【R18】異世界で婿をとれと言われましたが、あたしにはオッサン閣下がちょうどいい!

浅岸 久

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本編

ep11_ピンチ! ――って、ここで助けに来てくれちゃうの、マジ!?


 わああああ!!!

 まって、待って!? いったいなにに巻き込まれてるの!? あたしっ!!

「待て!!」
「逃がさんぞ、愛し子っ!」

 パシュッ! パシュッ! って空気を弾くような音が飛び交っている。映画とかで見た銃撃戦とは全然音はちがうけどっ!
 ばたばたって、ひとがどんどん倒れていくんだけどおおお!?


 今日も今日とて街を散策中だった。
 あたしがいろんなところお邪魔するようになってから、家の晶精機器が直ったー、とか、調子がいいとかよく聞くからさ、あたしも褒められて純粋にうれしくて、得意になってたとこあると思う。

 この街は広くて、まだまだ行けていないところいっぱいある。
 けど、ここの市場はね――ギリアロさんと一緒に楽しむお夜食もつくったりしたいし、美味しいお酒も買いたいしで、しょっちゅう来てるってわけ。よくお世話になっているから顔見知りも増えてきたんだ。
 で、今日も今日とてのほほんとしてたら、これだよ!!

 急に知らないひとがわーっていっぱい集まってきて、銃撃戦。
 市場のおじさんたちもどんどん巻き込まれていくし、通路が狭いから、障害物になってるお店のを蹴り倒しながら、ガスマスクみたいなので顔を見えなくしているひとたちが追っかけてくる。
 あちこちに色とりどりの野菜が散る。
 あたしは手に持っていたバスケットもどこかに落としてしまって、必死で逃げた。

「愛し子さまっ」
「逃げてくださいっ!」

 お店のひとたちが道を開けて、あたしを逃がしてくれようとする。
 あたしはずっと、日本で、平和な場所でしか暮らしたことなくて、この世界でも平和にのほほんって過ごさせてもらってたから気づいてなかった。
 ここは異世界。
 日本とは全然ちがう!

「はっ、はっ、はっ、はっ……!」

 ああもう、体力ないのにっ。
 めちゃくちゃ追っかけられて、息苦しい。護衛してくれているひとたちも、あたしを逃がそうと必死で護ってくれる。

 敵の銃があたって倒れてくひとたちを見る。
 撃たれても、血は流れていないけど。
 だったらなに? どうしてみんな倒れてるの? 毒!?

 どうか無事でいて、っていう気持ちと、死にたくないって気持ちがぐちゃぐちゃになって、でも、あたしは自分が大事だ。大騒ぎになっている市場を抜けて、広い道に。

「こっちです、愛し子さまっ」
「うんっ……!」

 護衛のひとりが手を引いてくれる。
 ああもう、ワンピースが重い! レースが絡まって走りにくい!
 なんで!? 誰にこんなに狙われてるの!? やだっ。やだよっ、助けてっ。

 それを護衛のみんなが支えてくれて、応戦してくれるけど、あたしの体力にだって限界がある。
 足がもつれて倒れ込んだ。やばっ! こんなの、恰好の的じゃん!!

 とっさにもと来た市場の方に目を向けて絶句する。大勢が銃をかまえて、あたしにむかって一斉に発砲して――護衛のひとが前に出ようとしたけど、間にあわない!

「!!」

 翠色の光が真っ直ぐ飛んできてぶつかる!
 そう思ったけれど、それらの光はあたしに当たる直前で霧散した。
 散り散りになった光は、かわりにあたしを包み込むようにして取り囲んでくれてさ。

 あ、これ。晶精だ。
 すぐにわかったけれど、それで事態が大きく変わるわけでもない。敵は動揺したけどすぐに切り替えて、あたしを捕まえようとしてこっち向かってきてさ。
 ヤバイ、逃げなきゃ! そう思うのに、まともに立ち上がれない。

「愛し子どのっ!」

 ちょうどそのとき、市場とは反対方向から聞いたことのある声が聞こえた。
 大勢の足音も。きっと応援がきてくれたんだ。

 でもね?
 それよりも、あたしの意識は――――、


 風が、流れる。
 晶精がきらきらきらって強く輝いて、その光に導かれるように、あたしは倒れ込んだまま声とはちがう方を見た。
 白い雲が浮かぶ青空。
 ぶるぶると空気が振動するようなプロペラ音。

 太陽の光を浴びて、一機の飛行機があたしの頭上を飛ぶ。

「チセ!」

 直接耳に届く、あたしを呼ぶ声――これは――。

 地面すれすれまで高度を落とした飛行機に、人影がふたり。屋根がないオープンタイプの操縦席から、片方のひとが立ち上がって――、

「大丈夫かっ!?」

 だんっ!!
 宙を跳ぶ。飛行機から、地上へと。くるりと回転して降り立つ。
 その小さな人影を残し、飛行機はあっという間に高度を上げた。砂埃が舞い、音が遠ざかる。旋回して、片方の誰かだけを地上へ残して――、

「ギリアロさん……!!」

 小さな――そうだ、この国の男のひととは全然体格のちがう、小柄なひと。
 くしゃくしゃの黒髪は、風でさらに乱れて。彼はゴーグルしたまま、真っ直ぐ敵を見た。

「よく耐えたっ」

 左手はすでに銃をかざしていた。そして撃つ! 容赦なく。

 パシュッ! ぱしゅ、パシュッ!!

「……っ!」
「くっ! 灰の死神っ!!」
「死神が来やがった……!!」

 死神!? なにその二つ名!!
 えっ、ギリアロさんのこと!? ギリアロさんって、文官じゃなかったっけ!?

 いや、でも、あたしはすぐに納得する。だって、ギリアロさんは圧倒的だったもん。
 的を一切外すことなく、追ってくるひとを容赦なく撃っていく。
 あたしはずっと動けないでいたけど、ギリアロさん、あたしの方に右手差し出して、立ち上がらせてくれてさ。

「そこの物陰に退いてろ。……大丈夫だ、ただの晶精麻痺弾だ」
「っ、う、うんっ!」

 殺してないんだって教えてくれる。
 すごくすごく怖いのに。殺してないって事実だけで心がちょっとだけ楽になって、あたしは頷いた。で、考える前にギリアロさんの言うとおりに体がうごいてた。

 普段は執務室とか自分のお部屋でごろごろしてる姿しか見てなかったから、驚いた。
 ギリアロさん……こんなに強かったんだ。
 相手の弾の軌道を読んで、自分はひょいひょいって攻撃を避けてさ?
 あたしがつれてた護衛のひとたちと連携して、追っ手をどんどん倒していくの。

 ほんとに……考えられないような正確さで、みんなやっつけちゃうの。
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