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5 真面目な、カフェ店員、俺。
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「オリジナルスパイシーカレー1つ、クリームソーダ1つ入りましたー」
白のポロシャツに黒の綿パンツ、茶色のローファー、ライトグリーンのエプロン姿の俺は、キッチンに居る店主にオーダーを通す。
俺のバイト先「ブックカフェ イロトリ」は、高校生の頃から働いてるカフェだ。
このカフェのコンセプトは「店主がお客を選ぶ店」「利益が月の基準値超えたら縮小営業」と言う、なんとも店主ファーストなカフェだったりする。それでも毎日ひっきりなしにお客さんはやってくる。
「イロトリ」は時間毎のネット予約制。飛び入りは不可。予約はいつも満杯。……まぁ、枠が少ないってのもあるんだけど。
店主こだわりの本たちと店主(時には俺)手作りカフェメニューが売りだ。
特にさっきオーダーが入ったオリジナルスパイシーカレーは店主こだわりのスパイスブレンドで作られてる。俺も客として何度もオーダーしたし、まかないはカレー一択。むしろこれ食べたいがためにここでバイトをしてる様なものだ。なのに未だに何のスパイスを使ってるのか分からない。クミン、ターメリック、コリアンダー、これは必須なのは分かる。あとシナモンも分かった。
「ゆう君、それくらいなら素人でも分かるよ」
店主のユネさんがニコニコして答える。
俺もキッチンに入ってオーダーを作ることはあるが、スパイスは既にブレンドされてるので全ては分からない。あと隠し味にりんごジャムを入れるのもポイント。
幸い、このカレースパイスもカフェで買えるのでいつも買ってる。ジャパニーズカレーのあの煮込みも美味いけど、ここで出される炒め中心のインド系のカレーも美味いんだよなー。
「ふぇぇぇ……!ふぇぇぇ!!」
お客さまの席から赤ちゃんの泣き声が聞こえた。俺は周りのお客さまの様子を見て、ゆったり過ごされてる事を確認してから赤ちゃんの母親に声をかけた。さっきオリジナルスパイシーカレーとクリームソーダを頼んだ人だ。
「よろしければ赤ちゃん見てますよ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
うちのカフェでは見慣れた光景だ。赤ちゃん連れの親が許可してくれれば俺や店主が子守りをするのも、ここの馴染みの光景。俺らの手が空いてないと、お客さま同士で見合ったりもする。
「えっと……」
泣いてる赤ちゃんの月齢を予測……出来るワケもなく、お母さんの方を見る。
「ハルトと言います。生後6ヶ月です。首はすわってます。抱っこもおんぶもどちらも大丈夫です。人見知りは無いです」
「ありがとうございます。では、お預かりしますね」
ベビーカーから泣いてる赤ちゃんをそっと抱え、縦抱きをする。肩に赤ちゃの顎を乗せ、しっかり胸と腹を密着させる。
「よいしょー、こらしょー、どっこいしょー」
背中の中心を撫で、縦揺れを意識ながら歩く。時々クルクル回りながらカフェのフロアを練り歩く。微笑ましくこちらを見てるお客さまには
「ハル君のお愛想でーす」
と近づいて挨拶。
「はあぁぁぁ!!!!かわいいい!!!!赤ちゃん尊い!!!!」
はい、カワイイ頂きましたー。
ここのカフェに来るお客さまは、総じて赤ちゃん子どもに甘ったるい。逆に、そうでないと店主がここに来ることを許可しない。
店主が客を選ぶとは、そう言う事だ。
お客さまから離れても、「ハルきゅーん♡」とか言って一生懸命手を振ってる。
ハルト君も機嫌がなおったのか、「えぁ!」「うぁー」と一生懸命おしゃべりをしてる。
これなら巻き付けても大丈夫かな?
