

 爆炎魔法で空を飛べる?
 しかも初級魔法って・・・

「私、イフリートさんの弟子になりましたー」

「え?イフリートに弟子ーーー」

「えええええええええええええ!」

 私の声をかき消してフルミニスの声が山びこのように木霊した。
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