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序章 転生
#5 転生マーケット Ⅰ
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「おかえりなさい」
神様たちの力でまた神殿に戻り、外に出るとソロエルの笑顔が出迎えてくれた。
「ただいま……って、死んでるんだから意味ないよね?」
「気持ちの問題ですよ。それよりも……選ばれたのですね」
選ばれた。それは二つの意味に取れるけど、たぶんソロエルは私が“選んだ”という方をさして言ったのだろう。
「うん。私はもう一度、幸宏に会いたい。たとえ見た目は変わっていても、生まれ変わったその人に幸宏だった時の記憶があるのなら、それは私が好きな幸宏だから」
そう思うことにした。だってわたしは、駒としてゲームに参加すると決めたんだから。
――『幸宏との約束を破ってしまったことは謝ろう。しかし私達は自分たちのせいで死なせてしまった、其方の願いを優先させると決めた。
本来なら私が言えたことではないが……其方は自分の成したいことを成しに、次の世を生きよ。それがきっと私たちや、幸宏の願いだろう。
わがままで、自分勝手な神ですまないな』
そう言った、ソウ様たちの申し訳なさそうにしていた顔が忘れられない。
どこまでも人間らしい神様たち。
神生ゲームだなんてふざけたことに巻き込んで、私達を死なせたことへの怒りが消えた訳じゃない。
それでも、こうしてもう一度、幸宏との「あり得た未来」へ進む機会を与えてくれた。
「このゲームに勝つよ。私のために、ソウ様たちの為に。そして……」
幸宏が私を遠ざけようとしたことも、ゲームのことを隠してたことも。その他諸々、ぜんぶ会ったときに聞きだしてやる。
「待ってなさい、幸宏! 全力で一発ぶん殴ってやるんだから!」
「……本当に変な人ですね」
「いいのよ。私達は私達なんだから」
そういって歩き出した時、ソウ様から貰ったイヤリングがキラリと光った気がした。
「では、さっそく転生マーケットで必要なものをそろえましょうか」
ソロエルは両腕を広げると、軽々と私を横抱きにした。
「驚かないのでしょう? それなら、飛んでいく方が早いですから」
「まだ何も言ってませんけど……」
「どうせ“またコレか”とでも思っていたのでしょう?」
バレたか。顔に出していないつもりだったけど、ばっちり出ていたらしい。
ソロエルはフッと柔らかく微笑み、ゆっくりと浮上した。
この世界に方位があるのかは分からないが、とりあえず神殿から東の方へ飛行して数分後。ソロエルが降下をはじめた。
その先では今まで見えていた白い雲の地面の上に、二列に並ぶ色とりどりの何か。
それは遠くの方に見える、薄ピンク色の大きな山まで続いていた。
「ねえ」
「何でしょう」
「アレさ。どう見ても……桃なんだけど」
山の傾斜が、面白いくらいにあの桃独特の曲線を描いている。何より、真ん中に裂け目があるところなど桃にそっくりだ。
「桃、ではないですね。あの山は《転生の穴》を覆う結界の役割を担っています。そしてその結界を張っているのが楽神様なので、あんな色をしているだけですよ」
そういえば、彼女の髪色とあの山は同じ桃色だ。
どうやら楽神様のイメージカラーはピンクらしい。
「あそこには後で行きますし、詳しい説明はその時にしますよ。さて、着きました。ここが転生マーケットです」
モフッとした感触を足で確かめつつ、雲の地面に降り立つ。
目の前にはズラリと二列で並んだ出店の数々。どこも木の支柱や台を使い、白や青、赤や黄といった、色とりどりの布を屋根代わりにしていた。
市場という言葉が本当に似合うその場所は、とても活気に溢れていた。
「へぇ……アウトレットモールみたいだけど、手作り感満載な雰囲気がなんかファンタジーっぽくて良いね」
「気に入っていただけましたか? では、説明の方に入らせていただきますね」
ソロエルは自分のことのように嬉しそうに笑うと、建ち並ぶ店の方に視線を向けた。
「まず幅広い通路の両脇で、それぞれ違ったものを売っています。と言っても入り口から世界エリア、容姿エリア、能力エリアと大きく3つに分かれているので、歩きながら順々に交換していくのがいいでしょう。
ですが能力を重視して決めたいという場合は、担当天使に声をかけていただければリストをお見せすることも可能です。
あまり一つの物にポイントをかけすぎると、ろくな目に遭いませんからね」
ソロエルが、どことなく昔を思い出しているような顔をすると、こんな話をしてくれた。
――昔、残りのポイントを考えないで、ひたすら容姿にこだわっていた人がいた。
彼は前の人生で容姿にかんして悲惨な目にあったらしく、自分をイケメンにしたかったという。
しかし彼は残ったポイントで能力はおろか、世界も選ぶことができず転生した。
その後、彼は次の世で《残念なイケメン》として余生を過ごしているそうだ。
「えっと、ポイントが無くなっても転生できるの?」
「はい。元々この転生システムは五大神様方の恩情により、創られました。それまではこちらで転生先や容姿、能力を勝手に決めていたので……ポイントが無くなった場合も、私たちが決めることになっております」
「ふーん。なら、その人は自業じと――」
「言わないであげてください。彼は今もまだ生きているのですから」
不意に遠い目をしたソロエルはきっと、彼と会ったことがあるのだろう。
「だからやめた方が言いと、私も担当天使も言ったんですよ。馬鹿な人間だ」……と、ボソッと言っていたのは聞き流しておこう。
「なら私は世界から決めていけばいいの?」
「いえ、美桜さんはゲーム参加者ですので、世界は既に決まっています」
ソロエルが懐から取り出した手帳を開きながら、そう言った。
まあ、普通に考えてゲームの駒が皆同じ世界に転生するってのは分かるよ。
でもね、でもだよ?
「そんなの初耳だっての! なに? この世界の人は説明するのがそんなに面倒なの!?」
「そんなことはないですよ。この連絡も、哀神様が伝えるのを忘れていらしただけのようですし……」
ほう。すべては貴方のせいですか、哀神様。
ごめんなさいが口癖なのは何か理由があるのかと思ったけど、ただ単に失敗回数が多いってわけね。今、納得したわ。
「ちなみに世界を決める際に、既に一千万ポイント消費しています。なので、美桜さんの残りは四千万ポイントですね」
「世界ってそんなに高いの?!」
人間の持つポイントの平均と同じ値段(?)の世界を舞台にゲームするとか、神様たちの常識って一体……。
というか、勝手にポイント使うなら先に言っといてよ!
「はあ……もう、いいわ。さっさと他のモノを交換しに行こう」
これ以上この世界の仕組みを深く考えても、疲れるだけだ。
「あ、待ってください」
そう思って歩きだせば、ソロエルが慌てて引き止めてきた。
「今度はなに?」
「そんなに警戒しないでください、今度は貴女に関することではないので。まあ……見方を変えれば関係してるとも言えますが」
含みのある言い方だ。余計に警戒してしまう。
「実はアナタと同じようにマーケットを案内しなくてはいけない人がもう一人いまして……。連れてくるまでの間、ここでお持ちいただいてもよろしいですか?」
「別に構わないけど……」
「そうですか。では、少し行ってきますね」
私の返答にソロエルはホッとしたような顔をすると、翼を広げて空に飛び立っていった。
「何を気にしてるのか知らないけど、もう死んでるんだから……待つ時間なんていくらでもあるのに」
この世界で信頼……とまではいかないが、信用できるのはソロエルと神様たちだ。
けど立場的に気軽に話ができるといえば、ソロエルの方で、私が初めてこの世界であった人。そんな彼に気を遣われるのは、正直に言って悪い気はしなかった。
「まあ、気を遣い過ぎな感じもするけどね。お人好しなのかな?」
さっきの会話も、先約の相手と出かけている時、無視できない相手から連絡が入った人の対応に似ていた。それが不思議でならない。
例えばここがお店で、ソロエルは店員、私が客だとすれば少し納得できるけど。
「今までだって、たくさんの死人を相手にしてきたんでしょ? なら、もっと雑な扱いをしていてもおかしくないのに」
実際に私が案内天使だったら……。うん、雑な扱いしてそう。
「実はかなりの大物なのかな? ……なわけないか」
ソロエルが飛んで行った方向を見上げ、そんなことを考える。
そこへ、私と同じように白いワンピースを来た女性が近寄ってきた。
「あの、すみません」
「ふおぉ……」
思わず変な声が出た。
だって目の前に美人さんが立ってたら、男じゃなくても声を上げるわよ。
長く綺麗な金髪に海色の瞳。背は私と同じくらいの小ささなのに、細いウエスト、豊満な胸。同じワンピースだというのに、何たる差だ(……自分で言ってて悲しくなったからやめよう)。
とにかく、だ。めちゃくちゃ美人の外国人女性が立っていました。
「えと、私になにか御用でしょうか?」
「さっきいた天使とはどういう知り合いですか?」
ずいっと顔を寄せて来る女性。意外に声は低い。
可憐な容姿からは想像もつかない強引さに、一瞬たじろぐ。
「知り合いも、何も……あの天使は私の担当天使ですけど」
何が気に入らなかったのか。女性は眉間に皺を寄せると、射貫くように鋭い視線で私を見つめてきた。
美しい顔が台無しですよ、なんて言う暇はない。
「そうか……なら、君もそうなんだね!」
「え、ちょ!?」
女性は突然両腕を広げたかと思うと、ガバッと私に抱きついてきた。
いくら同性でも、頬ずりはやめて下さい。
「こんなに可愛い子と組めるなんて、僕は最高だよ!」
「なに言ってるのか分からないんですけど、とにかく放してくれませんか!?」
女性の力とは思えないほど強く締めつけられ、胃から変なものが出そうだ。
まあ、死んでるから出ることはないんだろうけど……出ないよね?
