魔女っ子令嬢はこの度カボチャと契約恋愛をする事になりました!〜お兄様とイケメンに溺愛されて大変です〜

蓮恭

文字の大きさ
10 / 31

10. アルバンからの婚約話


「実は、私あと三ヶ月ほどしたら婚約することになっているの」
「へ? 誰と? ……まさか、リュウ・シエン殿ともうすでにそのような話まで出ているのか⁉︎」

 相変わらずこの兄は訳の分からない方向へと話を持っていくのが得意だなと、マリーは頭を抱えた。

「違います。アルバン・レ・ガルシアよ。アイツがどうしてか私と婚約すると言ってきているの」
「アルバンが? え? 僕は何にも聞いてないよ?」

 当然妹から聞かされた婚約話に、フランクは慌ててリュウ・シエンの方を見やる。
 リュウ・シエンは肩をすくめるだけで、特に何も言わなかった。

「もしかして……、いつの間にそんな……。ひどいじゃないか、マリー! アルバンとそんな仲だったなんて! 聞いていたら僕は……」
「だから! 違うのよ! 勝手にアルバンがそう言って決めてしまったの! 三ヶ月後に婚約の手続きの書類を持ってくるそうよ」

 フランクは眼鏡をずらしたままで呆然として妹の方を見ている。
 マリーはすくっと立ち上がってフランクの方へと歩み寄り、ズレた眼鏡を直してやった。

「アルバンが何故急にそのようなことを言ってきたのかは知らないけれど。でも、ガルシア侯爵家からの申し出なら断れないでしょう?」

 確かにマリーとフランクの家はアルバンの家より格下の伯爵家で、しかも林業の盛んな領地であったからその大きな取引先であるガルシア侯爵家からの申し出は無碍にはできない。

「何故なんだ……。アルバンがマリーを? いや、アイツは先日会った時もプラドネル伯爵令嬢を連れていたし……」

 フランクは俯いて頭を左右に振りながら、ボソボソと小さな声で呟く。

「お兄様、何て?」
「い、いや。何故アルバンが急にそんなことを言い始めたのかなあと不思議で……」
「そんなこと、私が知りたいわよ。あんなクズ男、大っ嫌いなんだから」

 アルバンは元々王都の学園に通っていた頃のフランクの同級生であった。
 その繋がりで幼い頃からマリーとアルバンは知り合いだったのである。

 しかしフランクが伯爵家を継ぐことになってからは少々疎遠となり、どちらかと言えばアルバンの父親であるガルシア侯爵との付き合いの方が仕事上多くなっているのだ。

「とにかく、それまでにはリュウ・シエン様の呪いは解かないといけないんだから。お兄様も精一杯協力してね。まずはお客様用の居室の手配をしなきゃ……」

 そうマリーが言うと、壁際で存在感を消していた家令のジョルジュが前へ進み出た。
 エマも隣で家具のように存在感を消して控えている。

「お嬢様、そちらはすでに整っております」
「さすがはジョルジュね。ありがとう。あと必要な物とかはリュウ・シエン様に伺ってから準備してね」
「かしこまりました」

 ジョルジュはマリーと共に伯爵家の家政をフランクに代わって担っているから、任せておけば間違い無いとマリーはホッと息を吐いた。

「それでは、リュウ・シエン様。ジョルジュがお部屋にご案内いたしますから、また晩餐でお会いしましょう」

 カボチャ頭のリュウ・シエンは、スッと立ち上がってからじっとマリーを見つめている、ように見えた。

「ああ! そうでした! お食事は召し上がることができないんですよね……。申し訳ございません。それではリー・イーヌオ様だけでも……」
「いや! 食べられなくとも飲めなくとも、とりあえずそのような場には呼んでくれ。フランク殿やマリーと色々話もしたいし……」

 くり抜かれた目の部分からあの黒い瞳がマリーの方を見ているように感じられたが、マリーは何故か気恥ずかしくなって目を逸らせた。

「分かりました。では今後はそのように……」
「ではマリー、またあとで」

 そう言ってリュウ・シエンはジョルジュについて部屋を出て行った。

 残されたマリーは胸を押さえてソファーに座り込んだ。

「マリー、どうしたの? マリー?」

 心配そうにマリーを覗き込むフランクは、何度もマリーに声を掛けるが、マリーだって何が何だか分からないのだ。

 でも何故か、あのカボチャのくり抜かれたとこらから時々覗く黒曜石のような瞳を見ると胸が苦しくなってドキドキと早鐘のように動悸がするのだ。

 気づけばあの瞳がマリーの方をじっと見ているからかも知れない。

「大丈夫よ、お兄様。私、少し疲れたみたい」
「そうだよなぁ。買い物から帰ってすぐにあんなことになって……。それでまた『責任は取らないマーサの魔法と魔術道具の店』まで行って来たんだもんな。ごめんな、マリー」
「いいのよ。それより、リュウ・シエン様と交わす商談ってそんなに大きな商談なの? 大丈夫?」

 シュンと肩を落とす兄に、マリーは自分のことよりも伯爵家のことを心配して尋ねた。
 大きな商談なのだとしたら、もし呪いを解くことを失敗した時に大変なのでは無いかと。

「……うん。確かに大事な話だよ。だけど、もし呪いが解けなくても悪いようにはならないと思う。リュウ・シエン殿はそういう方だ」

 何をもって兄がそこまでリュウ・シエンのことを信用しているのかは分からない、
 だが、珍しく強い眼差しでそういう兄の言葉をマリーは信じるしかなかった。






感想 2

あなたにおすすめの小説

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

触れられないはずの私が、ただ一人の彼にだけ心も体も許してしまいました

由香
恋愛
男性に触れられると体調を崩す令嬢リリア。 そんな彼女にとって唯一“触れられる”存在は――幼なじみの公爵令息レオンだけだった。 手を取られ、抱き寄せられ、当たり前のように触れられる日々。 それがどれほど特別なことなのか、彼女はまだ知らない。 やがて政略結婚の話が持ち上がり、“触れられない相手との結婚”か、“彼に触れられる人生”かを選ぶことに。 「お前に触れていいのは俺だけだ」 逃げ場のない独占と、甘すぎる溺愛。 これは、触れられないはずの少女が、ただ一人にだけすべてを許していく物語。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464