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婚約者ロベルト様の誕生日パーティーで、突然、私はロベルト様に名前を呼ばれた。
彼の隣には義姉のミリアナが腕を絡ませて嘲笑い立っている。
「アリーシャ!君は毎日の様にミリアナを虐めていたそうだな。そればかりでは無い。使用人にも傲慢な態度を取っているとか。そんな女が僕の婚約者などあり得ない。よって君とは婚約破棄させて貰う。僕はここにいるミリアナ・モイラス伯爵令嬢に結婚を申し込む。どうか僕と結婚して欲しい」
「ロベルト様ぁ~、凄く嬉しいです。結婚の申し込みをお受け致しますわ」
茶番劇を何時までも見ているのは苦痛だ。
私は静かに頭を下げて「婚約破棄を了承致します」と告げると会場を後にしようとした。
それに待った!を掛けたのは、私の義母になったマリアだった。
「旦那様。可愛いミリアナを虐めていたアリーシャと、これからも一緒に住むのは、ミリアナが可哀想ですわ。ねっ、お分かりになりますでしょう?」
「ああ、そうだなっ!アリーシャを廃嫡し勘当する。屋敷に戻る事は許さない」
はぁー。これが実の父親が言う事なのでしょうか?
政略結婚の母を愛していなかったとはいえ、血の繋がった実の娘を着の身着のままで追い出すなんて…。
まぁこの茶番劇、知ってましたけれどね♪
私は、会場を後にした。
門を出れば、家紋のない馬車が待っていた。
「お嬢、終わりましたか?」
「ええ、無事に婚約破棄されて、廃嫡され追い出されてきたわ♪」
これで私はモイラス伯爵家とは何の関係もないアリーシャとなった。
「では行きましょうか。我が主が首を長くして屋敷でお待ちですよ♪」
「ええー嫌よ!私は只のアリーシャとして生きていくと決めたのよ!その事は伯父様にも伝えてあるわ」
母が流行り病で儚くなると、父は喪も明けぬうちに義母のマリアと義姉のミリアナを屋敷に引き入れた。
父に愛人がいる事は知っていたが、半月違いの姉が居るとは知らなかった。
母と私のせいで、父と結婚する事も、ミリアナが産まれても一緒に暮らす事が出来なかった。
当然、2人は、私を恨み、挙げ句に虐め、使用人と同じ様に扱い、屋敷の日の当たらない物置部屋に追いやった。
兄弟が居なかった私は、モイラス伯爵家を継ぐ為に、祖父が健在な頃は、当主教育を受けていた。
ガイラン伯爵家の三男であるハロルド様との婚約も父ではなく祖父が決めたものだ。
決めた基準が、そこそこ見目が良く、贅沢せずに程よい馬鹿。
当主となる私の仕事に口出しをしない男だった。
勿論、父と母の結婚も祖父が決めていた。
父は、愛するマリアと結婚したいと願った様だが、マリアは男爵家の娘な上に、男爵が平民に産ませた庶子だった。
それに比べ、母は、リンドバーグ侯爵家の令嬢。
祖父は母と結婚しないのなら父を廃嫡し遠縁から養子を取ると言った。
伯爵家嫡男として生きてきた父は廃嫡を恐れ、それ以上は祖父に逆らう事なく、渋々と母との婚姻を受け入れた。
愛よりも貴族としての暮らしを取った男なのだ。
しかしマリアは、その事実を知らない。
父は母が侯爵令嬢である立場を利用して結婚を迫った!とマリアに告げていたからだ。
祖父が亡くなると、父は屋敷に戻る事が少なくなった。
執務も滞り、仕方なくアリーシャが当主代理として執務をこなしてきた。
母が流行り病で床に伏せても、父は帰らなかった。
帰って来たのは、息を引き取ってから…。
母が亡くなり3日後には、マリアとミリアナがモイラス伯爵家にやって来たのだ。
アリーシャは、父に嫌悪感を抱き、今後されるであろう事を予測した。
その時の為に、今日まで動いてきた。
カイルの主であるリンドバーグ侯爵当主の伯父様には、嫡男アルベルトと娘のスザンヌがいた。
スザンヌは、アグレスト公爵家の嫡男と婚約している。
だが嫡男であるアルベルトには、なぜか婚約者が決まっていなかった。
アルベルトは、見目麗しく婚約者の座を狙うご令嬢も少なくない。
はっきり言って選り取り見取りだ。
それなのに、なぜか伯父様もアルベルトも釣書を見もせずに、断り続けている。
「お嬢、勘弁して下さいよ。お嬢を連れて行かないと俺がクビになりますよ」
「クビになったら、うちで雇うから大丈夫よ。カイルは雇用主が変わるだけだわ」
カイルは、私が馬車に乗り込むと無言で御者台に座った。
私が何を言ってもカイルの向かう先は決まっているのだけれど、ちょっとは反抗してみたいじゃない。
貴族令嬢として過ごして来たけれど、使用人と一緒に働き、社交界にも、どうしても出席しなければならないものだけ参加していた生活は、私にとって、とても楽だった。
父に捨てられると分かっていたから、平民になっても困らない様に、こっそりと商会を立ち上げていた。
伯父様に頼み、スポンサーになって貰っている。
伯父様は、モイラス家を追い出されたら、我が家に住むと良いと言っていた。
勿論、断ったわよ!
