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15 キリエの初体験④ ★
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太ももに擦りつけられてくる、柔らかなキリエの感触。
「師藤。もう一回……」
経験の浅い彼女のことだ、この〝おねだり〟も意図しての行為ではないのだろうが、上目づかいで柔肌を寄せて来られると、否が応でも性的興奮をかき立てられる。
「ゴム、もう持ってないけど。霧崎持ってる?」
「も、持ってるわけないでしょ、そんなもの――」
「……でも、する?」
「…………」
「俺はしたいけど」
「……私も」
キリエの太ももの内側は、しっとりと湿っている。まだ肌の上に残った汗と、初体験の残滓。そしてそれだけでなく、彼女の秘裂から染み出る新たな蜜液も――。
涼介にとってこれは、ありがたい誤算だった。
初体験の痛みによって、キリエが心変わりする可能性はあった。本気で涼介のことを拒絶するようになっては、少々厄介だ――もっとも、それでも彼女を籠絡する自信もあったが。
「霧崎、俺の上に乗って」
指示すると、キリエは小さくうなずいて言われた通りに動く。もそもそと這うようにして、涼介の体の上に被さってくる。
両脚を開かせ、その内側に両手を伸ばす。太ももの付け根をぎゅっと広げて、淫裂に先端を密着させる。
ねとねとした肉襞を亀頭で愛撫するうち、こちらの硬度も十分過ぎるほどに蘇ってきた。
濡れ肉の中に、少しくぼんだ箇所を見つけ、そこを重点的に責める。
「あっ、ん……やっ」
キリエの期待感をしっかりと高めてから、涼介はそのくぼみへと、亀頭を的確に押し入れていく。
「息、吐いて」
「っ、うん――、あ、あ」
幼子のように素直になったキリエは、涼介の言葉を受け入れて力を抜く。
ふたたび彼女の中へと分け入っていく。
今度は隔てるものが何も無い、生身の接触だ。先ほどとは別種の、湿った快感が亀頭を包む。
ギチギチと狭い膣穴。拒むような抵抗感は健在だが、濡れそぼった膣壁では異物を完全に阻むことなどできない。それどころか、ある一点の関門を越えると、むしろ涼介のことを迎え入れるような蠢きに変わった。
ぬとんっ、と、深いところまでペニスが埋まる。
「やっ!? あ、あ、あっ――こ、これ、さっきと違うっ――」
コンドームの有無などは些細なことだ。
彼女が、2度目にして早くも性交に悦楽を感じるようになった決定的な原因は他にある。
キリエ自身が涼介を受け入れると決めてしまったこと。そして、彼女の膣は涼介によってほぐされる快感を覚えてしまったこと――。
「少し動いても、平気?」
「いい、よっ……」
彼女の腰をしっかりと固定し、下から揺すぶるように突きあげる。
始めはゆっくりと。次第に力強く、早いテンポで。
「あッ、んくっ、ひぅっ――、入ってる、入ってるの、わかるっ」
自分の身の内で、男性の部位が動くという感覚。その違和感と悦びに、キリエが甘い声で鳴く。
「師藤っ、師藤も、気持ちいいのっ!?」
「うん、凄く。霧崎の声も可愛いし。堪んない」
「やぁあっ、そんなこと、言わないでっ――駄目っ、やっ、んっ!!」
言葉とは裏腹に、彼女の声はさらに甘ったるく、膣穴の感触も蕩けていく。
「体、起こしてみて」
「――っ?」
戸惑うキリエに、文字どおり手取り足取り、騎乗位のポジションを教える。
掛け布団がベッドから落ちるが2人は気にしない。
涼介はキリエの手を握って指を絡ませる。彼女も自然とそれを受け入れ、繋いだ手に体重を掛けながら、おそるおそるといった風情で腰を揺らす。
「こう、でいいの……っ? んっ、――これ、なんか、変っ!」
「違うとこ当たる?」
「分かんない、けどっ――んっ、ん」
腰に触れるしなやかな腿の感触。
下から見あげる、キリエの瑞々しく豊かに実った裸体。運動部には所属していないので、極度に引き締まっているわけではないが、それだけに白く柔らかな肌は、手つかずの無垢さを保っているようにも思えた。
ウエストの緩やかなくびれ。品のいい形をした臍(へそ)の亀裂。
涼介に対して惜しげもなく晒されたバストは、つんと前方を向きながらも、キリエの動きに合わせて艶めかしく波打つ。
つるりとした肩。美しい鎖骨から続く、首筋と顎のライン。
あの日から――涼介と会話を交わしたあの雨の日から、彼女は一度もポニーテールの髪型をしていない。少なくとも、涼介の前では。
その綺麗な髪を揺らして、潤んだ瞳でこちらを真っ直ぐに見つめてきて。
――彼は。
あの幼馴染は、こんなキリエの姿なんて想像したことがあるだろうか。こんなにも淫らで、赤裸々なキリエのことを。
「動き方、わかんないっ……んっ、ご、ごめんなさいっ」
「なんで謝るの。いいよ、俺が動くから。両手、俺の顔の横に突いてみて」
「ん、うんっ――、は、あっ、んっ――」
まだ膣内挿入の違和感には慣れていないキリエは、わずかな振動でも過敏に反応してしまうようだ。
彼女は苦労して体勢をやや前屈みに変える。
キリエのたわわなバストと尖った先端が、ちょうど涼介の顔の真上に来る。だがそのことに羞恥を感じるほどの心的余裕も、キリエにはないらしい。
「行くよ」
涼介は両手でキリエの腰骨を掴むと、腹筋を駆使して、長いストロークでの抽挿を試みる。勃起しきったペニスで、キリエの膣内を余すことなく堪能し、突きほぐす。
「ひぅッ、やッ、あッ、あんッッ――」
「気持ちいい?」
「うんッ、うんッッ――」
彼女の中でも、快感が苦痛に勝(まさ)ってきている。
涼介の下腹部がキリエの下腹部に叩きつけられるたび、濡れそぼった肉が淫らな音を奏でる。その湿った音はキリエの耳にも届いているはずだ。
自分の性器が鳴らす音。生殖行為の音。
2人が、牡と牝であること、そして全身で交わっていることの証明。
「ふッ、あッ、んくッ――!!」
汗だくになって、髪を振り乱して、快感に歪む顔を見せつけられて。涼介の興奮も最高潮にまで高まってくる。
キリエの体勢が安定してきたのを見計らって、涼介はピストン運動を継続したまま両手を離し、彼女の横腹を滑らせてバストを両側から寄せて支え持つ。
「えっ、やっ!?」
そこで初めてキリエは、自分の性感帯を涼介の眼前に晒していることに気づく。
だがもう遅い。
涼介は両手で、たぽたぽとした幸福な質感を堪能しつつ、親指を敏感な突起に当てて、グッと押し込んだ。
「きゃぅッ!? や、やだっ、胸、そんなにされたらッ――」
「されたら? もっと気持ち良くなっちゃう?」
「やっ、やっ、だめっ、か、からだ、飛んでっちゃいそうになるからっ――!!」
膣奥をえぐられ続けている腰は、もう逃げられない。
両手を突いているせいで胸をかばうこともできない。
肉壺をじゅくじゅくとかき回され、勃起した乳首をいじめられて――
快楽からの逃げ場を完全に失ったキリエは、与えられる快感に背筋をのけ反らせ、喉を震わせて甲高い嬌声を絞り出すだけの、はしたない存在になるしかなかった。
その苦悩と、背徳的な悦びが、涼介には手に取るように分かる。
肌からも伝わってくる。
両手に感じる柔らかさ、脆すぎるほど敏感な性感帯のしこり。腰奥にまで響いてくる、性交の悦び。
いくら自分のペースで動いている涼介であっても、逃れられないほど強烈な射精感が沸き上がってくるのを認識していた。睾丸が激しく収縮し、精液を押しだそうとしてくる。括約筋にぎゅっと力を込めていないと、暴発してしまいそうだ。
この極上の肉体の中で精を吐き出せたら、どんなに気持ちのいいことだろうか。
しかしこの誘惑に負けて、キリエと交わる機会を減らすのも得策ではない。まだまだこの魅惑的な裸体を弄びたい。この愛らしい声を、表情を、もっともっと堪能したい。まだ、2人の夏は始まったばかりなのだ――
「霧崎っ……俺、もう駄目そう。外に出すから、イってもいい?」
「は、くッッ、わ、私もっ、な、なにか、きそうっ――!!」
「イキそうなの? 2回目のセックスで?」
「ッッ――、はっ、あっ、あッ!! わ、かんないけどッ、やっ、やぁっ、師藤のっ――気持ちいいからっ、あっ、あッッ」
「分かった。一緒にイこう。俺、頑張るからさ」
「んッ!? んっ、ん、やぁっっ――」
乳房をさらに、押し潰さんばかりに強く寄せて、涼介はその先端を2つ同時に口に含む。乳首の根元、乳輪を唇でぎゅっと挟んで、舌先で両突起を舐め、突き、転がす。
「――ッッ、ひゃぐッ、乳首っ、だめっ、んッんっ――ビリビリきちゃうっ、はっ、あっ、あッ!? 腰、もう、だめぇっ! やだ、だめっ、そんな、いじめられたらっ、私、わたしっっ――」
ぢゅばぢゅばと音を立てて乳首を吸い、キリエの膣奥をガシガシと突き責めると、彼女の体がひときわ大きく反り返り、激しく痙攣した。
「はッぐ……!? あっ、あっ、あぁあああッッ――!!」
キリエの絶頂と同時、さっきまで処女だった彼女の狭い膣穴は、勃起ペニスを根元から先端までを強く扱(しご)き、精を搾り取ろうと、ネチョネチョと絡みついてくる。
涼介は理性を総動員してその蜜穴の誘惑を振り切って体外へとペニスを引き抜き、彼女の臀部へと精液を吐きだした。
――びゅぐるっ、びゅぐっ、びゅぐっっ!
「霧崎っ――」
体液でびっしょり濡れていたキリエの尻谷間に挟まれながらの射精。ビクビクと解放の悦びに震える肉棒。
キリエも体勢を維持できなくなり、どさりと覆いかぶさってくる。
「あ、ひぐっ、んぅうッ、あっ、あっ――」
2人して浴びる絶頂痙攣の快感。
キリエの柔らかな肌の感触。甘い汗と髪のにおい。
「やぁっ、ぁああッ……、あ、熱いの、掛かってる……お尻に、掛かってる……っ。やけど、しそうっ――あっ、あ……っ」
「やば、さっきより、出てる――っ」
弄んでやろう――そのくらいの気分だった涼介も、いつの間にかキリエとのセックスに没頭していた自分に気づく。
肉体の相性というものがあるのなら、どうやらキリエとのそれは抜群だと断じていいだろう。テクニックなど皆無に等しいキリエを相手に、これだけ気持ちのいい性交ができたのだから。
白濁液を吐き続けるペニスも、なかなか萎えることを知らない。
しばらくのあいだ、2人は無言の了解のもと、互いの肉体をきつく抱擁して絶頂の余韻に浸っていた。
まだ肩を揺らして呼吸しているキリエの背中を撫でてやる。セックスで掻いた大量の汗。激しい快感が通り過ぎたあとの、しなやかな筋肉の蠢き。
「師藤……」
2度目のセックスに誘ったときよりも甘ったるい声で、キリエが顔を向けてくる。涼介は、何も言わずに彼女に唇を重ねる。
キリエは、言葉にしなくても与えられた幸福に、喜悦を含んだあえぎを漏らした。
「あ、んっ……ちゅっ、はむっ、ん、ちゅっ……」
たっぷり長時間のキスに、ようやくキリエは満足すると、じゃれる子猫のような仕草で涼介の首筋に顔を埋めてきた。
「……こんなことに、なると思ってなかった」
と、キリエは呟くが、その声音に後悔の響きは含まれていないようだった。
「俺も。まさか、告白の返事を聞きに行ったら部屋に連れ込まれるとか」
「い、言わないで……! それは、だめ、言わないで……」
恥ずかしさからか、さらに強く顔を押しつけてくる。
「はは。……んで、返事は?」
「え?」
「だから、告白の返事。まだ聞いてないんだけど」
「それは……だって……。こんなことまで、しておいて……」
「それはそれ。これはこれ、なんだけど」
「っ…………」
しばしの沈黙のあと、キリエは、か細い声を絞り出すようにして言い放った。
「……よろしく、お願いします」
気のせいか、セックスの最中より彼女の背中が熱くなっているように感じられた。
「やった。こちらこそよろしく」
「……で、でも。恥ずかしいから、あんまりみんなに言うのは……」
「ん? 俺と付き合ってるのが恥ずかしい?」
「そ、そういう意味じゃなくて!」
慌ててキリエが顔を上げる。必死なまなざしで、
「そうじゃなくて、その……私、初めてだから……」
「男と付き合ってる、って見られるのが恥ずかしい?」
「そういう……感じ」
「それじゃあしばらくは、2人だけの秘密ってことで。いい?」
「うん……ごめんね」
「いいじゃん、それはそれで燃えるし」
「なに、それ。バカ……」
「ふふ」
涼介は微笑んで、キリエの頬を撫でてキスに導く。
「んっ。んぅっ……」
どう見ても幸せなカップルの構図ではあるのだが、涼介は別に愛花との関係を清算する気もないし、久しぶりに再会した義姉とも肉体関係を継続するつもりでもいる。
そのことを考えると、ついつい自嘲の苦笑が漏れそうになってしまうのだが。
だが、それらの関係では得られない何かを、キリエとのあいだに感じているのも、また、事実だった。
