竜帝と番ではない妃

ひとみん

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この世には沢山の世界が存在しているのだという。
私が住んでいた世界。そして、今ここにある世界の他にも沢山。
そして世界の数だけ神様も存在している。そんな神様たちも時折交流があるらしい。
私の世界の神様=目の前の女性、この世界の神様=目の前の男性も例外ではなく、親睦を深めていたみたい。
話してみれば互いに相性が良かったらしく、意気投合。友情の印に何かを残そうではないかと盛り上がり、二人の力を込めた魂を創り出したのだという。

天女の格好をした彼女は私の世界の神様で本来固定の姿と言うものはこれといってなく、私にわかりやすい姿をとってくれているらしい。
反対に彼はこの世界の唯一神セルティスと言うのだそうだ。そして、この姿固定で世間一般に知れ渡り、信仰されているらしい。

二つの世界の力を宿した魂は両方の世界を交互に転生するはずだった。
順番から言えば、此度はこの世界に生まれるはずだったのが、何の力が作用したのか二度続けて同じ世界に転生してしまったのだという。
生まれるはずの無い世界に生まれ落ちた所為か、えにしが薄くどこか浮いた存在になってしまっていたそうだ。

それを聞いて、私は妙に納得してしまう。

私の両親は五歳の時に、事故で二人同時に亡くしている。
その後は、母の両親でもある祖父母の元で育てられたけど、二十歳に祖父が亡くなり、その三年後の昨年には祖母も亡くなってしまった。
私の父は元々天涯孤独な人で、母も兄弟姉妹もなく一人っ子。唯一の肉親は祖父母のみ。
その祖父母が亡くなり、文字通り私も天涯孤独となってしまった。
高校卒業後すぐに就職したので、多少は祖父母孝行はできたかもしれないと、自分では思っている。
いずれはいなくなってしまうのだと心の中で理解していたけれど、その喪失感は自分が思っていた以上に大きかったらしく、半年以上体調が安定せず、精神的にも肉体的にもかなりきつかった。
でもここ最近は体調も安定し、これまで通りの生活にやっと戻ったと思った矢先に・・・・

私をあの世界につなぎとめていたのは、祖父母の存在だったらしい。
それは縁を持たない私と唯一、繋がりを持っていた人間だったから。
本来生まれるはずがなかった世界。つなぎとめるものが無くなれば、それは排除されてしまう。
つまり、死ぬという事。

「だから事故の寸前にこちら側に呼び寄せたのよ」
「本来、誰か一人に関わる事は良しとされていないのだが、この度は異常事態だからね」
「それに貴女はわたくし達の愛しい子供。そうそう、わたくしの事はお母様と呼んで!」
「では私はお父様だな」
とても大事な話をしていたのに、非常に残念な方向へと進んでいく。
ジト目で二人を見れば、「娘が冷たい!反抗期?」と泣真似までし始める。

何だか神様って言う割に鬱陶しいかも・・・
見知らぬ場所で、理解を超えた話。かなり緊張していたのか、彼等の人間臭さにホッとし、身体から力が抜けていった。

「つまりは、本来は魂の状態で二つの世界を行き来するはずが、生身の身体で行き来したって事ですか?」
「そうなのよ!あぁ・・・わたくしの可愛い子は頭もいいのかしら・・・・」
「そうだね。流石我らの子だ」
とうっとりしたように頷いている。

・・・何なんだこれは・・・

私が何かしゃべるたびに感動し褒めちぎる。
そんな人間でない事くらい自分自身で分かっているから、正直いたたまれない・・・・そんな気持ちと共に、素直に嬉しい気持ちも芽吹いてくるのだからやるせない。
縁が薄い・・・・両親以外でも確かにそうだった。
幼い頃から祖父の影響で続けていた弓道でも、学校に通っていた時も、表面上仲良くはしていても友人と呼べる人はできなかった。
就職してからも単に同僚という関係から深いものへとなることはない。
恋人もできた事はあったが、長く続く事は無かった。別れた理由さえ覚えていない。いつの間にか疎遠になっていた・・・という感じがほとんど。
だから休日は基本一人だったけれども、特段不都合もなかった。気を使うこともなかったし、使われることもなかったから。
でも、やはり時折無性に寂しく思う事はあった。
そんな時は『人間って一人じゃ生きていけないのかな?』と、自分にはない縁と言うものに憧れ縋りつきたいと何度思った事か。

目の前の自称神様だという二人の話を信じるのなら、この世界には本来私と結ぶはずだった縁がある・・・・

そう考えただけで、なんだか胸の奥に小さな明かりが灯ったような気がした。
全ては気の持ちようなんだろうけどね・・・・と物思いに耽っていると、目の前の二人は手と手を取り合い、キラキラとした眼差しでこちらを見ている。
「・・・・笑ったわ・・・・」
「あぁ・・・何と愛らしい・・・」
自分も気付かぬうちにどうやら笑っていたらしい。
しかし・・・・この反応には口元が引きつる反面、やはり嬉しい・・・・

コホンとひとつ咳払いすると、今後の身の振り方を二人に聞く事で、私は照れくさい気持ちを誤魔化した。
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