商会の2階で暮らすつもりで、部屋も作ったもの。
アルベルトは、いつでも来れる様にアリーシャの部屋も用意したよ!と笑顔で言っていた。
住む予定なんて無いのに…。
「その部屋はアルベルトの奥様の部屋にして!」
「…じゃあ…アリーシャの部屋だ」
会話になっていないわ。
私の言葉を聞いていたのかしら?と思ったっけ。
馬車が止まった。
扉が開かれると笑顔でアルベルトが出迎えてくれている。
「お帰り、アリーシャ。やっとリンドバーグ家に来てくれた」
「いつも来ているじゃない。それに、前にも言ったけ…」
「父上が応接室で待っている。話しはそこで聞くよ」
アルベルトと共に応接室に向かえば、伯父様と伯母様の他に母の姉のグラン伯爵夫人とグラン伯爵がニコニコして待っていた。
「無事に終わったのかな?」
「はい。予測した通りガイラン伯爵ご子息と婚約破棄し、モイラス伯爵家より廃嫡と勘当を言い渡されました」
「そうか、そうか。それは喜ばしい事だ。では、これで誰にも邪魔されずに進められるな。さぁアリーシャ、これにサインして」
差し出された書類は、グラン伯爵と私の養子縁組の書類だった。
「?…養子縁組とは?」
「モイラス家を勘当されたアリーシャは平民だから、そのままでは侯爵家に嫁ぐ事は出来ないだろう?婚約破棄だけならば、養子縁組など必要なかったんだが…まあ、縁を切らなければ、モイラス伯爵家に金の無心をされ続けられるだけだし、勘当されて良かった。アルベルトも、やっとアリーシャと婚約が出来る。本当に良かった、良かった」
アルベルトと私が婚約!?
確かに私の初恋はアルベルトだけれど、今の私達の間に恋愛感情なんてあった?
アルベルトは、私の事が好きなの?
私の手を握り「やっと僕の物になった。2人で幸せになろうね」なんてアルベルトに笑顔で言われたら、断る事なんて出来ないじゃない。
商会も、そのまま私が続けて行って構わないと言ってくれてるし、こんな私でも好きだと言ってくれるのなんてアルベルトだけだし…。
私は、養子縁組の書類にサインをした。
その後に出てきた婚約届にもサインをする。
その書類は、直ぐに執事によって役所に届けられたのだった。
彼の隣には義姉のミリアナが腕を絡ませて嘲笑い立っている。
「アリーシャ!君は毎日の様にミリアナを虐めていたそうだな。そればかりでは無い。使用人にも傲慢な態度を取っているとか。そんな女が僕の婚約者などあり得ない。よって君とは婚約破棄させて貰う。僕はここにいるミリアナ・モイラス伯爵令嬢に結婚を申し込む。どうか僕と結婚して欲しい」
「ロベルト様ぁ~、凄く嬉しいです。結婚の申し込みをお受け致しますわ」
茶番劇を何時までも見ているのは苦痛だ。
私は静かに頭を下げて「婚約破棄を了承致します」と告げると会場を後にしようとした。
それに待った!を掛けたのは、私の義母になったマリアだった。
「旦那様。可愛いミリアナを虐めていたアリーシャと、これからも一緒に住むのは、ミリアナが可哀想ですわ。ねっ、お分かりになりますでしょう?」
「ああ、そうだなっ!アリーシャを廃嫡し勘当する。屋敷に戻る事は許さない」
はぁー。これが実の父親が言う事なのでしょうか?
