2 / 3
2
しおりを挟む
1ヶ月後、私とアルベルトの婚約パーティーが開かれた。
リンドバーグ侯爵家もグラン伯爵家も、そんなにモイラス伯爵家とガイラン伯爵家とは付き合いが無いのだけれど形式上、一応招待状を伯父様は送った。
他の夜会やお茶会で私とかち合ってしまった時に、騒ぎを起こし他家に迷惑を掛けられてしまう前にバラしてしまおうと考えたのだ。
それに、父は、リンドバーグ侯爵家との繋がりが切れた事に未だに気が付いていない様し、それも分からせる為なのだろう。
私はアルベルトにエスコートされ会場へと踏み入れる。
入り口付近に居たモイラス伯爵家とガイラン伯爵家の6人が目に入った。
向こうの6人も私を見て驚いている。
「今夜は私達の婚約発表パーティーにようこそお出で下さいました。紹介します。私の婚約者のアリーシャ・グランです」
「アリーシャ・グランと申します。どうぞ宜しくお願い致します」
アルベルトの紹介の後に私は挨拶をしカーテシーをする。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!なんで、あんたがここに居るのよ!?アルベルト様の婚約者?平民のあんたがアルベルト様の婚約者になれるわけないでしょう!!」
顔を赤くして怒鳴っているのはミリアナだ。
隣にいるハロルドは、公の場で淑女らしからぬ態度で怒鳴るミリアナにオロオロしている。
「そ、そうよ!モイラス伯爵家から縁を切られたアリーシャは平民なのよ。侯爵家に嫁ぐなど出来るはずないわよ。ねぇあなた」
「……グラン…グラン伯爵家か。なるほど貴殿がアリーシャを引き受けたのか?リンドバーグ侯爵家にアリーシャを嫁がせる為に態態?リンドバーグ卿、アリーシャは、私の娘だ。グラン伯爵家への養子縁組など私は了承しておらぬ。もしアリーシャをお望みなら、リンドバーグ侯爵家には、アリーシャ・モイラスとして嫁がせる」
父の頭の中で、アリーシャがリンドバーグ侯爵家に嫁げば、経営不振の為に必要な資金を援助して貰おうと考えているのだろう。
アリーシャを追い出したモイラス伯爵家は、経営難に陥っていた。
そもそも父に当主としての能力も、領地経営にも向いていない。
無能な駄目当主なのだ。
祖父は、それが分かっていたから、幼い私に当主となる様、教育を施した。
祖父亡き後に、モイラス伯爵家当主としての仕事をしてきたのはアリーシャだ。
そのアリーシャが居なくなれば、執務が滞り、領地の経営も回らなくなるのは当然の事。
普段から何もせずに、何も考えずお金を使い贅沢する3人にアリーシャは、腹が立っていた。
何とか経営難にならぬギリギリを保っていられたのも、アリーシャが頑張っていたからこそ。
そんな時に、マリアとミリアナがアリーシャからハロルドを奪い、アリーシャを屋敷から追い出そう離していると使用人が教えてくれたのだ。
あの時、もしも父が、マリアの言葉に従わず、アリーシャを屋敷から追い出さなければモイラス伯爵家が窮地に立つ事はなかった。
いや、遅かれ早かれ私は屋敷を出ていただろう。
商会も順調に売り上げを伸ばしている。
虐げられて生活するよりも屋敷を出て好きに生きたいと思っていた。
こんな家族、捨てられる前に捨ててやる!!と思っていたのだから。
「何を言っているのだ?貴殿は、ガイラン伯爵家のパーティーにて、アリーシャを廃嫡し勘当したと聞いている。皆が居る公の場で言い渡したのだ。今更、なかったとは言えるはずもなかろう?それに正式に除籍届も出されてはずだか?私がアリーシャと養子縁組をしても何の問題がある」
「そ、それでもアリーシャは私の娘だっ!!」
叫ぶ父に気を取られていたら、腕をグィと引っ張られた。
「痛…」
「あんたにアルベルト様は相応しくないわ!アルベルト様ぁ~、アリーシャは、私を虐めて楽しみ笑う女なんです。使用人にも暴言を吐き、自分が気に入らなければ暴力を振るうんですよぉ~。アルベルト様は、この女に騙されているのです。どうか目を覚まして下さいませ。アルベルト様の様な素敵な方には、もっと相応しい方が居ますわ」
「例えば君の様な?」
「そ、そうです。アルベルト様の隣には、私の様な…」
「ああ、すまない。君はガイラン伯爵子息の婚約者だったね」
「アルベルト様が私をお望みなら、ハロルドとの婚約は直ぐに解消しますわぁ~!」
「ミ、ミリアナ、な、何を言っているのだ?君は僕の事が好きだと言っていたじゃないか!?」
「煩いわね!あんたよりもアルベルト様の方が良いに決まっているじゃない!婚約は解消よ!!」
ハロルドもガイラン伯爵夫妻もミリアナの言葉に唖然としている。
