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第十四章 宝石店の魔法使い
(五)
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「え、えええっ、わたしが⁉」
「そ。またペンダントがいいな。頼んだ」
「ちょ、ちょっと待って! わたし、仕事でアクセサリーつくったことない!」
あわてて、レオの腕をつかむ。お客さまから依頼されたことって、まだないんだ。そういうのは母さんと父さんのすることだし、わたしは練習ばっかり。まだまだ修行中なんだよ!
なのに正式な依頼なんて……。
だけど、レオもミナセも、楽しそうに笑っていた。
「いいんじゃないかい? やってみなよ。ルリならできると思うな」
「そうそ。魔法で剣までつくったんだからさ、自信もてって」
「ぼくの指輪よりは、簡単だろうしね」
「そうそ――、指輪? なんの話だ?」
レオがいぶかしむ。そういえば、牢の中での出来事をレオは知らないんだ。ミナセはにっこりと微笑んだ。
「ぼくとルリの秘密。レオには内緒だよ」
「はあ⁉ なんだよ、それ! ずりい!」
やんややんやと、レオとミナセは騒ぎ出す。静かにしてないと、母さんたちに部屋を抜け出したことがばれちゃうよ……。そんなことを思いながらも、わたしは、赤輝石を見つめた。
(わたしに、頼みたいって、言ってくれてるんだ)
信頼して、任せてくれようとしている。
緊張はしてる。だけど、それ以上に、心がぽかぽかしていた。
覚悟を決めて、顔をあげる。
「レオ」
「ん?」
「わたし、やる!」
練習じゃない、お仕事としてのアクセサリーづくり。
「レオの赤輝石、わたしがつくる!」
不安だけど、やってみたい。レオの大事な宝石を、わたしがつくりたい。せっかく、わたしを頼ってくれたんだから!
「……ん、頼んだ!」
レオはにっこりと、それこそ宝石みたいな笑顔を見せた。きらきらの、まぶしい笑顔を。
(やっぱり、レオの笑顔、好きだな、……なんてね)
恥ずかしいから、絶対レオには言わないけど。
「ミナセの宝石も、レオの宝石も、任せて。ふたりに似合う、すてきな宝石にしてみせるから!」
「うん!」
「ああ!」
わたしは、ぐっと拳を握った。
宝石店の、魔法使い。
まだまだ修行中だけど、みんなを笑顔にするアクセサリーをつくるために。
お仕事、がんばらせていただきます!
(了)
「そ。またペンダントがいいな。頼んだ」
「ちょ、ちょっと待って! わたし、仕事でアクセサリーつくったことない!」
あわてて、レオの腕をつかむ。お客さまから依頼されたことって、まだないんだ。そういうのは母さんと父さんのすることだし、わたしは練習ばっかり。まだまだ修行中なんだよ!
なのに正式な依頼なんて……。
だけど、レオもミナセも、楽しそうに笑っていた。
「いいんじゃないかい? やってみなよ。ルリならできると思うな」
「そうそ。魔法で剣までつくったんだからさ、自信もてって」
「ぼくの指輪よりは、簡単だろうしね」
「そうそ――、指輪? なんの話だ?」
レオがいぶかしむ。そういえば、牢の中での出来事をレオは知らないんだ。ミナセはにっこりと微笑んだ。
「ぼくとルリの秘密。レオには内緒だよ」
「はあ⁉ なんだよ、それ! ずりい!」
やんややんやと、レオとミナセは騒ぎ出す。静かにしてないと、母さんたちに部屋を抜け出したことがばれちゃうよ……。そんなことを思いながらも、わたしは、赤輝石を見つめた。
(わたしに、頼みたいって、言ってくれてるんだ)
信頼して、任せてくれようとしている。
緊張はしてる。だけど、それ以上に、心がぽかぽかしていた。
覚悟を決めて、顔をあげる。
「レオ」
「ん?」
「わたし、やる!」
練習じゃない、お仕事としてのアクセサリーづくり。
「レオの赤輝石、わたしがつくる!」
不安だけど、やってみたい。レオの大事な宝石を、わたしがつくりたい。せっかく、わたしを頼ってくれたんだから!
「……ん、頼んだ!」
レオはにっこりと、それこそ宝石みたいな笑顔を見せた。きらきらの、まぶしい笑顔を。
(やっぱり、レオの笑顔、好きだな、……なんてね)
恥ずかしいから、絶対レオには言わないけど。
「ミナセの宝石も、レオの宝石も、任せて。ふたりに似合う、すてきな宝石にしてみせるから!」
「うん!」
「ああ!」
わたしは、ぐっと拳を握った。
宝石店の、魔法使い。
まだまだ修行中だけど、みんなを笑顔にするアクセサリーをつくるために。
お仕事、がんばらせていただきます!
(了)
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みんなの感想(4件)
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「宝石店の魔法使い~吸血鬼と赤い石~」
読み終わりました。
とても感動しました!
最後のルリの宝石作りへの決心が、橘花さんの創作への姿勢と重なって見えました。
これからも素敵な作品を楽しみにしています。
むめさん
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。楽しんでいただけたようで、幸いです!
そうですね、ルリも必死に向き合っていくでしょうから、私も負けないように頑張りたいと思っています。ルリともども、努力してまいります!
ありがとうございました!
特別賞受賞おめでとうございます!前回の作品の奨励賞からまた飛躍され、すごいなあと思います。私はまだ、今回の作品を最後まで読めていないのですが、登場する子供達の会話のかけあいが面白いなあと感じています。私の作品に、受賞をされるほどの方から感想をいただけて、うれしく思っています。これからも橘花さんを応援しています。私の作品にもまた遊びに来てくださいね。☺️
むめさん
お祝いのお言葉ありがとうございます!前回の賞から見守っていただけていて、嬉しいです。
このお話も楽しんでもらえているようで、安心しました。最後まで楽しんでいただけますように……!
またよろしくお願いいたします!
好みの作品でしたので投票しました(*^_^*)
文章の表現が素敵で、読んでいてほんわか癒されます♪
これからも応援しています!
四季遥さん
読んでくださり、ありがとうございます!投票もとってもうれしいです!
表現には注意していたので、お褒めの言葉がいただけてよかったです。優しい世界になっていたらいいな。
これからも楽しんでもらえるよう、頑張ります!ありがとうございました!