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「陛下。そろそろ王太子の座をお決めになっては如何でしょう?第1王子のステフィン殿下は3年も呪いにより床に伏して居ります。執務が行えないステフィン殿下よりも第2王子アルバート殿下が継ぐのが相応しいかと。国の為、国民の為に、どうか早いご決断を!!」

貴族会議にて最後にはいつも王太子問題になっていた。
バルックス侯爵も前回までならアルバートを王太子にする様に迫っていたのだが、クリスティーナと婚約破棄したアルバートが王太子になるとしても、なるべく遅くしたい。
騒いでいる貴族達を横目に無言を貫いていた。

溜め息をつく国王もアルバートが優秀で有ったのなら何も悩む事なくアルバートに王太子を継承させただろう。
だが今のアルバートでは自分亡き後、アルバートがただのお飾り国王となり、政を悪しき者達の良い様に行われるのが目に見えていた。

「会議中、失礼する。陛下が貴族会議中と聞いて、ならば丁度良いと思い…」

「なっ!ステフィン!?」

「陛下。御心配をお掛けして申し訳ありませんでした。ステフィン・ブルングールド無事に完治し只今王宮へと戻りました」

会議室はステフィン殿下復活に喜ぶ者と苦虫を噛み潰したような顔をしてる者様々だ。
国王陛下とバルックス侯爵は、もちろん喜んでいた。

ステフィン殿下復活の号外が出させると国中の民が喜んだ。
どれだけアルバートは期待されていなかったのか…。



「はぁぁー!?クリスティーナが兄上を治しただと?どういう事だ!?」

兄の復活に喜ぶ所か苛立ちを隠さずに不機嫌な顔をしている。

「アルバート。彼女は今は僕の婚約者だよ?呼び捨ては止めようね。ああ、そうだ。バル男爵令嬢と婚約したんだってね。お祝いを言うのが遅くなってごめんね。おめでとう!僕もアルバートのお陰でクリスティーナという素晴らしい婚約者が出来たんだ。ねぇ、クリスティーナは、聖女だったんだよ。知ってた?ああ知らなかったからクリスティーナを捨て聖女候補のバル男爵令嬢を選んだんだよねっ」

「クリスティーナ…嬢が聖女!?なぜお前は今まで黙っていた!?」

「それが、ステフィン殿下とお会いして『呪いが解けて前の元気な殿下に戻って欲しい』と願いましたら、急に力が目覚めた様で御座います。ああ、アルバート殿下の言葉をお借りするなら、わたくしとステフィン殿下の真実の愛の力で聖女としての力が目覚めたというのでしょうか!?バル男爵令嬢との真実の愛を貫き、わたくしとの婚約を破棄して頂き、わたくしがステフィン殿下と婚約が出来た事で目覚めたのですから、アルバート殿下には心から感謝致しますわ」

婚約破棄宣言の次の日に私との婚約破棄を反対する側妃を無視し、慰謝料無しでステフィン殿下との婚約者変更を申し出たお父様を後押ししたのはアルバート。
彼は、慰謝料が要らなくなる事と、ミンスを虐めていた私への罰として呪われ床に伏すステフィンとの婚約を推したのだろう。

「ぐぅぅ!……はっ!?で、ではミンスは…」

アルバートは、項垂れ膝を付いた。
聖女だと信じていたミンスが聖女ではなかった。
聖女という肩書きが失くなれば、ミンスはただの男爵令嬢。
アルバートは、呪われていた兄を聖女の力を使ってミンスに治させるつもりはなかった。
兄の呪いが解けてしまえば、自分が王太子に選ばれる事はないと分かっていたのだ。
兄の呪いを解かない為に、アルバートは聖女候補のミンスに近付き恋仲になったのだ。

「父上。私に呪いを掛けた魔道師ですが、新たな事実が分かりましてね。なぜ魔道師は、手前に居た私ではなく後ろのアルバートを狙っていたのか、私は不思議でならなかった。まあ本人は魔道師が自害した事で未来永劫隠せたと思っていた様ですが…」

その言葉に側妃は顔面蒼白になり失神した。
自分が魔道師と関係が有ったと自ら証明したのだ。

ステフィン殿下が復活されたのであれば、アルバート殿下には用はないと皆が手の平を返す。
国王陛下もホッとしていた。

「ふむっ。王太子任命であるが、ステフィンも呪いが解けた。次期国王にどちらが相応しいか1ヶ月後に判断する」

1ヶ月後に判断としたのは、ステフィン殿下が伏していた時にアルバート殿下が執務を行っていた。まあ私や側近が行っていたのだけれど…。
陛下としては、どちらを王太子にするか決ま
っていても今この時にアルバートに告げる事は酷と考えたのだろう。



1ヶ月はあっという間に過ぎた。
再び開かれた貴族会議。

当然だが王太子にはステフィン殿下が任命された。

ステフィン殿下は、復帰されてからアルバートが任されていた執務の他にも大量の執務をこなし、今度は過労で伏すのではないかと周りが心配するほどだった。

「3年も休んでいたからね」と頑張るステフィン殿下を私は回復していた。

一方のアルバートは、自分が王太子には成れないと執務もせずに市井くり出し呑んで暴れ、娼館で揉めて暴れと自棄になり手が付けられなかった。

ステフィン殿下が王太子として発表された。発表パーティーが開かれた翌日にアルバートは、臣籍降下し北の領地を賜り母親の側妃と共に王宮を去った。

ミンスとバル男爵家は、ミンスは聖女と豪語し周りから讃えられ金品を贈られていたが、本物の聖女が現れた事で周りから偽物聖女と罵られ領地での生活に恐怖を感じ夜逃げしていた。

私は、王太子妃の執務に加え、聖女としての仕事も増えたが、とてもステフィン殿下と共に充実した日々を送っている。



End

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