39 / 48
本編
婚約パーティー
しおりを挟む
王家の婚約許可が降りて、わたくしとアリステア様は晴れて婚約者同士になりましたの。
ここまで色々あったけど、がんばってきてよかったと思いながら、綺麗に化粧されていく自分を眺めていましたわ。
「お嬢様、おめでとうございます」
「ありがとう、サラス」
「やはりアリステア様の色にしてよかったわ」
わたくしは薄い空色のフワフワのドレス姿。キツイ美人顔のわたくしにはセクシー系のドレスが似合うと思うし、それをよく選ばれたのだけど、こういうドレスは今の年齢でしか着られませんからと、わたくしは普段より清楚なドレスを着せられていましたの。
髪飾りはアリステア様に頂いたもの。この日に合わせてアクアマリンの石の入った宝石が入ったものがわたくしの髪に飾られ、同じデザインの首飾り。
「そうですね。とてもお綺麗です」
「ありがとう」
今夜の宴は一応家が。8割とシャルトル公爵家の2割の費用で賄われていた筈けれど、何もしないのは申し訳ないからと、折半すると公爵様に押し切られた形になりましたの。
もちろん王家が主催の正式な夜会などではないから、非公式な宴だけれど、主要なおつきあいのある内外の貴族たちが出席してくれるので、費用はバカになりませんものねえ。
「さあ、参りましょう」
「ええ」
庭園にはすでにたくさんの賓客が到着しており、わたくしとアリステア様のお友達兼王家の代理としてフィリップ様とマリアンヌ様がいらしていました。
お祝いのパーティーとはいえ気を抜けないわ。
わたくしは鏡の中の自分を一瞥すると、自分を奮い立たせてアリステア様の待つ庭園に向かいましたわ。
******
会場は思った通り余計な飾り付けが必要もないぐらい彩どりの花々で鮮やかでした。
お菓子が可愛らしく飾られたコーナーや、焼き物のコーナー、そして作りたての料理がブッフェ式に並べられたコーナーに料理をサーブする係りの者もいるけれど、招待客達は社交に忙しく、子供以外はあまり食べ物に手をつけている貴族はいませんでしたわ。
まあ、フィンガーフードを運ぶ給仕などもいるので、それをつまみながら談笑している人たちもおられましたわ。
「レティー」
「アリステア様」
「その髪飾り、やはりドレスにピッタリだったな」
「あっ、ありがとうございます」
「とても似合っている」
アリステア様はわたくしを見つめると、とても綺麗な笑顔でおっしゃった。
「アリステア様も素敵ですわ」
アリステア様は黒い軍服姿。王子様みたいに金のタッセルや様々な勲章のついた派手な作りの。式典用のシャルトル公爵家の正装だとお義母様から聞いていたけれど、実際に見てみるとかなりの王子様感。
完璧にわたくしの好みど真ん中でしたわ。
真っ赤になって小声でいうわたくしにの背中に白い手袋を着けたアリステア様の手が添えられて、
「さあ、行こうか?」
「はい」
パーティーに出席された方々へのお礼と挨拶回りにアリステア様と向かいましたの。
公爵家同士の婚約とういこともあり、波風はあまりなくイヤミの応酬もなかったけれど、アリステア様の隣に立つだけでも緊張しすぎてかなり神経を使いましたわ。
「この度は婚約おめでとう」
わたくし達が真っ先に向かった先は王家の代理であるフィリップ様とマリアンヌ様の元。
「ありがとう。フィリップ」
「ありがとうございます。フィリップ様、フィリップ様もマリアンヌ様とのご婚約おめでとうございます」
「私の要望も王家の望みも叶って良かった」
「ええ」
わたくしとフィリップ様の会話を聞いていたマリアンヌ様が口を挟まれましたの。
「いろいろな噂を聞いたけれど、これで収まるところに収まったって感じかしら?」
「はい。当家もシャルトル家もこの度のお話大変喜んでおります。この度のご婚約本当におめでとうございます。マリアンヌ様」
本当はわたくしとアリステア様が祝いの言葉を述べられる立場なのだけど、これからの関係の為にわたくしの方から祝いの言葉を述べましたわ。
「ありがとう。レティシア様。これであなたも安泰ね。おめでとう」
という上から目線のマリアンヌ様の言葉に微笑を浮かべると、まだ挨拶があるのでと2人から離れました。
