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どうして?
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「あら?レオン、この方はどなた?」
ーーなんで顔を合わせちゃうのかなぁ……。
「あ!リゼカちゃん!久しぶりだね!俺の事覚えてる?レオンの同期でダチの……」
ーーマイクさんでしょ?何度かお会いしましたもんね。
「え?リゼカさん?じゃあこの方がレオンがお付き合いしているという?」
ーーサーラさんはわたしが初見でしたか。わたしは何度もお見かけしてるんですけどね。
「アレ?サーラはリゼカちゃんとはお初?サーラならとっくに知り合ってるのかと思ってた」
ーーマイクさん、それはちょっと繊細な事情でなかなか機会がなかったんですよ。弟のジョージなら嫌でもとっくにお知り合いなんですけどね。
「だって~レオンがちっとも会わせてくれないんだもの」
ーーそれはきっと、複雑な男ゴコロなんですよサーラさん。
「はじめましてリゼカさん。ご存知ないとは思いますが、私はレオンの幼馴染でサーラ=ハリンソンといいます。どうぞよろしくね、リゼカさん」
ーーいえご存知でしたよ。レオンの大切なサーラさん。
「はじめましてサーラさん。リゼカ=リューズです。マイクさんもこんにちは。ちゃんと覚えていますよ、ご無沙汰しております」
交互に話し続けるサーラさんとマイクさんの言葉の合間に入り込むように、わたしは軽く頭を下げてそう挨拶をした。
するとレオンが二人に言う。
「なんだ?何か用か?」
そのレオンの言葉にマイクさんが返した。
「何か用かじゃねぇよ。厩舎からさっさと消えやがって。探したじゃねぇか」
「哨戒が終わって帰城したんだから別にいいだろ」
「いいだろうじゃないわよ。班長や副班長もアレ?って感じだったわよ。も~レオンってば昔っからそういう勝手なところがあるのよね~」
「勝手とはなんだよ。昼休憩に何をしようが俺の勝手だ」
「ほらそれが勝手だというの~」
「確かにひと声かけてくれれば良かったよな」
「俺はちゃんと『先に行く』と言ったぞ。聞いてなかっただけだろう」
「相手に聞こえず伝わってないならそれは言ってないのと一緒よね~」
「なんだよその屁理屈は」
「屁理屈じゃありませ~ん」
「まぁまぁお二人さん。仲が良いのはわかるけど喧嘩はやめろって。ホント二人とも気が短いんだからな~」
「お前が言うな」「ホントよぅ」
ーー…………。
仲間内の気安い会話、
何もなければ「楽しそうだな~」と聞いていられるのだろうけど今のわたしには疎外感しか感じない。
わたしはランチボックスにナフキンやらフォークやらを適当に詰め込んで片付けをした。
そしてレオンやお二人に告げる。
「わたし、そろそろ休憩時間が終わるから戻るね」
「リゼカ?どうしたんだ急に」
レオンに渡していた水筒のコップを受け取りながら答える。
「午後から急ぎの仕事があったの思い出したの。サーラさん、マイクさん、それでは失礼しますね」
「え?う、うん?またね?リゼカちゃん」
マイクさんが逃げるように立ち去ろうとするわたしを不思議そうに見ながらそう言った。
「それじゃあ!」
わたしは笑顔で三人を見て、踵を返した。
足早にその場から離れる。
早く、早く、不自然ではないくらいの早足で、この場を離れるんだ。
大丈夫かな?ちゃんと笑えていたかな?
わたしと話す時とはまた違うレオンの声。
本当に心を許している、そんな声。
それを聞いていられなくて思わず逃げて来てしまった。
中庭から建物に入って、わたしはようやく早足をやめて普通の歩幅で歩く。
結構、楽しい時間だったんだけどな。
わたしの作ったサンドイッチを美味しいって、嬉しそうに食べてくれていたんだけどな。
そんなひと時さえ、もう持たない方がいいのかな。
なんだか……辛いな……。
だけどその時、考え事をしながらとぼとぼ歩くわたしの手から、急にランチボックスと水筒が消えた。
「ーーえっ?」
空っぽになった手を見てからランチボックスの行方を視線で辿ると、そこにはわたしのランチボックスと水筒を手にしたレオンが立っていた。
「レオン?」
何故たった今別れたばかりの彼が目の前にいるのだろう。
驚いて目を瞬せるわたしにレオンは言った。
「総務の部屋まで送る」
「えっ?で、でも、サーラさんはっ?」
「サーラ?あいつはマイクと食堂に行った」
「そんな……いいの?」
「いいんだ。せっかくリゼカとメシを食ってたのに……」
レオンはそう言ってランチボックスを持っていない方の手でわたしの手を掴み、歩き出した。
わたしの手を引き一歩前を歩くレオンを見上げる。
どうしてわざわざ?
せっかく気を利かしたつもりだったのに。
わたし、やっぱり不自然だった?
サーラさんに嫌な思いをさせちゃったのかな……
ねぇレオン。手が冷たいよ。
どうして?……どうしたの……?
