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Ⅱ章――――俺たちの夏がやってきた
11 海をきれいに
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Cカード取得を目指している俺だったが、決してダイビングをしたいからやっているわけじゃない。持っておくと海美活動に役に立つと思ったからだ。
海美活動をやってみようってなった時、浮島さんからある程度活動内容を聞いていた。主にゴミ拾いではあるが、ゴミは海の中にも存在する。海底に沈んだ物は機械を使うか、手作業で取る以外に方法はない。そのためにダイビングのライセンスを持っている活動団員もいるようだ。
そこで折谷もCカードを持っていると知った。浮島さんはまるで自分のことのように自慢していた。
折谷が取れるなら俺も取れるはずだ。いい機会だったこともあり、軽い気持ちで挑戦してみようと思った。つまり、俺はまだCカードを未取得のままだ。
だとしても海美活動ができないわけじゃない。今俺ができることは、海岸と浅瀬のゴミ拾いくらいだ。港の近くであればタモでもすくえる。以前、俺がヤブたちに海美活動でやることをざっくり説明したことは、あながち間違っていなかったわけだ。
海の濁り具合や海洋生物の調査もあるが、浅瀬くらいしかいけない俺がさして労を割くことはない。
なあーんだ、ただのゴミ拾いじゃないか。と思われるかもしれないが、あなどるなかれ。炎天下でゴミ拾いも地味に疲れる。帽子でも被らなければ頭が沸騰しかねない。
二本目の飲料水を飲み干し、手に持ったゴミ袋に入れて落ち合い場所である駐車場に向かう。駐車場には軽トラが待機しており、軽トラの荷台に集めて運んでいく。それを何度も繰り返すだけだ。
夏真っ盛りの中では活動にも限界がある。休憩しながら二時間半で切り上げ、ダイビングスクールの空き教室で一息。あとは帰るだけだが、のぼせたみたいな感覚が全身を満たしてなかなか動けずにいた。
こればかりは仕方ない。汗だくになりながら体を酷使した後、冷房の利いた部屋にいたら涼みたくもなるだろう。
もう少し居たいところだが、身の上は学生だ。夏休みの宿題もてんこ盛りにある。帰ってから宿題をしようと意気込んで、グースカ寝てしまう定番のオチはさておき、今のうちに片づけておきたい。重い腰を上げようとした時だ。
「お疲れだね」
いつの間にか、教室のドアにもたれかかる澪さんがこちらを見ながらクスクスと笑っていた。
「澪、さん?」
「そう。よくミオって間違えられて、あだ名がミオになったわ」
「はあ、そうなんすね……」
戸惑いを隠せず、ぎこちなく相づちを打った。
澪さんは教室に入ってくると、企んだ笑みを携えて俺の横に立った。女性にしては背丈の高い身長。百七十三センチの俺と同じくらいはある。
大きなベルトに黒いノースリーブのピチッとした服が、スタイルの良さを際立たせている。まず出会ってこなかったタイプの人だ。それだけにちょっと緊張してしまう。
接近されて妙な居心地の悪さを感じて硬直した時、澪さんの手が俺の前に上がった。そして長机に落ち着いた。
こってりをまぶしている重厚な塊。一瞬何かわからなかったが、二秒後にはそれを丸々とした瞳で凝視してしまった。
「あげるよ。家族と一緒に食べて」
成長期の男子高校生にはたまらない一品。これはチャーシューじゃねえか!
思わぬ差し入れに嬉しいよりも困惑が勝ってしまった。
「い、いいんですか?」
「頑張っているみたいだからね。体力つけな」
「ありがとうございます」
筒型のバッグにコソコソとしまい込む。
澪さんは前の席に座り、左手に持った缶ジュースを差し出す。
「これもいる?」
「いえ、自分のあるんで、大丈夫です。チャーシューももらいましたし」
「そう」
缶ジュースが小気味いい音を立てて開き、澪さんは喉を鳴らした。微妙な間が空く。
近くの海岸から聞こえてくる人のはしゃぐ声。本来ならこのまま失礼してしまえばいいのだろうが、ベージュピンクの唇が何か言いたげにしていた。そうして、澪さんはおもむろに口を開いた。
「菜音歌が悪いことしたね」
「え?」
「ヒドいこと言われたんだろ?」
浮島さんか。俺たちのことを心配して澪さんに言ったんだろうか。
「でも、悪く思わないでほしいんだ。菜音歌はまだ、吹っ切れてないんだよ」
澪さんは悲しげな笑みを灯した。
「マリンフェアリー。この島を取り巻く伝説。他の人にしてみたら、ただの逸話でしかないけど、菜音歌にとっては、嫌悪する伝説なんだ」
缶ジュースを口につける。一口含み、缶ジュースを置き、小さく吐息が漏れる。
「私にも、菜音歌の傷は癒やせない。きっと、菜音歌自身でケリをつけるしかないんだろうねぇ」
「アイツに、何があったんですか?」