わたくしとアリステア様が挨拶回りをしている間、マリアンヌ様の視線を感じたのだけれど、何事もなくパーティーの幕は閉じたのですわ。
*****
その日の夜、久しぶりにアリステア様と2人きり(まあサラスはそばで控えてるけれど)でパーティーの後片付けが終わった庭園でお話しする機会があって、マリアンヌ様の視線のことを話してみたのだけれど、
「王家の望んでいる結婚を邪魔する馬鹿ではないだろう。心配するな」
とアリステア様は取り合ってくれなかった。
まさか前世のことを話すわけにはいかないから、わたくしは何もいえなかったのだけれど…。
「今日は大変だっただろう?」
「えっ、ええ。アリステア様こそ」
「俺はこんなことには慣れている。でもあまり社交に出ていなかった君には大変だっただろう?」
悪役令嬢の前世を思い出してからは必要最小限の社交の場しか出てなかったので、わたくしは「深窓の令嬢」として社交界で知られていたことをまさかアリステア様ご存知だとは思ってなかったのですけれどね。
「え、ええ。でも、嬉しかったので…」
「そうか」
「ええ」
「これから色々あると思うが、2人で乗り越えていこう」
アリステア様の手がわたくしの手と重なって、
青い瞳の優しい色に吸い込まれそうになりましたわ。
「はい。あの、アリステア様…」
好きっ、といいそうになって口を噤んでしまいましたの。
「んっ?」
優しい声が聴き返してくれるけれど、わたくしは気持ちを伝えることができないでおりました。
婚約もしているのに。アリステア様の気持ちを知るのが怖くなったからですわ。
「なんでもありませんわ」
「そうか。月が綺麗だな」
「本当に」
「今度うちの領地まで遠乗りに行こう。レティーが気に入りそうなところがある」
「はい」
相変わらずアリステア様の気持ちはわからないけれど、結婚してから愛を育みことだってできるわ。
わたくしは吸い込まれそうな青い瞳を見つめて、優しい軍人に微笑みかけるのが精一杯でした。
ここまで色々あったけど、がんばってきてよかったと思いながら、綺麗に化粧されていく自分を眺めていましたわ。
「お嬢様、おめでとうございます」
「ありがとう、サラス」
「やはりアリステア様の色にしてよかったわ」
わたくしは薄い空色のフワフワのドレス姿。キツイ美人顔のわたくしにはセクシー系のドレスが似合うと思うし、それをよく選ばれたのだけど、こういうドレスは今の年齢でしか着られませんからと、わたくしは普段より清楚なドレスを着せられていましたの。
髪飾りはアリステア様に頂いたもの。この日に合わせてアクアマリンの石の入った宝石が入ったものがわたくしの髪に飾られ、同じデザインの首飾り。
「そうですね。とてもお綺麗です」
「ありがとう」
今夜の宴は一応家が。8割とシャルトル公爵家の2割の費用で賄われていた筈けれど、何もしないのは申し訳ないからと、折半すると公爵様に押し切られた形になりましたの。
もちろん王家が主催の正式な夜会などではないから、非公式な宴だけれど、主要なおつきあいのある内外の貴族たちが出席してくれるので、費用はバカになりませんものねえ。
「さあ、参りましょう」
「ええ」
庭園にはすでにたくさんの賓客が到着しており、わたくしとアリステア様のお友達兼王家の代理としてフィリップ様とマリアンヌ様がいらしていました。
お祝いのパーティーとはいえ気を抜けないわ。
わたくしは鏡の中の自分を一瞥すると、自分を奮い立たせてアリステア様の待つ庭園に向かいましたわ。
******
会場は思った通り余計な飾り付けが必要もないぐらい彩どりの花々で鮮やかでした。
お菓子が可愛らしく飾られたコーナーや、焼き物のコーナー、そして作りたての料理がブッフェ式に並べられたコーナーに料理をサーブする係りの者もいるけれど、招待客達は社交に忙しく、子供以外はあまり食べ物に手をつけている貴族はいませんでしたわ。
まあ、フィンガーフードを運ぶ給仕などもいるので、それをつまみながら談笑している人たちもおられましたわ。
「レティー」
「アリステア様」
「その髪飾り、やはりドレスにピッタリだったな」
