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壊れた祝福者
自分以外受け付けぬ体、「血」をそぎ落とす体
しおりを挟むニュクスとのまぐわい、昨日ので酷く体が敏感なのが分かった。
だから、君により気持ち良くなってほしかった。
他の事を考えないように、もう何も気にしなくていいように。
女性の器とは異なり、元々受け入れる場所ではない後孔一年近く雄を受け入れてないソコに、いきなり私の物を挿れるのは苦しいだろうと思い道具を使った。
それが間違いだった。
玉が連なったタイプの性玩具を媚薬入りの潤滑液で濡らして、指でほぐしてわずかに開いてひくついている後孔に押し込んだ途端、ニュクスの表情が変化した。
どこか辛そうだった、最初は久しぶりに受け入れたからそれに対しての反応かと思い、膣内に、雄を挿れ、繋がって、昨日と同じようにまぐわいを始めた。
しばらくして明らかに違うのが分かった。
快感を感じているというよりも、明らかに苦しそうな顔と「声」に何があったと訳が分からなくなった。
「ニュクス、どうしたんだい?」
動きを止めて訊ねたのに、返事が無い、目元は涙で潤んでいるのに、昨日のとは明らかに違う、苦痛の涙で潤んでいる。
呼吸も表情も体の感触も、まるで凌辱に怯えているような、異物に犯される、苦痛しかない凌辱行為をされているような、そんな風に感じ取れた。
でも、ニュクスは何も言わない。
君の「声」がどうみて苦しそうで、辛そうな風に聞こえる。
けれども「言葉」がない。
壊れていた私が言ってた「痛い」どころか、「苦しい」、「止めろ」とかそういう言葉がない。
そもそも「言葉」を発してくれない。
何故?
どうして?
我慢を、するんだ?
ずるりと雄を引き抜くと、苦痛の色が増した。
それで完全に理解した、ほぐすためと良かれとおもって入れた性玩具に酷い苦痛を感じているのだと。
私はなるべくゆっくりと性玩具を後孔から抜いた。
抜き終わると、後孔は指で愛撫した時とは違い閉ざされた状態になっていた。
荒い呼吸を繰り返しているニュクスの頬を撫でる。
「……もう道具は使わない、すまない……」
謝罪の言葉を口にする、君は私を責めない、何故と言わんばかりの顔をする。
私は自分が醜くて耐えられない、自分が汚くて気持ちが悪い。
悦んでいる自分がいる。
私以外は受け付けない体に君がなってしまった事を悦んでいる自分がいる。
それが、どれほど苦しいかなんて分かっているのに。
壊れていた頃、自分の「欲」の為に散々壊れて歪になってしまってるニュクスを、はけ口にした。
酷く身勝手な行いだ。
そして今も、こうして欲のはけ口にしている。
私が突き放せば壊れるから?
それだけは違う!!
ああ、愛しているニュクス、君の事を何よりも愛している。
君と別れたあの日から、私はずっと君を愛していたとも。
だから、壊れた時、君が傍にいて欲しかった。
その結果、君はこうなってしまった。
私は君に依存しすぎている。
分かっている、ニュクスが居ないと私はまた壊れた状態に戻りかねない程、君に依存している。
私は、ニュクス、君がいないと駄目なんだ。
今でも、私は君と父以外の存在が怖くてしょうがないんだ、アルゴスも怖い、マイラも――城で働く者達も、皆怖くて仕方がない。
でも、もし君を手放したら私のこの壊れた体と心を「治そう」と言った誰かが言い実際に治せるとしても、私はそれを選ばない。
君を手放すくらいなら、私はこのままでいい、他の者達に怯え、食事も調理された物が食せなくてもいい。
君が、傍にいる方がいい、ニュクス、君を失いたくない、手放したくない。
お願いだ、傍にいて――
「――」
ニュクスは熱っぽい呼吸を繰り返して、口から「喘ぎ声」を零している。
目も熱に浮かされた目で、私を見ている。
血の気のなく、冷たい肌は熱帯び、汗ばんでいた。
孕むことのない器官、どれだけ精液を注ごうと、実るものなど何もない箇所。
でも、触れ合いたいと願いそこで繋がる者達もいる。
そういう性癖の者や、屈服や蹂躙、凌辱の痕跡として犯す輩がいないとは言わない。
性癖や繋がるの願ってなら、別に良いだろう、合意があれば。
それ以外の場合や非合意なら罰するべきだが。
私がやっているのは、どちらなのだろう?
ニュクスは拒否しない、私を愛しているから?
違う、君はこの行為、どちらであってもまぐわいを、性行為を好んでいない。
そうしたのは私だ。
壊れていた時、君に無理強いをさせたから。
君はしたくないのだろう、でも今の君は決して拒まない。
熱を吐き出す、欲を奥に吐き出すと、ひときわ甲高い「声」を上げて首を反らす。
赤い舌が艶めかしい。
ずるりと後孔から雄を抜く、奥で吐き出したからか、精液が零れてこない。
潤滑液と体液が混じり合って零れるだけ。
ニュクスの勃起していない、雄から、白い液体か零れていた。
咥えてみるけど、こちらの反応は敏感なのに弱い。
体液をこぼすけど、勃起することはない。
何故か分からなかった。
引き離されるのが怖くて言わなかった。
なのに、アルゴスがやってきた。
マイラが何か異変を感じたのだが、自分では把握的無い、またこの部屋での出来事は現在私が妨害してるから読めない。
ああ、よりにもよってアルゴスが来るなんて。
アルゴスはセイアを呼び出した。
何か言っている。
「リアン殿下、ニュクス妃殿下のお体を調べてもよろしいでしょうか」
「……普段の診察では、ないのか」
「普段の診察ではありません」
「どうしても、必要か」
「アルゴス様からのご命令です」
思わず舌打ちをしてしまう、心の状態が以前の私に近いとはいえ不安定な事は変わりない為、現状ではアルゴスの意見が通る、私が拒否しようと。
「――」
ニュクスは、嫌だともいわない、嘘をついて嫌がってると言えばもしかしたら調べる行為を止めさせられるかもしれないが、それこそ裏切りだ。
「……ニュクスは別に構わないと、言っている」
「ありがとうございます、では失礼します」
触診と同時に術診を行ってるのを私はニュクスを抱きしめながら見つめる。
診察――基検査が終わり、セイアはニュクスに術を施し、眠らせた。
そして離れ、セイアはアルゴスに普通なら聞こえない程の声で説明している。
壊れている時の私だったら、どうすることもできないだろう。
だが、今は本調子時ほどではないが、術は使えない訳ではない、聞くこと位はできる。
『ニュクス妃殿下のお体は実際どうなのだ?』
『私の治療は可能な限りやっております、ですがニュクス妃殿下自身が「治る」気が無いのです。いえ「生きる気力」を失われてらっしゃいます』
ああ、私の、所為、だ。
『――そうか、それに関しては私達ではどうにもできぬか……では、もう一つニュクス妃殿下の「生殖能力」関係の事だ』
『――全て、停止しています、いえもっと悪い状態かもしれません』
『どういう事だ』
『ニュクス妃殿下は無意識に自分の「性」をそぎ落としていらっしゃいます、子を生すことを嫌悪し生殖機能を無理やり停止させていらっしゃいます、おそらくニュクス妃殿下は――』
『自分の血を絶やしたいのでしょう、愚王レオンの血を引く唯一の子どもである自分の血を、愚王レオンの血を』
『……それも、どうにもならぬか』
ああ、君と血を繋がっているだけの愚者か。
殺そう。
「――アルゴス、父はあの愚王をどうすると言っている?」
「申し訳ございません、陛下からリアン様には決して伝えるな、と」
「何故だ? 答えろ」
「どうしたのだ」
父が姿を現した。
「父上、どうして私に教えてくださらないのです」
「リアン、お前はまだ酷く不安定だ。お前の妻を見よ、かつてのお前とは比べ物にならない程に衰弱している。」
「……」
「お前とは異なり、お前の妻は様々な要因で『壊れている』、その一つでもある愚王の事をお前が隠し通せるとは思わぬ、時が来たら話す。それまでは――くれぐれも己が妻に無茶をさせるな」
言い聞かせるような穏やかな口調から僅かばかりに圧のこもった言葉へと最後変わった。
父は見抜いているのだろう。
私は――君の為に何もできない上、君に無理強いさせてばかりな自分が憎いよ、ニュクス。
でも、何もできないままで、無理強いさせるのを止めることができない。
だから――憎んでくれお願いだから――
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