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第二章 平和の使者

第124話

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 いざ、出刃包丁でその巨大魚のお腹を裂いてみると……中からはなんと巨大な白子が姿を現した。どうやらこいつは雄だったようだな。

「おぉ~……こいつはまた、でっかい白子だな。」

 この白子は食えるのか?一先ず鑑定してみて、食べられるか確認してから処理の方法は決めよう。

 そして鑑定を使って、安全に食べられるかどうかを確認していると

「お師様、その……白いおっきいのは何ですか?」

「妾も気になるのじゃ。肝ではあるまい?かといって胃袋でもなさそうじゃが……。」

「こいつは白子って言って魚の…………。」

 普通にノノとカミルの疑問に答えようと思ったのだが、ここで私はあることに気が付き踏みとどまった。

 …………これ普通に説明していいものか?一応な話になるんだが。
 かといって、説明できないと言ったところで彼女達の好奇心の前では無力だろうし、さて……どうしたものかな。

「あの……お師様?」

「ミノル、そんなに悩んでどうしたのじゃ?」

「あ、いや……どう説明したものかと思ってな。」

「どう説明するも何も、そのままを説明すればよいじゃろ?」

 私が悩む様子に皆一様にキョトンとした表情を浮かべる。

 仕方ない、できる限りオブラートに包んで説明するか。

「あ~、要するに……だ。魚の雄にしか無い内臓だ。」

「「「「雄にしか無い内臓?」」」」

 ノノとマームは頭の上に大きな?マークが浮かんでいるのが、表情から見てとれるものの……
 一方カミルとヴェルはそれがいったい何を意味するかに気が付き、顔を赤くしながら私に詰め寄ってきた。

「ま、まま、まさかそれを食べるというのかの!?」

「だ、だってそれって……つまり私達で言うでしょ?そ、そんなのを食べるって言うの!?」

「あぁ。」

 まぁ、二人にとって衝撃的なのはよく分かる。……てかこいつを食べる文化を知らない女性にとっては、誰しも衝撃的なことだろう。

「……?カミル、ヴェル……あれ何がわかる?」

「ノノにも教えてほしいです!!」

「む、むぅ……わ、妾は説明が下手じゃからヴェルに聞くとよいぞ?」

「は!?ちょ、ズルいわよ!!」

 白子がいったい何のことかについて、二人がノノとマームの追及を受ける。知らんぷりしてヴェルに擦り付けようとしたカミルだったが、あえなく捕まり……渋々二人はノノ達に小さい声で耳打ちした。

 すると

 ノノとマームの二人の顔がポッ……と赤く染まる。

「ま、そういうことだ。」

「あぅ……ほ、ホントに食べれるんですか?」

「食べれなかったら使わないし、美味しくなかったら皆には提供しないさ。まぁ、食べるときは一度その概念を捨て去って食べてみるといい。」

 まぁ、そうは言っても難しいかもしれないけどな。

「これは一先ずこっちに別けておいて……次いくぞ。」

 内臓の処理を終えたら、腹の中を綺麗に洗って三枚に下ろす。

 骨に沿わせて、包丁を入れるとこの魚のずっしりとした重量を直に感じる。

 重い……そしてすごい脂だ。包丁に脂がまとわりついて下ろすのがなかなか難しいな。
 それにこの大きさが難しさを更に際立てる。

 それでも、ノノの前で情けない姿を晒すわけにはいかないので……。
 難しいと感じながらも平然とポーカーフェイスを貫いて、私は片側を下ろし終えた。

「よし、これで片側は終わり。」

「大きいのに簡単にやるのぉ~……。」

「要領は変わんないからな。」

 本音はめちゃくちゃ難しかったけどな。

「さ、次だ。」

 反対側も同じ要領で下ろしていく。もうコツは掴んだからな。難しさはさっきほどじゃない。

 そして反対側も下ろし終わると、カミル達の方から歓声が上がった。

「「「「おぉ~!!」」」」

「お師様すごいです!!」

「さぁ、次はノノの番だぞ。」

 下ろした身を一度片付け、場所を綺麗にしたあと……今度はまな板の上に、ノノのために買ってきた魚を置いた。

「さっきのと比べるとひどく小さく感じるのぉ~。」

「あくまでも練習用だからな。このぐらいの魚で数をこなさないと……。」

 いきなり大きいのを捌かせて失敗しちゃったら大変だし、その失敗の経験が後にトラウマになりかねない。

「全部で10匹……だな。」

「これ全部ノノがやっていいんですか?」

「もちろんだ。失敗してもいいから、思いきってやってみるといい。あ、わからないところは聞くんだぞ?」

「はい!!えと……まずは」

 ノノは、過去にとったメモをもとに作業を始めた。魚を真水で洗って、鱗をかいて、内臓をとって頭を落とす。

 メモを見ながらやってるから多少時間はかかってるが、ここまでは完璧だ。

 残るはいよいよ三枚下ろしのみ……。

 さてさて、初めてでどこまでやれるかな。

 私はノノが緊張しながら三枚下ろしに挑む姿をすぐ後ろで、眺めるのだった。
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