魔女っ子令嬢はこの度カボチャと契約恋愛をする事になりました!〜お兄様とイケメンに溺愛されて大変です〜

蓮恭

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16. ナルシストなアルバン


 サラ・ド・プラドネル伯爵令嬢の急襲から五日後、今度はフランクも在宅の時にアルバンが突撃してきたのだった。

 その時マリーは自室の魔女部屋でぼうっとして考え事をしていた。
 薄暗いこの部屋で蝋燭の灯りの中に一人でいると落ち着くので、あれから度々マリーはここで恋人骸骨たちを眺めてはため息を吐いていたのだ。

「お嬢様、アルバン・レ・ガルシア侯爵令息様がお見えになっております。ただいまフランク様がお相手していますが、どうやらお嬢様を出せと騒いでいるようで……。本当に屑ですよ、あの男は」

 そう言って侍女らしからぬ悪態をつきながらエマが魔女部屋に入って来た時、マリーはもう一度恋人骸骨たちに目をやった。
 彼らは相変わらずそっと寄り添っていて、幸せそうに見える。
 それを見て、マリーはなんだか力が湧いて来た気がした。

「少なくとも、あんな放蕩者のアルバンなんかと婚約するなんてごめんだわ。何を考えて言い出したのか知らないけれど、あんな奴と婚姻を結んだら死んだも同然よ」

 マリーはそう言って勢いよく立ち上がった。
 とにかく、どうしてそんなことを言い出したのかアルバンに直接問いただしてみようと考えたのだ。

 

 それからエマを伴ってサロンの扉の前まで来ると、中からフランクと言い争うアルバンの声が聞こえてくる。

「だから、時間がないんだよ! フランク、お前みたいに親が死んでさっさと爵位を継承した奴には分からないだろうけどな、僕は次男だから父上の機嫌取りをして、うちに余った子爵位でも貰わないと平民になるんだぞ!」
「……アルバン、君は本当に変わっていないな」
「お前こそ、その人を馬鹿にしたずり落ち瓶底眼鏡と情けない表情は変わらないな! いつまでも妹のマリーに面倒見てもらって情けないと思わないのか⁉︎」

 マリーは我慢ならずに、いつもならノックの一つでもしてから開ける扉をガツンと勢いよく開けた。

「ごきげんよう、アルバン様」

 こちらに背を向けたフランクの表情は分からないが、きっと涙目になっているに違いないとマリーはアルバンを睨みつけた。

 アルバンは金色でウェーブのかかった長めの髪と青い瞳が特徴で、フリフリとしたシャツと派手な色味の服装が好きな目立ちたがり屋の男であった。
 
 口が上手く昔から女を取っ替え引っ替えしては、金遣いも荒く、侯爵家の次男という立場を最大限利用して堕落した毎日を送っているような人間だった。

「マリー! わざわざこの僕が来てるんだからさっさと降りてこいよ! お前、とうとう頭がおかしくなってカボチャの被り物をしたような奴と婚約したって本当なのか⁉︎」
「……その話はどなたからお聞きになったのですか?」

 マリーが毅然とした態度でアルバンに尋ねると、アルバンはバツの悪そうな顔をして答える。

「……ぷ、プラドネル伯爵令嬢だ」
「プラドネル伯爵令嬢は貴方とは相当親しい仲のようでしたけど。それで、わざわざ変人と呼ばれる私と婚約したいなどとおかしいですわよね? 一体何を考えてらっしゃるのですか?」

 アルバンはウェーブのかかった金の前髪をファサリとかき上げた。

「フンっ……、お前にはプラドネル伯爵令嬢とのことなど一切関係ない。とにかく、お前は僕と婚約して今度開かれる父上の新規事業立ち上げ祝賀パーティーで僕の婚約者としてニコニコしてればいいんだよ」

 全くもってカッコつけるとこでもなければ、よく分からないことを気取って話すアルバンに、マリーはため息を吐いた。

「だから、何故私なんですか? それこそお相手はプラドネル伯爵令嬢でもよろしいじゃありませんか」

 アルバンはイラついたように再度前髪をファサリとかき上げる。
 いちいちカッコつけて流し目をするのはやめてもらいたい。

「お前のところの領地のが父上の新しい事業に必要不可欠な物だからに決まっているだろう! お前と縁続きになれば安く手に入れられるし、父上だって僕を褒めてくださるはずだ。そうじゃなきゃ、僕がお前みたいな変人魔女令嬢を相手にするわけないだろう!」

 成る程と、マリーは納得したのだった。
 アルバンは次男だから、そのうち侯爵家に余っている爵位を譲ってもらわなければ平民として暮らしていくしかないのだ。

 親のすねかじって好き勝手してきたアルバンに、きっと侯爵が何かお小言を言ったのだろう。

 それで危機感を覚えたアルバンは、侯爵の御機嫌取りのためにガルシア侯爵家の新規事業だか何だかに必要な材木を担っているラヴァンディエ伯爵家のマリーと婚約を結ぼうと画策していたのだ。

「なんと浅はかな……」

 マリーは思わずといった感じで言葉を漏らした。

 それほどまでにあまりにも稚拙で単純な計画なのだ。
 マリーはそんな計画のためになぜ自分が利用されなければならないのかと馬鹿らしくなってきた。
 
 しかもアルバンと婚約を結べば、この領地の材木をとんでもなく安く買い叩かれるのだ。
 そうなれば困るのは領民たちなのだから。

お父上ガルシア侯爵は私との婚約についてどのようにおっしゃっているのです?」
「はぁ? 父上には内緒に決まっているだろう? お前はサプライズという言葉を知らんのか? これだからこの兄妹は……。ナンセンスだ」

 フウッと息を吐いてからいちいち格好つけて首を左右に振るアルバンに、マリーもフランクも呆れ果てた。

「まさか、侯爵様も預かり知らぬこととは思いませんでしたわ」
「アルバン……、僕はお前がそこまで馬鹿だとは思わなかったよ」

 マリーとフランクは同時に言葉を放った。





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