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ep.1目覚め
1 みこさま……?
しおりを挟む目を覚ましたら、いつもと違う看護師さんが俺の手を握っていた。こんな人いただろうか。それとも新しいお医者さんかな。白衣を着ているけど、お医者さんとは少し雰囲気が違う。髪は焦茶色で瞳の色は緑色だ。外国の俳優とかモデルみたいに顔がかっこいい。若く見えるけど、大人っぽい顔立ちだな。切れ長の目だからそう見えるのかも。
「さ、採血ですか……?」
言葉がすんなり出た。
喉は乾いているけど、全身の痛みが嘘のようにひいている。痛み止めがまだ効いてるんだろうか。それとも手術が成功したのか。
「手術は……?」
きっと成功したに違いない。こんなにスッキリした目覚めは久しぶりだから。ここ数年経験したことのない気持ちよさだ。よく見ると、自分の腕には点滴も何も無かった。身体から何のチューブも出ていない。
「神子さま……」
みこさまって何だろう。イケメンのお医者さんは俺の手を握ったままそう呟いた。よく見たら耳に銀色のアクセサリーを付けていた。こんなお医者さんもいるのか。よく似合ってるけど。
「あれ?」
ここは見慣れた病室じゃなかった。白いカーテンがあるしベッドの上だけど、天井はやたらと高くて、絵がたくさん描かれていた。海外の大聖堂みたいな雰囲気だ。そこから蝋燭の乗ったシャンデリアがいくつもぶら下がってる。カーテンも高い天井からいくつも垂れ下がっていて、白だけじゃなく紫や金色や藍色がある。
もしかしてここは、天国だろうか。
手術はやっぱり失敗して……上手くいったとしても体力がもたなくて、死んでしまったんだ。そして天国にやって来た。
その考えはすんなりと納得できた。やっと苦しみから解放された……そう思うのに、なぜか涙が出て、俺を覗き込んでいる男の人の顔もにじんで見えなくなった。
「神子さま! よくぞお目覚めくださいました……!」
泣いていたらお医者さんのうしろからシワシワのお爺さんが顔を出した。長い顎ひげの仙人みたいなお爺さん。多分この人が天国の神様だ。神様もなぜか顔をさらに皺くちゃにして泣いていた。
「みこさまって……?」
「皆のもの! 神子さまがお目覚めになられた!」
お爺さんがカーテンの向こうにそう呼びかけた途端、地響きみたいな歓声が周りから聞こえてきてびっくりした。こんなに人がいるなんて思わなかった。イケメンお医者さんの手をぎゅっと握る。
お医者さんは少しだけ微笑んで、俺の目尻にたまった涙を指で拭ってくれた。
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