「まあ、まあ、アルベルト様がミリアナを見染めてくれるなんて、ねぇあなた」
浮かれるマリアとミリアナとは違い、父は青ざめていた。
馬鹿な父でも、流石にアルベルトに嵌められたと分かったのだ。
ミリアナは、公の場でハロルドを見下し、婚約解消を宣言した。
一方、アルベルトは、アリーシャと婚約を解消するとは言っていないし、ミリアナと婚約をするとも言っていない。
上機嫌でアリーシャを押し退け様としたミリアナをアルベルトが遮る。
「これ以上、私の愛するアリーシャを愚弄する事は許さない!モイラス伯爵、この者達を連れ、この場から退場願おう」
「な、なぜですの?アルベルト様は私を…」
「君に私の名前を呼ぶ事を許した覚えはない!不愉快だ!それに、その汚ない手で私のアリーシャに触れるなっ!アリーシャが虐めだと?お前達がアリーシャを虐め、使用人に暴言を吐き、憂さ晴らしに暴力を振るっていたのは調べが付いている。そしてモイラス卿、貴殿も執務を全てアリーシャに任せ、自分が執務した様にしていた事も全て分かっている。事を起こさなければ、アリーシャの願い通りに、そのまま黙っていたものを。アグレスト卿、後程資料をお渡ししても?」
アグレスト公爵は、王弟で騎士団の団長をしている。
そのアグレスト公爵に調べた資料が渡されるのだ。
モイラス伯爵家の罪が明るみになるのは間違いない。
使用人によってモイラス伯爵家とガイラン伯爵家の6人は会場を退室させられた。
リンドバーグ侯爵家もグラン伯爵家も、そんなにモイラス伯爵家とガイラン伯爵家とは付き合いが無いのだけれど形式上、一応招待状を伯父様は送った。
他の夜会やお茶会で私とかち合ってしまった時に、騒ぎを起こし他家に迷惑を掛けられてしまう前にバラしてしまおうと考えたのだ。
それに、父は、リンドバーグ侯爵家との繋がりが切れた事に未だに気が付いていない様し、それも分からせる為なのだろう。
私はアルベルトにエスコートされ会場へと踏み入れる。
入り口付近に居たモイラス伯爵家とガイラン伯爵家の6人が目に入った。
向こうの6人も私を見て驚いている。
「今夜は私達の婚約発表パーティーにようこそお出で下さいました。紹介します。私の婚約者のアリーシャ・グランです」
「アリーシャ・グランと申します。どうぞ宜しくお願い致します」
アルベルトの紹介の後に私は挨拶をしカーテシーをする。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!なんで、あんたがここに居るのよ!?アルベルト様の婚約者?平民のあんたがアルベルト様の婚約者になれるわけないでしょう!!」
顔を赤くして怒鳴っているのはミリアナだ。
隣にいるハロルドは、公の場で淑女らしからぬ態度で怒鳴るミリアナにオロオロしている。
「そ、そうよ!モイラス伯爵家から縁を切られたアリーシャは平民なのよ。侯爵家に嫁ぐなど出来るはずないわよ。ねぇあなた」
「……グラン…グラン伯爵家か。なるほど貴殿がアリーシャを引き受けたのか?リンドバーグ侯爵家にアリーシャを嫁がせる為に態態?リンドバーグ卿、アリーシャは、私の娘だ。グラン伯爵家への養子縁組など私は了承しておらぬ。もしアリーシャをお望みなら、リンドバーグ侯爵家には、アリーシャ・モイラスとして嫁がせる」
父の頭の中で、アリーシャがリンドバーグ侯爵家に嫁げば、経営不振の為に必要な資金を援助して貰おうと考えているのだろう。
アリーシャを追い出したモイラス伯爵家は、経営難に陥っていた。
そもそも父に当主としての能力も、領地経営にも向いていない。
無能な駄目当主なのだ。
祖父は、それが分かっていたから、幼い私に当主となる様、教育を施した。
祖父亡き後に、モイラス伯爵家当主としての仕事をしてきたのはアリーシャだ。
そのアリーシャが居なくなれば、執務が滞り、領地の経営も回らなくなるのは当然の事。
普段から何もせずに、何も考えずお金を使い贅沢する3人にアリーシャは、腹が立っていた。
何とか経営難にならぬギリギリを保っていられたのも、アリーシャが頑張っていたからこそ。
そんな時に、マリアとミリアナがアリーシャからハロルドを奪い、アリーシャを屋敷から追い出そう離していると使用人が教えてくれたのだ。
あの時、もしも父が、マリアの言葉に従わず、アリーシャを屋敷から追い出さなければモイラス伯爵家が窮地に立つ事はなかった。
いや、遅かれ早かれ私は屋敷を出ていただろう。
商会も順調に売り上げを伸ばしている。
虐げられて生活するよりも屋敷を出て好きに生きたいと思っていた。
