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21 サイトーさんがトオルになる

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 バスは駅で幾人かの乗客を降ろしては乗せ、再び巡回コースに戻って行った。そこから十分ぐらいで、レナも降りた。歩いてすぐのアパートの一階の部屋のドアに、鍵を差し込む。ドアを開けると、ヨウジの部屋ほどではないが、閉め切られてむっとした熱気と微かな男臭さが漂ってきた。

 くせっ・・・。

 息を止めて靴を脱ぎ、室内に入り、カーテンと窓を開ける。そして大きく深呼吸する。

 サイトーさんは少し前に寮を出てこのアパートに引っ越した。レナが隔日で抱かれる部屋は、ここだ。

 帰宅部となったレナは、学校帰りにここに立ち寄り、掃除をし、夕飯を作り、風呂を沸かし、巨根を堪能した。サキさんと会えない寂しさを、サイトーさんは埋めてくれた。その巨根で、レナを癒してくれた。

 サイトーさんがトオルさんになり、そして、トオルになっていったのにそれほど時間はかからなかった。

 いつものように、風呂を洗い、沸かし、簡単に部屋の掃除をして、台所に立った。

 純朴で朴訥だった彼も、変わった。

 いや、ソープランドに通い詰めていたくらいだから、元々の性質がでてきたのだ。

 サイトーさんは、トオルは、スケベだった。・・・スケベ過ぎた。

 それが面白くて、可笑しかったから、出来る限り、彼のリクエストには応えてあげた。

 いずれ捨てようと思っていたテニスウェアは捨てずに済んだ。ハイレグの水着はプレゼントされた。メイド服は、

「宴会でもらったから」

 とトオルは言ったが、絶対ウソだと思う。どこかから調達してきたそれを着たレナを、四つん這いで犯し、喜んでいた。裸エプロンというのも、この部屋で初めて知った。

 トオルの「明るいスケベ」をレナは気に入っていた。

「レナ? 来てたの」

 ドアが開く音と共に、家主が帰って来た。

「おかえりー。お風呂にする? ご飯にする? それとも、わ・・・」

 太い腕が、背中から、レナを包む。トオルの唇がうなじを這う。男くさい、汗のにおいが、レナを昂奮させる。部屋に籠った匂いはダメだが、生身の身体から出る匂いには、興奮する。

「ねえ、これ、まだ言わなきゃダメ? もう厭きたよ」

「じゃあ、今度までに違うセリフ、考えとく。・・・いい匂いだ。一週間ぶりだ。会いたかったよお」

 唇が耳を這うと、堪らなくなる。菜箸を俎板の上に置き、くるりと身体を回す。

「あたしも・・・」

 ぶの厚い唇がレナの口を塞ぎ、舌が入ってくる。もちろん、その舌を吸い、絡めてあげる。

「会いたかった」

 と、レナは言った。

「どうだった、テスト」

「九八番になった。頑張ったもん、今回」

「じゃ、今日はご褒美だ。めっちゃしようね」

「それ、逆でしょ。トオルのご褒美でしょ。今日は、どうする」

「そのままでいい」

「ぱんつは?」

 トオルの前では、「ショーツ」は「パンツ」ですらなく、「ぱんつ」でよかった。それに、「あたし」でもいい。素の自分でいいのは、気が楽だった。

「履いたままでいい」

「シャワー、浴びたいよ」

「それは、ダメ」

 トオルが必ずそう言うのは、わかっている。わかっていても、最低限の女の子としてのたしなみと、照れが、そう言わせる。

「だって、レナの汗とまんこの匂い、取れちゃうじゃんか」

 ゾクゾクする。

 トオルが床に仰向けになる。レナは、いつものように、スカートの裾をちょっと持ち上げ、ふぁさっと、顔の上に跨る。体重かけてもいい。そう言われてはいるけれど、やはりちょっと尻は浮かす。

「ああ、たまらん。一週間ぶりだ、この匂い。・・・おい、体重かけていいって」

 トオルの鼻が「ぱんつ」の布越しにクリトリスをくすぐる。

「だって、・・・ああ・・・」

 すーはーすーはー。

 何度もトイレに行ったし、バスの中で吸引器の事を思い出してもいた。恥ずかしい液を分泌し匂いを発しているはずのそこを嗅がれる羞恥が、刺激と共にレナの性感を高めてゆく。

 舌がクロッチ沿いに鼠径部を舐める。ぞわぞわが立ち昇ってくる。思わずトオルの頭を掻きむしりたくなる。

「まったく。ヘンタイなんだから」

 可笑しみと快感が一緒なのも、トオルとだけだ。これが無くなると、ツラいかもしれない。と、レナは思う。

「今日も七時半までだからね。八時までには、家に帰らないと・・・。ああん」

 トオルの舌が、クロッチの横からヴァギナに入ってくる。あのSMショップの異形男の機械のような冷酷な責めとは違う、ぎこちなくはあるけれど、温かいイタズラに、キュンとなる。