頭の中ではぐるぐると色んな言葉が浮かんでは消えてゆく。
でもそれらを口にする事も出来ずに、
わたしはレオンと手を繋ぎながら歩き続けた。
ーーなんで顔を合わせちゃうのかなぁ……。
「あ!リゼカちゃん!久しぶりだね!俺の事覚えてる?レオンの同期でダチの……」
ーーマイクさんでしょ?何度かお会いしましたもんね。
「え?リゼカさん?じゃあこの方がレオンがお付き合いしているという?」
ーーサーラさんはわたしが初見でしたか。わたしは何度もお見かけしてるんですけどね。
「アレ?サーラはリゼカちゃんとはお初?サーラならとっくに知り合ってるのかと思ってた」
ーーマイクさん、それはちょっと繊細な事情でなかなか機会がなかったんですよ。弟のジョージなら嫌でもとっくにお知り合いなんですけどね。
「だって~レオンがちっとも会わせてくれないんだもの」
ーーそれはきっと、複雑な男ゴコロなんですよサーラさん。
「はじめましてリゼカさん。ご存知ないとは思いますが、私はレオンの幼馴染でサーラ=ハリンソンといいます。どうぞよろしくね、リゼカさん」
ーーいえご存知でしたよ。レオンの大切なサーラさん。
「はじめましてサーラさん。リゼカ=リューズです。マイクさんもこんにちは。ちゃんと覚えていますよ、ご無沙汰しております」
交互に話し続けるサーラさんとマイクさんの言葉の合間に入り込むように、わたしは軽く頭を下げてそう挨拶をした。
するとレオンが二人に言う。
「なんだ?何か用か?」
そのレオンの言葉にマイクさんが返した。
「何か用かじゃねぇよ。厩舎からさっさと消えやがって。探したじゃねぇか」
「哨戒が終わって帰城したんだから別にいいだろ」
「いいだろうじゃないわよ。班長や副班長もアレ?って感じだったわよ。も~レオンってば昔っからそういう勝手なところがあるのよね~」
「勝手とはなんだよ。昼休憩に何をしようが俺の勝手だ」
「ほらそれが勝手だというの~」
「確かにひと声かけてくれれば良かったよな」
「俺はちゃんと『先に行く』と言ったぞ。聞いてなかっただけだろう」
「相手に聞こえず伝わってないならそれは言ってないのと一緒よね~」
「なんだよその屁理屈は」
「屁理屈じゃありませ~ん」
「まぁまぁお二人さん。仲が良いのはわかるけど喧嘩はやめろって。ホント二人とも気が短いんだからな~」
「お前が言うな」「ホントよぅ」
ーー…………。
仲間内の気安い会話、
何もなければ「楽しそうだな~」と聞いていられるのだろうけど今のわたしには疎外感しか感じない。
わたしはランチボックスにナフキンやらフォークやらを適当に詰め込んで片付けをした。
そしてレオンやお二人に告げる。
「わたし、そろそろ休憩時間が終わるから戻るね」
「リゼカ?どうしたんだ急に」
レオンに渡していた水筒のコップを受け取りながら答える。
「午後から急ぎの仕事があったの思い出したの。サーラさん、マイクさん、それでは失礼しますね」
「え?う、うん?またね?リゼカちゃん」
マイクさんが逃げるように立ち去ろうとするわたしを不思議そうに見ながらそう言った。
「それじゃあ!」
わたしは笑顔で三人を見て、踵を返した。
足早にその場から離れる。
早く、早く、不自然ではないくらいの早足で、この場を離れるんだ。
大丈夫かな?ちゃんと笑えていたかな?
わたしと話す時とはまた違うレオンの声。
本当に心を許している、そんな声。
それを聞いていられなくて思わず逃げて来てしまった。
中庭から建物に入って、わたしはようやく早足をやめて普通の歩幅で歩く。
結構、楽しい時間だったんだけどな。
わたしの作ったサンドイッチを美味しいって、嬉しそうに食べてくれていたんだけどな。
そんなひと時さえ、もう持たない方がいいのかな。
なんだか……辛いな……。
だけどその時、考え事をしながらとぼとぼ歩くわたしの手から、急にランチボックスと水筒が消えた。
「ーーえっ?」
空っぽになった手を見てからランチボックスの行方を視線で辿ると、そこにはわたしのランチボックスと水筒を手にしたレオンが立っていた。
「レオン?」
何故たった今別れたばかりの彼が目の前にいるのだろう。
驚いて目を瞬せるわたしにレオンは言った。
「総務の部屋まで送る」
「えっ?で、でも、サーラさんはっ?」
「サーラ?あいつはマイクと食堂に行った」
「そんな……いいの?」
「いいんだ。せっかくリゼカとメシを食ってたのに……」
レオンはそう言ってランチボックスを持っていない方の手でわたしの手を掴み、歩き出した。
わたしの手を引き一歩前を歩くレオンを見上げる。
どうしてわざわざ?
せっかく気を利かしたつもりだったのに。
わたし、やっぱり不自然だった?
サーラさんに嫌な思いをさせちゃったのかな……
ねぇレオン。手が冷たいよ。
どうして?……どうしたの……?
頭の中ではぐるぐると色んな言葉が浮かんでは消えてゆく。
でもそれらを口にする事も出来ずに、
わたしはレオンと手を繋ぎながら歩き続けた。
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