とりあえずそんなことにはなりたくないので、無理やり女性を引きはがそうと奮闘する。
うん、びくともしない。本当にこの人は女の人ですか。
困り果ていたところへ、ソロエルがゆっくりと空から舞い降りてきた。
「すみません、お待たせして。実は待ち合わせ場所に例の人物がいなくてですね、それでこれから北の方を探しに……」
「そんなこといいから、この状況を何とかして!!」
すがる思いでソロエルへと手を伸ばせば、彼は私を見て固まった。
いや、正確には私に抱きつく女性を見て、だ。
「なんでここにいるんですか?! 待ち合わせは転生マーケット直通の列車が止まる、転生の穴駅だって言っておいたじゃないですか!」
天国を列車が走っているということにビックリだよ。
どうなってんだ、この世界は。
「いや、それよりも早く助けて! もう、息が……」
「っ!? 美桜さん!」
フラッと目の前が暗くなると同時に、体を締めつけていた圧迫感がなくなる。
代わりに、たくましい腕に支えられた。
「大丈夫ですか? 生きてますか?!」
「……その質問を死後の世界で使うのはどうなんでしょう」
どうやら意識は飛ばなかったようだ。
心配そうに顔を覗き込んできたソロエルに、小さく微笑む。
「ありがと。もう、平気だから……」
「いいえ。しばらくは私の腕に掴まっていてください」
有無を言わせぬ表情を浮かべたソロエルに、悪いとは思いつつも素直に言うことを聞いた。
「彼よりも僕の腕を掴むと良いよ。僕は女の子には優しいからね」
空気を読めない人とは本当にいるもので、目の前の女性は腕を差し出してきた。
「田中さん。彼女に何か言うことがあるんじゃないですか?」
なんか今、ソロエルの方からピシッと空気が凍る音がした。
「いや~、同じ境遇の人と会うのは初めてだったからね! ついテンションが上がってしまったんだ!」
ぱあっという効果音が聞こえてきそうなほど、明るい笑顔の美女。
というか、タナカさんって……。もっとこうジェシーとか、ミシェルとかさ。まあ期待はしてなかったけど。
「アナタのように見境なく女性に声をかける純日本人の女性が他にもいたら、なんて想像するだけでも吐き気がします」
「僕はこの容姿をスゴク気に入っているけどね。でも、両親共に黒髪黒目だったのにおかしいよね……。あ! もしかして、僕って愛人との間にできた子供だったのかも!」
「そんな訳ないでしょう? いい加減にしないと地獄に落としますよ?」
冷笑を浮かべるソロエルから、冷気が漂ってくる。
穏和そうな人ほど怒らせてはいけないと言うが、何故か今のソロエルに違和感がない。まるで普段から、この冷気をまとっているかのようだ。
実はこっちが素なのかもしれない。
「地獄か……ここを離れるのは残念だけど、地獄にも可愛い女の子はいるかもしれないよね!」
分かっていはいたけど、この人ヤバいです。
ソロエルの額に浮かぶ交差点がさっきよりも、くっきりと大きくなる。
「いいから、彼女にちゃんと謝罪してください」
「ああ、そうだったね。さっきはごめんね、少し取り乱していたんだ。
改めまして、僕は田中。生まれも育ちも日本で、どこかの喫茶店で働いていたってことしか覚えていない、所謂、記憶喪失なんだ!」
「え。記憶そう、しつ……え? え??」
こんなに陽気な記憶喪失の人がいていいのだろうか。
「あ! もう一つ覚えていることがあったよ。確か死ぬ直前に――トラックに轢かれたんだ」
そこでカメラのピントが合ったように、視界がスッキリした。
「まさか、あの事故の?」
この『天国』で初めて目を覚ました時、ソロエルが言っていたことを思い出す。
私が死んだ“あの事故”では、幸宏を含めた関係者が相次いで亡くなっている。そしてその内の一人とは、この後に会いに行くのだと。
「ええ、そうです。そして彼女もまた、ゲームの参加者です」
「同じ境遇って、そういうこと?」
問い返すようにソロエルを見上げれば、田中さんが跪き、恭しく私の右手を取る。
その時、見えた手首には青い宝石が埋め込まれた銀のブレスレットが輝いていた。
「うん、そういうこと。これからよろしくね……えっと、君は誰だっけ?」
手の甲にキスしようとしていた田中さんは、きょとんと首を傾げる。そんな彼女にソロエルはこめかみを押さえていた。
「彼女は笠木美桜さんです。美桜さん、こちらは田中さん。まあ、もう説明はいらないでしょうけど……少々問題がありまして」
一人称が僕で、見た目はハリウッド女優並みに美人の純日本人。それだけでインパクトが大きすぎるというのに、これ以上どんな問題があるのか。
つい、身構えてしまう。とりあえず手の甲へのキッスは回避しておいた。
「記憶喪失のまま死んでしまった人が、そのままの状態でここへきた。というのは少数ですが、前例があります。その場合の対処方として天上組織で管理している記憶を上書き……つまり、与えることが出来るのです」
「なら、田中さんにもそうしたら良いんじゃないの?」
「それがですね……。管理していた、田中さんの記憶が全て無くなっていたのです。五大神様方、もしくは彼らに連なる高位天使にしか開けられない《記憶の倉庫》から彼女の記憶だけがごっそりと――」
「盗まれたとか?」
ギョッとしたような顔を向けてきたソロエルに、ため息を吐く。
「話の流れ的にそうかなって思っただけよ。それより、こんな話を私にしていいわけ?」
「まあ……なんとなく、ですかね?」
ソロエルはそう言って、こてん、と小首を傾げる。なんだろう、すごくムカつく。
「馬鹿にしてる?」
「してませんよ。なんというか、自分でも分かりませんが、美桜さんには何でも話したくなるような……そんな魅力があるんです」
いきなり何を言うのか。イケメンなのは顔だけにして欲しい。
不覚にもキュンとしてしまったではないか。心なしか、頬が熱い気がする。
「美桜さん? どうかしましたか?」
足を踏みつけてやろうか、と思ったが私は裸足、相手は靴を履いている。
どう考えても被害を受けるのは私なので止めておいた。
「なんでもないわよ。でも、なんで田中さんの記憶だけ、なのかな」
「そこは我々も疑問に思っています。調べを進めてはいますが、彼女もゲームの参加者です。もしかしたら……」
そこで言葉を切ったソロエルの表情は険しかった。
だから、その後に続く言葉に見当がついた。
もしかしたら――敵側の攻撃かもしれない、と。
「憶測でものを言うのは止めましょうか。それよりも、田中さんも来たことですし、早速マーケットで……」
ソロエルが場の空気を変えるように、田中さんを見れば、彼女はまた違う女性に声を掛けていた。
「記憶がどうこう以前の問題だと思うけど、あの人」
「返す言葉もありません……。呼び戻して来ます」
「うん、がんばって」
もう一人でも立てるので、心配そうに見下ろしてきたソロエルを強引に送り出す。
決して、田中さんと関わりたくないから、ということではない。
「……行ってきますね」
少し不服そうな表情で駆けていったソロエルの後ろ姿を見ながら、ふと考える。
仮に敵の攻撃であったとして、なぜ田中さんの記憶なのか。
はっきり言って彼女の記憶の中にそれほど大事なモノがあるとは思えない。
むしろ、前回からの参加者である幸宏の記憶を奪う方が、ソウ様たちに打撃を与えられるのではないだろうか。
「それとも、私たちが死んだあの事故と何か関係が? うーん……」
いくら考えても、答えはでなかった。
ただ一つ、分かっている事といえば――私たちの知らないところで、敵が動いている。その事実に、体が恐怖で震えた。
「いいですか? あなたはまず自分が女性であることを自覚して……」
「ん? やあ、ソロエルさん。君も彼女たちと話がしたいのかい? なら、最初からそう言えばよかったのに!」
「田中さん? 少し、人気のないところに行きましょうか?」
「まさか……ソロエルさんは、僕のことが?!」
「…………。」
とりあえず今は、ソロエルの血管が切れない内にフォローを入れておこう、と二人に歩み寄った。手遅れな気もするけどね。
神様たちの力でまた神殿に戻り、外に出るとソロエルの笑顔が出迎えてくれた。
「ただいま……って、死んでるんだから意味ないよね?」
「気持ちの問題ですよ。それよりも……選ばれたのですね」
選ばれた。それは二つの意味に取れるけど、たぶんソロエルは私が“選んだ”という方をさして言ったのだろう。
「うん。私はもう一度、幸宏に会いたい。たとえ見た目は変わっていても、生まれ変わったその人に幸宏だった時の記憶があるのなら、それは私が好きな幸宏だから」
そう思うことにした。だってわたしは、駒としてゲームに参加すると決めたんだから。
――『幸宏との約束を破ってしまったことは謝ろう。しかし私達は自分たちのせいで死なせてしまった、其方の願いを優先させると決めた。
本来なら私が言えたことではないが……其方は自分の成したいことを成しに、次の世を生きよ。それがきっと私たちや、幸宏の願いだろう。
わがままで、自分勝手な神ですまないな』
そう言った、ソウ様たちの申し訳なさそうにしていた顔が忘れられない。
どこまでも人間らしい神様たち。
神生ゲームだなんてふざけたことに巻き込んで、私達を死なせたことへの怒りが消えた訳じゃない。
それでも、こうしてもう一度、幸宏との「あり得た未来」へ進む機会を与えてくれた。
「このゲームに勝つよ。私のために、ソウ様たちの為に。そして……」
幸宏が私を遠ざけようとしたことも、ゲームのことを隠してたことも。その他諸々、ぜんぶ会ったときに聞きだしてやる。
「待ってなさい、幸宏! 全力で一発ぶん殴ってやるんだから!」
「……本当に変な人ですね」
「いいのよ。私達は私達なんだから」
そういって歩き出した時、ソウ様から貰ったイヤリングがキラリと光った気がした。
「では、さっそく転生マーケットで必要なものをそろえましょうか」
ソロエルは両腕を広げると、軽々と私を横抱きにした。
「驚かないのでしょう? それなら、飛んでいく方が早いですから」
「まだ何も言ってませんけど……」
「どうせ“またコレか”とでも思っていたのでしょう?」
バレたか。顔に出していないつもりだったけど、ばっちり出ていたらしい。
ソロエルはフッと柔らかく微笑み、ゆっくりと浮上した。
この世界に方位があるのかは分からないが、とりあえず神殿から東の方へ飛行して数分後。ソロエルが降下をはじめた。
その先では今まで見えていた白い雲の地面の上に、二列に並ぶ色とりどりの何か。
それは遠くの方に見える、薄ピンク色の大きな山まで続いていた。
「ねえ」
「何でしょう」
「アレさ。どう見ても……桃なんだけど」
山の傾斜が、面白いくらいにあの桃独特の曲線を描いている。何より、真ん中に裂け目があるところなど桃にそっくりだ。
「桃、ではないですね。あの山は《転生の穴》を覆う結界の役割を担っています。そしてその結界を張っているのが楽神様なので、あんな色をしているだけですよ」
そういえば、彼女の髪色とあの山は同じ桃色だ。
どうやら楽神様のイメージカラーはピンクらしい。
「あそこには後で行きますし、詳しい説明はその時にしますよ。さて、着きました。ここが転生マーケットです」
モフッとした感触を足で確かめつつ、雲の地面に降り立つ。
目の前にはズラリと二列で並んだ出店の数々。どこも木の支柱や台を使い、白や青、赤や黄といった、色とりどりの布を屋根代わりにしていた。
市場という言葉が本当に似合うその場所は、とても活気に溢れていた。
「へぇ……アウトレットモールみたいだけど、手作り感満載な雰囲気がなんかファンタジーっぽくて良いね」
「気に入っていただけましたか? では、説明の方に入らせていただきますね」
ソロエルは自分のことのように嬉しそうに笑うと、建ち並ぶ店の方に視線を向けた。
「まず幅広い通路の両脇で、それぞれ違ったものを売っています。と言っても入り口から世界エリア、容姿エリア、能力エリアと大きく3つに分かれているので、歩きながら順々に交換していくのがいいでしょう。
ですが能力を重視して決めたいという場合は、担当天使に声をかけていただければリストをお見せすることも可能です。
あまり一つの物にポイントをかけすぎると、ろくな目に遭いませんからね」
ソロエルが、どことなく昔を思い出しているような顔をすると、こんな話をしてくれた。
――昔、残りのポイントを考えないで、ひたすら容姿にこだわっていた人がいた。
彼は前の人生で容姿にかんして悲惨な目にあったらしく、自分をイケメンにしたかったという。
しかし彼は残ったポイントで能力はおろか、世界も選ぶことができず転生した。
その後、彼は次の世で《残念なイケメン》として余生を過ごしているそうだ。
「えっと、ポイントが無くなっても転生できるの?」
「はい。元々この転生システムは五大神様方の恩情により、創られました。それまではこちらで転生先や容姿、能力を勝手に決めていたので……ポイントが無くなった場合も、私たちが決めることになっております」
「ふーん。なら、その人は自業じと――」
「言わないであげてください。彼は今もまだ生きているのですから」
不意に遠い目をしたソロエルはきっと、彼と会ったことがあるのだろう。
「だからやめた方が言いと、私も担当天使も言ったんですよ。馬鹿な人間だ」……と、ボソッと言っていたのは聞き流しておこう。
「なら私は世界から決めていけばいいの?」
「いえ、美桜さんはゲーム参加者ですので、世界は既に決まっています」
ソロエルが懐から取り出した手帳を開きながら、そう言った。
まあ、普通に考えてゲームの駒が皆同じ世界に転生するってのは分かるよ。
でもね、でもだよ?
「そんなの初耳だっての! なに? この世界の人は説明するのがそんなに面倒なの!?」
「そんなことはないですよ。この連絡も、哀神様が伝えるのを忘れていらしただけのようですし……」
ほう。すべては貴方のせいですか、哀神様。
ごめんなさいが口癖なのは何か理由があるのかと思ったけど、ただ単に失敗回数が多いってわけね。今、納得したわ。
「ちなみに世界を決める際に、既に一千万ポイント消費しています。なので、美桜さんの残りは四千万ポイントですね」
「世界ってそんなに高いの?!」
人間の持つポイントの平均と同じ値段(?)の世界を舞台にゲームするとか、神様たちの常識って一体……。
というか、勝手にポイント使うなら先に言っといてよ!
「はあ……もう、いいわ。さっさと他のモノを交換しに行こう」
これ以上この世界の仕組みを深く考えても、疲れるだけだ。
「あ、待ってください」
そう思って歩きだせば、ソロエルが慌てて引き止めてきた。
「今度はなに?」
「そんなに警戒しないでください、今度は貴女に関することではないので。まあ……見方を変えれば関係してるとも言えますが」
含みのある言い方だ。余計に警戒してしまう。
「実はアナタと同じようにマーケットを案内しなくてはいけない人がもう一人いまして……。連れてくるまでの間、ここでお持ちいただいてもよろしいですか?」
「別に構わないけど……」
「そうですか。では、少し行ってきますね」
私の返答にソロエルはホッとしたような顔をすると、翼を広げて空に飛び立っていった。
「何を気にしてるのか知らないけど、もう死んでるんだから……待つ時間なんていくらでもあるのに」
この世界で信頼……とまではいかないが、信用できるのはソロエルと神様たちだ。
けど立場的に気軽に話ができるといえば、ソロエルの方で、私が初めてこの世界であった人。そんな彼に気を遣われるのは、正直に言って悪い気はしなかった。
「まあ、気を遣い過ぎな感じもするけどね。お人好しなのかな?」
さっきの会話も、先約の相手と出かけている時、無視できない相手から連絡が入った人の対応に似ていた。それが不思議でならない。
例えばここがお店で、ソロエルは店員、私が客だとすれば少し納得できるけど。
「今までだって、たくさんの死人を相手にしてきたんでしょ? なら、もっと雑な扱いをしていてもおかしくないのに」
実際に私が案内天使だったら……。うん、雑な扱いしてそう。
「実はかなりの大物なのかな? ……なわけないか」
ソロエルが飛んで行った方向を見上げ、そんなことを考える。
そこへ、私と同じように白いワンピースを来た女性が近寄ってきた。
「あの、すみません」
「ふおぉ……」
思わず変な声が出た。
だって目の前に美人さんが立ってたら、男じゃなくても声を上げるわよ。
長く綺麗な金髪に海色の瞳。背は私と同じくらいの小ささなのに、細いウエスト、豊満な胸。同じワンピースだというのに、何たる差だ(……自分で言ってて悲しくなったからやめよう)。
とにかく、だ。めちゃくちゃ美人の外国人女性が立っていました。
「えと、私になにか御用でしょうか?」
「さっきいた天使とはどういう知り合いですか?」
ずいっと顔を寄せて来る女性。意外に声は低い。
可憐な容姿からは想像もつかない強引さに、一瞬たじろぐ。
「知り合いも、何も……あの天使は私の担当天使ですけど」
何が気に入らなかったのか。女性は眉間に皺を寄せると、射貫くように鋭い視線で私を見つめてきた。
美しい顔が台無しですよ、なんて言う暇はない。
「そうか……なら、君もそうなんだね!」
「え、ちょ!?」
女性は突然両腕を広げたかと思うと、ガバッと私に抱きついてきた。
いくら同性でも、頬ずりはやめて下さい。
「こんなに可愛い子と組めるなんて、僕は最高だよ!」
「なに言ってるのか分からないんですけど、とにかく放してくれませんか!?」
女性の力とは思えないほど強く締めつけられ、胃から変なものが出そうだ。
まあ、死んでるから出ることはないんだろうけど……出ないよね?
とりあえずそんなことにはなりたくないので、無理やり女性を引きはがそうと奮闘する。
うん、びくともしない。本当にこの人は女の人ですか。
困り果ていたところへ、ソロエルがゆっくりと空から舞い降りてきた。
「すみません、お待たせして。実は待ち合わせ場所に例の人物がいなくてですね、それでこれから北の方を探しに……」
「そんなこといいから、この状況を何とかして!!」
すがる思いでソロエルへと手を伸ばせば、彼は私を見て固まった。
いや、正確には私に抱きつく女性を見て、だ。
「なんでここにいるんですか?! 待ち合わせは転生マーケット直通の列車が止まる、転生の穴駅だって言っておいたじゃないですか!」
天国を列車が走っているということにビックリだよ。
どうなってんだ、この世界は。
「いや、それよりも早く助けて! もう、息が……」
「っ!? 美桜さん!」
フラッと目の前が暗くなると同時に、体を締めつけていた圧迫感がなくなる。
代わりに、たくましい腕に支えられた。
「大丈夫ですか? 生きてますか?!」
「……その質問を死後の世界で使うのはどうなんでしょう」
どうやら意識は飛ばなかったようだ。
心配そうに顔を覗き込んできたソロエルに、小さく微笑む。
「ありがと。もう、平気だから……」
「いいえ。しばらくは私の腕に掴まっていてください」
有無を言わせぬ表情を浮かべたソロエルに、悪いとは思いつつも素直に言うことを聞いた。
「彼よりも僕の腕を掴むと良いよ。僕は女の子には優しいからね」
空気を読めない人とは本当にいるもので、目の前の女性は腕を差し出してきた。
「田中さん。彼女に何か言うことがあるんじゃないですか?」
なんか今、ソロエルの方からピシッと空気が凍る音がした。
「いや~、同じ境遇の人と会うのは初めてだったからね! ついテンションが上がってしまったんだ!」
ぱあっという効果音が聞こえてきそうなほど、明るい笑顔の美女。
というか、タナカさんって……。もっとこうジェシーとか、ミシェルとかさ。まあ期待はしてなかったけど。
「アナタのように見境なく女性に声をかける純日本人の女性が他にもいたら、なんて想像するだけでも吐き気がします」
「僕はこの容姿をスゴク気に入っているけどね。でも、両親共に黒髪黒目だったのにおかしいよね……。あ! もしかして、僕って愛人との間にできた子供だったのかも!」
「そんな訳ないでしょう? いい加減にしないと地獄に落としますよ?」
冷笑を浮かべるソロエルから、冷気が漂ってくる。
穏和そうな人ほど怒らせてはいけないと言うが、何故か今のソロエルに違和感がない。まるで普段から、この冷気をまとっているかのようだ。
実はこっちが素なのかもしれない。
「地獄か……ここを離れるのは残念だけど、地獄にも可愛い女の子はいるかもしれないよね!」
分かっていはいたけど、この人ヤバいです。
ソロエルの額に浮かぶ交差点がさっきよりも、くっきりと大きくなる。
「いいから、彼女にちゃんと謝罪してください」
「ああ、そうだったね。さっきはごめんね、少し取り乱していたんだ。
改めまして、僕は田中。生まれも育ちも日本で、どこかの喫茶店で働いていたってことしか覚えていない、所謂、記憶喪失なんだ!」
「え。記憶そう、しつ……え? え??」
こんなに陽気な記憶喪失の人がいていいのだろうか。
「あ! もう一つ覚えていることがあったよ。確か死ぬ直前に――トラックに轢かれたんだ」
そこでカメラのピントが合ったように、視界がスッキリした。
「まさか、あの事故の?」
この『天国』で初めて目を覚ました時、ソロエルが言っていたことを思い出す。
私が死んだ“あの事故”では、幸宏を含めた関係者が相次いで亡くなっている。そしてその内の一人とは、この後に会いに行くのだと。
「ええ、そうです。そして彼女もまた、ゲームの参加者です」
「同じ境遇って、そういうこと?」
問い返すようにソロエルを見上げれば、田中さんが跪き、恭しく私の右手を取る。
その時、見えた手首には青い宝石が埋め込まれた銀のブレスレットが輝いていた。
