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「そいつ一軒家でさ、住み込みでお願いしたいんだけど大丈夫か?」
「逆に願ったり叶ったりだ。けど、お前それ無理に頼み込んだんじゃないのか?俺のために」

 住むところも追い出された俺を哀れに思って、仲のいいそいつに無理してお願いしてるんじゃないかと心配になった。

「そいつ、住み込みで朝から晩まで見てないと何しでかすかわかんないんだよな。ゲームに集中すると水飲むのも忘れるくらいだし」
「ええ?それで今までどうやって生きてきたんだよ」

 集中力がありすぎるタイプなんだろうか。
 水を飲み忘れるとか相当やばいだろ。
 
「一軒家買うまで家族と一緒に暮らしてたから、今までは同居家族が面倒見てたっぽい。ゲーム実況を配信し出してからは、その音がうるさいってことでちょっと前に家を出て一軒家買って移り住んだらしい」
「……一軒家ってそんなポンと買えるのか?」

 一軒家ってすげーな。一人暮らしだろ?アパートとかマンションじゃないんだ。
 同じ家を出た身としては天と地ほどの差がある。
 
「親が金持ち?らしくて、不動産関係の仕事してるから希望通りの物件がすぐ見つかったらしいぞ。本人も金は配信で結構稼いでるし」
「ふーん、お坊ちゃんなんだな」

 金に苦労したこととかないんだろうな。羨ましい。こっちは今日食べる物にも困るくらいに貧困してるってのにさ。
 
「お試し期間ってことで今日から一週間!どう?」
「今日からって、そんな急で大丈夫か?相手も都合があるだろ?」
「一応事前に言ってあるけど、心配なら今から電話して聞いてみるか」

 ポケットに入れていたスマートフォンを取り出して電話をかけ始めた。

「あー、俺俺。うん、うん。そう、……あのさ、この前言ってた住み込みの家事代行、今日からでも大丈夫だよな?……おー、うん。今から行くよ、お前ん家……あぁ、そうそう。うん。俺の友達のハムスター獣人、イチロとさ」

 俺俺ってオレオレ詐欺じゃないんだから。それで通じるのかよ。って思ったけどちゃんと通じてる。ほんとに大丈夫か?
 ドキドキしながら電話してるタイセーを見守る。

「あ、オッケー。わかった、うん、じゃあよろしくな」

 ピッ、とスマートフォンを操作して電子音が鳴った。心配そうに様子を見ていたが、電話を終えたタイセーがにっこりと微笑んだ。

「大丈夫だってよ!今から行くぞ。俺も一緒についていって紹介するわ」
「マジで?」
「マジマジ。ほら、行くぞ」
 
 驚く程元気な声と笑顔を向けられて、腕を取られて立たされた。
 
 本当に大丈夫なんだろうな。タイセーの満面の笑みが逆に心配だ。無理矢理行って嫌々家事代行引き受けてたとかだったらどうしよう。門前払い食らったりして。
 でもタイセーもついてきてくれるし門前払いはないか。
 でも不安は拭えなかった。

「一軒家だから部屋はいっぱいあるし、大丈夫だろ」
「そういうことを心配してんじゃないんだけど……」

 思ったら即行動!の行動力の高さは羨ましいほどで、俺には真似できそうにもなかった。
 同じハムスター獣人で長男なのに、育ってきた環境なのか元々の性格なのか、こんなに差があるのは不思議だ。
 
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