背徳感を伴った肉欲の情動とは違う、何か。
涼介にとっては未知の領域であるこの感覚に、心が揺れ動かされているのは確かだ。
そんな、似合わない感傷に浸っていたからだろうか。
涼介は柄にもないことを提案する。
「じゃあさ、2人きりの時はせめて、キリエって呼んでいい?」
「――い、いいけど」
わざわざこんな、恋人めいた儀式をとることに、妙なむず痒さを彼女と共有する。
「霧崎も……キリエも、俺のこと好きに呼んでいいからさ」
「え、私? 師藤のこと……?」
「そう。距離感あるじゃん。呼びやすい言い方でいいから」
「…………」
キリエは黙考したあと、おずおずと上目づかいに見つめてきて、
「じゃ、じゃあ……、涼くん……」
想定していたより可愛らしいその響きに、涼介はつい噴き出してしまう。
「ちょ、ちょっと! なんで笑うの?……や、やめるっ! やっぱり変えるから……!」
「いや、いい。それでお願い……くくっ」
「なんで、もう! 笑わないでってば!」
腕の中で暴れ出すキリエのことをなだめつつ、涼介は、
「ごめんってば。いや、ホント、それ新鮮で嬉しいから。だから――」
「え、やっ……」
狭いベッドの上でごろりと体勢を変えて彼女の体を組み敷く。
「あ――」
「だから、またキリエとしたくなった」
「やっ、……ん、んんっ、…………あ、……涼、くんっ……」
初夏の光が微かに注ぐベッドの上で、2人は、恋人の肌を飽くことなく貪り合った。
「師藤。もう一回……」
経験の浅い彼女のことだ、この〝おねだり〟も意図しての行為ではないのだろうが、上目づかいで柔肌を寄せて来られると、否が応でも性的興奮をかき立てられる。
「ゴム、もう持ってないけど。霧崎持ってる?」
「も、持ってるわけないでしょ、そんなもの――」
「……でも、する?」
「…………」
「俺はしたいけど」
「……私も」
キリエの太ももの内側は、しっとりと湿っている。まだ肌の上に残った汗と、初体験の残滓。そしてそれだけでなく、彼女の秘裂から染み出る新たな蜜液も――。
涼介にとってこれは、ありがたい誤算だった。
初体験の痛みによって、キリエが心変わりする可能性はあった。本気で涼介のことを拒絶するようになっては、少々厄介だ――もっとも、それでも彼女を籠絡する自信もあったが。
「霧崎、俺の上に乗って」
指示すると、キリエは小さくうなずいて言われた通りに動く。もそもそと這うようにして、涼介の体の上に被さってくる。
両脚を開かせ、その内側に両手を伸ばす。太ももの付け根をぎゅっと広げて、淫裂に先端を密着させる。
ねとねとした肉襞を亀頭で愛撫するうち、こちらの硬度も十分過ぎるほどに蘇ってきた。
濡れ肉の中に、少しくぼんだ箇所を見つけ、そこを重点的に責める。
「あっ、ん……やっ」
キリエの期待感をしっかりと高めてから、涼介はそのくぼみへと、亀頭を的確に押し入れていく。
「息、吐いて」
「っ、うん――、あ、あ」
幼子のように素直になったキリエは、涼介の言葉を受け入れて力を抜く。
ふたたび彼女の中へと分け入っていく。
今度は隔てるものが何も無い、生身の接触だ。先ほどとは別種の、湿った快感が亀頭を包む。
ギチギチと狭い膣穴。拒むような抵抗感は健在だが、濡れそぼった膣壁では異物を完全に阻むことなどできない。それどころか、ある一点の関門を越えると、むしろ涼介のことを迎え入れるような蠢きに変わった。
ぬとんっ、と、深いところまでペニスが埋まる。
