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3章: 威厳なき名家
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「おい、女! てめぇ、何しやがった!」
「あまりに無礼で横柄な態度でしたから、つい強硬的な態度を取らせて頂きました」
「兄貴・・・・・・この女、強すぎる」
転げ込んだ手下は言い残すと気を失った。
「何だ、コイツ。よく見たら帝国の軍人じゃないか?」
「て言っても、まだガキだろ?」
「私はフェリス=トレスデン。帝国士官学校に通う学生です。国土防衛任務の実習として、この地の総督を任されています。故に、帝国軍人としてあなた達の不法占拠を容認するわけにはいきません」
「どうする? 兄貴? そんな帝国軍が来るなんて話は聞いてねえぞ?」
「はっ! 軍人と言っても、ただの学生だろ! それに、あの女以外に誰もいないじゃねえか!」
「レムダ様、お腹すいた・・・・・・って、あれ?」
そこへさっきまで居眠りしていたのか、シアが寝ぼけた表情を覗かせる。
「またガキが出てきたぞ?」
「野郎ども、大したことはねえ! こっちの方が人数は多いんだ! それにガキはあまり趣味じゃねえが、二人とも中々の上玉じゃねえか! 今日の手土産にしていくぞ!」
「おうっ!! やっちまえ!」
「顔は潰すんじゃねえぞ! 抑え込んで手足を縛り上げろ!」
「どうやら、帝国の警告を無視するようですね」
一斉に襲い掛かる野盗の群れを前にフェリスは小さなため息をつく。
その次の瞬間だった。
「どわっ!」
フェリスに殺到した野盗の第一陣が、目に見えない縄に足を奪われたかのようになぎ倒された。
勢いを失い、呆然とする後続の懐に潜り込んでさらにレイピアを一閃させると、彼女を中心に野盗達は雪崩を打って倒れた。
間髪入れずしなやかな足を開き、最後に残っていた一人を回し蹴りにする。
頬がめり込んで、前歯を失った男の身体が様子を見ていたレムダの前に倒れ込んだ。
一撃で仕留められた男はピクリとも動かない。
――本気でやり合わなくてよかった
レムダは自身の幸運に感謝しながら、一方で不運な野盗達を憐れんだ。
「さ、残るはあなただけですよ」
いつしかフェリスはレイピアを使わず、素手だけで野盗を倒していた。
皮手袋に嵌められた拳が、不気味に関節の音を響かせる。
「う、うるせぇ!!」
リーダー格でも能力に大差はないのか、野盗の頭はすぐに仕掛けてはこなかった。
手下達が呻き声をあげて折り重なる惨状を見渡し、ある一点に視線が向く。
一連の騒ぎでひっくり返った樽からしわがれたリンゴが零れ落ちている。
それをシアがありがたがるように拾い上げていた。
野盗の頭はすかさずフェリスを迂回してシアの後から迫る。
「動くんじゃねえ!」
羽交い絞めにされたシアの喉元に、黒光りする斧が突きつけられていた。
「あまりに無礼で横柄な態度でしたから、つい強硬的な態度を取らせて頂きました」
「兄貴・・・・・・この女、強すぎる」
転げ込んだ手下は言い残すと気を失った。
「何だ、コイツ。よく見たら帝国の軍人じゃないか?」
「て言っても、まだガキだろ?」
「私はフェリス=トレスデン。帝国士官学校に通う学生です。国土防衛任務の実習として、この地の総督を任されています。故に、帝国軍人としてあなた達の不法占拠を容認するわけにはいきません」
「どうする? 兄貴? そんな帝国軍が来るなんて話は聞いてねえぞ?」
「はっ! 軍人と言っても、ただの学生だろ! それに、あの女以外に誰もいないじゃねえか!」
「レムダ様、お腹すいた・・・・・・って、あれ?」
そこへさっきまで居眠りしていたのか、シアが寝ぼけた表情を覗かせる。
「またガキが出てきたぞ?」
「野郎ども、大したことはねえ! こっちの方が人数は多いんだ! それにガキはあまり趣味じゃねえが、二人とも中々の上玉じゃねえか! 今日の手土産にしていくぞ!」
「おうっ!! やっちまえ!」
「顔は潰すんじゃねえぞ! 抑え込んで手足を縛り上げろ!」
「どうやら、帝国の警告を無視するようですね」
一斉に襲い掛かる野盗の群れを前にフェリスは小さなため息をつく。
その次の瞬間だった。
「どわっ!」
フェリスに殺到した野盗の第一陣が、目に見えない縄に足を奪われたかのようになぎ倒された。
勢いを失い、呆然とする後続の懐に潜り込んでさらにレイピアを一閃させると、彼女を中心に野盗達は雪崩を打って倒れた。
間髪入れずしなやかな足を開き、最後に残っていた一人を回し蹴りにする。
頬がめり込んで、前歯を失った男の身体が様子を見ていたレムダの前に倒れ込んだ。
一撃で仕留められた男はピクリとも動かない。
――本気でやり合わなくてよかった
レムダは自身の幸運に感謝しながら、一方で不運な野盗達を憐れんだ。
「さ、残るはあなただけですよ」
いつしかフェリスはレイピアを使わず、素手だけで野盗を倒していた。
皮手袋に嵌められた拳が、不気味に関節の音を響かせる。
「う、うるせぇ!!」
リーダー格でも能力に大差はないのか、野盗の頭はすぐに仕掛けてはこなかった。
手下達が呻き声をあげて折り重なる惨状を見渡し、ある一点に視線が向く。
一連の騒ぎでひっくり返った樽からしわがれたリンゴが零れ落ちている。
それをシアがありがたがるように拾い上げていた。
野盗の頭はすかさずフェリスを迂回してシアの後から迫る。
「動くんじゃねえ!」
羽交い絞めにされたシアの喉元に、黒光りする斧が突きつけられていた。
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