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さようなら、愛しき兄弟
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「はぁ……胃が痛い……」
オリヴィアは先程の母とハワード子爵の顔を思い出しては深く溜め息を吐いた。
王子との縁談なんて、普通手放しに喜ぶ事だというのに、母はおろかハワード子爵もあまり喜んではくれなかった。
それもそうか。
ハワード子爵はあまり当人同士が望まない結婚には賛成ではないだろうし、母も私が本当に好きな人と結ばれる事を望んでいる以上、喜べはしないのだろう。
そしてこれからいよいよ何を言っても反対される未来しか見えないあの兄弟達に話にいかなくてはならない。
もういっその事話さずに出て行こうか?
しかし、あの兄弟達はそれでも追いかけて来そうで怖い。
私はノックをして私とエマが使っている部屋へと入る。
「あ! オリヴィアちゃん!
さっき話していたの、レイアン王子よね!?
何を話していたの!?」
部屋に入るなり速攻エマに質問された。
どうやら、私とレイアンが話している所を見ていたらしい。
「その事であんたと、他の兄弟にも話があるの。
これからルーカスとノアの部屋に行くから、エマも着いてきてくれる?」
「勿論よ!
オリヴィアちゃんの側になら何処だって着いて行くわ!」
私はエマの言葉を聞いてズキンと胸が痛む。
「そう……じゃあ行くわよ」
「分かったわ!」
こうして私とエマはルーカスとノアが使っている部屋へとやって来た。
「オリヴィア様!
さっきの呼び出しは何だったんだ?
一緒に話していたのは、レイアン王子だよな!?」
「オリヴィア姉様!
レイアン王子とも知り合いだったんですか!?」
どうやらエマだけではなく、みんなで私とレイアンを盗み見していたらしい。
「あー、今からその事を話すから、一旦落ち着いて」
私は一呼吸吐いた後、どう言うか悩んだ末に口を開いた。
「実は、レイアン王子に婚約を申し込まれたの」
「「「えぇっ!?!?」」」
私の発言に、3人は目を白黒させて驚いていた。
「「「それってどういう事」」」
「なのよ!?」
「ですか!?」
「なんだ!?」
「まあ私もにわかに信じ難い話だったんだけど、その話を受けて、急遽今日からその王子と暮らす事になったの」
「今日からっ!?」
「その話を受けた!?」
「どういう事なの!?」
3人は大分混乱していた。
まあ無理もないだろう。寧ろ予想していた通りの反応である。
「なんで話を受けたんですか!?」
「なんでって、相手は王子よ?
断る訳にもいかないし、断る理由もないでしょ?」
ノアの問いに私はなるべく冷静に答える。
「いやいや、これまでのオリヴィア様なら例え相手が王子であろうと好きでもない人と付き合うだなんて考えられない!」
「ならそれはルーカスの思い違いだったんじゃない?
私だって、今よりもっとずっと良い環境を提供してくれると言われたら、魅力的に感じるし」
私はルーカスの考えを否定する。
「そんな……オリヴィアちゃんはその王子の事が好きな訳でもないんでしょう!?」
「いいえ、好きよ?
一目惚れってやつかしら」
私がそうきっぱり伝えると、エマはガクッとくずおれた。
「嘘よ……だって私達は第一話からずっと出ているというのに、そんな初登場が何話なのかすら覚えられていない様なぽっと出のキャラに負けるなんて!!」
「そうですよ!
僕達と過ごしてきた1年より、ほんの少し会っただけの王子が良いって言うんですか!?」
「そうよ。
あんた達と違って、向こうはもっとお金も持っているし、茶会や社交界も出なくても良いって言われたし、権力もあるから私が望めば何でも叶えてくれるんだって」
私はなるべく意地悪な笑顔でそう言った。
これで3人とも幻滅してくれれば良いが。
「オリヴィア様はこれまで、財産や権力に興味なんてなかったでしょうに」
「あらルーカス、今まで言わなかっただけで私はお金も権力も好きよ?