「うん、そういうこと。これからよろしくね……えっと、君は誰だっけ?」
手の甲にキスしようとしていた田中さんは、きょとんと首を傾げる。そんな彼女にソロエルはこめかみを押さえていた。
「彼女は笠木美桜さんです。美桜さん、こちらは田中さん。まあ、もう説明はいらないでしょうけど……少々問題がありまして」
一人称が僕で、見た目はハリウッド女優並みに美人の純日本人。それだけでインパクトが大きすぎるというのに、これ以上どんな問題があるのか。
つい、身構えてしまう。とりあえず手の甲へのキッスは回避しておいた。
「記憶喪失のまま死んでしまった人が、そのままの状態でここへきた。というのは少数ですが、前例があります。その場合の対処方として天上組織で管理している記憶を上書き……つまり、与えることが出来るのです」
「なら、田中さんにもそうしたら良いんじゃないの?」
「それがですね……。管理していた、田中さんの記憶が全て無くなっていたのです。五大神様方、もしくは彼らに連なる高位天使にしか開けられない《記憶の倉庫》から彼女の記憶だけがごっそりと――」
「盗まれたとか?」
ギョッとしたような顔を向けてきたソロエルに、ため息を吐く。
「話の流れ的にそうかなって思っただけよ。それより、こんな話を私にしていいわけ?」
「まあ……なんとなく、ですかね?」
ソロエルはそう言って、こてん、と小首を傾げる。なんだろう、すごくムカつく。
「馬鹿にしてる?」
「してませんよ。なんというか、自分でも分かりませんが、美桜さんには何でも話したくなるような……そんな魅力があるんです」
いきなり何を言うのか。イケメンなのは顔だけにして欲しい。
不覚にもキュンとしてしまったではないか。心なしか、頬が熱い気がする。
「美桜さん? どうかしましたか?」
足を踏みつけてやろうか、と思ったが私は裸足、相手は靴を履いている。
どう考えても被害を受けるのは私なので止めておいた。
「なんでもないわよ。でも、なんで田中さんの記憶だけ、なのかな」
「そこは我々も疑問に思っています。調べを進めてはいますが、彼女もゲームの参加者です。もしかしたら……」
そこで言葉を切ったソロエルの表情は険しかった。
だから、その後に続く言葉に見当がついた。
もしかしたら――敵側の攻撃かもしれない、と。
「憶測でものを言うのは止めましょうか。それよりも、田中さんも来たことですし、早速マーケットで……」
ソロエルが場の空気を変えるように、田中さんを見れば、彼女はまた違う女性に声を掛けていた。
「記憶がどうこう以前の問題だと思うけど、あの人」
「返す言葉もありません……。呼び戻して来ます」
「うん、がんばって」
もう一人でも立てるので、心配そうに見下ろしてきたソロエルを強引に送り出す。
決して、田中さんと関わりたくないから、ということではない。
「……行ってきますね」
少し不服そうな表情で駆けていったソロエルの後ろ姿を見ながら、ふと考える。
仮に敵の攻撃であったとして、なぜ田中さんの記憶なのか。
はっきり言って彼女の記憶の中にそれほど大事なモノがあるとは思えない。
むしろ、前回からの参加者である幸宏の記憶を奪う方が、ソウ様たちに打撃を与えられるのではないだろうか。
「それとも、私たちが死んだあの事故と何か関係が? うーん……」
いくら考えても、答えはでなかった。
ただ一つ、分かっている事といえば――私たちの知らないところで、敵が動いている。その事実に、体が恐怖で震えた。
「いいですか? あなたはまず自分が女性であることを自覚して……」
「ん? やあ、ソロエルさん。君も彼女たちと話がしたいのかい? なら、最初からそう言えばよかったのに!」
「田中さん? 少し、人気のないところに行きましょうか?」
「まさか……ソロエルさんは、僕のことが?!」
「…………。」
とりあえず今は、ソロエルの血管が切れない内にフォローを入れておこう、と二人に歩み寄った。手遅れな気もするけどね。
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