澪さんは俺をじっと見つめてきた。真顔になると、一層クールな印象が強まる人だ。
澪さんは笑みを零す。
「ま、どうせ知っちまうことだしね。……菜音歌は恨んでるんだよ。マリンフェアリーを」
海美活動をやってみようってなった時、浮島さんからある程度活動内容を聞いていた。主にゴミ拾いではあるが、ゴミは海の中にも存在する。海底に沈んだ物は機械を使うか、手作業で取る以外に方法はない。そのためにダイビングのライセンスを持っている活動団員もいるようだ。
そこで折谷もCカードを持っていると知った。浮島さんはまるで自分のことのように自慢していた。
折谷が取れるなら俺も取れるはずだ。いい機会だったこともあり、軽い気持ちで挑戦してみようと思った。つまり、俺はまだCカードを未取得のままだ。
だとしても海美活動ができないわけじゃない。今俺ができることは、海岸と浅瀬のゴミ拾いくらいだ。港の近くであればタモでもすくえる。以前、俺がヤブたちに海美活動でやることをざっくり説明したことは、あながち間違っていなかったわけだ。
海の濁り具合や海洋生物の調査もあるが、浅瀬くらいしかいけない俺がさして労を割くことはない。
なあーんだ、ただのゴミ拾いじゃないか。と思われるかもしれないが、あなどるなかれ。炎天下でゴミ拾いも地味に疲れる。帽子でも被らなければ頭が沸騰しかねない。
二本目の飲料水を飲み干し、手に持ったゴミ袋に入れて落ち合い場所である駐車場に向かう。駐車場には軽トラが待機しており、軽トラの荷台に集めて運んでいく。それを何度も繰り返すだけだ。
夏真っ盛りの中では活動にも限界がある。休憩しながら二時間半で切り上げ、ダイビングスクールの空き教室で一息。あとは帰るだけだが、のぼせたみたいな感覚が全身を満たしてなかなか動けずにいた。
こればかりは仕方ない。汗だくになりながら体を酷使した後、冷房の利いた部屋にいたら涼みたくもなるだろう。
もう少し居たいところだが、身の上は学生だ。夏休みの宿題もてんこ盛りにある。帰ってから宿題をしようと意気込んで、グースカ寝てしまう定番のオチはさておき、今のうちに片づけておきたい。重い腰を上げようとした時だ。
「お疲れだね」
いつの間にか、教室のドアにもたれかかる澪さんがこちらを見ながらクスクスと笑っていた。
「澪、さん?」
「そう。よくミオって間違えられて、あだ名がミオになったわ」
「はあ、そうなんすね……」
戸惑いを隠せず、ぎこちなく相づちを打った。
澪さんは教室に入ってくると、企んだ笑みを携えて俺の横に立った。女性にしては背丈の高い身長。百七十三センチの俺と同じくらいはある。
大きなベルトに黒いノースリーブのピチッとした服が、スタイルの良さを際立たせている。まず出会ってこなかったタイプの人だ。それだけにちょっと緊張してしまう。
接近されて妙な居心地の悪さを感じて硬直した時、澪さんの手が俺の前に上がった。そして長机に落ち着いた。
こってりをまぶしている重厚な塊。一瞬何かわからなかったが、二秒後にはそれを丸々とした瞳で凝視してしまった。
「あげるよ。家族と一緒に食べて」
成長期の男子高校生にはたまらない一品。これはチャーシューじゃねえか!
思わぬ差し入れに嬉しいよりも困惑が勝ってしまった。
「い、いいんですか?」
「頑張っているみたいだからね。体力つけな」
「ありがとうございます」
筒型のバッグにコソコソとしまい込む。
澪さんは前の席に座り、左手に持った缶ジュースを差し出す。
「これもいる?」
「いえ、自分のあるんで、大丈夫です。チャーシューももらいましたし」
「そう」
缶ジュースが小気味いい音を立てて開き、澪さんは喉を鳴らした。微妙な間が空く。
近くの海岸から聞こえてくる人のはしゃぐ声。本来ならこのまま失礼してしまえばいいのだろうが、ベージュピンクの唇が何か言いたげにしていた。そうして、澪さんはおもむろに口を開いた。
「菜音歌が悪いことしたね」
「え?」
「ヒドいこと言われたんだろ?」
浮島さんか。俺たちのことを心配して澪さんに言ったんだろうか。
「でも、悪く思わないでほしいんだ。菜音歌はまだ、吹っ切れてないんだよ」
澪さんは悲しげな笑みを灯した。
「マリンフェアリー。この島を取り巻く伝説。他の人にしてみたら、ただの逸話でしかないけど、菜音歌にとっては、嫌悪する伝説なんだ」
缶ジュースを口につける。一口含み、缶ジュースを置き、小さく吐息が漏れる。
「私にも、菜音歌の傷は癒やせない。きっと、菜音歌自身でケリをつけるしかないんだろうねぇ」
「アイツに、何があったんですか?」
澪さんは俺をじっと見つめてきた。真顔になると、一層クールな印象が強まる人だ。
澪さんは笑みを零す。
「ま、どうせ知っちまうことだしね。……菜音歌は恨んでるんだよ。マリンフェアリーを」
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