「あっ、ありがとうございます」
「とても似合っている」
アリステア様はわたくしを見つめると、とても綺麗な笑顔でおっしゃった。
「アリステア様も素敵ですわ」
アリステア様は黒い軍服姿。王子様みたいに金のタッセルや様々な勲章のついた派手な作りの。式典用のシャルトル公爵家の正装だとお義母様から聞いていたけれど、実際に見てみるとかなりの王子様感。
完璧にわたくしの好みど真ん中でしたわ。
真っ赤になって小声でいうわたくしにの背中に白い手袋を着けたアリステア様の手が添えられて、
「さあ、行こうか?」
「はい」
パーティーに出席された方々へのお礼と挨拶回りにアリステア様と向かいましたの。
公爵家同士の婚約とういこともあり、波風はあまりなくイヤミの応酬もなかったけれど、アリステア様の隣に立つだけでも緊張しすぎてかなり神経を使いましたわ。
「この度は婚約おめでとう」
わたくし達が真っ先に向かった先は王家の代理であるフィリップ様とマリアンヌ様の元。
「ありがとう。フィリップ」
「ありがとうございます。フィリップ様、フィリップ様もマリアンヌ様とのご婚約おめでとうございます」
「私の要望も王家の望みも叶って良かった」
「ええ」
わたくしとフィリップ様の会話を聞いていたマリアンヌ様が口を挟まれましたの。
「いろいろな噂を聞いたけれど、これで収まるところに収まったって感じかしら?」
「はい。当家もシャルトル家もこの度のお話大変喜んでおります。この度のご婚約本当におめでとうございます。マリアンヌ様」
本当はわたくしとアリステア様が祝いの言葉を述べられる立場なのだけど、これからの関係の為にわたくしの方から祝いの言葉を述べましたわ。
「ありがとう。レティシア様。これであなたも安泰ね。おめでとう」
という上から目線のマリアンヌ様の言葉に微笑を浮かべると、まだ挨拶があるのでと2人から離れました。
わたくしとアリステア様が挨拶回りをしている間、マリアンヌ様の視線を感じたのだけれど、何事もなくパーティーの幕は閉じたのですわ。
*****
その日の夜、久しぶりにアリステア様と2人きり(まあサラスはそばで控えてるけれど)でパーティーの後片付けが終わった庭園でお話しする機会があって、マリアンヌ様の視線のことを話してみたのだけれど、
「王家の望んでいる結婚を邪魔する馬鹿ではないだろう。心配するな」
とアリステア様は取り合ってくれなかった。
まさか前世のことを話すわけにはいかないから、わたくしは何もいえなかったのだけれど…。
「今日は大変だっただろう?」
「えっ、ええ。アリステア様こそ」
「俺はこんなことには慣れている。でもあまり社交に出ていなかった君には大変だっただろう?」
悪役令嬢の前世を思い出してからは必要最小限の社交の場しか出てなかったので、わたくしは「深窓の令嬢」として社交界で知られていたことをまさかアリステア様ご存知だとは思ってなかったのですけれどね。
「え、ええ。でも、嬉しかったので…」
「そうか」
「ええ」
「これから色々あると思うが、2人で乗り越えていこう」
アリステア様の手がわたくしの手と重なって、
青い瞳の優しい色に吸い込まれそうになりましたわ。
「はい。あの、アリステア様…」
好きっ、といいそうになって口を噤んでしまいましたの。
「んっ?」
優しい声が聴き返してくれるけれど、わたくしは気持ちを伝えることができないでおりました。
婚約もしているのに。アリステア様の気持ちを知るのが怖くなったからですわ。
「なんでもありませんわ」
「そうか。月が綺麗だな」
「本当に」
「今度うちの領地まで遠乗りに行こう。レティーが気に入りそうなところがある」
「はい」
相変わらずアリステア様の気持ちはわからないけれど、結婚してから愛を育みことだってできるわ。
わたくしは吸い込まれそうな青い瞳を見つめて、優しい軍人に微笑みかけるのが精一杯でした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
248
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる