24 / 113
文字教室とパッチワーク
しおりを挟む
最終的にチャーリーとアリスちゃんの二人の勉強を見ることになったので、ストウブリッジの学校の先生に手紙を書いた。ストウブリッジの学校は、神殿の一室を借りて開かれているのだという。
今は新しく学校を建築しようという話が出ているけれど、とにかく、例のお触れのあとで急に学校に来る子供の数が増えたから、しばらくは神殿で開かれるんじゃないかな、とホワイトさんの旦那さんが言っていた。
というわけで申し訳ないなと思ったのだけれど、安息日に村の小さな神殿にやってきた神官さんに先生に渡していただけるかどうか尋ねる。
こう、目上の立場の人にこういう言伝をおねがいするのはとても気がひけるんだけれど、神官様は気の良さそうな人で「ああ、もちろんです」と受け取ってくれた。
神殿は「神殿」と呼ぶのはどうか……と思うくらい小さい建物だ。部屋が3つ。礼拝室と神官室と信徒室。信徒室では信徒が会合を開いたりできるし、なんかちょっと公民館みたいな使われ方をしたりもするみたい。
この村の神殿は神官補佐もいないから、あんまり公民館的な機能を果たしていないみたいだけど。
何があったんだろうね。
神官さんはマージョを子供の頃から知っているようで「随分大きくなりましたね」と目を細めていた。
60歳ぐらいだろうか。
この世界だと相当の年齢の方だという感じがある。
もう少しして、村から村へ回るのが辛くなったら、若い神官様にバトンタッチするかもしれないんだって。
神官様は基本的には主神アナスタシアに支えているわけだけれど、もちろん、他の神々も忘れてはおらず三大神の恵みも忘れてはいけないんだなんていうお説教をしてくださった。
神殿での祈りと歌は何かいい感じだった。家の中にいると「次はこれをしなくちゃ」「あーあとはこれも……」みたいに次から次へとやることばかり思い浮かんでしまうから、村の小さな神殿も悪くないなーって思った。
アナスタシアの泣き顔を思い出して、今は元気にしているかな、とか思ったし!
でも、参加者が少ないのはちょっと気になった。
娯楽も少ない地域だし、神殿の礼拝に人がまばらだというのは珍しい。信徒室もあまり使われてなくて、神官様がいないときは大体締め切られているとか言ってたし。
他の神殿があるのかな……
多神教なのは知ってるけど、アナスタシア、主神だよね?
まあ、でも、神官様に言伝を頼んだことで筋は通した形になってホッとした。
文字の練習は、思ったよりもスムーズだった。
本当、チャーリー物覚えいいよ!
むしろ何をどうすればこんなに物覚えがいい子がこんなに学校の勉強が苦手になったのか知りたい。
ただ、苦手意識は強くて、最初のうちはそれに手こずった。
それに対して、アリスちゃんの方はといえば、もう目をキラキラさせて勉強している。
計算も文字も、多分同世代の子よりずっとずっと先に行っているんじゃないかな。
こういうの見ると、本が欲しいよね。もっと色々本を読ませてあげたい。
マージョの家にも本が何冊かあるんだけれど、めぼしいものは子供向けのお話集が一冊と、古びた神話集が一冊と、薬品のレシピ集みたいなのが一冊だけだ。
子供向けのお話集はアリスちゃんと毎日少しずつ読んでいる。神話集はチャーリーの教材だ。チャーリーには少し難しいんだけど、驚いたことにものすごい食いつきで頑張っている。
二人が来てくれて生活はものすごく楽になった。
庭仕事のかなりの部分を一緒にやってくれるし、動物の世話をしてくれるし、メンストンさんの家から時々食べ物の差し入れも入る。
うちにはないけれど、メンストンさんの家には小さなオーブンがあって、パンとかパイとか焼けるからなー。
勉強が終わった後、アリスちゃんは家の中に残って私と一緒にパッチワークをしたりする。これは時々端切れをあげているので、リジーさんが大喜びだ。
布って本当に貴重品なんだよね、この世界。
アリスちゃんぐらいの年齢になると、もう自分で糸を紡げるし、糸を紡いで、布を織って、結婚の準備で溜めていたりする。
布って、タンスに大切にしまって鍵をかけるくらいの貴重品なんだ。
だから服は穴が開いても継ぎをあてて着る。
そして、私の家から来る布は割と綺麗な色だったりする!