「やっ!? あ、あ、あっ――こ、これ、さっきと違うっ――」
コンドームの有無などは些細なことだ。
彼女が、2度目にして早くも性交に悦楽を感じるようになった決定的な原因は他にある。
キリエ自身が涼介を受け入れると決めてしまったこと。そして、彼女の膣は涼介によってほぐされる快感を覚えてしまったこと――。
「少し動いても、平気?」
「いい、よっ……」
彼女の腰をしっかりと固定し、下から揺すぶるように突きあげる。
始めはゆっくりと。次第に力強く、早いテンポで。
「あッ、んくっ、ひぅっ――、入ってる、入ってるの、わかるっ」
自分の身の内で、男性の部位が動くという感覚。その違和感と悦びに、キリエが甘い声で鳴く。
「師藤っ、師藤も、気持ちいいのっ!?」
「うん、凄く。霧崎の声も可愛いし。堪んない」
「やぁあっ、そんなこと、言わないでっ――駄目っ、やっ、んっ!!」
言葉とは裏腹に、彼女の声はさらに甘ったるく、膣穴の感触も蕩けていく。
「体、起こしてみて」
「――っ?」
戸惑うキリエに、文字どおり手取り足取り、騎乗位のポジションを教える。
掛け布団がベッドから落ちるが2人は気にしない。
涼介はキリエの手を握って指を絡ませる。彼女も自然とそれを受け入れ、繋いだ手に体重を掛けながら、おそるおそるといった風情で腰を揺らす。
「こう、でいいの……っ? んっ、――これ、なんか、変っ!」
「違うとこ当たる?」
「分かんない、けどっ――んっ、ん」
腰に触れるしなやかな腿の感触。
下から見あげる、キリエの瑞々しく豊かに実った裸体。運動部には所属していないので、極度に引き締まっているわけではないが、それだけに白く柔らかな肌は、手つかずの無垢さを保っているようにも思えた。
ウエストの緩やかなくびれ。品のいい形をした臍(へそ)の亀裂。
涼介に対して惜しげもなく晒されたバストは、つんと前方を向きながらも、キリエの動きに合わせて艶めかしく波打つ。
つるりとした肩。美しい鎖骨から続く、首筋と顎のライン。
あの日から――涼介と会話を交わしたあの雨の日から、彼女は一度もポニーテールの髪型をしていない。少なくとも、涼介の前では。
その綺麗な髪を揺らして、潤んだ瞳でこちらを真っ直ぐに見つめてきて。
――彼は。
あの幼馴染は、こんなキリエの姿なんて想像したことがあるだろうか。こんなにも淫らで、赤裸々なキリエのことを。
「動き方、わかんないっ……んっ、ご、ごめんなさいっ」
「なんで謝るの。いいよ、俺が動くから。両手、俺の顔の横に突いてみて」
「ん、うんっ――、は、あっ、んっ――」
まだ膣内挿入の違和感には慣れていないキリエは、わずかな振動でも過敏に反応してしまうようだ。
彼女は苦労して体勢をやや前屈みに変える。
キリエのたわわなバストと尖った先端が、ちょうど涼介の顔の真上に来る。だがそのことに羞恥を感じるほどの心的余裕も、キリエにはないらしい。
「行くよ」
涼介は両手でキリエの腰骨を掴むと、腹筋を駆使して、長いストロークでの抽挿を試みる。勃起しきったペニスで、キリエの膣内を余すことなく堪能し、突きほぐす。
「ひぅッ、やッ、あッ、あんッッ――」
「気持ちいい?」
「うんッ、うんッッ――」
彼女の中でも、快感が苦痛に勝(まさ)ってきている。
涼介の下腹部がキリエの下腹部に叩きつけられるたび、濡れそぼった肉が淫らな音を奏でる。その湿った音はキリエの耳にも届いているはずだ。
自分の性器が鳴らす音。生殖行為の音。
