37 / 59
36
しおりを挟む「まぁ!リーリア様!いったいどうなさいました!?」
ユーインに抱かれ、自室に運び込まれたリーリアに、開口一番パティが発した。
それもそのはず。
横抱きにされて送ってもらうなど、本来なら乙女が大好きなシチュエーションだろうに、リーリアの身体は傍目から見ても不自然なほどガチガチに硬直し、顔は焼け焦げたように赤い。
「パティ、少しふたりにしてくれないか」
「え?で、ですが……」
いくらユーインが名誉ある職に就いている人間で、リーリアの想い人だったとしても、守るべき主人を男と部屋にふたりきりにするなんて。
パティはちらりとアーロンの方を見た。
するとアーロンが「大丈夫だ」というように自信満々な表情で首を縦に振る。
もしや夜会で素晴らしい展開があったのかもしれない。アーロンの表情からそう察したパティは、素早くお茶の用意を済ませ、退出した。
「リーリア」
「ひゃっ、ひゃい!!」
「少し話しても?」
「大丈夫です……すみませんでした……」
抱きかかえられたまま長椅子に座るリーリアは、穴でも掘ってやりたいくらいにいたたまれない表情をしている。
「時折……休憩室をあのような用途に使う貴族がいるそうです。毎回とは限りません。なのであまりお気になさらず」
「ハイ……」
思い出したのか、それとも知識不足の自分に思うところがあるのか、リーリアは再び頬を赤く染めた。
「リーリア」
名を呼ばれ、熱を持った頬を大きな手が包む。
ゆっくりと顔を向けたリーリアの唇に、啄むような口づけが、二度、三度と落とされる。
「逢いたかった……」
一見冷たさすら感じさせる美しい顔を甘くとろけさせるユーイン。
目蓋に、頬に、鼻の先、チュッチュと小鳥の鳴き声のようなキスが降る。
少しくすぐったい。顔だけじゃなく、心も。
「私も……逢いたかったです……とっても寂しくて、不安で……」
「不安?どうして」
これ以上口にしたら面倒くさい女だと嫌われるかもしれない。
誰だっていつも快活で、にこにこしている女の方がいいに決まってる。
そう、イゾルデのような。
なぜ彼女の事がこんなにも気になるのか。
ふたりの間には何もないとわかっているのに、彼女に会った後は、いつも心がじくじくと膿むようだ。
「……他の皆さまはいつでもユーイン様に会えるのに、どうして私だけ自由に会えないんだろうって……ごめんなさい、こんなわがまま」
口に出した途端、激しい後悔に襲われた。
しかしユーインの反応はというと、リーリアの予想とはまるで違ったものだった。
顔をそらし、口元を押さえ、プルプルと震えている。
「可愛い……どうしてそんな可愛い事を言うんですか、あなたは……!!」
腰を押さえられ、身体を密着させて唇を合わせる。ゆるゆると絡まる舌に、心まで解されていくようだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,163
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる