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私の主人、英雄候補とは一切交流ございません

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「薬であれば私が祖父に会いに行けばこっそり飲ませる事ができるでしょう。だから是非、私に薬を売っていただけないでしょうか?」

真剣な眼差しを向けられた私は答えに躊躇します。
と言いますのも、魔法薬自体は私が作っておりますが、材料は侯爵家からいただいていますし販売はプランにやってもらっています。私は完全に生産しか受け持っていません。
そしてシニフェ様とプランが言うには、この魔法薬は剣術大会で使用した物から大分効能は押さえておりますがそれでも規格外の効果があるらしいのです。なので流通量についてはシニフェ様が『世間に影響がない程度』と仰っていますし、勝手にベグマン前公爵に流して社交界で噂になるのは最も避けるべき事態です。
更にもう一つの問題として、病状も分からないこの魔法薬を常用して問題がないとは全く言い切れないのです。

「やはりだめでしょうか。グロワ様も『グラン商会でも特別な方しか買えないらしい』と仰っていました。皆様とグロワ様の仲ですから、お裾分けいただけたんでしょうに、図々しいお願いをしてしまって、申し訳ございません」
「それは違います。私個人としても、シニフェ様とプランとしてもグロワ様とは交流はございません。たまたま具合が悪そうだったので手持ちを差し上げた次第です。」
「では是非私にも!勿論お金はお支払い致します!今は無理でも、必ず!」
「そう言う問題ではないのです。私の一存では決められませんし、何よりも症状に合わない魔法薬を飲むのは逆に危険なのです」
「ではどなたに聞けば良いのですか?私、そこまでお伺いします!」

ベグマン様は目に涙を浮かべてながら立ち上がると、サロンから出て行こうと出口へ足を進めました。
正直な話、面倒としか言えません。こんな泣きそうになりながらサロンを出て行った女性を見たらキャブルが何を言うか分かりません。
どこに行けと言うにしてもシニフェ様かプラン、その二択です。
しかし、シニフェ様のところへお連れするのは、このまま私が応対するの以上に問題がでそうです。

「はぁ…」
これ見よがしにため息をつくと、ベグマン様はとうとう涙をこぼしながら怒りをあらわにしました。
「ここでため息をつくなんて…人でなしっ!女性が泣いているのですよ、慰めるとかなさいよっ!!」
「致しません。癇癪を起こされても面倒なだけなので止めていただけますか?私が癇癪を宥めるのはシニフェ様だけですので」
「もうっ!!なんなのよ。あなた方は」
「まぁ、ここで泣かれても私が家の者に叱られてしまいますので、場所を変えましょうか」
そう言って、私は指を鳴らしました。
エルデールでペルソンに教えてもらった転移魔法を使ったのです。
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