こんな家族、捨てられる前に捨ててやる!!と思っていたのだから。
「何を言っているのだ?貴殿は、ガイラン伯爵家のパーティーにて、アリーシャを廃嫡し勘当したと聞いている。皆が居る公の場で言い渡したのだ。今更、なかったとは言えるはずもなかろう?それに正式に除籍届も出されてはずだか?私がアリーシャと養子縁組をしても何の問題がある」
「そ、それでもアリーシャは私の娘だっ!!」
叫ぶ父に気を取られていたら、腕をグィと引っ張られた。
「痛…」
「あんたにアルベルト様は相応しくないわ!アルベルト様ぁ~、アリーシャは、私を虐めて楽しみ笑う女なんです。使用人にも暴言を吐き、自分が気に入らなければ暴力を振るうんですよぉ~。アルベルト様は、この女に騙されているのです。どうか目を覚まして下さいませ。アルベルト様の様な素敵な方には、もっと相応しい方が居ますわ」
「例えば君の様な?」
「そ、そうです。アルベルト様の隣には、私の様な…」
「ああ、すまない。君はガイラン伯爵子息の婚約者だったね」
「アルベルト様が私をお望みなら、ハロルドとの婚約は直ぐに解消しますわぁ~!」
「ミ、ミリアナ、な、何を言っているのだ?君は僕の事が好きだと言っていたじゃないか!?」
「煩いわね!あんたよりもアルベルト様の方が良いに決まっているじゃない!婚約は解消よ!!」
ハロルドもガイラン伯爵夫妻もミリアナの言葉に唖然としている。
「まあ、まあ、アルベルト様がミリアナを見染めてくれるなんて、ねぇあなた」
浮かれるマリアとミリアナとは違い、父は青ざめていた。
馬鹿な父でも、流石にアルベルトに嵌められたと分かったのだ。
ミリアナは、公の場でハロルドを見下し、婚約解消を宣言した。
一方、アルベルトは、アリーシャと婚約を解消するとは言っていないし、ミリアナと婚約をするとも言っていない。
上機嫌でアリーシャを押し退け様としたミリアナをアルベルトが遮る。
「これ以上、私の愛するアリーシャを愚弄する事は許さない!モイラス伯爵、この者達を連れ、この場から退場願おう」
「な、なぜですの?アルベルト様は私を…」
「君に私の名前を呼ぶ事を許した覚えはない!不愉快だ!それに、その汚ない手で私のアリーシャに触れるなっ!アリーシャが虐めだと?お前達がアリーシャを虐め、使用人に暴言を吐き、憂さ晴らしに暴力を振るっていたのは調べが付いている。そしてモイラス卿、貴殿も執務を全てアリーシャに任せ、自分が執務した様にしていた事も全て分かっている。事を起こさなければ、アリーシャの願い通りに、そのまま黙っていたものを。アグレスト卿、後程資料をお渡ししても?」
アグレスト公爵は、王弟で騎士団の団長をしている。
そのアグレスト公爵に調べた資料が渡されるのだ。
モイラス伯爵家の罪が明るみになるのは間違いない。
使用人によってモイラス伯爵家とガイラン伯爵家の6人は会場を退室させられた。
204
あなたにおすすめの小説
絶縁状をお受け取りくださいませ旦那様。~離縁の果てに私を待っていたのは初恋の人に溺愛される幸せな異国ライフでした
松ノ木るな
恋愛
アリンガム侯爵家夫人ルシールは離婚手続きが進むさなかの夜、これから世話になる留学先の知人に手紙をしたためていた。
もう書き終えるかという頃、扉をノックする音が聞こえる。その訪ね人は、薄暗い取引で長年侯爵家に出入りしていた、美しい男性であった。
義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜
有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。
「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」
本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。
けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。
おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。
貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。
「ふふ、気づいた時には遅いのよ」
優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。
ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇!
勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気だと疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う幸せな未来を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
虐げられたアンネマリーは逆転勝利する ~ 罪には罰を
柚屋志宇
恋愛
侯爵令嬢だったアンネマリーは、母の死後、後妻の命令で屋根裏部屋に押し込められ使用人より酷い生活をすることになった。
みすぼらしくなったアンネマリーは頼りにしていた婚約者クリストフに婚約破棄を宣言され、義妹イルザに婚約者までも奪われて絶望する。
虐げられ何もかも奪われたアンネマリーだが屋敷を脱出して立場を逆転させる。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
婚約は破棄なんですよね?
もるだ
恋愛
義理の妹ティナはナターシャの婚約者にいじめられていたと嘘をつき、信じた婚約者に婚約破棄を言い渡される。昔からナターシャをいじめて物を奪っていたのはティナなのに、得意の演技でナターシャを悪者に仕立て上げてきた。我慢の限界を迎えたナターシャは、ティナにされたように濡れ衣を着せかえす!
どうでもいいですけどね
志位斗 茂家波
恋愛
「ミラージュ令嬢!!貴女との婚約を破棄する!!」
‥‥と、かつての婚約者に婚約破棄されてから数年が経ちました。
まぁ、あの方がどうなったのかは別にどうでもいいですけれどね。過去は過去ですから、変えようがないです。
思いついたよくある婚約破棄テンプレ(?)もの。気になる方は是非どうぞ。
『婚約破棄はご自由に。──では、あなた方の“嘘”をすべて暴くまで、私は学園で優雅に過ごさせていただきます』
佐伯かなた
恋愛
卒業後の社交界の場で、フォーリア・レーズワースは一方的に婚約破棄を宣告された。
理由は伯爵令嬢リリシアを“旧西校舎の階段から突き落とした”という虚偽の罪。
すでに場は整えられ、誰もが彼女を断罪するために招かれ、驚いた姿を演じていた──最初から結果だけが決まっている出来レース。
家名にも傷がつき、貴族社会からは牽制を受けるが、フォーリアは怯むことなく、王国の中央都市に存在する全寮制のコンバシオ学園へ。
しかし、そこでは婚約破棄の噂すら曖昧にぼかされ、国外から来た生徒は興味を向けるだけで侮蔑の視線はない。
──情報が統制されている? 彼らは、何を隠したいの?
静かに観察する中で、フォーリアは気づく。
“婚約破棄を急いで既成事実にしたかった誰か”が必ずいると。
歪んだ陰謀の糸は、学園の中にも外にも伸びていた。
そしてフォーリアは決意する。
あなた方が“嘘”を事実にしたいのなら──私は“真実”で全てを焼き払う、と。
【短編完結】婚約破棄なら私の呪いを解いてからにしてください
未知香
恋愛
婚約破棄を告げられたミレーナは、冷静にそれを受け入れた。
「ただ、正式な婚約破棄は呪いを解いてからにしてもらえますか」
婚約破棄から始まる自由と新たな恋の予感を手に入れる話。
全4話で短いお話です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる