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第三章 帝国編(空路編)
秘められた意図
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彼はそれを聞いて、深く。とても深く悲しみに満ちたため息をついた。
「サラ様は殿下というより、優れた軍師のようでいらっしゃる。建国帝の御代に生まれたらならば、グレン大帝と双璧をなしたユニス女王のように活躍成されたかもしれませんな」
「意味が良く分かりかねますが」
「知恵に優れた方、と受け取って頂ければ」
再度、はあ……とため息をつき、オットーはボタンからも壁からも手を離した。
そして装置などから一歩、離れてしまう。
それがどんな意味を持つのかが分からず、侍女たちはサラを後ろに隠して不測の事態にも対応できるよう、アイラは帯剣に手を。
エイルは構えを固めていた。
それを見て、文官は慌てて両のてのひらをこちらに向け、敵意はありません! と叫んでいた。
「待って、お待ちを! 何も致しません、武器もこの通り持っておりません」
「では――何故、その場からお下がりに? 我が主に危険なことをするようならば……」
と、エイルがスカートの裾からどこに隠し持っていたのか短剣を取り出してスラリと抜き放つ。もし文官が刺客だとしても、数歩のこの距離。相手がどんな武器を携行していたとしても、それが銃口だったとしても照準をつけて発砲するよりも抜き身の剣の方が速度は速い。どうにでも対応はできるはずだった。
「穏やかではない方々は苦手ですよ、まったく」
「こちらが訊いているのです!」
「ですから、敵対する意思はございません。あれから離れたのは、兵士を上から呼び寄せる意思はないと示したかっただけでして」
そういえば上には兵が待機していると彼は最初に語っていた。
サラはそう思い出すが、侍女たちは警戒を解こうとはしない。
アイラなんてむしろこれまで我慢させられた痛みの腹いせに、誰でもいいからぶった切ってやりたい。
なんて悪い微笑みとともに笑いながら言うくらいだ。
このままでは彼が切り刻まれて終わるのかしら。それは面白くない。
「出来れば落ち着いて」
「出来るか、あんたがこうしている間にも、仲間を呼ばないとも限らない!」
だから大人しく斬られなさいよ。
と静かに言うアイラの痛がっていた足を黙って踏み、サラはエイルにそれを下げなさい、と短刀を鞘に納めるように命じる。
「っ……っ! サラ、ひどい」
「黙りなさい。大事なところなのだから」
「だってぇ」
アイラの犠牲はどこにやら。
サラはオットーに向かい、侍女たちの間から足を進めた。
「オットー様。もしかしたら、アリズン様。上にいらしているのではありませんか? それも、帝国の騎士など連れられて、でも帝都などには行けない。南方大陸にも及べない。そんなご事情なのでは?」
「ああ……どうしてサラ様はそう何もかも見透かしておいでなのですか」
「こう見えても、私、殿下。ですから……」
「……ここでお止めすれば、我が姫もあの強情さを改めて頂けるというのに……」
はあ、と文官は肩を落とし、こうなっては仕方ない、とつぶやくと服の中に手を差し入れた。
侍女たちは銃か剣か何かの武器かと警戒心を最大限にむき出しにするが、出て来たそれは小さな小さな手のひらサイズの宝珠だった。
彼はそれに向かい、一言。
「ロプス君。どうやら殿下たちの邂逅は否めないようだよ」
と諦めたかのように言ったのだった。
「否めない、ですって?」
エイルがいぶかしむように言い、オットーは文官程度の存在じゃないのね……と顔をしかめる。
アイらはまだ状況についていけないようでどういうこと、と疑問符を顔に並べていたし、サラはアルナルドの船の船長が自国の皇帝陛下なのだとしたら、(最初、彼女は影武者か別人が成りすましている可能性が高いと思っていたが)酔狂や息子を励まそうとしてやってきたなんて名目はあり得ないと思っていたのだ。
心のどこかでは。
「否めないとは、会わせて頂けない。そういう意味でしょうか、オットー……どんな地位をお持ちなのですか、文官殿」
「会わせたくない、が本音だったのですがね、殿下……。私は一介の管理職でして、はい。この空港の統治管理を任されている田舎の単なる、下級官吏ですよ」
素知らぬ顔でそういう彼はしかし、サラからしてみればセナス王国の領土内に特権地区を設けてそこを管理する役人のトップにいるのだから辺境伯。
もしくは、子爵位には相当するのではないかと勘繰ってしまう。
それなら下級貴族であっても、十分な爵位だ。
扱いも無下にはできないことを知っているから、さっさと侍女たちを後ろに下げると共に、武装を解除させた。
自分にもこんなに余裕が合ったのかとおもうほど静かに淑女の礼をすると、
「サラです。オットー様。アリズン様への面会を希望いたします。両国の為にも」
「そうなりますよな。ええ……かしこまりました」
文官は先ほどの宝珠に何かを告げると、ではこちらへと昇降機の入り口を操作する。