政略結婚の母を愛していなかったとはいえ、血の繋がった実の娘を着の身着のままで追い出すなんて…。
まぁこの茶番劇、知ってましたけれどね♪
私は、会場を後にした。
門を出れば、家紋のない馬車が待っていた。
「お嬢、終わりましたか?」
「ええ、無事に婚約破棄されて、廃嫡され追い出されてきたわ♪」
これで私はモイラス伯爵家とは何の関係もないアリーシャとなった。
「では行きましょうか。我が主が首を長くして屋敷でお待ちですよ♪」
「ええー嫌よ!私は只のアリーシャとして生きていくと決めたのよ!その事は伯父様にも伝えてあるわ」
母が流行り病で儚くなると、父は喪も明けぬうちに義母のマリアと義姉のミリアナを屋敷に引き入れた。
父に愛人がいる事は知っていたが、半月違いの姉が居るとは知らなかった。
母と私のせいで、父と結婚する事も、ミリアナが産まれても一緒に暮らす事が出来なかった。
当然、2人は、私を恨み、挙げ句に虐め、使用人と同じ様に扱い、屋敷の日の当たらない物置部屋に追いやった。
兄弟が居なかった私は、モイラス伯爵家を継ぐ為に、祖父が健在な頃は、当主教育を受けていた。
ガイラン伯爵家の三男であるハロルド様との婚約も父ではなく祖父が決めたものだ。
決めた基準が、そこそこ見目が良く、贅沢せずに程よい馬鹿。
当主となる私の仕事に口出しをしない男だった。
勿論、父と母の結婚も祖父が決めていた。
父は、愛するマリアと結婚したいと願った様だが、マリアは男爵家の娘な上に、男爵が平民に産ませた庶子だった。
それに比べ、母は、リンドバーグ侯爵家の令嬢。
祖父は母と結婚しないのなら父を廃嫡し遠縁から養子を取ると言った。
伯爵家嫡男として生きてきた父は廃嫡を恐れ、それ以上は祖父に逆らう事なく、渋々と母との婚姻を受け入れた。
愛よりも貴族としての暮らしを取った男なのだ。
しかしマリアは、その事実を知らない。
父は母が侯爵令嬢である立場を利用して結婚を迫った!とマリアに告げていたからだ。
祖父が亡くなると、父は屋敷に戻る事が少なくなった。
執務も滞り、仕方なくアリーシャが当主代理として執務をこなしてきた。
母が流行り病で床に伏せても、父は帰らなかった。
帰って来たのは、息を引き取ってから…。
母が亡くなり3日後には、マリアとミリアナがモイラス伯爵家にやって来たのだ。
アリーシャは、父に嫌悪感を抱き、今後されるであろう事を予測した。
その時の為に、今日まで動いてきた。
カイルの主であるリンドバーグ侯爵当主の伯父様には、嫡男アルベルトと娘のスザンヌがいた。
スザンヌは、アグレスト公爵家の嫡男と婚約している。
だが嫡男であるアルベルトには、なぜか婚約者が決まっていなかった。
アルベルトは、見目麗しく婚約者の座を狙うご令嬢も少なくない。
はっきり言って選り取り見取りだ。
それなのに、なぜか伯父様もアルベルトも釣書を見もせずに、断り続けている。
「お嬢、勘弁して下さいよ。お嬢を連れて行かないと俺がクビになりますよ」
「クビになったら、うちで雇うから大丈夫よ。カイルは雇用主が変わるだけだわ」
カイルは、私が馬車に乗り込むと無言で御者台に座った。
私が何を言ってもカイルの向かう先は決まっているのだけれど、ちょっとは反抗してみたいじゃない。
貴族令嬢として過ごして来たけれど、使用人と一緒に働き、社交界にも、どうしても出席しなければならないものだけ参加していた生活は、私にとって、とても楽だった。
父に捨てられると分かっていたから、平民になっても困らない様に、こっそりと商会を立ち上げていた。
伯父様に頼み、スポンサーになって貰っている。
伯父様は、モイラス家を追い出されたら、我が家に住むと良いと言っていた。
勿論、断ったわよ!
商会の2階で暮らすつもりで、部屋も作ったもの。
アルベルトは、いつでも来れる様にアリーシャの部屋も用意したよ!と笑顔で言っていた。
住む予定なんて無いのに…。
「その部屋はアルベルトの奥様の部屋にして!」
「…じゃあ…アリーシャの部屋だ」
会話になっていないわ。
私の言葉を聞いていたのかしら?と思ったっけ。
馬車が止まった。
扉が開かれると笑顔でアルベルトが出迎えてくれている。
「お帰り、アリーシャ。やっとリンドバーグ家に来てくれた」
「いつも来ているじゃない。それに、前にも言ったけ…」
「父上が応接室で待っている。話しはそこで聞くよ」
アルベルトと共に応接室に向かえば、伯父様と伯母様の他に母の姉のグラン伯爵夫人とグラン伯爵がニコニコして待っていた。
「無事に終わったのかな?」
「はい。予測した通りガイラン伯爵ご子息と婚約破棄し、モイラス伯爵家より廃嫡と勘当を言い渡されました」
「そうか、そうか。それは喜ばしい事だ。では、これで誰にも邪魔されずに進められるな。さぁアリーシャ、これにサインして」
差し出された書類は、グラン伯爵と私の養子縁組の書類だった。
「?…養子縁組とは?」
「モイラス家を勘当されたアリーシャは平民だから、そのままでは侯爵家に嫁ぐ事は出来ないだろう?婚約破棄だけならば、養子縁組など必要なかったんだが…まあ、縁を切らなければ、モイラス伯爵家に金の無心をされ続けられるだけだし、勘当されて良かった。アルベルトも、やっとアリーシャと婚約が出来る。本当に良かった、良かった」
アルベルトと私が婚約!?
確かに私の初恋はアルベルトだけれど、今の私達の間に恋愛感情なんてあった?
アルベルトは、私の事が好きなの?
私の手を握り「やっと僕の物になった。2人で幸せになろうね」なんてアルベルトに笑顔で言われたら、断る事なんて出来ないじゃない。
商会も、そのまま私が続けて行って構わないと言ってくれてるし、こんな私でも好きだと言ってくれるのなんてアルベルトだけだし…。
私は、養子縁組の書類にサインをした。
その後に出てきた婚約届にもサインをする。
その書類は、直ぐに執事によって役所に届けられたのだった。
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