どう? 見損なった?」
「そうですね。そんな心にもない嘘を吐いて、無理矢理な作り笑顔で誤魔化そうとして、嫁ぎたくもない男の所に行こうとしている今のオリヴィア様には、心底失望しました」
ルーカスは冷ややかな視線で私を見ながらそう言った。
「そ、そんな事ないわ」
私は嘘がバレない様に下を向く。
「なら何故そんなに嬉しくなさそうなんだ?
何故目を合わせてくれないんだ?」
ルーカスはそれでもまだ質問をやめない。
「うっさいわね!!
察してよ!!
大体あんた達の事なんて、初めて会った時から、ずっと大っ嫌いだったわよ!!」
私が怒鳴ると、3人はピタッと止まった。
「……それは、嘘よね?」
エマが震える声で恐る恐る訊いてくる。
「嘘じゃないわ。
今回の縁談も、あんた達と縁が切れる良い機会だから受けたの。
だからもう、私に構わないでよ」
私の言葉に、エマはどんどん涙目になる。
「う、うぅ……」
「泣いたって今度は謝りはしないから。
精々好きなだけ泣いたら?」
私は追い討ちをかける様にエマにそう言い捨てた。
「うぅ、うわぁぁん!!」
「オリヴィア姉様!」
私が出て行こうと踵を返すと、ノアに呼び止められた。
「……何よ?」
私は振り返らずに答える。
「オリヴィア姉様は、もし俺達が死んだら悲しい?」
「……知らないわよ、そんな事」
「忘れないで下さいね。
俺達はオリヴィア姉様の為なら何でも出来るんですよ?」
「やめてくれない?
ただの迷惑だから。
……それじゃあ私もう行くから。
さようなら」
それだけ言って私は急いでドアを開けて部屋へと戻った。
エマはまだ泣いているだろうし、その間に自分の荷物だけさっさと準備してしまおう。
「……何よ。
泣きたいのは、こっちだって言うのに……」
私は、溢れて出る涙を必死に拭いながら、急いで準備を済ませた。
一方、オリヴィアが部屋を出ていった後も、やはりエマはまだ泣いていた。
「うっ……うぅ、ぐすっ」
「エマ、大丈夫か?
心配するな、さっきのオリヴィア様の言葉はきっと嘘だから」
ルーカスはエマを気遣いつつも、先程のオリヴィアの態度を考えていた。
恐らくオリヴィア様は、何らかの理由でレイアン王子と婚約したのだろう。
しかし、その理由が分からない。
「ノアは、どう思う?
オリヴィア様の様子は明らかにいつもと違ったし、恐らく何かしら弱みを握られているのではと俺は思うのだが」
「そうですね……。
あんまり考えたくないですけど、その弱みは僕らかもしれないですね」
ノアは悩みながらもそう話した。
「私、達が?」
エマは泣きながらノアに問い掛ける。
「はい。
さっき僕達が死んだら悲しい? って訊いた時、本当に嫌いならどうでもいいとか返して来ると思ったんですけど、それに対して「知らない」って答えたのは、少なからずそうは思ってないからだと思うんですよね。
それにオリヴィア姉様の為ならなんでも出来るって言ったのに対して「やめて」って言ったのは、恐らく僕達を巻き込みたくないんじゃないかな、と。
相手は何せ一国の王子ですから、ハワード家に圧力をかける事なんて簡単でしょう?」
或いは、3年前のあの馬車の事件を調べたせいかもしれない。
もしそうだった場合、オリヴィア姉様がこんな目に遭ってしまったのは俺のせいだ。
俺が、あの時、野良猫の事を調べたいなんて言い出さなければ……。
もしくは、オリヴィア姉様を付き合わせなければ良かったんだ。
そしたら、俺だけで済んだのに。
俺が何もされないという事は、脅しの材料として使われたのだろうか?
一緒に秘密で調べ事して楽しいだなんて、考えてた自分の馬鹿さ加減に反吐が出る。
もしそうなら、例え俺が犠牲になってでもオリヴィア姉様を助けなくては……。
ノアは悔しさにギリっと歯を噛み締めた。
「ノア、あんまり思い詰めるなよ。
それよりも、今後の事を考えよう」
「ぐすっ、今後って?」
エマは涙を拭いながらルーカスに問い掛ける。
「オリヴィア様が16になって本当に結婚してしまう前に、一刻も早くオリヴィア様を連れ戻す方法は何かないものか……」
ルーカスは口でそう言うも、無謀だという事は頭で理解していた。
相手は大国オルトレアの王子で、権力も財力もある。
そしてオリヴィア様がどう思っていようと、表向きには恋愛結婚となるだろう。
政略結婚なら、相手国と自国の関係値によっては破棄する事も可能なのだが、恋愛結婚ならそうはいかない。
オリヴィア様が弱みを握られているなら、まずはそれをどうにかしなくてはならない。
その弱みも分からない今、どうすればいいのか、具体的な案が思いつかない。
「……オリヴィアちゃんがあそこまで言うなんて、よっぽどの事だと思うわ」
「何より1番辛いのは、間違いなくオリヴィア姉様でしょうからね……」
「くそ、何か良い方法はないのか……!?」
3人が必死に考えている中、オリヴィアは、メアリーとウィルに挨拶を済ませていた。
「オリヴィアお嬢様……まだ全く信じられません。
使用人の私がオリヴィアお嬢様のお考えに口出しするのはよくないのですが、本当に大丈夫なのですか?」
メアリーは困惑した表情でオリヴィアに尋ねる。
「ええ。もう決めた事だから。
1年という短い間だったけど、2人ともお世話になったわ。
元気でね」
「オリヴィアお嬢様こそ、お元気で」
その後、オリヴィアは纏めた荷物を持ってレイアンの元へと訪れた。
「最後の挨拶は、終えられた様ですね?」
「はい。もう大丈夫です。
お時間いただきありがとうございました」
私は形式的に礼を言う。
「いえいえ、こちらこそ本当はもう少し時間を与えようか迷ったのですが、あまり時間を与えるとまた貴女が迷ってしまうのではと心配になったので。
では、行きましょうか」
レイアンはニコリと笑みを浮かべて手を差し出してきた。
「……はい」
私は渋々その手を取って歩き出した。
オリヴィアは先程の母とハワード子爵の顔を思い出しては深く溜め息を吐いた。
王子との縁談なんて、普通手放しに喜ぶ事だというのに、母はおろかハワード子爵もあまり喜んではくれなかった。
それもそうか。
ハワード子爵はあまり当人同士が望まない結婚には賛成ではないだろうし、母も私が本当に好きな人と結ばれる事を望んでいる以上、喜べはしないのだろう。
そしてこれからいよいよ何を言っても反対される未来しか見えないあの兄弟達に話にいかなくてはならない。
もういっその事話さずに出て行こうか?
しかし、あの兄弟達はそれでも追いかけて来そうで怖い。
私はノックをして私とエマが使っている部屋へと入る。
「あ! オリヴィアちゃん!
さっき話していたの、レイアン王子よね!?
何を話していたの!?」
部屋に入るなり速攻エマに質問された。
どうやら、私とレイアンが話している所を見ていたらしい。
「その事であんたと、他の兄弟にも話があるの。
これからルーカスとノアの部屋に行くから、エマも着いてきてくれる?」
「勿論よ!
オリヴィアちゃんの側になら何処だって着いて行くわ!」
私はエマの言葉を聞いてズキンと胸が痛む。
「そう……じゃあ行くわよ」
「分かったわ!」
こうして私とエマはルーカスとノアが使っている部屋へとやって来た。
「オリヴィア様!
さっきの呼び出しは何だったんだ?
一緒に話していたのは、レイアン王子だよな!?」
「オリヴィア姉様!
レイアン王子とも知り合いだったんですか!?」
どうやらエマだけではなく、みんなで私とレイアンを盗み見していたらしい。
「あー、今からその事を話すから、一旦落ち着いて」
私は一呼吸吐いた後、どう言うか悩んだ末に口を開いた。
「実は、レイアン王子に婚約を申し込まれたの」
「「「えぇっ!?!?」」」
私の発言に、3人は目を白黒させて驚いていた。
「「「それってどういう事」」」
「なのよ!?」
「ですか!?」
「なんだ!?」
「まあ私もにわかに信じ難い話だったんだけど、その話を受けて、急遽今日からその王子と暮らす事になったの」
「今日からっ!?」
「その話を受けた!?」
「どういう事なの!?」
3人は大分混乱していた。
まあ無理もないだろう。寧ろ予想していた通りの反応である。
「なんで話を受けたんですか!?」
「なんでって、相手は王子よ?
断る訳にもいかないし、断る理由もないでしょ?」
ノアの問いに私はなるべく冷静に答える。
「いやいや、これまでのオリヴィア様なら例え相手が王子であろうと好きでもない人と付き合うだなんて考えられない!」
「ならそれはルーカスの思い違いだったんじゃない?
私だって、今よりもっとずっと良い環境を提供してくれると言われたら、魅力的に感じるし」
私はルーカスの考えを否定する。
「そんな……オリヴィアちゃんはその王子の事が好きな訳でもないんでしょう!?」
「いいえ、好きよ?
一目惚れってやつかしら」
私がそうきっぱり伝えると、エマはガクッとくずおれた。
「嘘よ……だって私達は第一話からずっと出ているというのに、そんな初登場が何話なのかすら覚えられていない様なぽっと出のキャラに負けるなんて!!」
「そうですよ!
僕達と過ごしてきた1年より、ほんの少し会っただけの王子が良いって言うんですか!?」
「そうよ。
あんた達と違って、向こうはもっとお金も持っているし、茶会や社交界も出なくても良いって言われたし、権力もあるから私が望めば何でも叶えてくれるんだって」
私はなるべく意地悪な笑顔でそう言った。
これで3人とも幻滅してくれれば良いが。
「オリヴィア様はこれまで、財産や権力に興味なんてなかったでしょうに」
「あらルーカス、今まで言わなかっただけで私はお金も権力も好きよ?
どう? 見損なった?」
「そうですね。そんな心にもない嘘を吐いて、無理矢理な作り笑顔で誤魔化そうとして、嫁ぎたくもない男の所に行こうとしている今のオリヴィア様には、心底失望しました」
ルーカスは冷ややかな視線で私を見ながらそう言った。
「そ、そんな事ないわ」
私は嘘がバレない様に下を向く。
「なら何故そんなに嬉しくなさそうなんだ?
何故目を合わせてくれないんだ?」
ルーカスはそれでもまだ質問をやめない。
「うっさいわね!!
察してよ!!
大体あんた達の事なんて、初めて会った時から、ずっと大っ嫌いだったわよ!!」
私が怒鳴ると、3人はピタッと止まった。
「……それは、嘘よね?」
エマが震える声で恐る恐る訊いてくる。
「嘘じゃないわ。
今回の縁談も、あんた達と縁が切れる良い機会だから受けたの。
だからもう、私に構わないでよ」
私の言葉に、エマはどんどん涙目になる。
「う、うぅ……」
「泣いたって今度は謝りはしないから。
精々好きなだけ泣いたら?」
私は追い討ちをかける様にエマにそう言い捨てた。
「うぅ、うわぁぁん!!」
「オリヴィア姉様!」
私が出て行こうと踵を返すと、ノアに呼び止められた。
「……何よ?」
私は振り返らずに答える。
「オリヴィア姉様は、もし俺達が死んだら悲しい?」
「……知らないわよ、そんな事」
「忘れないで下さいね。
俺達はオリヴィア姉様の為なら何でも出来るんですよ?」
「やめてくれない?
ただの迷惑だから。
……それじゃあ私もう行くから。
さようなら」
それだけ言って私は急いでドアを開けて部屋へと戻った。
エマはまだ泣いているだろうし、その間に自分の荷物だけさっさと準備してしまおう。
「……何よ。
泣きたいのは、こっちだって言うのに……」
私は、溢れて出る涙を必死に拭いながら、急いで準備を済ませた。
一方、オリヴィアが部屋を出ていった後も、やはりエマはまだ泣いていた。
「うっ……うぅ、ぐすっ」
「エマ、大丈夫か?