「失礼します、ストレッチラップで抱っこしても良いですか?」
「あ、お願いします」
お母さんに許可を貰って1度ベビーカーに降ろし、愛用のラップを体に巻き付け、その中にハルト君を入れた。
ぴっとりと俺の体にはりつくのが愛おしい。俺も母乳出そう。
ハルト君は大人しく、ほえー……って顔をしてる。
「ゆうくーん、カレーとソーダ!私持ってく?」
「いえ、持って行きます」
赤ちゃんを抱っこしながらのウェイター業務も慣れたものだ。用意されたトレイを貰って、件のお母さんの元へ給仕する。
「ゆっくり、食べてくださいね。ハルト君、良い子してますので」
俺がそう言うと、お母さんはウンウン!と何度も頷いてカレーを噛み締め始めた。
美味いよねー、あのカレー。うちの名物なんすよー。そんなんを赤ちゃんの泣き1つで早食いなんかされた日にゃ俺が泣くわ。美味しいものはゆっくり味わって食べて欲しいもんな。
✂ーーーーーーーーーーーーーーーーーー✂
補足:ストレッチラップ→抱っこ紐の1種。ストレッチ素材の1枚布で出来ている。
白のポロシャツに黒の綿パンツ、茶色のローファー、ライトグリーンのエプロン姿の俺は、キッチンに居る店主にオーダーを通す。
俺のバイト先「ブックカフェ イロトリ」は、高校生の頃から働いてるカフェだ。
このカフェのコンセプトは「店主がお客を選ぶ店」「利益が月の基準値超えたら縮小営業」と言う、なんとも店主ファーストなカフェだったりする。それでも毎日ひっきりなしにお客さんはやってくる。
「イロトリ」は時間毎のネット予約制。飛び入りは不可。予約はいつも満杯。……まぁ、枠が少ないってのもあるんだけど。
店主こだわりの本たちと店主(時には俺)手作りカフェメニューが売りだ。
特にさっきオーダーが入ったオリジナルスパイシーカレーは店主こだわりのスパイスブレンドで作られてる。俺も客として何度もオーダーしたし、まかないはカレー一択。むしろこれ食べたいがためにここでバイトをしてる様なものだ。なのに未だに何のスパイスを使ってるのか分からない。クミン、ターメリック、コリアンダー、これは必須なのは分かる。あとシナモンも分かった。
「ゆう君、それくらいなら素人でも分かるよ」
店主のユネさんがニコニコして答える。
俺もキッチンに入ってオーダーを作ることはあるが、スパイスは既にブレンドされてるので全ては分からない。あと隠し味にりんごジャムを入れるのもポイント。
幸い、このカレースパイスもカフェで買えるのでいつも買ってる。ジャパニーズカレーのあの煮込みも美味いけど、ここで出される炒め中心のインド系のカレーも美味いんだよなー。
「ふぇぇぇ……!ふぇぇぇ!!」
お客さまの席から赤ちゃんの泣き声が聞こえた。俺は周りのお客さまの様子を見て、ゆったり過ごされてる事を確認してから赤ちゃんの母親に声をかけた。さっきオリジナルスパイシーカレーとクリームソーダを頼んだ人だ。
「よろしければ赤ちゃん見てますよ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
うちのカフェでは見慣れた光景だ。赤ちゃん連れの親が許可してくれれば俺や店主が子守りをするのも、ここの馴染みの光景。俺らの手が空いてないと、お客さま同士で見合ったりもする。
「えっと……」
泣いてる赤ちゃんの月齢を予測……出来るワケもなく、お母さんの方を見る。
「ハルトと言います。生後6ヶ月です。首はすわってます。抱っこもおんぶもどちらも大丈夫です。人見知りは無いです」
「ありがとうございます。では、お預かりしますね」
ベビーカーから泣いてる赤ちゃんをそっと抱え、縦抱きをする。肩に赤ちゃの顎を乗せ、しっかり胸と腹を密着させる。
「よいしょー、こらしょー、どっこいしょー」
背中の中心を撫で、縦揺れを意識ながら歩く。時々クルクル回りながらカフェのフロアを練り歩く。微笑ましくこちらを見てるお客さまには
「ハル君のお愛想でーす」
と近づいて挨拶。
「はあぁぁぁ!!!!かわいいい!!!!赤ちゃん尊い!!!!」
はい、カワイイ頂きましたー。
ここのカフェに来るお客さまは、総じて赤ちゃん子どもに甘ったるい。逆に、そうでないと店主がここに来ることを許可しない。
店主が客を選ぶとは、そう言う事だ。
お客さまから離れても、「ハルきゅーん♡」とか言って一生懸命手を振ってる。
ハルト君も機嫌がなおったのか、「えぁ!」「うぁー」と一生懸命おしゃべりをしてる。
これなら巻き付けても大丈夫かな?
「失礼します、ストレッチラップで抱っこしても良いですか?」
「あ、お願いします」
お母さんに許可を貰って1度ベビーカーに降ろし、愛用のラップを体に巻き付け、その中にハルト君を入れた。
ぴっとりと俺の体にはりつくのが愛おしい。俺も母乳出そう。
ハルト君は大人しく、ほえー……って顔をしてる。
「ゆうくーん、カレーとソーダ!私持ってく?」
「いえ、持って行きます」
赤ちゃんを抱っこしながらのウェイター業務も慣れたものだ。用意されたトレイを貰って、件のお母さんの元へ給仕する。
「ゆっくり、食べてくださいね。ハルト君、良い子してますので」
俺がそう言うと、お母さんはウンウン!と何度も頷いてカレーを噛み締め始めた。
美味いよねー、あのカレー。うちの名物なんすよー。そんなんを赤ちゃんの泣き1つで早食いなんかされた日にゃ俺が泣くわ。美味しいものはゆっくり味わって食べて欲しいもんな。
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補足:ストレッチラップ→抱っこ紐の1種。ストレッチ素材の1枚布で出来ている。
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