CoSMoS ∞ MaCHiNa ≠ ReBiRTH

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―楽園編―

弾丸の行方

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 ――というか、これだけの船を借りられるほどに金銭的余裕があったのだろうか? いや、あるはずがない!
「ミィコさん、こんな立派な船、契約するためのお金はどうしたの」
「決まっています、サトリが労働で支払うんです」
「え、いや、ちょっと待って? ミィコさん?」
 僕は聞いてない。そんなこと聞いてない! いったいどんな労働をさせられるっていうんだ? 色々とよからぬ想像が頭を過る。
 それにしても……労働で支払うだなんて、よくそんなご都合主義が許されたな。
「サトリ、その顔、労働を条件に契約できてしまうなんて”ご都合主義”とか思っている顔ですね」
 ミィコには、そんな僕の考えが見透かされてしまう……まさに、そんなミィコこそがご都合主義の塊だろう。
「え、ええ、まあ……」
 そんなミィコに逆らうことなく、僕は停泊中の帆船まで行くためのボートに乗り込む。
 ミィコと藍里がボートに乗り込むのを確認すると、船頭が帆船に向かってボートを動かし始めた。
「あの、ミィコさん――」
「さとりくん、ミィコちゃん、あの船、すごいですね!」
 藍里が僕の言葉を遮って、停泊している巨大な帆船を見ながらはしゃいでいた。
「うん、見事な船だよね」
「この船に乗れるのも、サトリの犠牲があってこそ、なのです。」
「え、いや、ちょっと――」

 ――僕たちが乗っているボートが、停泊している巨大な帆船に真横に移動する。
 帆船は、僕の予想以上に大きかった。

 ボートはそのまま、巨大な帆船の側面にある搭乗口付近の下に着いた。
 すると、帆船の乗組員の手により、上の方から縄梯子が下ろされる。
「サトリ、細かいことは気にしないで乗船するのです」
 ミィコは僕を急かす。
「そこはちゃんと、どういう労働なのか聞いておかないと……!」
 僕はミィコに食い下がる!
「大丈夫です、死にはしないです。ちょっとした雑用とかです」
「え、ちょっとした雑用って……」
 僕はミィコの言葉に恐怖した。いったい僕はこの後、何をさせられるんだ!?

「さとりくん、ミコちゃん! 早く上がってきてください!」
 なぜだろう? 遥か上の方から藍里の声が聞こえてきた。
「藍里、いつの間に!?」
 僕は少し驚いた。
 もたもたしていた僕とミィコを置いて、真っ先に帆船に乗り込み、船の甲板ではしゃぐ――藍里。
「さあ、ミコたちも乗り込みましょう。さとりは労働が待っていますので」
 そう言うと、ミィコもそのまま船に乗り込んでいった。
 容赦ない。というか、労働っていったい何なんだ? 聞くタイミングを完全に逃してしまった。
 僕らが帆船に乗り込むと、船員たちが慌ただしく出発の準備をし始めた。
 さあ、航海へと出発だ!

 ――こうして、僕らの船旅が始まった。といっても、夕方くらいにはドラゴンの島に到着するのだろう。
 船員も結構な数が乗船しているようだが……彼らはなんとも無口だ。この世界の住人は基本的に無口で善良で、規則正しく、恣意的な行動を取る気配すらない。
 それでいて、イレギュラーな対応もちゃんとしてくれる。
 今までミィコは、この世界の住人に対して色々と無茶ぶりをしてきた。その経験が今回も役に立ったのか、巧みなまでの無茶ぶりによって、この船を上手く契約することができたのだろう。

 藍里とミィコは、船員たちが船の帆を張る作業を物珍しそうに眺めている。
 身軽そうな船員が、ピョンピョンとマストの上を飛び移りながら帆を張るその姿には優雅ささえ感じられる。
 帆を張る作業が完了すると、次第に船の速度が上がり、心地よい風が僕の頬を撫でる。
 僕は労働のことなどすっかりと忘れ、一人孤独に船上から代わり映えのない景色を眺めることにしていた。

 ――しばらくすると、海上を航行させていた船員たちが慌ただしく駆け回っているのが目に留まる。
 すると、数名がマストによじ登り、帆をたたみ始めた――そして、この船は静かになった海面をゆっくりと漂い始めたのだ。

 そんな中、船室から慌てた様子で出てきたミィコが、謎の『マスケット銃』のようなものを抱えながら、僕の方へと向かってくる。
「サトリ! サトリ! 労働のお時間です!」
 僕は、ミィコから『マスケット銃』のようなものを僕は手渡された。
「え、これ、どうするの? 使い方が分からない!」
 僕は焦った。

「ミコちゃん、こっちの銃も装填完了です!」
 藍里も『マスケット銃』のようなものを持っているようだ
 しかも、僕なんかよりもこの銃の使い方を理解しているように見える。
「サトリ、一撃で仕留められなかった場合は、藍里が持っている『魔導銃』に持ち替えて、もう一撃を確実に当ててください!」
「ちょ、ちょっと、ミィコさん、状況がよく理解できていないのだけど……」
「ミコちゃん!」
「サトリ! 来ます! 構えて!」

 ――爆発のような衝撃の後、巨大な波が船体を襲った。
 頑丈な造りの船は何ともなかったのだが、巨大な波を引き起こした元凶と思われる巨大な生物、それがこの船の前に立ちふさがっていたのだ。
 海蛇? 海竜? とにかく、いくら頑丈なこの船でも、その巨大な生物に叩き潰されたり、巻きつかれたりすれば、ひとたまりもないだろう。
「サトリ! ターゲットの『シーサーペント』です! 頭を狙うのです!」
 ミィコが叫ぶ。あの海竜は『シーサーペント』というらしい。

 僕が呆気に取られていると、船員たちは船の側面に設置されているカノン砲を移動式の台座に乗せて運び、船の前に立ちふさがる海竜に向けて狙いを定めていた。
 船員たちは、海竜目掛けてカノン砲を撃ち放つ!
 爆音とともに飛び出した砲弾は、海竜の体に見事命中し、体の一部が大きく吹き飛んだ。
 だが、カノン砲の一撃により吹き飛んだ海竜の損傷部分が瞬く間に再生していく。

「さとりくん!」
 藍里の呼び声で僕は我に返り、すぐさま魔弾銃を構えて狙いを定める。
 カノン砲の一撃によってひるんでいる海竜、そのおかげで標的に狙いを定めやすくなっていた。

 ――僕はトリガーを引く。
 すると、“魔導ハンマー”が作動し、魔弾銃に装填されていたルーン石から、凝縮された魔力の波動がその銃身を通って撃ち放たれた。
 光線銃のような甲高い独特な発砲音が轟き、その大きな反動により、魔弾銃を構えていた僕の体はのけぞる。
 
 その直後、一閃の魔力光が海竜の頭を撃ちぬいた。
 海竜の撃ちぬくと同時に、その衝撃で海竜の首が容赦なく吹き飛ぶ。

「――やったか!?」
 僕はその喜びを声にして出した。
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