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番外編
とある王太子の運命 2
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そう強く思ってしまうくらい彼の匂いは、これまでに嗅いだどんなオメガよりもずっとルードヴィヒを惹きつけて離さなかった。
学園に入学する際、アルファとオメガは両者とも抑制剤の内服を義務付けられている。
発情期でなくとも常時フェロモンを身に纏うオメガたちは、自らの身を守るためにも効果の強い抑制剤を飲んでいるときく。ルードヴィヒ自身もオメガのフェロモンを使ったハニートラップに引っかからないようにと、身体に害のないぎりぎりの量の抑制剤を侍医から処方されていた。
それなのに、気を抜くとラットに入ってしまいそうなほど、彼の香りは魅力的だった。
おそらく、それは彼も感じていたのだろう。戸惑うように揺れる瞳と赤く染まった眦。
強めの抑制剤を飲んでいるにもかかわらず、彼の中のオメガ性は明らかにルードヴィヒに反応していた。
だからこそ、まずいと本能で悟ったのだろう。強い困惑と恐れを滲ませた彼は、ルードヴィヒから少しでも距離を取ろうと踵を返そうとした。それを慌てて引き留めようとした自分の行動は、今思い返しても最低だったと思う。
走り去ろうとする彼の腕を咄嗟に掴んでしまったのだ。
「待ってくれ!」
強く握りしめればすぐにでも折れてしまいそうな細い腕だった。
それを気遣う余裕もなく、ルードヴィヒは彼に取り縋った。
「待って、待って欲しい。名前を……、君の名前を教えてくれないだろうか」
緑の瞳が驚愕に見開かれる。光を孕んで幾重にも輝く、それは眩しい命の色だった。
そのあまりの美しさに息を飲んだときだった。
「誰かの名前を聞くときはまずは自分から名乗れって、お偉い貴族の両親に教えてもらわなかった?」
「え?」
聞いたこともないような冷たい声が、耳に刺さった。
同時にぱん、と辺りに響いた乾いた音。掴んでいない方の手で頬を叩かれたのだと気づいたのは、数秒経ってからのことだった。
じんわりと頬に叩かれた鈍い痛みが広がっていく。
けれども、どうやら平手で叩かれたらしく、それほど強い痛みではなかった。咄嗟に反応できなかったのは、生まれて初めてされた平手打ちに単純に驚いていたからだった。
「お前たち貴族に名乗る名前なんてない」
それだけを言い残して、彼は去って行った。残されたのは甘い香りと運命の番を逃した哀れなアルファだ。
遠ざかっていく小さな背中を追いかけることも出来ず、ルードヴィヒはただ彼を見つめていた。
このときは、番に拒絶されたことがひどく悲しかった。
みっともなくその場で泣いてしまいたいくらい辛かったけれど、しかし、よくよく考えれば、ルードヴィヒには彼を責める資格はなかった。むしろ、彼がとった行動は考えられる限りの最善だったのだ。
叩かれたことによって、ルードヴィヒは多少なりとも冷静さを取り戻したし、彼が発情期入る前に離れることができたためラットの症状もすぐに治まった。むしろ、あのままルードヴィヒが彼を引き留めていたとしたら、どう考えても最悪の事態にしかならなかっただろう。
そもそも、番でも家族でもないオメガにアルファが許可なく触れるなど言語道断だ。それは相手が貴族であろうと平民であろうと何も変わらない。本当に最低限の礼儀だった。
きっとオメガの彼は、見知らぬアルファに腕を掴まれてひどく恐ろしかっただろうし、気分も悪かっただろう。
だからこそ、ルードヴィヒは彼に叩かれて然るべきだったし、そのことに腹を立てるなんてあり得ない話だった。そもそも、ルードヴィヒは運命の番に怒るなんて考えもしなかったのだ。
あのとき聞けなかった彼の名前だってすぐに知ることが出来た。
珍しい薄紅の髪とオメガであることを条件にすれば簡単なことだった。
それに、彼――アデル・ヴァイツェンは有名人だったから。
入学早々、絡んで来た貴族の子弟を殴り倒した――正当防衛ということで、停学は何とか免れたらしい――平民出身のオメガ。
