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Lesson4 重なる二人の想い出
STEP⑱ 花は散る
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静寂に包まれる式場で俺が契りのキスをしようとした時、俺の腕が押された。佳織の顔がうつむいている。
俺の腕は痛いくらいに佳織に掴まれ、たった数センチの距離から近づけない。
拒絶。そうとしか考えられなかった。
招待客や両家の親族は目を点にしていた。祭壇に立っている牧師さんも、その光景に目を見開いて驚いていた。
「佳織?」
佳織の口は薄く開いていて、唇は震えていた。時が止まったように無言の間が空しい。佳織と俺との間に突然できた目に見えない距離。ついさっきまで近くにあったはずなのに、今ではその距離が分からないほど離れているようだった。佳織の姿が幻影に思えて仕方がない。無言の時が突きつける不安は、俺の脳裏に燻っていた疑念を掻き立てる。
俺は佳織を信じることを決めていた。信じることで、目を背けていた。
「……ごめんなさい」
それだけ言うと、佳織は足早に会場を去った。
会場はざわつき、扉が閉まる音がはっきりと響いた。招待客の中から二人が慌てて佳織を追うように会場を出た。その二人の姿には見覚えがある。前に佳織と一緒にいた高校の時の同級生だと、すぐに分かった。
俺は立ち尽くすことしかできなかった。不安が現実になってしまった事実を受け入れたくなかった。
「これはどういうことですか!? 館花さん」
俺の父が佳織の両親に詰め寄っている。
「申し訳ありません。私達にも分からんのです」
佳織の父は平謝りしていた。
「ミナさん、オチツイテください!」
会場は騒然とした。心にできた穴を埋められる気がしない。失意に胸が満たされる。
いや……。それは佳織も同じだ。佳織だって苦しんだはずだ。その苦しみに勝るだけの喜びと幸せを与えられなかった。
こんな所で悲しみに暮れている場合ではない。やるべきことはたくさんある。
俺は今すべきことを考えた。佳織のために、今できることを。
今俺が佳織を追いかけて話を聞くよりも、あの二人に任せたほうがいい。
なら、俺ができることは、この状況をどうにかすることだ。
俺は軽く鼻から息を吸った。
「父さん、あんまり責めないでやってくれ」
「何を言ってる! 式はどうするんだ!」
顔が完全に怒っていた。こめかみの血管が浮きでている。父はいつもそうだ。本気で怒っている時は必ずこめかみに血管が浮きでる。
「式は中止にしよう」
「館花さん。式の費用は払ってもらいますよ!」
敵対的な口調で父が言う。
「俺が払います」
「ふざけるな!! お前の婚約者が放り投げたんだぞ!? なぜ私達が払わなければならんのだ!」
「父さんは払わなくていい。俺が払うと言ってるんだ」
俺は反抗期の青年のように言い張る。
「馬鹿なことを言うな!! お前が」
「俺がいけなかったんだ」
俺は父の言葉を遮った。
「俺が佳織さんの気持ちに向き合ってあげるべきだった……。そうすれば、こんなことにはならなかった」
佳織の両親は口をあんぐり開けて呆然としている。
「急ぎすぎたんだよ。もう少し時間を置かなきゃならない。それで、佳織さんが晴れやかな気持ちで式を行えるまで、待ってほしい」
「そんなこと言ったって……」
父は口ごもった。
「俺がなんとかするよ」
俺は牧師さんや式場のスタッフさんに視線を向けた。
「申し訳ありませんが、式はこのまま中止で進めてください」
牧師さんとスタッフさんは顔を見合わせる。
「分かりました」
スタッフさんは渋々応えた。
「申し訳ありません」
俺は頭を下げた。
さて……。俺は閉じられた扉を見据える。その下で、俺の心模様を表すようにブーケの花びらが赤い絨毯に散っていた。佳織……。
俺の腕は痛いくらいに佳織に掴まれ、たった数センチの距離から近づけない。
拒絶。そうとしか考えられなかった。
招待客や両家の親族は目を点にしていた。祭壇に立っている牧師さんも、その光景に目を見開いて驚いていた。
「佳織?」
佳織の口は薄く開いていて、唇は震えていた。時が止まったように無言の間が空しい。佳織と俺との間に突然できた目に見えない距離。ついさっきまで近くにあったはずなのに、今ではその距離が分からないほど離れているようだった。佳織の姿が幻影に思えて仕方がない。無言の時が突きつける不安は、俺の脳裏に燻っていた疑念を掻き立てる。
俺は佳織を信じることを決めていた。信じることで、目を背けていた。
「……ごめんなさい」
それだけ言うと、佳織は足早に会場を去った。
会場はざわつき、扉が閉まる音がはっきりと響いた。招待客の中から二人が慌てて佳織を追うように会場を出た。その二人の姿には見覚えがある。前に佳織と一緒にいた高校の時の同級生だと、すぐに分かった。
俺は立ち尽くすことしかできなかった。不安が現実になってしまった事実を受け入れたくなかった。
「これはどういうことですか!? 館花さん」
俺の父が佳織の両親に詰め寄っている。
「申し訳ありません。私達にも分からんのです」
佳織の父は平謝りしていた。
「ミナさん、オチツイテください!」
会場は騒然とした。心にできた穴を埋められる気がしない。失意に胸が満たされる。
いや……。それは佳織も同じだ。佳織だって苦しんだはずだ。その苦しみに勝るだけの喜びと幸せを与えられなかった。
こんな所で悲しみに暮れている場合ではない。やるべきことはたくさんある。
俺は今すべきことを考えた。佳織のために、今できることを。
今俺が佳織を追いかけて話を聞くよりも、あの二人に任せたほうがいい。
なら、俺ができることは、この状況をどうにかすることだ。
俺は軽く鼻から息を吸った。
「父さん、あんまり責めないでやってくれ」
「何を言ってる! 式はどうするんだ!」
顔が完全に怒っていた。こめかみの血管が浮きでている。父はいつもそうだ。本気で怒っている時は必ずこめかみに血管が浮きでる。
「式は中止にしよう」
「館花さん。式の費用は払ってもらいますよ!」
敵対的な口調で父が言う。
「俺が払います」
「ふざけるな!! お前の婚約者が放り投げたんだぞ!? なぜ私達が払わなければならんのだ!」
「父さんは払わなくていい。俺が払うと言ってるんだ」
俺は反抗期の青年のように言い張る。
「馬鹿なことを言うな!! お前が」
「俺がいけなかったんだ」
俺は父の言葉を遮った。
「俺が佳織さんの気持ちに向き合ってあげるべきだった……。そうすれば、こんなことにはならなかった」
佳織の両親は口をあんぐり開けて呆然としている。
「急ぎすぎたんだよ。もう少し時間を置かなきゃならない。それで、佳織さんが晴れやかな気持ちで式を行えるまで、待ってほしい」
「そんなこと言ったって……」
父は口ごもった。
「俺がなんとかするよ」
俺は牧師さんや式場のスタッフさんに視線を向けた。
「申し訳ありませんが、式はこのまま中止で進めてください」
牧師さんとスタッフさんは顔を見合わせる。
「分かりました」
スタッフさんは渋々応えた。
「申し訳ありません」
俺は頭を下げた。
さて……。俺は閉じられた扉を見据える。その下で、俺の心模様を表すようにブーケの花びらが赤い絨毯に散っていた。佳織……。
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