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新しい生活
6 委員長
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ジオ先生は、校舎に隣接した生徒たちの宿舎までシンの荷物を運んでくれた。
学園の敷地は広く、シンは迷子になりそうだと心配になった。宿舎は三階建てで、すべて一年生の部屋だ。先輩達の宿舎は別棟で、そこは二年生と三年生が使っているらしい。
「一年生が一番多いんですか?」
「ああ。進級出来ない生徒が大勢いるからね。三年生になれるのは入学した生徒のうち半分くらいかな」
ジオ先生はさわやかに笑ったが、シンには気の重い情報だった。彼はは138位だから、このままだと進級ぎりぎりの順位だ。
無言になったシンを見て、ジオ先生は
「君なら大丈夫さ」と慰めてくれた。
えんじとベージュ色の配色の廊下を歩き、部屋の前までたどり着く。途中すれ違った何人かの生徒は、ジオ先生に挨拶をし、シンの黒髪をじろじろと見た。
「それじゃ、後は分かるかな?」
「先生、ありがとうございました」
「いや、頑張るんだよ」
ジオ先生はシンの黒髪をさらりと撫でて、白黒の獏と共に去っていった。
何の躊躇いもなくシンの髪を触る人は兄以来だ。普通はみんな黒髪を敬遠し、あまり触ろうとしない。獏と少し似ているから先生には免疫が出来ているのかもしれない。
「……失礼します」
魔方陣に使われる模様がびっしりと描かれたドアを開け、シンはこれから一年間使うことになる部屋に足を踏み入れた。同室の人は委員長だとジオと先生が言っていたが、先に来ているのか分からないので一応声をかけながら入室する。
「……んっ?」
足を踏み入れた瞬間、シンの体にピリッとした感覚が走った。何かの魔法だろうか。動きを止め、周囲の気配を探るが、ピリッとしたのは一瞬で、後は何も感じなかった。
部屋に入ってすぐ共同のリビングと、シャワールームとトイレがあり、個室へ続く扉が二つ。どちらが自分の部屋か分からなくて、シンは取り合えず右の扉をノックした。
返事がないので扉を開けると、部屋の正面の茶色いソファーに体を預けた眼鏡の男の人と目があった。
「あ、す、すみません……!人がいると思わなくって」
眼鏡の男の人は、ちらりとシンを見て、何故かかけていた眼鏡を一旦はずし眉間をマッサージした。眼鏡を外すと目付きが悪くなる気がする。
「同室の方ですか?僕はシンと言います。よろしくお願いします」
「 僕はCクラス委員長サイラスだ」
「僕もCクラスなんです」
「知っている。同室者の事は従兄弟に聞いた」
委員長は眼鏡を戻すと、再び持っていた本に目線を落とした。
「……えっと」
「まだ何かあるのか?用がないなら出ていってくれ」
「あ、すみません……」
委員長は気難しい性格らしい。シンはすごすごと扉を閉めた。
学園の敷地は広く、シンは迷子になりそうだと心配になった。宿舎は三階建てで、すべて一年生の部屋だ。先輩達の宿舎は別棟で、そこは二年生と三年生が使っているらしい。
「一年生が一番多いんですか?」
「ああ。進級出来ない生徒が大勢いるからね。三年生になれるのは入学した生徒のうち半分くらいかな」
ジオ先生はさわやかに笑ったが、シンには気の重い情報だった。彼はは138位だから、このままだと進級ぎりぎりの順位だ。
無言になったシンを見て、ジオ先生は
「君なら大丈夫さ」と慰めてくれた。
えんじとベージュ色の配色の廊下を歩き、部屋の前までたどり着く。途中すれ違った何人かの生徒は、ジオ先生に挨拶をし、シンの黒髪をじろじろと見た。
「それじゃ、後は分かるかな?」
「先生、ありがとうございました」
「いや、頑張るんだよ」
ジオ先生はシンの黒髪をさらりと撫でて、白黒の獏と共に去っていった。
何の躊躇いもなくシンの髪を触る人は兄以来だ。普通はみんな黒髪を敬遠し、あまり触ろうとしない。獏と少し似ているから先生には免疫が出来ているのかもしれない。
「……失礼します」
魔方陣に使われる模様がびっしりと描かれたドアを開け、シンはこれから一年間使うことになる部屋に足を踏み入れた。同室の人は委員長だとジオと先生が言っていたが、先に来ているのか分からないので一応声をかけながら入室する。
「……んっ?」
足を踏み入れた瞬間、シンの体にピリッとした感覚が走った。何かの魔法だろうか。動きを止め、周囲の気配を探るが、ピリッとしたのは一瞬で、後は何も感じなかった。
部屋に入ってすぐ共同のリビングと、シャワールームとトイレがあり、個室へ続く扉が二つ。どちらが自分の部屋か分からなくて、シンは取り合えず右の扉をノックした。
返事がないので扉を開けると、部屋の正面の茶色いソファーに体を預けた眼鏡の男の人と目があった。
「あ、す、すみません……!人がいると思わなくって」
眼鏡の男の人は、ちらりとシンを見て、何故かかけていた眼鏡を一旦はずし眉間をマッサージした。眼鏡を外すと目付きが悪くなる気がする。
「同室の方ですか?僕はシンと言います。よろしくお願いします」
「 僕はCクラス委員長サイラスだ」
「僕もCクラスなんです」
「知っている。同室者の事は従兄弟に聞いた」
委員長は眼鏡を戻すと、再び持っていた本に目線を落とした。
「……えっと」
「まだ何かあるのか?用がないなら出ていってくれ」
「あ、すみません……」
委員長は気難しい性格らしい。シンはすごすごと扉を閉めた。
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