2人が、牡と牝であること、そして全身で交わっていることの証明。
「ふッ、あッ、んくッ――!!」
汗だくになって、髪を振り乱して、快感に歪む顔を見せつけられて。涼介の興奮も最高潮にまで高まってくる。
キリエの体勢が安定してきたのを見計らって、涼介はピストン運動を継続したまま両手を離し、彼女の横腹を滑らせてバストを両側から寄せて支え持つ。
「えっ、やっ!?」
そこで初めてキリエは、自分の性感帯を涼介の眼前に晒していることに気づく。
だがもう遅い。
涼介は両手で、たぽたぽとした幸福な質感を堪能しつつ、親指を敏感な突起に当てて、グッと押し込んだ。
「きゃぅッ!? や、やだっ、胸、そんなにされたらッ――」
「されたら? もっと気持ち良くなっちゃう?」
「やっ、やっ、だめっ、か、からだ、飛んでっちゃいそうになるからっ――!!」
膣奥をえぐられ続けている腰は、もう逃げられない。
両手を突いているせいで胸をかばうこともできない。
肉壺をじゅくじゅくとかき回され、勃起した乳首をいじめられて――
快楽からの逃げ場を完全に失ったキリエは、与えられる快感に背筋をのけ反らせ、喉を震わせて甲高い嬌声を絞り出すだけの、はしたない存在になるしかなかった。
その苦悩と、背徳的な悦びが、涼介には手に取るように分かる。
肌からも伝わってくる。
両手に感じる柔らかさ、脆すぎるほど敏感な性感帯のしこり。腰奥にまで響いてくる、性交の悦び。
いくら自分のペースで動いている涼介であっても、逃れられないほど強烈な射精感が沸き上がってくるのを認識していた。睾丸が激しく収縮し、精液を押しだそうとしてくる。括約筋にぎゅっと力を込めていないと、暴発してしまいそうだ。
この極上の肉体の中で精を吐き出せたら、どんなに気持ちのいいことだろうか。
しかしこの誘惑に負けて、キリエと交わる機会を減らすのも得策ではない。まだまだこの魅惑的な裸体を弄びたい。この愛らしい声を、表情を、もっともっと堪能したい。まだ、2人の夏は始まったばかりなのだ――
「霧崎っ……俺、もう駄目そう。外に出すから、イってもいい?」
「は、くッッ、わ、私もっ、な、なにか、きそうっ――!!」
「イキそうなの? 2回目のセックスで?」
「ッッ――、はっ、あっ、あッ!! わ、かんないけどッ、やっ、やぁっ、師藤のっ――気持ちいいからっ、あっ、あッッ」
「分かった。一緒にイこう。俺、頑張るからさ」
「んッ!? んっ、ん、やぁっっ――」
乳房をさらに、押し潰さんばかりに強く寄せて、涼介はその先端を2つ同時に口に含む。乳首の根元、乳輪を唇でぎゅっと挟んで、舌先で両突起を舐め、突き、転がす。
「――ッッ、ひゃぐッ、乳首っ、だめっ、んッんっ――ビリビリきちゃうっ、はっ、あっ、あッ!? 腰、もう、だめぇっ! やだ、だめっ、そんな、いじめられたらっ、私、わたしっっ――」
ぢゅばぢゅばと音を立てて乳首を吸い、キリエの膣奥をガシガシと突き責めると、彼女の体がひときわ大きく反り返り、激しく痙攣した。
「はッぐ……!? あっ、あっ、あぁあああッッ――!!」
キリエの絶頂と同時、さっきまで処女だった彼女の狭い膣穴は、勃起ペニスを根元から先端までを強く扱(しご)き、精を搾り取ろうと、ネチョネチョと絡みついてくる。
涼介は理性を総動員してその蜜穴の誘惑を振り切って体外へとペニスを引き抜き、彼女の臀部へと精液を吐きだした。
――びゅぐるっ、びゅぐっ、びゅぐっっ!
