【完結】貴方達が私を捨てたと思っている様ですが、私が貴方達を捨てたのです。

山葵

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1ヶ月後、私とアルベルトの婚約パーティーが開かれた。

リンドバーグ侯爵家もグラン伯爵家も、そんなにモイラス伯爵家とガイラン伯爵家とは付き合いが無いのだけれど形式上、一応招待状を伯父様は送った。
他の夜会やお茶会で私とかち合ってしまった時に、騒ぎを起こし他家に迷惑を掛けられてしまう前にバラしてしまおうと考えたのだ。

それに、父は、リンドバーグ侯爵家との繋がりが切れた事に未だに気が付いていない様し、それも分からせる為なのだろう。

私はアルベルトにエスコートされ会場へと踏み入れる。

入り口付近に居たモイラス伯爵家とガイラン伯爵家の6人が目に入った。
向こうの6人も私を見て驚いている。

「今夜は私達の婚約発表パーティーにようこそお出で下さいました。紹介します。私の婚約者のアリーシャ・グランです」

「アリーシャ・グランと申します。どうぞ宜しくお願い致します」

アルベルトの紹介の後に私は挨拶をしカーテシーをする。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!なんで、あんたがここに居るのよ!?アルベルト様の婚約者?平民のあんたがアルベルト様の婚約者になれるわけないでしょう!!」

顔を赤くして怒鳴っているのはミリアナだ。
隣にいるハロルドは、公の場で淑女らしからぬ態度で怒鳴るミリアナにオロオロしている。

「そ、そうよ!モイラス伯爵家から縁を切られたアリーシャは平民なのよ。侯爵家に嫁ぐなど出来るはずないわよ。ねぇあなた」

「……グラン…グラン伯爵家か。なるほど貴殿がアリーシャを引き受けたのか?リンドバーグ侯爵家にアリーシャを嫁がせる為に態態?リンドバーグ卿、アリーシャは、私の娘だ。グラン伯爵家への養子縁組など私は了承しておらぬ。もしアリーシャをお望みなら、リンドバーグ侯爵家には、アリーシャ・モイラスとして嫁がせる」

父の頭の中で、アリーシャがリンドバーグ侯爵家に嫁げば、経営不振の為に必要な資金を援助して貰おうと考えているのだろう。

アリーシャを追い出したモイラス伯爵家は、経営難に陥っていた。
そもそも父に当主としての能力も、領地経営にも向いていない。
無能な駄目当主なのだ。
祖父は、それが分かっていたから、幼い私に当主となる様、教育を施した。
祖父亡き後に、モイラス伯爵家当主としての仕事をしてきたのはアリーシャだ。
そのアリーシャが居なくなれば、執務が滞り、領地の経営も回らなくなるのは当然の事。
普段から何もせずに、何も考えずお金を使い贅沢する3人にアリーシャは、腹が立っていた。
何とか経営難にならぬギリギリを保っていられたのも、アリーシャが頑張っていたからこそ。

そんな時に、マリアとミリアナがアリーシャからハロルドを奪い、アリーシャを屋敷から追い出そう離していると使用人が教えてくれたのだ。

あの時、もしも父が、マリアの言葉に従わず、アリーシャを屋敷から追い出さなければモイラス伯爵家が窮地に立つ事はなかった。

いや、遅かれ早かれ私は屋敷を出ていただろう。
商会も順調に売り上げを伸ばしている。
虐げられて生活するよりも屋敷を出て好きに生きたいと思っていた。
こんな家族、捨てられる前に捨ててやる!!と思っていたのだから。

「何を言っているのだ?貴殿は、ガイラン伯爵家のパーティーにて、アリーシャを廃嫡し勘当したと聞いている。皆が居る公の場で言い渡したのだ。今更、なかったとは言えるはずもなかろう?それに正式に除籍届も出されてはずだか?私がアリーシャと養子縁組をしても何の問題がある」

「そ、それでもアリーシャは私の娘だっ!!」

叫ぶ父に気を取られていたら、腕をグィと引っ張られた。

「痛…」

「あんたにアルベルト様は相応しくないわ!アルベルト様ぁ~、アリーシャは、私を虐めて楽しみ笑う女なんです。使用人にも暴言を吐き、自分が気に入らなければ暴力を振るうんですよぉ~。アルベルト様は、この女に騙されているのです。どうか目を覚まして下さいませ。アルベルト様の様な素敵な方には、もっと相応しい方が居ますわ」

「例えば君の様な?」

「そ、そうです。アルベルト様の隣には、私の様な…」

「ああ、すまない。君はガイラン伯爵子息の婚約者だったね」

「アルベルト様が私をお望みなら、ハロルドとの婚約は直ぐに解消しますわぁ~!」

「ミ、ミリアナ、な、何を言っているのだ?君は僕の事が好きだと言っていたじゃないか!?」

「煩いわね!あんたよりもアルベルト様の方が良いに決まっているじゃない!婚約は解消よ!!」

ハロルドもガイラン伯爵夫妻もミリアナの言葉に唖然としている。

「まあ、まあ、アルベルト様がミリアナを見染めてくれるなんて、ねぇあなた」

浮かれるマリアとミリアナとは違い、父は青ざめていた。
馬鹿な父でも、流石にアルベルトに嵌められたと分かったのだ。

ミリアナは、公の場でハロルドを見下し、婚約解消を宣言した。
一方、アルベルトは、アリーシャと婚約を解消するとは言っていないし、ミリアナと婚約をするとも言っていない。

上機嫌でアリーシャを押し退け様としたミリアナをアルベルトが遮る。

「これ以上、私の愛するアリーシャを愚弄する事は許さない!モイラス伯爵、この者達を連れ、この場から退場願おう」

「な、なぜですの?アルベルト様は私を…」

「君に私の名前を呼ぶ事を許した覚えはない!不愉快だ!それに、その汚ない手で私のアリーシャに触れるなっ!アリーシャが虐めだと?お前達がアリーシャを虐め、使用人に暴言を吐き、憂さ晴らしに暴力を振るっていたのは調べが付いている。そしてモイラス卿、貴殿も執務を全てアリーシャに任せ、自分が執務した様にしていた事も全て分かっている。事を起こさなければ、アリーシャの願い通りに、そのまま黙っていたものを。アグレスト卿、後程資料をお渡ししても?」

アグレスト公爵は、王弟で騎士団の団長をしている。
そのアグレスト公爵に調べた資料が渡されるのだ。
モイラス伯爵家の罪が明るみになるのは間違いない。

使用人によってモイラス伯爵家とガイラン伯爵家の6人は会場を退室させられた。
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