心配するな、さっきのオリヴィア様の言葉はきっと嘘だから」
ルーカスはエマを気遣いつつも、先程のオリヴィアの態度を考えていた。
恐らくオリヴィア様は、何らかの理由でレイアン王子と婚約したのだろう。
しかし、その理由が分からない。
「ノアは、どう思う?
オリヴィア様の様子は明らかにいつもと違ったし、恐らく何かしら弱みを握られているのではと俺は思うのだが」
「そうですね……。
あんまり考えたくないですけど、その弱みは僕らかもしれないですね」
ノアは悩みながらもそう話した。
「私、達が?」
エマは泣きながらノアに問い掛ける。
「はい。
さっき僕達が死んだら悲しい? って訊いた時、本当に嫌いならどうでもいいとか返して来ると思ったんですけど、それに対して「知らない」って答えたのは、少なからずそうは思ってないからだと思うんですよね。
それにオリヴィア姉様の為ならなんでも出来るって言ったのに対して「やめて」って言ったのは、恐らく僕達を巻き込みたくないんじゃないかな、と。
相手は何せ一国の王子ですから、ハワード家に圧力をかける事なんて簡単でしょう?」
或いは、3年前のあの馬車の事件を調べたせいかもしれない。
もしそうだった場合、オリヴィア姉様がこんな目に遭ってしまったのは俺のせいだ。
俺が、あの時、野良猫の事を調べたいなんて言い出さなければ……。
もしくは、オリヴィア姉様を付き合わせなければ良かったんだ。
そしたら、俺だけで済んだのに。
俺が何もされないという事は、脅しの材料として使われたのだろうか?
一緒に秘密で調べ事して楽しいだなんて、考えてた自分の馬鹿さ加減に反吐が出る。
もしそうなら、例え俺が犠牲になってでもオリヴィア姉様を助けなくては……。
ノアは悔しさにギリっと歯を噛み締めた。
「ノア、あんまり思い詰めるなよ。
それよりも、今後の事を考えよう」
「ぐすっ、今後って?」
エマは涙を拭いながらルーカスに問い掛ける。
「オリヴィア様が16になって本当に結婚してしまう前に、一刻も早くオリヴィア様を連れ戻す方法は何かないものか……」
ルーカスは口でそう言うも、無謀だという事は頭で理解していた。
相手は大国オルトレアの王子で、権力も財力もある。
そしてオリヴィア様がどう思っていようと、表向きには恋愛結婚となるだろう。
政略結婚なら、相手国と自国の関係値によっては破棄する事も可能なのだが、恋愛結婚ならそうはいかない。
オリヴィア様が弱みを握られているなら、まずはそれをどうにかしなくてはならない。
その弱みも分からない今、どうすればいいのか、具体的な案が思いつかない。
「……オリヴィアちゃんがあそこまで言うなんて、よっぽどの事だと思うわ」
「何より1番辛いのは、間違いなくオリヴィア姉様でしょうからね……」
「くそ、何か良い方法はないのか……!?」
3人が必死に考えている中、オリヴィアは、メアリーとウィルに挨拶を済ませていた。
「オリヴィアお嬢様……まだ全く信じられません。
使用人の私がオリヴィアお嬢様のお考えに口出しするのはよくないのですが、本当に大丈夫なのですか?」
メアリーは困惑した表情でオリヴィアに尋ねる。
「ええ。もう決めた事だから。
1年という短い間だったけど、2人ともお世話になったわ。
元気でね」
「オリヴィアお嬢様こそ、お元気で」
その後、オリヴィアは纏めた荷物を持ってレイアンの元へと訪れた。
「最後の挨拶は、終えられた様ですね?」
「はい。もう大丈夫です。
お時間いただきありがとうございました」
私は形式的に礼を言う。
「いえいえ、こちらこそ本当はもう少し時間を与えようか迷ったのですが、あまり時間を与えるとまた貴女が迷ってしまうのではと心配になったので。
では、行きましょうか」
レイアンはニコリと笑みを浮かべて手を差し出してきた。
「……はい」
私は渋々その手を取って歩き出した。
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