「霧崎っ――」
体液でびっしょり濡れていたキリエの尻谷間に挟まれながらの射精。ビクビクと解放の悦びに震える肉棒。
キリエも体勢を維持できなくなり、どさりと覆いかぶさってくる。
「あ、ひぐっ、んぅうッ、あっ、あっ――」
2人して浴びる絶頂痙攣の快感。
キリエの柔らかな肌の感触。甘い汗と髪のにおい。
「やぁっ、ぁああッ……、あ、熱いの、掛かってる……お尻に、掛かってる……っ。やけど、しそうっ――あっ、あ……っ」
「やば、さっきより、出てる――っ」
弄んでやろう――そのくらいの気分だった涼介も、いつの間にかキリエとのセックスに没頭していた自分に気づく。
肉体の相性というものがあるのなら、どうやらキリエとのそれは抜群だと断じていいだろう。テクニックなど皆無に等しいキリエを相手に、これだけ気持ちのいい性交ができたのだから。
白濁液を吐き続けるペニスも、なかなか萎えることを知らない。
しばらくのあいだ、2人は無言の了解のもと、互いの肉体をきつく抱擁して絶頂の余韻に浸っていた。
まだ肩を揺らして呼吸しているキリエの背中を撫でてやる。セックスで掻いた大量の汗。激しい快感が通り過ぎたあとの、しなやかな筋肉の蠢き。
「師藤……」
2度目のセックスに誘ったときよりも甘ったるい声で、キリエが顔を向けてくる。涼介は、何も言わずに彼女に唇を重ねる。
キリエは、言葉にしなくても与えられた幸福に、喜悦を含んだあえぎを漏らした。
「あ、んっ……ちゅっ、はむっ、ん、ちゅっ……」
たっぷり長時間のキスに、ようやくキリエは満足すると、じゃれる子猫のような仕草で涼介の首筋に顔を埋めてきた。
「……こんなことに、なると思ってなかった」
と、キリエは呟くが、その声音に後悔の響きは含まれていないようだった。
「俺も。まさか、告白の返事を聞きに行ったら部屋に連れ込まれるとか」
「い、言わないで……! それは、だめ、言わないで……」
恥ずかしさからか、さらに強く顔を押しつけてくる。
「はは。……んで、返事は?」
「え?」
「だから、告白の返事。まだ聞いてないんだけど」
「それは……だって……。こんなことまで、しておいて……」
「それはそれ。これはこれ、なんだけど」
「っ…………」
しばしの沈黙のあと、キリエは、か細い声を絞り出すようにして言い放った。
「……よろしく、お願いします」
気のせいか、セックスの最中より彼女の背中が熱くなっているように感じられた。
「やった。こちらこそよろしく」
「……で、でも。恥ずかしいから、あんまりみんなに言うのは……」
「ん? 俺と付き合ってるのが恥ずかしい?」
「そ、そういう意味じゃなくて!」
慌ててキリエが顔を上げる。必死なまなざしで、
「そうじゃなくて、その……私、初めてだから……」
「男と付き合ってる、って見られるのが恥ずかしい?」
「そういう……感じ」
「それじゃあしばらくは、2人だけの秘密ってことで。いい?」
「うん……ごめんね」
「いいじゃん、それはそれで燃えるし」
「なに、それ。バカ……」
「ふふ」
涼介は微笑んで、キリエの頬を撫でてキスに導く。
「んっ。んぅっ……」
どう見ても幸せなカップルの構図ではあるのだが、涼介は別に愛花との関係を清算する気もないし、久しぶりに再会した義姉とも肉体関係を継続するつもりでもいる。
そのことを考えると、ついつい自嘲の苦笑が漏れそうになってしまうのだが。
だが、それらの関係では得られない何かを、キリエとのあいだに感じているのも、また、事実だった。
背徳感を伴った肉欲の情動とは違う、何か。
涼介にとっては未知の領域であるこの感覚に、心が揺れ動かされているのは確かだ。
そんな、似合わない感傷に浸っていたからだろうか。
涼介は柄にもないことを提案する。
「じゃあさ、2人きりの時はせめて、キリエって呼んでいい?」
「――い、いいけど」
わざわざこんな、恋人めいた儀式をとることに、妙なむず痒さを彼女と共有する。
「霧崎も……キリエも、俺のこと好きに呼んでいいからさ」
「え、私? 師藤のこと……?」
「そう。距離感あるじゃん。呼びやすい言い方でいいから」
「…………」
キリエは黙考したあと、おずおずと上目づかいに見つめてきて、
「じゃ、じゃあ……、涼くん……」
想定していたより可愛らしいその響きに、涼介はつい噴き出してしまう。
「ちょ、ちょっと! なんで笑うの?……や、やめるっ! やっぱり変えるから……!」
「いや、いい。それでお願い……くくっ」
「なんで、もう! 笑わないでってば!」
腕の中で暴れ出すキリエのことをなだめつつ、涼介は、
「ごめんってば。いや、ホント、それ新鮮で嬉しいから。だから――」
「え、やっ……」
狭いベッドの上でごろりと体勢を変えて彼女の体を組み敷く。
「あ――」
「だから、またキリエとしたくなった」
「やっ、……ん、んんっ、…………あ、……涼、くんっ……」
初夏の光が微かに注ぐベッドの上で、2人は、恋人の肌を飽くことなく貪り合った。
応援ありがとうございます!
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