幼馴染が俺を馬鹿にしてくる

夢乃那火

文字の大きさ
3 / 6

ファレイさんとの出会い

しおりを挟む
「ラ、ライア………!」

 弱々しく振り絞った声を出して助けを求めた。

 すると、頭上から「フッ」とよく聞き慣れた笑い声が聞こえてきた。

「ラ、ライアなのか!?」

 暗闇に少しずつ慣れてきた目で見上げると、そこにはいつも通りニヤニヤとした笑みを浮かべたライアの顔があった。

「ハハッ、まじで笑える。ちょっと驚かしただけで涙目になって俺の名前呼んじゃってさあ?鍵かけてんだから俺に決まってんじゃん。馬鹿なの?」

 カインってほんとビビリだよなーと、笑いながら言うライアに、(こいつ…!!)と苛立ちつつ、ライアが犯人だったことに少しだけほっとしている自分もいた。

「ていうか、早く手離せよ!」
「えー?」

 緊張が解けると、自分が今恥ずかしい体勢になっていることに気づく。
(よくよく考えたら今のこの体勢、俺がライアに壁ドンされてるみたいじゃねーか!)
 頭上にあるライアの顔をキッと睨みつけると、ようやく俺の両手は解放された。きつめに両手を掴まれていたので、俺の手首は少し赤くなっている。
(くそっ、こいつ、いたずらの加減を考えろよ!)
 盛大なため息をつきながら部屋に向かおうとすると、またもやライアが俺の前に立ちはだかり、今度はライアの手が俺の頭の上に置かれる。

「は?今度はなんだよ!俺の頭触んな!」

 ライアの嫌がらせにむかついていた俺は、ぎゃんぎゃんとライアに噛みついた。すると、ライアがボソッと何か言った。

「あいつには触らせてたくせに…。」
「え?」

 ライアの声が小さくて、何と言っているのか分からなかった。

「なんて?」
「……だから、お前がちっちゃくていい肘置きになるって言ってんだよ!」
「はあぁぁ!?」

(ふざけんなよ!!どんだけ俺を煽れば気が済むんだよ!)

「俺別に身長低くねーし!お前がデカすぎるだけだろ!!」
「え?身長高くてスタイルいいって?褒めてくれてありがとねー。」
「言ってねえよ!!!」

 そろそろ俺も疲れてきた。明日は朝にバイト先に花を届けないと行けないし、今日は早く寝ないと。

「夜ご飯作るから、早くそこどいて、通して。」

 俺がそう言うと、「はいはい。」と、やっとライアが退いてくれた。
(はあ、手間かけさせやがって、こいつ。)
 絶対にいつか仕返しをしてやると胸に誓いながら、カインは夜ご飯を作るのであった。










 翌朝、いつもより早起きをしたカインは、特殊能力を使って綺麗に咲かせた花を持って、バイト先へと向かった。
(昨日の夜はまだ蕾のままだったけど、ちゃんと間に合って良かった。)
 バイト先の花屋に着くと、色とりどりの花が並んでいる店の中で、店長が1人のお客様と話していた。
 こちらに気づいた店長が、手を振って俺に声をかける。

「おはよう、カインくん。ちょうど良かったよ!」
「店長、おはようございます。頼まれてた花、持ってきました。」

 店長と挨拶しながらちらりとお客様を見る。店長と話していたのは大学生くらいで、凛とした雰囲気を纏った男の人だった。

「ファレイくん、この子がさっき話してたカインくんだよ。」
「君がカインくん?私はファレイと言います。よろしくね。」
「よ、よろしくお願いします、ファレイさん。」

(ファレイさん、すごい綺麗な人だなあ…。)
 近くで見ると、眼鏡の奥に見えるまつ毛が長くて、肌は朝日に照らされて透き通るように白いし、色素の薄い髪の毛はサラサラと靡いていた。

「カイン君に頼んでた花、ファレイ君が注文してた花だったんだよ。うん、今日もすごく綺麗に咲いてるな。ありがとうカイン君、給料は弾むから。」
「まじっすかー?助かりまーす!」

なんて軽口を叩いていると、

「この花、カインくんのおかげですごい綺麗に咲いてるね。ありがとう。」

 そうやって、綺麗な顔ではにかんだファレイさんに褒めてもらった。普段はライアに揶揄われてばっかりの俺は褒められることに慣れておらず、

「あ、ありがとうございます…」

 と、少しドギマギしてしまった。顔がほんのり赤くなっているのが自分でも分かる。
(誰かに心からこの能力を褒めてもらえたのっていつぶりだろう。昔は親にはよく褒められてたけど、いつからか花をあげることも無くなったし…。)
 照れつつも、素直にお礼の言葉を受け取ったカインは、その日はちょっとだけるんるんとした気持ちで学校へ向かうのだった。









 その日の午後、バイトは無く、俺は街の本屋に寄っていた。
(いい参考書あるかなあ…)
 頭のいい高校に進学したカインは、中学の頃に比べて、授業についていくのが一苦労になっていた。
 俺は特殊能力も、容姿も、運動神経も、何もかも平凡だと自負しているが、頭だけは良い方だ。かと言ってライアに勝てたことはないのだが。しかし、唯一の長所ともいえるこの頭の良さも高校に入ってからはそんなに感じなくなっていた。みんな、俺と同じくらいの学力の人が集まったんだから、無理もないだろう。しかし、俺は、成績が悪くなってしまうと、自分の誇れるところが何も無くなってしまうような気がして、内心少し焦っていた。
(次のテストは、頑張らないと!)
 そう意気込んで本棚を眺めていると、不意に後ろから声がした。