人目を惹く見た目と同様に、平民そのものの彼の行動はいささか貴族の中にあっては浮いてしまうもので、どうしても目立ってしまう。あの日アデル・ヴァイツェンがルードヴィヒにひどく冷たい目を向けたのも、その直前に貴族のアルファにしつこく嫌がらせをされていたからだと後から聞いて知った。
アデルの方もどうやらそう時間をおかず、自分が叩いた相手がどこの誰だったのかを知ったらしい。
アデルに声をかけられたのは、裏庭での彼との奇跡のような邂逅から三日後のことだった。
その日ルードヴィヒは最後の授業が終わり、王宮へと帰るために正門へと向かっていた。
アロイスは教師に用事で呼ばれ、ライナルトはこれから薬草園の見学に行くと言って早々に教室から出て行った。ゲオルグは騎士候補生としての職務があるらしく、一足先に王宮に戻っている。
つまり、このときルードヴィヒの周りには誰もいなかった。辺りを見渡しても正門までの渡り廊下には、生徒はもちろん教師や庭師といった職員すらいない。
「王太子殿下」
不意に呼びかけられて、足を止める。
振り向かなくても、ルードヴィヒには自分を呼んだ相手が誰なのかが分かった。聞こえた涼やかな声に喜びが湧き上がり、微かに香る彼の匂いに心臓が跳ねた。
「ヴァイツェン」
何か用かな、と微笑んだ自分の笑顔が引き攣っていなかったかどうかは自信がなかった。
驚かさないように、出来る限り威圧感を与えないように、とゆっくりと踵を返し、ルードヴィヒは自分を呼び止めた相手――アデルを見下ろした。
いまだ成長途中である自分よりも頭半分ほど小さな彼は、その大きな瞳をさらに見開いてルードヴィヒを見ていた。可愛らしい顔は緊張のためか、少しだけ青褪めている。
「あの、俺、あなたが王太子殿下だって知らなくて、それで……、いや知らなかったからってなにも聞かずに叩くのはさすがに失礼だったと思って……」
おそらくアデルは、「王太子」を叩いてしまったことが不敬罪にでも問われるのでは、と危惧しているのだろう。すみませんでした、と頭を下げた彼にはあの日のような覇気がなかった。
あの、目も眩むような強い視線とはっきりとした意思。
被虐趣味はないはずなのに、あの日の彼の方がずっと魅力的だと思ってしまうのは、アデルの本質にどうしても惹かれてしまうからなのだろうか。
「ああ、こちらこそ名乗りもせず腕を掴んでしまって申し訳なかった。許可なく身体に触れるなんて、無作法だったのは僕の方だからあまり気にしないでくれ」
「でも……」
「今もあのときも、僕とヴァイツェン以外に人はいない。僕が気にしてないんだから、あまり事を荒立てない方がいい」
そうでなければ、いくらルードヴィヒ本人が許したとしても周りがうるさいのだ。
どうか内密に、と唇の前で人差し指を立てれば、何故だかヴァイツェンが何とも言えない顔をした。これは兄の侍従が幼いルードヴィヒによくやってくれた仕草で、ふたりだけの秘密というポーズだったのだけれど。――アルファの自分がやっても気持ち悪いだけだったのかもしれない。そう思って、そっと手を下ろす。
「この件はもう話は終わりだ。あまり蒸し返すと口うるさいお目付け役に嗅ぎつけられる」
そう言ってルードヴィヒは脳裏に幼馴染のひとりを思い浮かべる。オメガ嫌いを公言して憚らない彼に知られてしまえば、それこそ面倒くさいことになりそうだった。
「俺に怒っていらっしゃらないのですか」
「怒る? 僕がヴァイツェンに? 今回のことは僕が悪いのに?」
不思議なことを言うな、と思いアデルを見れば、アデルはアデルで不思議そうにルードヴィヒを見ていた。
「だって――」
このとき、アデルは確かに何かを言いかけたようだった。
しかし、結局最後までは聞けなかった。渡り廊下の角の奥から、人の気配がしたからだ。
まだ姿は見えなかったが、声は聞こえて来た。何やら楽しげ会話する複数の生徒が、笑いあいながらこちらに歩いてきているらしい。
年若い生徒ばかりのこの学園では、それはよく見る光景でしかなかった。だから、ルードヴィヒは気にも留めなかったのだ。
けれど、アデルにとってはそうではなかったらしい。
びくりと肩を揺らしたかと思うと、声のする方を振り返った。そして慌てたように唇を引き結んでルードヴィヒに対して頭を下げる。何故だか、大切そうに握りしめられた数冊の教科書がいやに目に入った。
「とにかく、すみませんでした!」
「え!? あ、ヴァイツェン!」
今度は引き留める間もなかった。声がする方とは反対側に逃げるように走っていく姿をルードヴィヒはただぼんやりと見送るしか出来なかったのだ。
学園に入学する際、アルファとオメガは両者とも抑制剤の内服を義務付けられている。
発情期でなくとも常時フェロモンを身に纏うオメガたちは、自らの身を守るためにも効果の強い抑制剤を飲んでいるときく。ルードヴィヒ自身もオメガのフェロモンを使ったハニートラップに引っかからないようにと、身体に害のないぎりぎりの量の抑制剤を侍医から処方されていた。
それなのに、気を抜くとラットに入ってしまいそうなほど、彼の香りは魅力的だった。
おそらく、それは彼も感じていたのだろう。戸惑うように揺れる瞳と赤く染まった眦。
強めの抑制剤を飲んでいるにもかかわらず、彼の中のオメガ性は明らかにルードヴィヒに反応していた。
だからこそ、まずいと本能で悟ったのだろう。強い困惑と恐れを滲ませた彼は、ルードヴィヒから少しでも距離を取ろうと踵を返そうとした。それを慌てて引き留めようとした自分の行動は、今思い返しても最低だったと思う。
走り去ろうとする彼の腕を咄嗟に掴んでしまったのだ。
「待ってくれ!」
強く握りしめればすぐにでも折れてしまいそうな細い腕だった。
それを気遣う余裕もなく、ルードヴィヒは彼に取り縋った。
「待って、待って欲しい。名前を……、君の名前を教えてくれないだろうか」
緑の瞳が驚愕に見開かれる。光を孕んで幾重にも輝く、それは眩しい命の色だった。
そのあまりの美しさに息を飲んだときだった。
「誰かの名前を聞くときはまずは自分から名乗れって、お偉い貴族の両親に教えてもらわなかった?」
「え?」
聞いたこともないような冷たい声が、耳に刺さった。
同時にぱん、と辺りに響いた乾いた音。掴んでいない方の手で頬を叩かれたのだと気づいたのは、数秒経ってからのことだった。
じんわりと頬に叩かれた鈍い痛みが広がっていく。
けれども、どうやら平手で叩かれたらしく、それほど強い痛みではなかった。咄嗟に反応できなかったのは、生まれて初めてされた平手打ちに単純に驚いていたからだった。
「お前たち貴族に名乗る名前なんてない」
それだけを言い残して、彼は去って行った。残されたのは甘い香りと運命の番を逃した哀れなアルファだ。
遠ざかっていく小さな背中を追いかけることも出来ず、ルードヴィヒはただ彼を見つめていた。
このときは、番に拒絶されたことがひどく悲しかった。
みっともなくその場で泣いてしまいたいくらい辛かったけれど、しかし、よくよく考えれば、ルードヴィヒには彼を責める資格はなかった。むしろ、彼がとった行動は考えられる限りの最善だったのだ。
叩かれたことによって、ルードヴィヒは多少なりとも冷静さを取り戻したし、彼が発情期入る前に離れることができたためラットの症状もすぐに治まった。むしろ、あのままルードヴィヒが彼を引き留めていたとしたら、どう考えても最悪の事態にしかならなかっただろう。
そもそも、番でも家族でもないオメガにアルファが許可なく触れるなど言語道断だ。それは相手が貴族であろうと平民であろうと何も変わらない。本当に最低限の礼儀だった。
きっとオメガの彼は、見知らぬアルファに腕を掴まれてひどく恐ろしかっただろうし、気分も悪かっただろう。
だからこそ、ルードヴィヒは彼に叩かれて然るべきだったし、そのことに腹を立てるなんてあり得ない話だった。そもそも、ルードヴィヒは運命の番に怒るなんて考えもしなかったのだ。
あのとき聞けなかった彼の名前だってすぐに知ることが出来た。
珍しい薄紅の髪とオメガであることを条件にすれば簡単なことだった。
それに、彼――アデル・ヴァイツェンは有名人だったから。
入学早々、絡んで来た貴族の子弟を殴り倒した――正当防衛ということで、停学は何とか免れたらしい――平民出身のオメガ。