すると入り口はスルッと空いて、中には二人ほどの女性――今度は猫耳ではなく黒い狼のそれをもった身なりのよい二人組がいて、優雅な仕草でサラたちを中へといざなったのだった。
「サラ様は殿下というより、優れた軍師のようでいらっしゃる。建国帝の御代に生まれたらならば、グレン大帝と双璧をなしたユニス女王のように活躍成されたかもしれませんな」
「意味が良く分かりかねますが」
「知恵に優れた方、と受け取って頂ければ」
再度、はあ……とため息をつき、オットーはボタンからも壁からも手を離した。
そして装置などから一歩、離れてしまう。
それがどんな意味を持つのかが分からず、侍女たちはサラを後ろに隠して不測の事態にも対応できるよう、アイラは帯剣に手を。
エイルは構えを固めていた。
それを見て、文官は慌てて両のてのひらをこちらに向け、敵意はありません! と叫んでいた。
「待って、お待ちを! 何も致しません、武器もこの通り持っておりません」
「では――何故、その場からお下がりに? 我が主に危険なことをするようならば……」
と、エイルがスカートの裾からどこに隠し持っていたのか短剣を取り出してスラリと抜き放つ。もし文官が刺客だとしても、数歩のこの距離。相手がどんな武器を携行していたとしても、それが銃口だったとしても照準をつけて発砲するよりも抜き身の剣の方が速度は速い。どうにでも対応はできるはずだった。
「穏やかではない方々は苦手ですよ、まったく」
「こちらが訊いているのです!」
「ですから、敵対する意思はございません。あれから離れたのは、兵士を上から呼び寄せる意思はないと示したかっただけでして」
そういえば上には兵が待機していると彼は最初に語っていた。
サラはそう思い出すが、侍女たちは警戒を解こうとはしない。
アイラなんてむしろこれまで我慢させられた痛みの腹いせに、誰でもいいからぶった切ってやりたい。
なんて悪い微笑みとともに笑いながら言うくらいだ。
このままでは彼が切り刻まれて終わるのかしら。それは面白くない。
「出来れば落ち着いて」
「出来るか、あんたがこうしている間にも、仲間を呼ばないとも限らない!」
だから大人しく斬られなさいよ。
と静かに言うアイラの痛がっていた足を黙って踏み、サラはエイルにそれを下げなさい、と短刀を鞘に納めるように命じる。
「っ……っ! サラ、ひどい」
「黙りなさい。大事なところなのだから」
「だってぇ」
アイラの犠牲はどこにやら。
サラはオットーに向かい、侍女たちの間から足を進めた。
「オットー様。もしかしたら、アリズン様。上にいらしているのではありませんか? それも、帝国の騎士など連れられて、でも帝都などには行けない。南方大陸にも及べない。そんなご事情なのでは?」
「ああ……どうしてサラ様はそう何もかも見透かしておいでなのですか」
「こう見えても、私、殿下。ですから……」
「……ここでお止めすれば、我が姫もあの強情さを改めて頂けるというのに……」
はあ、と文官は肩を落とし、こうなっては仕方ない、とつぶやくと服の中に手を差し入れた。
侍女たちは銃か剣か何かの武器かと警戒心を最大限にむき出しにするが、出て来たそれは小さな小さな手のひらサイズの宝珠だった。
彼はそれに向かい、一言。
「ロプス君。どうやら殿下たちの邂逅は否めないようだよ」
と諦めたかのように言ったのだった。
「否めない、ですって?」
エイルがいぶかしむように言い、オットーは文官程度の存在じゃないのね……と顔をしかめる。
アイらはまだ状況についていけないようでどういうこと、と疑問符を顔に並べていたし、サラはアルナルドの船の船長が自国の皇帝陛下なのだとしたら、(最初、彼女は影武者か別人が成りすましている可能性が高いと思っていたが)酔狂や息子を励まそうとしてやってきたなんて名目はあり得ないと思っていたのだ。
心のどこかでは。
「否めないとは、会わせて頂けない。そういう意味でしょうか、オットー……どんな地位をお持ちなのですか、文官殿」
「会わせたくない、が本音だったのですがね、殿下……。私は一介の管理職でして、はい。この空港の統治管理を任されている田舎の単なる、下級官吏ですよ」
素知らぬ顔でそういう彼はしかし、サラからしてみればセナス王国の領土内に特権地区を設けてそこを管理する役人のトップにいるのだから辺境伯。
もしくは、子爵位には相当するのではないかと勘繰ってしまう。
それなら下級貴族であっても、十分な爵位だ。
扱いも無下にはできないことを知っているから、さっさと侍女たちを後ろに下げると共に、武装を解除させた。
自分にもこんなに余裕が合ったのかとおもうほど静かに淑女の礼をすると、
「サラです。オットー様。アリズン様への面会を希望いたします。両国の為にも」
「そうなりますよな。ええ……かしこまりました」
文官は先ほどの宝珠に何かを告げると、ではこちらへと昇降機の入り口を操作する。
すると入り口はスルッと空いて、中には二人ほどの女性――今度は猫耳ではなく黒い狼のそれをもった身なりのよい二人組がいて、優雅な仕草でサラたちを中へといざなったのだった。
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