リジーさんから、最初に子羊のローストが塊で届いた時はどうして? ってびっくりしたけど、今ならわかる。
お礼だったんだよね。
今私たちが一緒に作っているのはエプロン。
白っぽい布だとか、茶色っぽい布を集めて、エプロンを作っている。
端切れを集めているのでパッチワークエプロンだね。
でも、デザインに凝ってちょっとおしゃれに見えるようにしてある。
これをバグスブリッジの市に試しに持って行ってもらおうと思っているんだ。
それとは別に私のベッド周りのカーテンもパッチワークで作っている。冬の準備は今から着々と勧めているんだよ。
パッチワークは、本当だったらいくらでも凝ることができるんだけれど、単純な正方形の縫い合わせしか使っていない。大きく長方形が取れる時は長方形。
華やかな色がなくても、割と面白い。
アリスちゃんと二人でクスクス笑いながらデザインを決めたりする。
それから、こっそり、アリスちゃんのためのエプロンも作った。これはちょっと明るめの水色をアクセントに入れたんだ。農作業が多いから多分すぐ汚れちゃうと思うけど、ちょっと気持ちが明るくなる服っていいよね。
今は新しく学校を建築しようという話が出ているけれど、とにかく、例のお触れのあとで急に学校に来る子供の数が増えたから、しばらくは神殿で開かれるんじゃないかな、とホワイトさんの旦那さんが言っていた。
というわけで申し訳ないなと思ったのだけれど、安息日に村の小さな神殿にやってきた神官さんに先生に渡していただけるかどうか尋ねる。
こう、目上の立場の人にこういう言伝をおねがいするのはとても気がひけるんだけれど、神官様は気の良さそうな人で「ああ、もちろんです」と受け取ってくれた。
神殿は「神殿」と呼ぶのはどうか……と思うくらい小さい建物だ。部屋が3つ。礼拝室と神官室と信徒室。信徒室では信徒が会合を開いたりできるし、なんかちょっと公民館みたいな使われ方をしたりもするみたい。
この村の神殿は神官補佐もいないから、あんまり公民館的な機能を果たしていないみたいだけど。
何があったんだろうね。
神官さんはマージョを子供の頃から知っているようで「随分大きくなりましたね」と目を細めていた。
60歳ぐらいだろうか。
この世界だと相当の年齢の方だという感じがある。
もう少しして、村から村へ回るのが辛くなったら、若い神官様にバトンタッチするかもしれないんだって。
神官様は基本的には主神アナスタシアに支えているわけだけれど、もちろん、他の神々も忘れてはおらず三大神の恵みも忘れてはいけないんだなんていうお説教をしてくださった。
神殿での祈りと歌は何かいい感じだった。家の中にいると「次はこれをしなくちゃ」「あーあとはこれも……」みたいに次から次へとやることばかり思い浮かんでしまうから、村の小さな神殿も悪くないなーって思った。
アナスタシアの泣き顔を思い出して、今は元気にしているかな、とか思ったし!
でも、参加者が少ないのはちょっと気になった。
娯楽も少ない地域だし、神殿の礼拝に人がまばらだというのは珍しい。信徒室もあまり使われてなくて、神官様がいないときは大体締め切られているとか言ってたし。
他の神殿があるのかな……
多神教なのは知ってるけど、アナスタシア、主神だよね?
まあ、でも、神官様に言伝を頼んだことで筋は通した形になってホッとした。
文字の練習は、思ったよりもスムーズだった。
本当、チャーリー物覚えいいよ!
むしろ何をどうすればこんなに物覚えがいい子がこんなに学校の勉強が苦手になったのか知りたい。
ただ、苦手意識は強くて、最初のうちはそれに手こずった。
それに対して、アリスちゃんの方はといえば、もう目をキラキラさせて勉強している。
計算も文字も、多分同世代の子よりずっとずっと先に行っているんじゃないかな。
こういうの見ると、本が欲しいよね。もっと色々本を読ませてあげたい。
マージョの家にも本が何冊かあるんだけれど、めぼしいものは子供向けのお話集が一冊と、古びた神話集が一冊と、薬品のレシピ集みたいなのが一冊だけだ。
子供向けのお話集はアリスちゃんと毎日少しずつ読んでいる。神話集はチャーリーの教材だ。チャーリーには少し難しいんだけど、驚いたことにものすごい食いつきで頑張っている。
二人が来てくれて生活はものすごく楽になった。
庭仕事のかなりの部分を一緒にやってくれるし、動物の世話をしてくれるし、メンストンさんの家から時々食べ物の差し入れも入る。
うちにはないけれど、メンストンさんの家には小さなオーブンがあって、パンとかパイとか焼けるからなー。
勉強が終わった後、アリスちゃんは家の中に残って私と一緒にパッチワークをしたりする。これは時々端切れをあげているので、リジーさんが大喜びだ。
布って本当に貴重品なんだよね、この世界。
アリスちゃんぐらいの年齢になると、もう自分で糸を紡げるし、糸を紡いで、布を織って、結婚の準備で溜めていたりする。
布って、タンスに大切にしまって鍵をかけるくらいの貴重品なんだ。
だから服は穴が開いても継ぎをあてて着る。
そして、私の家から来る布は割と綺麗な色だったりする!
リジーさんから、最初に子羊のローストが塊で届いた時はどうして? ってびっくりしたけど、今ならわかる。
お礼だったんだよね。
今私たちが一緒に作っているのはエプロン。
白っぽい布だとか、茶色っぽい布を集めて、エプロンを作っている。
端切れを集めているのでパッチワークエプロンだね。
でも、デザインに凝ってちょっとおしゃれに見えるようにしてある。
これをバグスブリッジの市に試しに持って行ってもらおうと思っているんだ。
それとは別に私のベッド周りのカーテンもパッチワークで作っている。冬の準備は今から着々と勧めているんだよ。
パッチワークは、本当だったらいくらでも凝ることができるんだけれど、単純な正方形の縫い合わせしか使っていない。大きく長方形が取れる時は長方形。
華やかな色がなくても、割と面白い。
アリスちゃんと二人でクスクス笑いながらデザインを決めたりする。
それから、こっそり、アリスちゃんのためのエプロンも作った。これはちょっと明るめの水色をアクセントに入れたんだ。農作業が多いから多分すぐ汚れちゃうと思うけど、ちょっと気持ちが明るくなる服っていいよね。
応援ありがとうございます!
12
お気に入りに追加
38
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる