魔女っ子令嬢はこの度カボチャと契約恋愛をする事になりました!〜お兄様とイケメンに溺愛されて大変です〜

蓮恭

文字の大きさ
3 / 31

3. 『責任は取らないマーサの魔法と魔術道具の店』


 サロンに客であるとその従者を通し、フランクはマリーの方をチラチラと窺い見ながら紹介を始めた。

「リュウ・シエン殿、これが僕の妹でマリーです。あ……、ご存知でしたよね……」
「確かに先程聞き知った」

 恐る恐るといった感じて話すフランクの言葉に対して、カボチャは愛想もクソもない声音で短く答えた。

「そ、それじゃあマリー、こちらがリュウ・シエン殿。異国からこちらに数々の商談で来られていて、ロンハオ商会という大きな貿易会社の会長でいらっしゃる。それで……」
「俺の名はリュウ・シエン。伯爵から、俺の呪いを解くことができる魔女の妹がいると聞いてこちらへ参った」

 やはりリュウ・シエンはフランクの言葉に被せ気味に話す。
 マリーはどうしてこのような事になったのかと、フランクとリュウ・シエンに聞きたいことは山ほどあった。

 何故自分が魔女だということになっているのか。
 何故このカボチャはこんなに感じが悪いのか。
 一体フランクは何をやらかしたのか。

「えぇーっと……ですね、まずどのような経緯でここへ来ることになったのでしょう?」

 当たり障りのない言い方で、あまり説明の上手くないフランクではなく、端的に話せそうなリュウ・シエンに尋ねた。

「俺と伯爵とは元々大切な約束のために会う約束をしていた。そこで俺の滞在する宿へ伯爵に来てもらったまではいいが、そこで。それによって今俺はこのような事態に陥っているというわけだ。そして伯爵が『自分の妹は魔女で、呪いには詳しいから屋敷に招待します』と言うものだから早速こちらへ伺ったということだ」

 やはりマリーの考えは正しかったようで、このカボチャ姿のリュウ・シエンはとても分かりやすく話をまとめた。
 フランクではこうはいかないであろう。

「それで、取引の内容は? トラブルというのは一体? そこが大切なのでは?」

 マリーはリュウ・シエンが敢えて言葉を濁した部分を指摘した。

「それは……」

 先程までの勢いとは打って変わって、リュウ・シエンはどうしてかフランクの方をチラチラと見ながら口籠った。

「……あのー、マリー……実はトラブルというのは僕のせいなんだ」
「この感じだと、きっとそうなんでしょうね。一体何があったの?」

 瓶底眼鏡をずり上げながら、フランクは訥々とつとつと語り始めた。

「実は……、リュウ・シエン殿との話が終わって部屋から去ろうとした時に、僕が持っていたマリーへのお土産がカバンから転げ落ちたんだ。そしてそれがリュウ・シエン殿の近くで割れてしまって……。そうしたらこのようなことに……」

 つまり、マリーに渡すはずの土産がそのような危険な物であった為に、とばっちりでリュウ・シエンがカボチャ姿になったのだと言う。

 カボチャ姿のリュウ・シエンは黙ってフランクの話を聞いていた。

「お兄様、何故そのような得体の知れないものをお土産にしようと思ったのかは大体想像がつくので良いとして……」
「マリーが喜ぶと思ったんだ……」
「まあ、そうね。私は多分すごく喜んだと思うわ。でも、そんな物一体どこで手に入れたの?」

 マリーは普通の令嬢とは少しを持っていたから、そのせいでフランクが土産に選んだ物は怪しい代物だったのだろう。

 しかしそれを大事な商談の時に転げ落として、更に商談相手にその不幸が降りかかるところなどはまさにこのフランクの成せる技の言える。

「これを買ったのはあの店だよ。マリーがお気に入りの……、あのおばあさんのお店」
「まさか、『』?」

 マリーが思い当たる店名を言えば、フランクは大きく頷いて両手をパチンと合わせて打った。

「そう! その『責任は取らないマーサの魔法と魔術道具の店』だ!」

 フランクが大きな声で肯定したので、マリーは思わずため息を吐いて額を押さえてから首を左右に軽く振った。

「……なぜ、よりにもよって……」

 老婆が商いをしているその店は確かにマリーの贔屓にしている店ではあったが、土産物を買うような店ではない。
 店内には怪しげな黒魔術の品や、訳の分からない呪術の道具が所狭しと並べられており、一つ間違えれば命すら危うい代物も平然と並べられているのだ。

「大体分かってきたわ。とにかく、そのお土産がどんな物だったのか調べないと……。『責任は取らないマーサの魔法と魔術道具の店』に行って聞くしかないわね。カボチ……いえ、リュウ・シエン様もご一緒されますか?」

 危うくカボチャと呼びそうなほどに、リュウ・シエンという人物はカボチャであったから、マリーは一応誘ってみたものの、断ってくれることを願っていた。

「いや、俺はこんな姿では出歩くことはできんからな。ここで待たせてもらう」

 案の定、リュウ・シエンは伯爵家で待つと言う。
 マリーは彼に知られないようにホッと息を吐いた。
 おかしなカボチャと街を歩くのはさすがに遠慮したかったからだ。

「それでは、私だけで参ります。お兄様、お客さまとこちらで待っていてね。それでは失礼いたします」

 フランクはマリーに迷惑をかけた事でまたがっくりと肩を落としていたが、客と留守を預かるという指令を受けて大きく頷く。
 そしてまた瓶底のようなレンズの重みでズレた眼鏡をグイッと持ち上げるのであった。



 





 

 


感想 2

あなたにおすすめの小説

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

触れられないはずの私が、ただ一人の彼にだけ心も体も許してしまいました

由香
恋愛
男性に触れられると体調を崩す令嬢リリア。 そんな彼女にとって唯一“触れられる”存在は――幼なじみの公爵令息レオンだけだった。 手を取られ、抱き寄せられ、当たり前のように触れられる日々。 それがどれほど特別なことなのか、彼女はまだ知らない。 やがて政略結婚の話が持ち上がり、“触れられない相手との結婚”か、“彼に触れられる人生”かを選ぶことに。 「お前に触れていいのは俺だけだ」 逃げ場のない独占と、甘すぎる溺愛。 これは、触れられないはずの少女が、ただ一人にだけすべてを許していく物語。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464