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番外編
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「わああああ!」
がしい! と思いっきりたくましい腕に掴まえられて、あたしはばたばたと暴れる。
「おい!? 待て、チセ! 頼むから!」
「ギリアロ、ごめん!」
「落ち着け。たのむ。な? ほら、チセ」
「あたしが悪かったあ!」
「なんでそうなる!? いや、俺。俺だろ!?」
「あたし!」
「俺だ!」
「あたし!」
ひとしきり主張したあと、ふたりしてはああああ、って息をつく。
めちゃくちゃ走って、はあはあ息を吐きながら、崩れ落ちる。ギリアロが後ろから抱きしめてくれてるけど、ふたり一緒に床に膝をついた。
「あー……つかれた」
「あたしも」
って、ぜえぜえしながら、互いに呟く。
ふと後ろをふり返ると、ギリアロの灰色の瞳と目があってさ?
ギリアロが安心したように表情緩めるから、あたしもなんかほっとして、へらへらって笑っちゃった。
それから、ぎゅーってギリアロにしがみつく。
「あの……ちょっと、顔を合わせにくくて……家に居づらかっただけなの。ごめん」
「いや。俺も。その。――すまん。優しい言葉とか、かけてやれなくて」
「ううん」
言葉にすればほんとうに、なんということもないことだ。
ちょっとスネていただけ。
それがなんだか、大げさになって、最後に逃走劇みたいになっちゃった。
お城の人たちがなんだなんだと集まって、あたしたちの様子を見に来てる。
ヤバ……めちゃくちゃ迷惑かけちゃってるじゃん! って謝ろうとしたあたしを制して、ギリアロの方が先に頭を下げた。
で、彼が頭を下げた方向を見つめると――、
「うぇ!? エドアルド、殿下……!?」
「やあ。とうとうつかまったね、チセ」
「あー……ご迷惑を……おかけしました……」
なんだったら今現在進行形で迷惑をかけてるんだけど。
この騒ぎにエドアルド殿下まで駆けつけてきてくれたらしく、にこにこあたしたちを見おろしている。
「で? 仲直りできたの? ギリアロ」
「……それは」
そもそも。別にケンカというか、あたしが一方的にスネてただけだから。
仲直りというか……うん。落ち着いたし、もう、大丈夫。
だからこくりと頷いたら、ギリアロも同じように頷いてくれた。
「ええ。まあ。――本当に、ご迷惑をおかけしました」
「いいや。かまわないよ。チセに来てもらえるならこの城としても大歓迎だしね」
なんて殿下ってば、にっこりと笑って続ける。
「チセがいなくなってからこの城のエネルギー変換率も多少落ちてたんだけどね、たった1日ですっかり回復したしね!」
「えぇ……?」
そこ?
なんて、ギリアロとふたりで困惑し、同じ反応しちゃったことに笑いあう。
だから気にするなってことなんだろうけどさ。
なんかあたしたちの夫婦げんか? もまんまと利用されちゃった感じだしね。お城に迷惑かけた、なんて落ちこんで損しちゃった。
「というわけだから、ギリアロ。チセは返すよ。――それから、チセ。ギリアロに愛想尽かしたら、またこの城に戻っておいで」
「殿下!?」
ギリアロが全力でツッコミを入れる。
ぎゅうううってあたしを抱きしめる彼の腕に力が入ってさ? なんかおかしくっていっぱい笑っちゃった。
それでもって、そんなギリアロの様子がよっぽど珍しかったんだろうね。
気がつけば周りにいた人、みーんな笑ってる。
「あはは。今度来るときは、ケンカとかじゃなくて、ふつーに遊びに来ます」
もちろん、ギリアロと一緒にね。
がしい! と思いっきりたくましい腕に掴まえられて、あたしはばたばたと暴れる。
「おい!? 待て、チセ! 頼むから!」
「ギリアロ、ごめん!」
「落ち着け。たのむ。な? ほら、チセ」
「あたしが悪かったあ!」
「なんでそうなる!? いや、俺。俺だろ!?」
「あたし!」
「俺だ!」
「あたし!」
ひとしきり主張したあと、ふたりしてはああああ、って息をつく。
めちゃくちゃ走って、はあはあ息を吐きながら、崩れ落ちる。ギリアロが後ろから抱きしめてくれてるけど、ふたり一緒に床に膝をついた。
「あー……つかれた」
「あたしも」
って、ぜえぜえしながら、互いに呟く。
ふと後ろをふり返ると、ギリアロの灰色の瞳と目があってさ?
ギリアロが安心したように表情緩めるから、あたしもなんかほっとして、へらへらって笑っちゃった。
それから、ぎゅーってギリアロにしがみつく。
「あの……ちょっと、顔を合わせにくくて……家に居づらかっただけなの。ごめん」
「いや。俺も。その。――すまん。優しい言葉とか、かけてやれなくて」
「ううん」
言葉にすればほんとうに、なんということもないことだ。
ちょっとスネていただけ。
それがなんだか、大げさになって、最後に逃走劇みたいになっちゃった。
お城の人たちがなんだなんだと集まって、あたしたちの様子を見に来てる。
ヤバ……めちゃくちゃ迷惑かけちゃってるじゃん! って謝ろうとしたあたしを制して、ギリアロの方が先に頭を下げた。
で、彼が頭を下げた方向を見つめると――、
「うぇ!? エドアルド、殿下……!?」
「やあ。とうとうつかまったね、チセ」
「あー……ご迷惑を……おかけしました……」
なんだったら今現在進行形で迷惑をかけてるんだけど。
この騒ぎにエドアルド殿下まで駆けつけてきてくれたらしく、にこにこあたしたちを見おろしている。
「で? 仲直りできたの? ギリアロ」
「……それは」
そもそも。別にケンカというか、あたしが一方的にスネてただけだから。
仲直りというか……うん。落ち着いたし、もう、大丈夫。
だからこくりと頷いたら、ギリアロも同じように頷いてくれた。
「ええ。まあ。――本当に、ご迷惑をおかけしました」
「いいや。かまわないよ。チセに来てもらえるならこの城としても大歓迎だしね」
なんて殿下ってば、にっこりと笑って続ける。
「チセがいなくなってからこの城のエネルギー変換率も多少落ちてたんだけどね、たった1日ですっかり回復したしね!」
「えぇ……?」
そこ?
なんて、ギリアロとふたりで困惑し、同じ反応しちゃったことに笑いあう。
だから気にするなってことなんだろうけどさ。
なんかあたしたちの夫婦げんか? もまんまと利用されちゃった感じだしね。お城に迷惑かけた、なんて落ちこんで損しちゃった。
「というわけだから、ギリアロ。チセは返すよ。――それから、チセ。ギリアロに愛想尽かしたら、またこの城に戻っておいで」
「殿下!?」
ギリアロが全力でツッコミを入れる。
ぎゅうううってあたしを抱きしめる彼の腕に力が入ってさ? なんかおかしくっていっぱい笑っちゃった。
それでもって、そんなギリアロの様子がよっぽど珍しかったんだろうね。
気がつけば周りにいた人、みーんな笑ってる。
「あはは。今度来るときは、ケンカとかじゃなくて、ふつーに遊びに来ます」
もちろん、ギリアロと一緒にね。
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