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『今どこいんの?』
「俺は『市内の図書館にいるよ』っと、えーとこれで送信ボタン押して……」
送信しようとボタンにカーソルを合わせていたらポンポンとまたタイセーからメールが立て続けに届いた。
『お前全然連絡ないから心配したんだぞ!』
『アパートにいっても出てったって言われていないし』
『マジで消えるのやめろよ』
『ちゃんと頼ってくれ、友達だろ』
メールじゃなくメッセージアプリのやり取りのような速さに目が回りそうになった。ゆっくりと自分のペースで一通一通確認した。
最後のメールの「友達だろ」の言葉を見て鼻の奥がツンと痛くなった。堪えきれずに漏れ出た涙を誰にも見られないように服の袖で拭き取った。
それでも一度溢れてきた涙は中々止まることを知らない。
しばらく目元を袖で押さえていた。押さえながら、最初の入力していたメールを送信した。
『そのまま図書館にいろ』
すぐさま返信がきて、待っていろとの指示だった。
これ、もしかして、ここにタイセーが来るのか?
そうだったら申し訳ない。
でも期待に胸が膨らむ。バイトしてお金を稼ぐことに必死で中々タイセーに会えてなかった。色々近況も聞きたい。話しづらいこともたくさんあるけど、会って話したいことがたくさんある。
そわそわとした気持ちになりながらも、待っている間、タイセー以外から来ていたすべての受信メールを開いて確認した。心はそぞろで内容なんか全然頭に入ってこなかったけど、みんな大したメールではなかったから特に支障はない。
仕事探しのメルマガや、バイトのお断りメールなんかばかりだったから。
タイセーからのメールがなければ、お断りメールを読んで気持ちが沈んでいただろう。
今は少しも心に引っかからない。
1時間もしない内に図書館の入り口からはぁはぁと息荒く走ってくる男の姿があった。タイセーだ。
「タイセー!」
「イチロ!」
お互いに名前を呼び合って再会を喜び合った。男同士で抱き合うとかはしなかったかけど、それくらいの勢いで手を取り合った。
入口からフリースペースに移動してタイセーと向かい合う。
メールしてすぐにここまできてくれたタイセーに迷惑かけて悪いと思う反面、心配して駆けつけてくれてすごく嬉しくなった。
「イチロ、お前今どんな状況なんだ?一人でやってけてんのかよ?」
「いや、それが……バイトもこの前クビになって、アパートも家賃払えなくて追い出された……」
「おいおい、マジかよ」
はぁ、とため息を吐くタイセーの反応にびくついた。タイセーにこれ以上情けないやつだと思われたくない。けれど現状を変えることはどうしてもできなくて、またうるうると瞳が潤んだ。
「俺ほんと情けないよな、こんな姿晒してさ……」
ぎゅうっと膝の上で手を握りしめた。爪が皮膚に食い込んで痛いくらい。
「情けなくなんてない。情けないのは俺だよ。お前がこんだけ苦労してんのに、そんなお前に頼られない俺の方が情けないだろ」
「そんなことない!タイセーはほんといいやつで、俺にはもったいないくらい……、いつも助けて貰ってばかりで、申し訳ないんだ俺」
「お前はもっと俺に頼れよ。そんな家もない状況で相談もされないなんて、悔しいよ」
「タイセー……ごめん、ありがとう」
タイセーの気持ちが痛いほど嬉しかった。
「俺は『市内の図書館にいるよ』っと、えーとこれで送信ボタン押して……」
送信しようとボタンにカーソルを合わせていたらポンポンとまたタイセーからメールが立て続けに届いた。
『お前全然連絡ないから心配したんだぞ!』
『アパートにいっても出てったって言われていないし』
『マジで消えるのやめろよ』
『ちゃんと頼ってくれ、友達だろ』
メールじゃなくメッセージアプリのやり取りのような速さに目が回りそうになった。ゆっくりと自分のペースで一通一通確認した。
最後のメールの「友達だろ」の言葉を見て鼻の奥がツンと痛くなった。堪えきれずに漏れ出た涙を誰にも見られないように服の袖で拭き取った。
それでも一度溢れてきた涙は中々止まることを知らない。
しばらく目元を袖で押さえていた。押さえながら、最初の入力していたメールを送信した。
『そのまま図書館にいろ』
すぐさま返信がきて、待っていろとの指示だった。
これ、もしかして、ここにタイセーが来るのか?
そうだったら申し訳ない。
でも期待に胸が膨らむ。バイトしてお金を稼ぐことに必死で中々タイセーに会えてなかった。色々近況も聞きたい。話しづらいこともたくさんあるけど、会って話したいことがたくさんある。
そわそわとした気持ちになりながらも、待っている間、タイセー以外から来ていたすべての受信メールを開いて確認した。心はそぞろで内容なんか全然頭に入ってこなかったけど、みんな大したメールではなかったから特に支障はない。
仕事探しのメルマガや、バイトのお断りメールなんかばかりだったから。
タイセーからのメールがなければ、お断りメールを読んで気持ちが沈んでいただろう。
今は少しも心に引っかからない。
1時間もしない内に図書館の入り口からはぁはぁと息荒く走ってくる男の姿があった。タイセーだ。
「タイセー!」
「イチロ!」
お互いに名前を呼び合って再会を喜び合った。男同士で抱き合うとかはしなかったかけど、それくらいの勢いで手を取り合った。
入口からフリースペースに移動してタイセーと向かい合う。
メールしてすぐにここまできてくれたタイセーに迷惑かけて悪いと思う反面、心配して駆けつけてくれてすごく嬉しくなった。
「イチロ、お前今どんな状況なんだ?一人でやってけてんのかよ?」
「いや、それが……バイトもこの前クビになって、アパートも家賃払えなくて追い出された……」
「おいおい、マジかよ」
はぁ、とため息を吐くタイセーの反応にびくついた。タイセーにこれ以上情けないやつだと思われたくない。けれど現状を変えることはどうしてもできなくて、またうるうると瞳が潤んだ。
「俺ほんと情けないよな、こんな姿晒してさ……」
ぎゅうっと膝の上で手を握りしめた。爪が皮膚に食い込んで痛いくらい。
「情けなくなんてない。情けないのは俺だよ。お前がこんだけ苦労してんのに、そんなお前に頼られない俺の方が情けないだろ」
「そんなことない!タイセーはほんといいやつで、俺にはもったいないくらい……、いつも助けて貰ってばかりで、申し訳ないんだ俺」
「お前はもっと俺に頼れよ。そんな家もない状況で相談もされないなんて、悔しいよ」
「タイセー……ごめん、ありがとう」
タイセーの気持ちが痛いほど嬉しかった。
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