「なあ、レナ。一緒に暮らせねえかな。やっぱ、無理か。無理だよな」

 この男は、時々そんなことを言う。またまた、キュンが来る。

「ああっ! だって、高校生だもんんんんっ!」

「じゃ、急がんとな。ぱんつ脱いで。逆さま頼む」

 慌ただしいが、仕方がない。一回戦やって、晩御飯を作り、その後二回戦目をしてシャワーを浴びてバスに乗るまで、あと二時間しかないのだ。

 一度トオルの顔から降り、下着を脱いで反対に跨る。レナがもぞもぞしている間に、トオルはズボンのベルトをカチャカチャ言わせ、ジッパーを下ろし、トランクスをずり下げてイチモツをずるんと出した。

 一週間ぶりのトオルのムスコは、張り切っていた。

 クリトリスを直に舐められる。吸引器より温かい。機械より、気持ちいい。その快感に耐えながら、大きなペニスに鼻を近づける。

 強烈な、男臭さ、僅かに小便の匂いもする。

 躊躇わず、サキさんのよりも大人しい亀頭を舐めまわす。

「ああっ、たまらん・・・」

 トオルがスカートを捲り上げ、レナの尻を丸裸にする。股間の方で、じょりじょりと音がする。

 ああ。あれを言わなきゃな。本当に、自分は、悪い女だ。

「ねえ。今度海行くでしょ。あのトオルがくれたハイレグ着てあげようか」

「ホントか!」

「いいよ。見たいんでしょ、あたしのハイレグ姿。太腿太いから、恥ずかしんだけどさ」

 一度、喉の奥まで、咥える。が、やっぱり半分も飲み込めない。無理。でもこうすると、トオルはレナの言うことを聞きやすくなる。それも、学んでいた。攻撃ポイントをサオに変更する。れろれろ。おっきなムスコに舌を這わせながら、

「でね? あたし、ほら、あ・・・、濃いじゃん、毛がさ。だから、あ・・・、剃っちゃお、かなって・・・。はみだすと、ハズいし、さ」

 我ながら、いい作戦だと思う。

 準備完了したトオルのペニスを見下ろしながら、レナは独り言ちた。

 これさえ言っておけば、仮に剃毛がトオルの意に添わない結果となってしまっても、「トオルが喜ぶかと思って・・・。早とちりで、ごめんね」とごまかすことが出来る。

 胸がチクチク、痛む。

「オレ、・・・お前のこの、もじゃもじゃ。好きなんだけどなあ・・・」

 やっぱり・・・。

 自然の、ありのままのレナを受け入れてくれるのは、トオルだけだ。でも、レナの深奥に隠した、サキさんしか知らない性癖までは、無理だろう。その時が、この男と別れる時だなと、レナは予感する。

「じゃ、もっと大人しいのにする? それでも、いいなら・・・」

 レナは再び、トオルから降りた。

「今日はどっちがいい? 上、下?」

 トオルの肩越しに見える、宙をブラブラ揺れる自分の足指。

 イヤらしい眺めだ、とレナは思う。その向こうに見える壁掛け時計が七時を回っていた。

 確かに、気持ちいい。快感はある。

 サキさんと知り合ってから、レナはイキやすい身体になっていた。だから、トオルとのセックスは、スッキリする割に体力の消耗が少ない。恐らくは、これも太った理由だろうと思う。しかも、レナのヴァギナはトオルをも受け入れやすくなっていた。つまり、普通サイズの男から見れば、いわゆる「ガバガバ」に近い状態になってるのではないか。この先、トオル以外の男性を受け入れる時、そう言われない保証はない。

 とすれば、トオルを失うのは、困るような気がしてきた。現に、頻繁にサキさんと会えない状態の今は、特にそう思う。

 あんあん。

 気持ち良さに声は出るものの、最初の時の、あの強烈な刺激が無くなっているのは否めない事実なのだ。端的に言えば、レナは、物足りなくなっていた。

 トオルは、早い。それでも、その短時間にニ三度、レナは必ず絶頂はする。

「ウッ・・・うう、・・・ああ。きもちかった・・・」

 目尻を思い切り下げ、自分の身体で満足してくれた男の顔を見ていると、優しい気持ちにはなる。

「今日は三回もガンバったね」

「やっぱ、一週間はキツいわ」

「あたしだって、ガマンしたんだよ、これ」

 レナは男の股間から垂れ下がるゴムを処理しながら、そう可愛く反論する。

「「三回目なのに、いっぱい出たね」

「あー。またしたくなってきた」

「もうダメ。タイムアウト」

「明日、会えねえか」

「うーん・・・」

 そう言いながらバスルームに飛び込む。簡単に股間だけシャワーで流し、すぐに出る。時計を見ながら服を着るレナを、トオルがぼんやり見上げていた。

「あのさ」

「何?」

「お前のテスト期間中さ、ヒマだったから、高校行ったんだ」

「うん」

「ヨウジ、顔腫らしてた」

「・・・うん」

「階段から落ちた。って言ってたけど、」

「・・・うん」

「・・・なんか、あったんじゃねえか」

 ブラジャーを着け、シャツのボタンを嵌め、両手で髪を襟から出し・・・。

 レナは返事に戸惑っていた。
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