「あれ、もしかしてカインくんですか?」

 そこにいたのは、今朝話したばかりのファレイさんだった。

「え、ファレイさん!?偶然ですね!何でここに?」
「私、ここでアルバイトをしているんですよ。カインくんこそ、何か本を探しにきたのですか?」

 そう言われて俺はギクリとした。明らかに賢そうなファレイさんに、「学校の授業についていけないから参考書を探している」なんて言うのは少し恥ずかしかったからだ。

「…実は参考書を探していて……。」
「そうなんですか。勉強、頑張っていて偉いですね。」
「そんなんじゃないですよ。授業についていくのが難しくて、焦ってるだけです。勉強が出来なくなったら、俺の取り柄が何も無くなってしまうような気がして…。」

 ついついそんな無駄なことまで喋ってしまった。しかし、ファレイさんは不思議そうな顔で俺に言った。

「取り柄がない、って、あんなに良い特殊能力を持っているのに、そんなことないでしょう?」
「え、、。」
「私の母は今、持病が悪化して入院しているのですが、今日カインくんにもらった花を見てすごく綺麗だと喜んで、久しぶりに笑顔を見てせてくれました。カインくんの能力は人を笑顔にできる素敵な能力ですよ。」
「そ、そう…ですか…?」
「そうですよ。私も母の笑顔を見て、幸せな気持ちになれました。カインくんのおかげですね。」

ファレイさんの言葉を聞いて、俺は目頭が熱くなるのを感じた。
(「カインくんのおかげ」だなんて、そんなこと久しぶりに言われた…)
今朝と同じように、また顔がみるみる赤くなっていくのを感じる。
しかし、こうやって褒めてもらったのにもかかわらず、浮かれた気分はすぐに落ち込むことになる。こういうとき、皮肉にも、頭の奥ではいつもライアに馬鹿にされている言葉が反芻されるのだ。

「お前の特殊能力、女子みてーだな」
「お前が俺に勝ててるところあんの?」
「お前って、俺がいねーとなんもできねーよな?」

そんな声にひきつられ、俺の気持ちはまた暗いとこに落ちていく。ファレイさんは俺を褒めてくれたのに、子供の八つ当たりのように、卑屈なことまで口走ってしまった。

「俺、この特殊能力が女っぽいってよく揶揄われるんです。俺に似合ってないって。俺だってこの顔に似合ってないことくらい、言われなくても分かってます!でも、俺はこの能力のことが好きなんです…!素直にこの能力が好きだと言えない俺が、恥ずかしくて、嫌いだ…っ!」

ファレイさんは少し驚いた顔をしたあと、顔をくしゃっとして可笑しそうに笑った。

「な、何で笑うんですか!ライアもファレイさんも、
俺を馬鹿にして!」
「馬鹿にしてないよ。ライアくん?は分からないけど、私はその能力、可愛くて、君にぴったりだと思うよ?」
「嘘つかなくて良いです!」
「嘘じゃないよ。そうやってすぐムキになって、顔赤くして泣いちゃうところが可愛くて、ぴったりだって言ってるんですよ。」
「な、!?何言って…」

顔が沸騰したようにさらに赤くなるのが分かる。
(可愛いって…なにいってるんだ!?)
そして思い出したように言う。

「ッッていうか、泣いてねーし!!」
「はいはい、分かった分かった、泣いてないですね。」
「もー!!分かってないだろ!」

それから、ファレイさんに慰められているうちに、自分の心のわだかまりが、少しだけ、溶けていくような気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

王様の恋

うりぼう
BL
「惚れ薬は手に入るか?」 突然王に言われた一言。 王は惚れ薬を使ってでも手に入れたい人間がいるらしい。 ずっと王を見つめてきた幼馴染の側近と王の話。 ※エセ王国 ※エセファンタジー ※惚れ薬 ※異世界トリップ表現が少しあります

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 一月十日のアルファポリス規約改定を受け、サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移しましたm(__)m サブ垢の『バウムクーヘンエンド』はこちらへ移動が出来次第、非公開となりますm(__)m)

【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜

キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。 モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。 このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。 「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」 恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。 甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。 全8話。

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ/Ⅱ

MITARASI_
BL
I 彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。 「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。 揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。 不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。 すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。 切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。 Ⅱ 高校を卒業し、同じ大学へ進学した陸と颯馬。  別々の学部に進みながらも支え合い、やがて同棲を始めた二人は、通学の疲れや家事の分担といった小さな現実に向き合いながら、少しずつ【これから】を形にしていく。  未来の旅行を計画し、バイトを始め、日常を重ねていく日々。  恋人として選び合った関係は、穏やかに、けれど確かに深まっていく。  そんな中、陸の前に思いがけない再会をする。  過去と現在が交差するその瞬間が、二人の日常に小さな影を落としていく。  不安も、すれ違いも、言葉にできない想いも抱えながら。  それでも陸と颯馬は、互いの手を離さずに進もうとする。  高校編のその先を描く大学生活編。  選び続けることの意味を問いかける、二人の新たな物語。 続編執筆中

勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される

八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。 蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。 リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。 ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい…… スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)

両片思いの幼馴染

kouta
BL
密かに恋をしていた幼馴染から自分が嫌われていることを知って距離を取ろうとする受けと受けの突然の変化に気づいて苛々が止まらない攻めの両片思いから始まる物語。 くっついた後も色々とすれ違いながら最終的にはいつもイチャイチャしています。 めちゃくちゃハッピーエンドです。

処理中です...