人目を惹く見た目と同様に、平民そのものの彼の行動はいささか貴族の中にあっては浮いてしまうもので、どうしても目立ってしまう。あの日アデル・ヴァイツェンがルードヴィヒにひどく冷たい目を向けたのも、その直前に貴族のアルファにしつこく嫌がらせをされていたからだと後から聞いて知った。
アデルの方もどうやらそう時間をおかず、自分が叩いた相手がどこの誰だったのかを知ったらしい。
アデルに声をかけられたのは、裏庭での彼との奇跡のような邂逅から三日後のことだった。
その日ルードヴィヒは最後の授業が終わり、王宮へと帰るために正門へと向かっていた。
アロイスは教師に用事で呼ばれ、ライナルトはこれから薬草園の見学に行くと言って早々に教室から出て行った。ゲオルグは騎士候補生としての職務があるらしく、一足先に王宮に戻っている。
つまり、このときルードヴィヒの周りには誰もいなかった。辺りを見渡しても正門までの渡り廊下には、生徒はもちろん教師や庭師といった職員すらいない。
「王太子殿下」
不意に呼びかけられて、足を止める。
振り向かなくても、ルードヴィヒには自分を呼んだ相手が誰なのかが分かった。聞こえた涼やかな声に喜びが湧き上がり、微かに香る彼の匂いに心臓が跳ねた。
「ヴァイツェン」
何か用かな、と微笑んだ自分の笑顔が引き攣っていなかったかどうかは自信がなかった。
驚かさないように、出来る限り威圧感を与えないように、とゆっくりと踵を返し、ルードヴィヒは自分を呼び止めた相手――アデルを見下ろした。
いまだ成長途中である自分よりも頭半分ほど小さな彼は、その大きな瞳をさらに見開いてルードヴィヒを見ていた。可愛らしい顔は緊張のためか、少しだけ青褪めている。
「あの、俺、あなたが王太子殿下だって知らなくて、それで……、いや知らなかったからってなにも聞かずに叩くのはさすがに失礼だったと思って……」
おそらくアデルは、「王太子」を叩いてしまったことが不敬罪にでも問われるのでは、と危惧しているのだろう。すみませんでした、と頭を下げた彼にはあの日のような覇気がなかった。
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「でも……」
「今もあのときも、僕とヴァイツェン以外に人はいない。僕が気にしてないんだから、あまり事を荒立てない方がいい」
そうでなければ、いくらルードヴィヒ本人が許したとしても周りがうるさいのだ。
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「この件はもう話は終わりだ。あまり蒸し返すと口うるさいお目付け役に嗅ぎつけられる」
そう言ってルードヴィヒは脳裏に幼馴染のひとりを思い浮かべる。オメガ嫌いを公言して憚らない彼に知られてしまえば、それこそ面倒くさいことになりそうだった。
「俺に怒っていらっしゃらないのですか」
「怒る? 僕がヴァイツェンに? 今回のことは僕が悪いのに?」
不思議なことを言うな、と思いアデルを見れば、アデルはアデルで不思議そうにルードヴィヒを見ていた。
「だって――」
このとき、アデルは確かに何かを言いかけたようだった。
しかし、結局最後までは聞けなかった。渡り廊下の角の奥から、人の気配がしたからだ。
まだ姿は見えなかったが、声は聞こえて来た。何やら楽しげ会話する複数の生徒が、笑いあいながらこちらに歩いてきているらしい。
年若い生徒ばかりのこの学園では、それはよく見る光景でしかなかった。だから、ルードヴィヒは気にも留めなかったのだ。
けれど、アデルにとってはそうではなかったらしい。
びくりと肩を揺らしたかと思うと、声のする方を振り返った。そして慌てたように唇を引き結んでルードヴィヒに対して頭を下げる。何故だか、大切そうに握りしめられた数冊の教科書がいやに目に入った。
「とにかく、すみませんでした!」
「え!? あ、ヴァイツェン!」
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