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 飯でも食いに行こうぜと誘われて、図書館から近くのファミレスに来た。

「ここは俺が払うから好きな物頼めよ。お前細すぎ!やつれ過ぎだよ……こんなになるまで働いて……」
 
 肩や腕を掴まれて骨が出て角ばった体を確認された。
 顔も覗き込まれて居た堪れなくなった。きっと顔色もあまり良くないし、目の下には隈ができているだろうな。
 
「うん、ありがとうタイセー。俺、一人で頑張り過ぎたかな。やっと親元を離れて独り立ちできたからさ、なんとかやっていこうって必死だったんだ」
「いいから、好きなもん食えよ。いっぱい頼もうぜ。俺も腹減ってるし」

 俺の好きな物ばっかりを頼むタイセーは無茶苦茶いいやつだ。
 油断すると鼻奥がツンと痛くなる。すぐに泣くくせがつきそうだ。気をつけないと。
 男のくせに泣き虫だなんて恥ずかしいし。

 あれこれいっぱい頼んで二人でシェアしながら腹一杯食べた。こんなに満腹になるまで食べたのはいつぶりだろうか。すっかり痩せたお腹は、食べた物でぽっこりと出ていた。

 ぽっこりと出たお腹をさすりながら食後のコーヒーを飲んでゆったりした。

 
 
「イチロ、お前に紹介したい仕事がある」

 唐突にもそんなことを言うタイセー。

「仕事を紹介って……それは助かるけど、いいのか?というか、俺で大丈夫なの?」
「お前に合った仕事だからさ。お前にしか頼めないんだよ」

 俺に合った仕事、俺にしか頼めない……一体どんな仕事なんだろう。そんな仕事があるなんて想像もつかない。今まで色んなバイトをしてきて続いたことなんてなかった。調子いいな、と思ってもすぐになんか失敗してクビになってきた。
 それをタイセーもよく知ってるはずなのに。
 俺にどんな仕事が合うっていうんだろう。

「俺みたいのが選べる立場じゃないけど、どんな仕事なのか聞いてもいいか?」
「料理、洗濯、掃除なんかが主な仕事だ。家事代行サービスってやつかな」

 タイセーも食後のコーヒーをゆっくりと飲みながら答えた。
 
「家事代行……」
「お前、学生の時とかバイトしながら家のこと全部してただろ?弟、妹の面倒も見てさ。当時ほんとよくやってたと思うよ。その家事やお世話の腕を見込んでお願いしたいんだよな」

 学生時代は部活もやらずに、バイトと家のことでいっぱいいっぱいで、勉強なんてろくに手がつかなかった。
 本当だったらもっと勉強したかったし、部活もやって友達と遊んだりもしたかった。
 けれどそれは許されない環境だった。
 家もそんなに裕福じゃないのに、子沢山なハムスター家族。長男なんだから、と家の家計を助けるためにバイトを掛け持ち。そんなに歳の離れていない弟妹の世話もさせられた。
 最初は嫌じゃなかった。家族のために何かできる自分が誇らしかった。両親とも働きっぱなしで、歳の離れた妹は俺にべったり懐いた。「イチロにぃイチロにぃ」ってどこ行くにも後ろをついてきて可愛かったし。
 両親も働いてはいたけど、俺だけがこんなに働いているのにいつからか疑問を持った。学生である本業の学業を疎かにして、バイトも家事も育児でさえも担当していた。歳の近いすぐ下の弟は部活に彼女にと遊び呆けていたのに。
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