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捕獲
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「……馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、まさかここまでとはな」
「酷い。初対面なのに」
「なぁにが、初対面なのに、だ。このドアホ」
竜崎は額に手を当てて天を仰いでいた。その前には、黒髪眼鏡で変装した聖月と転がる死体――ではなく不埒を働こうとして返り討ちに遭った愚か者ども。どうしてくれようかこの馬鹿は、と竜崎は痛む頭を押さえていた。
事の発端は聖月たちの旅行が終わった後。学園の夏休みは短く、一月足らずの夏休みが明けようとしている時だった。
旅行の後、高宮からは直接会って話す、というか仕事が山積み過ぎてそれどころではない、と報告の様な愚痴の様なメールが来てから音沙汰無し。大変だな、と怜毅は何とも言えない顔で言っていた。竜崎としても早く話を聞きたいところではあるが、高宮の立場を考えると文句も言いずらい。どうやって颯斗を宥めるかという事を考えていたのだが、当の本人は他に気を取られているようで生返事を返しただけだった。
拍子抜けを通り越して何かあったのかと問い詰めたのだが、ハッキリしてから話すとの一点張り。皆揃ってマイペースである。
そんな話をしつつも、風紀のメンバーは夏休みも忙しく働いていた。休み期間中も学園に残る者は少なくない。それ故に治安維持活動は休みなく続ける必要があるのだ。特に、警戒が緩くなると勘違いした馬鹿がやらかす事があるので気が抜けないのだ。そう思いつつ見回りしている際に、通報があって急行した先で、先の場面に遭遇したのだ。
「学園に蔓延る馬鹿もアレだが、とりあえず、お前は何してた」
「なんか、聞いてた取り調べと違うぅ」
ため息と疲れと頭痛をごっちゃ混ぜにしてとりあえず飲み込み、不届き者たちを縛り上げて謹慎室に放り込んだのち。こっそり逃げようと画策する聖月の首根っこをひっつかんだ竜崎は勢いよく取調室に突っ込んだ。しくしくとなく真似をする聖月を白けた瞳で見つめる。
「まだ通報してないのに」
「善良な一般生徒が、生徒が数名のガラの悪そうな生徒に絡まれてるって通報してきたんだよ。それで言ったら何故かフィーバーしている絡まれたであろう生徒がガラの悪いのを足蹴にしているのが見えてな。一瞬どっちが被害者だと思ったわ」
「こっちが被害者です」
悪びれず飄々とした聖月に、竜崎は蟀谷を引きつらせる。
「俺には向こうが被害者に見えてしょうがない」
「それは気のせい。もしくは委員長の目がおかしい」
「黙れこの戯け」
ペースに巻き込まれてると頭を抱えて盛大なため息をつく。ややあって顔を上げた竜崎は爛々と目を光らせていた。
「で、どういうつもりだ?」
「何の事やら」
そのヅラとカラコン引っぺがしたろか、と顔に書く竜崎。本気で実行しそうな彼に聖月が流石に冷や汗をかき始める。うわ、流石龍、変装してるのにばれてる気がする、と現実逃避気味だ。
「俺はとある大馬鹿とゲーム中でな。ソイツをとっ捕まえるのが勝利条件なんだわ」
「へ、へぇ」
「んで、尻尾は見せても棚から勢いよく落ちてくることはないだろうと頭をひねっていたんだが」
「ふんふん」
「まさかその落ちてくるを素でやられるなんて予想外過ぎる。馬鹿は治って無い様だな」
「そんな人いるんだぁ」
視線が泳いで戻ってこない聖月。苦虫をたっぷりと味わっているような顔でソレを見ていた竜崎だったが、ため息をついて紙を取り出した。
「名前と事件の詳細を話せ」
「へ」
終わり、と目が点になる聖月。珍獣を見る目で見られる竜崎の方がその眼をしたいくらいだと叫びそうになる。蟀谷を揉みつつ竜崎はペンを走らせた。
「俺の知っているヤツは、馬鹿アホ間抜けの三拍子そろったクソガキだが、意味のない行動はしない。このゲームには着地点があってそこへ至るレールもあるはずだ。で、これはそのレールとは関係ないと判断しただけだ」
「俺だったら問答無用で捕まえるけど。甘いんじゃないの?」
「他の奴だったらそれでいいさ。けど、相手はお前だからな。レールから逸れた行動をしたらその瞬間に全てを失う」
そうだろう?と目で問われ。聖月は微笑んだ。やっぱりこの男が好きだ、と思いながら。
「さぁ。俺は委員長が思っている人とは違うから分からないけど?」
「そういう事にしておく」
とある夏の日の幕間。
「酷い。初対面なのに」
「なぁにが、初対面なのに、だ。このドアホ」
竜崎は額に手を当てて天を仰いでいた。その前には、黒髪眼鏡で変装した聖月と転がる死体――ではなく不埒を働こうとして返り討ちに遭った愚か者ども。どうしてくれようかこの馬鹿は、と竜崎は痛む頭を押さえていた。
事の発端は聖月たちの旅行が終わった後。学園の夏休みは短く、一月足らずの夏休みが明けようとしている時だった。
旅行の後、高宮からは直接会って話す、というか仕事が山積み過ぎてそれどころではない、と報告の様な愚痴の様なメールが来てから音沙汰無し。大変だな、と怜毅は何とも言えない顔で言っていた。竜崎としても早く話を聞きたいところではあるが、高宮の立場を考えると文句も言いずらい。どうやって颯斗を宥めるかという事を考えていたのだが、当の本人は他に気を取られているようで生返事を返しただけだった。
拍子抜けを通り越して何かあったのかと問い詰めたのだが、ハッキリしてから話すとの一点張り。皆揃ってマイペースである。
そんな話をしつつも、風紀のメンバーは夏休みも忙しく働いていた。休み期間中も学園に残る者は少なくない。それ故に治安維持活動は休みなく続ける必要があるのだ。特に、警戒が緩くなると勘違いした馬鹿がやらかす事があるので気が抜けないのだ。そう思いつつ見回りしている際に、通報があって急行した先で、先の場面に遭遇したのだ。
「学園に蔓延る馬鹿もアレだが、とりあえず、お前は何してた」
「なんか、聞いてた取り調べと違うぅ」
ため息と疲れと頭痛をごっちゃ混ぜにしてとりあえず飲み込み、不届き者たちを縛り上げて謹慎室に放り込んだのち。こっそり逃げようと画策する聖月の首根っこをひっつかんだ竜崎は勢いよく取調室に突っ込んだ。しくしくとなく真似をする聖月を白けた瞳で見つめる。
「まだ通報してないのに」
「善良な一般生徒が、生徒が数名のガラの悪そうな生徒に絡まれてるって通報してきたんだよ。それで言ったら何故かフィーバーしている絡まれたであろう生徒がガラの悪いのを足蹴にしているのが見えてな。一瞬どっちが被害者だと思ったわ」
「こっちが被害者です」
悪びれず飄々とした聖月に、竜崎は蟀谷を引きつらせる。
「俺には向こうが被害者に見えてしょうがない」
「それは気のせい。もしくは委員長の目がおかしい」
「黙れこの戯け」
ペースに巻き込まれてると頭を抱えて盛大なため息をつく。ややあって顔を上げた竜崎は爛々と目を光らせていた。
「で、どういうつもりだ?」
「何の事やら」
そのヅラとカラコン引っぺがしたろか、と顔に書く竜崎。本気で実行しそうな彼に聖月が流石に冷や汗をかき始める。うわ、流石龍、変装してるのにばれてる気がする、と現実逃避気味だ。
「俺はとある大馬鹿とゲーム中でな。ソイツをとっ捕まえるのが勝利条件なんだわ」
「へ、へぇ」
「んで、尻尾は見せても棚から勢いよく落ちてくることはないだろうと頭をひねっていたんだが」
「ふんふん」
「まさかその落ちてくるを素でやられるなんて予想外過ぎる。馬鹿は治って無い様だな」
「そんな人いるんだぁ」
視線が泳いで戻ってこない聖月。苦虫をたっぷりと味わっているような顔でソレを見ていた竜崎だったが、ため息をついて紙を取り出した。
「名前と事件の詳細を話せ」
「へ」
終わり、と目が点になる聖月。珍獣を見る目で見られる竜崎の方がその眼をしたいくらいだと叫びそうになる。蟀谷を揉みつつ竜崎はペンを走らせた。
「俺の知っているヤツは、馬鹿アホ間抜けの三拍子そろったクソガキだが、意味のない行動はしない。このゲームには着地点があってそこへ至るレールもあるはずだ。で、これはそのレールとは関係ないと判断しただけだ」
「俺だったら問答無用で捕まえるけど。甘いんじゃないの?」
「他の奴だったらそれでいいさ。けど、相手はお前だからな。レールから逸れた行動をしたらその瞬間に全てを失う」
そうだろう?と目で問われ。聖月は微笑んだ。やっぱりこの男が好きだ、と思いながら。
「さぁ。俺は委員長が思っている人とは違うから分からないけど?」
「そういう事にしておく」
とある夏の日の幕間。
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